この記事でわかること
- 皮膚水分保持能という肌の働きの意味
- 角層水分量・水分蒸散量との違いと調べ方
- 水を抱えておく力を決める角層の3つの要素
「皮膚水分保持能」という言葉は漢字ばかりで、肌のどんな働きを指しているのか、ピンとこないですよね。
結論から言うと、皮膚水分保持能は、水を受け取った角層が、その水をどれだけ長く抱えていられるかという肌の力のことです。いまある水の量とは別の物差しで、角層の中の天然保湿因子などがそろって生まれます。順番に見ていきましょう。
皮膚水分保持能は、角層が受け取った水を抱えておく力
皮膚水分保持能は、肌のいちばん外側の角層が、受け取った水をどれだけ保っていられるかを表す力です。水分保持力とも呼ばれます。
体の外の空気は、肌から見るととても乾いています。そのため、角層に水を与えても、時間がたつと水はだんだん空気へ出ていきます。このときの乾きやすさは、角層の状態によって違います。
保持能が高い角層は、受け取った水を長い時間保てます。保持能が低い角層では、水分量がすぐに下がります。皮膚水分保持能は、水の量ではなく、水を手放さない力を見ています。
肌の水分は、3つの物差しで別々に見る
肌の水分は、いまある水の量、逃げていく水の量、水を抱えておく力の3つの物差しで別々に見ます。3つは同じ「肌の水分」でも見ているものが違い、1つの数字だけでは角層の様子がわからないからです。
同じ肌の水分でも、3つは別のものを見ています。
角層水分量
いまある水の量
水分蒸散量
逃げていく水の量
水分保持能
水を抱えておく力
ひとつめの角層水分量は、いま角層にどれだけ水があるかです。健康な角層は重さの約20〜30%の水分を含みます。高周波の電気の通りやすさで測る方法が代表的で、電気が通りやすいほど水分が多いと判定します。ふたつめの経表皮水分蒸散量は、体の内側から角層を通って、気づかないうちに外へ逃げていく水の量です。おなかや背中、太ももで1平方メートルあたり1時間に約5g、頬で約10gが目安です。汗がまざると正しく測れないため、22℃以下で温度と湿度を一定にした、風のない部屋で測ります。
みっつめが水分保持能です。角層水分量が増えたからといって、水分保持能が上がったとはいえません。いまの量でも逃げる量でもなく、受け取った水を抱えていられる力を見る点が、ほかの2つとの違いです。
水分保持能は、水をのせたあとの減り方でわかる
水分保持能は、肌に水をのせて拭き取ったあと、水分がどう減っていくかで調べます。抱えておく力が強い角層ほど、拭き取ったあとも水分がゆっくり減るからです。
水を拭き取ったあとの減り方で調べます。
のせる
拭き取る
測る
力がわかる
この調べ方は水負荷試験と呼ばれます。肌に水をしばらくのせ、一定の時間がたったら拭き取り、そのあとの角層の水分量を、電気の通りやすさで短い間隔で追いかけます。部屋は、たとえば21℃・湿度40〜60%のように、温度と湿度を一定にしておきます。
水分量が長い時間高いままなら、保持能に優れた角層です。水分保持能は、拭き取ったあとの減り方のゆるやかさで見る力なのです。
抱えておく力は、天然保湿因子・ケラチン・細胞間脂質で決まる
水を抱えておく力は、角層の中の天然保湿因子、ケラチン、細胞間脂質の3つで決まります。中でも影響が大きいとされているのが、天然保湿因子(細胞の中で水を抱える成分)です。
この3つがそろって、水を抱える力になります。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
天然保湿因子は、角層の細胞の中にある小さな分子の集まりで、約40%がアミノ酸です。ほかに、ピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素がそれぞれ約8〜10%、カリウムやナトリウムなどのミネラルが約5%含まれます。そのまわりでは、角層の細胞をつくるたんぱく質のケラチンが組み上がって細胞の形を支え、細胞のすき間を埋める細胞間脂質が水をはさみこんでいます。細胞間脂質の約50%はセラミドです。
角層の水分を保つ働きは、天然保湿因子の量が減ると落ちます。水分保持能は、角層の中の3つの要素がそろって生まれる力です。
角層の水は、まわりの空気の湿度ともやりとりしている
角層のいちばん外側の水分量は、まわりの空気の湿度と、角層の水分保持能の両方で決まります。角層は空気にふれている層で、水をいつも外とやりとりしているからです。
体の中はおよそ70%が水です。角層の深いところは体の中と同じくらいの水を含み、表面に向かうほど水分が減って、いちばん外側では約20〜30%になります。とても薄い角層の中にも、水の量の坂ができているのです。
