この記事でわかること
- パラベンが化粧品の中でしている役目と、日本とヨーロッパの上限
- ホルモン・乳がん・かぶれの話についての評価
- パラベンフリーの意味と、代わりに使われる防腐剤
成分表示で「メチルパラベン」を見つけたり、パッケージに「パラベンフリー」と書かれていたりすると、パラベンは肌に悪い成分なのかと気になりますよね。ホルモンや乳がんの話を耳にして、不安になった人もいると思います。
結論から言うと、パラベンは化粧品の中身を傷みにくくする防腐剤で、国内外の評価機関は、決められた上限の範囲で使うかぎり安全と結論しています。ただし、ヨーロッパでは種類ごとに細かい上限があり、赤ちゃんのおむつまわりに使う一部の製品では使えないなど、条件もついています。まずは、パラベンが製品の中で何をしているのかから見ていきましょう。
パラベンは、化粧品の中で菌が増えるのを抑える防腐剤
パラベンは、化粧品の中で菌やカビが増えるのを抑えるために入れる防腐剤の仲間です。化粧品は、使っているうちに外から微生物が入りこみやすいものだからです。
化粧品は水や油、保湿剤を含み、毎日指で触れたり、ふたを開け閉めしたりします。そのたびに入った微生物が、中身の中で増えることがあります。
パラベンは、枠で囲んだ「増えるのを抑える」ところで、容器の中の菌に働きます。
指で触れる
入りこむ
抑える
傷みにくい
パラベンは、こうして入った微生物が製品の中で増えるのを抑えます。パラオキシ安息香酸エステルと呼ばれる成分の仲間をまとめた呼び名で、成分表示ではメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどと書かれます。米国食品医薬品局も、化粧品でもっとも一般的なのはこの4種類だとしています。
日本の化粧品基準では、防腐剤は決められたリストの中から選ぶ決まりで、パラベンは種類を問わず合計で100gあたり1.0gまでです。防腐剤が入る理由や、ほかの防腐剤との上限の比べ方は防腐剤とパラベンの基本の記事にまとめています。
パラベンは、化粧品を使い切るまで傷みにくくするための成分です。ここからは、「危険」と言われる理由を1つずつ見ていきます。
ヨーロッパでも、よく使われる4種類は上限つきで使える
「ヨーロッパではパラベンが禁止されている」と聞いたことがある人は多いと思います。でも、ヨーロッパでも、よく使われるメチル・エチル・プロピル・ブチルの4種類は、上限つきで使えます。ヨーロッパの規則は、パラベンをひとまとめにせず、種類ごとに上限を決めているからです。
上限は、メチルパラベンとエチルパラベンは1種類なら0.4%、混ぜて使うときは合計0.8%まで、プロピルパラベンとブチルパラベンは2つを合わせて0.14%までです。この数字は、パラベンのもとになるパラオキシ安息香酸の量に換算した値で、日本の「合計1.0g」とは数え方が違います。
同じ規則で、プロピルパラベンとブチルパラベンは、3歳未満の子どものおむつ部位に使う、洗い流さない製品には使えなくなりました。この年齢の子どもは体の中で成分を処理するしくみが未熟で、おむつの部位は肌が傷んでいるおそれがあるためです。対象はこの3つの条件がそろう製品だけで、メチルパラベンとエチルパラベンは対象外です。この決まりは2015年から適用されています。
欧州委員会の消費者安全科学委員会は、おむつ部位以外に使う一般の製品なら、どの年齢の子どもでも安全上の懸念はないと判断しています。
使えなくなったのは、イソプロピルパラベン、イソブチルパラベン、フェニルパラベン、ベンジルパラベン、ペンチルパラベンの5種類です。危険だとわかったからではなく、安全性を評価するための資料が業界からほとんど出されず、リスクを評価できなかったためです。
使えなくなったのは成分表示でよく見る4種類とは別の5種類だと覚えておきましょう。
ホルモンに似た働きは、本物の女性ホルモンよりけた違いに弱い
パラベンが危険と言われるいちばんの理由は、ホルモンへの影響の話だと思います。パラベンには女性ホルモンに似た働きが報告されていますが、その強さは本物の女性ホルモンよりけた違いに弱いものです。
体のホルモンの働きを乱す物質は内分泌かく乱物質と呼ばれ、パラベンもその疑いで議論されてきました。試験管の中の細胞や動物の実験で、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きが見られたためです。
ただ、強さを比べると、女性ホルモンの一種のエストラジオールに対して、プロピルパラベンとブチルパラベンで10万分の1、メチルパラベンで100万分の1だったという結果があります。ブチルパラベンを1万分の1とする結果もあります。
欧州の委員会は、このホルモンへの懸念も考えに入れたうえで、プロピルパラベンとブチルパラベンは0.14%まで、メチルパラベンは0.4%、混ぜる場合は合計0.8%までなら安全と結論しています。米国の化粧品成分の専門家パネルも、21種類のパラベンについて、1つの製品に入るパラベンの合計が0.8%を超えなければ、今の使い方と濃度で化粧品に使うのは安全と結論しました。
ホルモンの話は、上限の範囲なら安全という結論まで含めて知っておくと安心です。