乾いた空気の中では、表面の水分量は下がります。このとき、天然保湿因子があると、下がり方がおさえられます。角層は水にふれると自分の重さの約3倍もの水をたくわえることもでき、お風呂のあとに皮膚がふやけるのはこのためです。湿度が変わっても水を手放しにくいことが、保持能の高さです。
水を抱える材料は、角層になる前の細胞がつくる
天然保湿因子と細胞間脂質の材料は、角層になる手前の顆粒層(角層のすぐ下の層)の細胞がつくっています。角層の細胞は、表皮の下で生まれた細胞が上へ押し上げられて変わったものだからです。
天然保湿因子のアミノ酸のもとは、顆粒層でつくられるフィラグリンというたんぱく質で、角層の中で分解されてアミノ酸になります。角層のアミノ酸の組み合わせは、フィラグリンを形づくるアミノ酸の組み合わせとほぼ同じです。細胞が入れ替わる流れはターンオーバーの記事で、角層の下の層の水は肌の水分の記事で解説しています。
皮膚水分保持能は、角層だけの力ではなく、下の層の細胞が用意した材料の上に成り立つ力です。
まとめ
- 皮膚水分保持能は、水を受け取った角層が、その水をどれだけ抱えていられるかという力です
- 肌の水分は、角層水分量、経表皮水分蒸散量、水分保持能の3つの物差しで別々に見ます
- 水分保持能は、水をのせて拭き取ったあとの減り方で調べます
- 抱えておく力は、天然保湿因子・ケラチン・細胞間脂質で決まり、天然保湿因子の影響が大きいとされます
- 角層の表面の水分量は、まわりの湿度と水分保持能の両方で決まります
皮膚水分保持能は、水の量ではなく、水を手放さない角層の力です。肌の水分の話を読むときは、いまの量、逃げる量、抱える力のどれの話かを見分けてみてください。
よくある質問
皮膚水分保持能とは何ですか?
角層が、受け取った水をどれだけ抱えていられるかという力です。水分保持力とも呼ばれ、保持能が高い角層ほど、水分量を長い時間高く保てます。
角層水分量と皮膚水分保持能は何が違いますか?
角層水分量はいまある水の量、保持能は水を抱えておく力です。別の物差しなので、角層水分量が増えても、保持能が上がったとはいえません。
皮膚水分保持能はどうやって調べますか?
肌に水をのせて拭き取り、そのあとの減り方を測ります。温度と湿度を一定にした部屋で、角層の水分量を電気の通りやすさで短い間隔で追いかけます。
水を抱えておく力は何で決まりますか?
角層の天然保湿因子、ケラチン、細胞間脂質の3つで決まります。中でも、アミノ酸が約40%を占める天然保湿因子の影響が大きいとされています。
角層の水分量は湿度で変わりますか?
いちばん外側の水分量は、まわりの湿度で変わります。乾いた空気の中では下がりますが、天然保湿因子があると、その下がり方がおさえられます。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「水分保持力」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層水分量」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「経表皮水分蒸散量」
- Tagami H, Kanamaru Y, Inoue K, et al. Water Sorption-desorption Test of the Skin in Vivo for Functional Assessment of the Stratum Corneum. J Invest Dermatol 1982;78(5):425-428
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「天然保湿因子」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層細胞間脂質」
- Arezki NR, Williams AC, Cobb AJA, Brown MB. Design, synthesis and characterization of linear unnatural amino acids for skin moisturization. Int J Cosmet Sci 2017;39(1):72-82
- 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」(日皮会誌131(10):2255-2270)
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