乳がんの組織から見つかったことと、がんの原因になることは別
「パラベンに発がん性がある」という話を見かけて、心配になった人もいると思います。評価機関は、化粧品のパラベンを乳がんの原因とはみなしていません。乳がんの組織から見つかったという報告と、がんの原因になることは別の話だからです。
この話のきっかけは、乳がんの組織からパラベンが検出されたという報告です。そこから、わきの下に使う化粧品と乳がんの関係が、欧州の委員会などで検討されました。
欧州の委員会は、わきの下に使う化粧品と乳がんのつながりを認めず、その後に出た総説を見たあとも、この判断を見直していません。米国国立がん研究所も、パラベンが細胞の中でエストロゲンに似た働きをすることや、乳がんの組織から見つかったという報告を踏まえたうえで、パラベンを乳がんの原因とはしていません。米国で売られている制汗剤やデオドラントの多くは、今はパラベンを含んでいないとされています。
「組織から見つかった」と「がんの原因になる」は分けて考えるのがポイントです。
パラベンは、かぶれを起こしにくい防腐剤の一つ
敏感肌だと、防腐剤でかぶれないか気になりますよね。パラベンは、防腐剤の中でもアレルギーによるかぶれを起こしにくい成分とされています。パラベンにかぶれる人の割合は、何十年も低いまま安定しているからです。
たとえば、かぶれの原因を調べるパッチテストで、パラベンに陽性だったのは0.6%、別の医療機関の検査では0.8%という結果があります。パッチテストは、成分を肌に貼って反応を見る検査です。
パッチテストを受けた人のうち、パラベンに陽性だったのは0.6%で、点で表すとこれだけの少なさです。
米国接触皮膚炎学会は、このかぶれの少なさに目を向けてもらうために、パラベンを「その年の非アレルゲン」に選んだことがあります。欧州の委員会も、メチルパラベンには肌にアレルギーを起こさせる性質はないと判断しています。また、傷のないヒトの肌に塗ったとき、皮膚を通り抜ける量はごくわずかとされています。
ただし、少ないとはいえ、パラベンでかぶれる人がいないわけではありません。パラベンは化粧品のほかに、局所麻酔薬やステロイドなどの薬に使われることもあります。合わないと感じたら、次の流れで対応しましょう。
パラベン入りの製品で、合わないと感じたときの流れです。
試す
かゆみ
やめる
皮膚科へ
パラベンで肌に合わなかったことがある人は避け、かぶれが続くときは皮膚科でパッチテストを相談しましょう。
食品の保存料としての基準は、化粧品とは別に決まっている
パラベンが食品にも使われていると聞くと、化粧品との関係が気になるかもしれません。パラベンは食品の保存料にも使われますが、その基準は「食べる」ときの話で、化粧品とは別に決まっています。
日本で食品の保存料として指定されているのは、パラオキシ安息香酸のイソブチル、イソプロピル、エチル、ブチル、プロピルの5品目です。化粧品の成分表示でよく見るメチルパラベンは、この5品目に入っていません。
使える食品と量も決まっていて、しょうゆは1リットルあたり0.25g、酢は1リットルあたり0.10g、果実ソースは1kgあたり0.20g、清涼飲料水とシロップは1kgあたり0.10g、果実と果菜の表皮は1kgあたり0.012gまでと、パラオキシ安息香酸に換算した量で上限があります。これ以外の食品には使えません。
食べたときの安全性では、国連食糧農業機関と世界保健機関の合同食品添加物専門家会議と、欧州食品安全機関が、メチルとエチルの合計で体重1kgあたり1日0〜10mgを許容一日摂取量としています。毎日食べ続けても健康に影響がないとされる量のことです。プロピルは、雄のラットの生殖器への影響が報告されたことから、この枠から外されています。
化粧品のパラベンは、化粧品の基準と、肌に塗る使い方を前提にした評価で考えましょう。
パラベンフリーは「入れていない」という意味で、安全の保証ではない
パラベンフリーと書かれていると、なんとなく肌にやさしそうに見えますよね。でも、「パラベンフリー」は、パラベンを配合していないという意味の表示で、安全の保証ではありません。何を入れていないかを書くことは認められていますが、入れていないことを理由に安全であるかのように見せる表示は認められていないからです。
パラベンを使わない化粧品でも、中身を傷みにくくする工夫は欠かせません。日本の化粧品基準の防腐剤のリストには、フェノキシエタノールや安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸なども載っていて、パラベンの代わりにほかの防腐剤が使われることが多くあります。防腐剤とはみなされないものの防腐の効果をもつ原料や、容器の工夫で中身を守る方法もあります。表示のルールは、無添加やオーガニックの表示の記事でくわしく解説しています。
パラベンの安全性への根拠のない不安から、多くの製品でパラベンがほかの成分に置き換えられてきた、という指摘もあります。
パラベンフリーかどうかより、全成分表示を見て、自分の肌に合わなかった成分が入っていないかを確かめるのが確実です。
まとめ
- パラベンは、化粧品の中で菌やカビが増えるのを抑える防腐剤の仲間で、日本では合計で100gあたり1.0gまでと決まっています
- ヨーロッパは種類ごとに上限を決め、よく使われる4種類は上限つきで使えます。使えなくなった5種類は、評価のための資料が出されなかったことが理由です
- 女性ホルモンに似た働きは本物よりけた違いに弱く、欧州の委員会はその懸念も考えたうえで、上限内なら安全と結論しています
- 乳がんの組織から見つかったという報告はありますが、評価機関はパラベンをがんの原因とはみなしていません。かぶれも少なく、パッチテストの陽性は0.6%ほどです
- 食品の保存料の基準は「食べる」ときの話です。パラベンフリーはパラベンを入れていないという意味で、安全の保証ではありません
パラベンは、「危険か安全か」の二択ではなく、どの種類を、どれだけ、どこに使うのかで評価されている成分です。気になるときは全成分表示を見て、自分の肌の経験と照らし合わせて選んでみてください。
よくある質問
化粧品のパラベンは危険ですか?肌に悪いのでしょうか?
上限の範囲で使うかぎり安全とする評価が出ています。日本の化粧品ではパラベンは合計で100gあたり1.0gまでと決まっていて、欧州の委員会や米国の専門家パネルも、ホルモンへの影響の懸念を考えに入れたうえで、決められた濃度までなら安全と結論しています。ただし、かぶれる人がまったくいないわけではありません。
パラベンに発がん性はありますか?
評価機関は、化粧品のパラベンを乳がんの原因とはみなしていません。乳がんの組織からパラベンが検出されたという報告はありますが、組織から見つかったことと、がんの原因になることは別です。
メチルパラベンとプロピルパラベンの違いは?
ヨーロッパでは上限が違い、プロピルのほうが低く決められています。メチルは1種類なら0.4%まで、プロピルはブチルと合わせて0.14%までで、プロピルは3歳未満のおむつ部位用の洗い流さない製品には使えません。日本の化粧品基準は種類で分けず、合計で100gあたり1.0gまでです。
パラベンでアレルギーは起こりますか?
起こることはありますが、頻度は低いとされています。パッチテストを受けた人のうちパラベンに陽性だったのは0.6%という結果があり、もっともアレルギーを起こしにくい防腐剤の一つと評価されています。パラベンで肌に合わなかったことがある人は避け、皮膚科に相談しましょう。
パラベンフリーとはどういう意味ですか?
パラベンを配合していないという意味で、安全の保証ではありません。中身を傷みにくくする工夫は必要なので、フェノキシエタノールなどほかの防腐剤や、防腐の効果をもつ原料、容器の工夫が使われます。入れていないことを理由に安全であるかのように見せる表示は認められていません。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)
- Commission Regulation (EU) No 1004/2014(2014年9月18日)
- Commission Regulation (EU) No 358/2014(2014年4月9日)
- SCCS「Opinion on Parabens」SCCS/1348/10(2010年12月14日採択、2011年3月22日改訂)
- SCCS「Clarification on Opinion SCCS/1348/10」SCCS/1446/11(2011年10月10日採択)
- SCCS「Opinion on Propylparaben」SCCS/1623/20(2021年3月)
- SCCS「Opinion on Butylparaben」SCCS/1651/23(2023年10月26日)
- SCCS「Opinion on Methylparaben」SCCS/1652/23(2023年12月14日、2024年2月28日訂正)
- Cherian P, et al. Amended Safety Assessment of Parabens as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2020;39(1_suppl):5S-97S
- U.S. FDA「Parabens in Cosmetics」(2025年11月18日時点の内容)
- 米国国立がん研究所「Antiperspirants/Deodorants and Breast Cancer」(2016年8月9日レビュー)
- Reeder M, Atwater AR. Parabens: The 2019 Nonallergen of the Year. Cutis 2019;103(4):192-193
- Fransway AF, et al. Parabens: contact (non) allergen of the year. Dermatitis 2019;30(1)
- 食品安全委員会「食品添加物パラオキシ安息香酸エステル類について」
- JECFA データベース「メチルパラベン」(グループADI 0-10 mg/kg bw)
- JECFA データベース「プロピルパラベン」(ADI 2006年撤回)
- EFSA AFCパネル プレスリリース(2004年9月29日、メチル・エチルパラベンのグループADI)