この記事でわかること
- フェノキシエタノールが製品の中でしている役目と上限
- エタノールとの違いと、アルコールフリー表示の読み方
- 赤ちゃんや敏感肌に使うときの考え方
成分表でよく見かけるフェノキシエタノール。「防腐剤」と聞くと、肌や赤ちゃんに使っても大丈夫なのか、少し不安になりますよね。
結論から言うと、フェノキシエタノールは化粧品の中で菌やカビが増えるのを抑える防腐剤で、上限の範囲なら子どもも含めて安全という評価が出ています。名前は似ていても、お酒のエタノールとは別の成分です。まずは、製品の中で何をしているのかから見ていきましょう。
フェノキシエタノールは、容器の中で菌が増えるのを抑える防腐剤
フェノキシエタノールは、化粧品の中身に菌やカビが増えるのを抑えるために入れる防腐剤です。化粧品は、使っているうちに外から微生物が入りこみやすいものだからです。
化粧品は水や油、保湿剤を含み、毎日指で触れたり、ふたを開け閉めしたりします。そのたびに入った微生物が、中身の中で増えることがあります。
フェノキシエタノールは、枠で囲んだ「増えるのを抑える」ところで、容器の中の菌に働きます。
指で触れる
入りこむ
抑える
清潔に
フェノキシエタノールは、こうして入った微生物が製品の中で増えるのを抑えます。とくにグラム陰性菌という種類の細菌に強いとされ、シャンプーやクリームなどに使われています。市販の化粧品では、メチルパラベンなどのパラベンと一緒に配合されていることが多いという結果もあります。
別名はエチレングリコールモノフェニルエーテルで、ほのかな香りのある、無色から淡い黄色の透明な液体です。防腐剤のほかに、ほかの成分を溶かす溶剤や、香料の材料としても使われます。
抑えるのはあくまで容器の中の菌で、肌の上の菌を減らすための成分ではありません。防腐剤は、化粧品を使い切るまで清潔に保つための成分です。
上限は、日本もヨーロッパも1.0%
フェノキシエタノールを入れてよい量の上限は、日本では100gあたり1.0gです。日本の化粧品に使える防腐剤は、国の化粧品基準の別表第3に載っているものだけで、フェノキシエタノールはその中の、すべての化粧品で配合量が制限される成分に入っているからです。
防腐剤には、洗い流す製品か、洗い流さない製品か、粘膜に使うことがある製品かで上限が分かれるものもあります。フェノキシエタノールにはその区別がなく、どの化粧品でも同じ1.0gまでです。
ヨーロッパでも、化粧品の規則で防腐剤としての最大濃度は1.0%と決められていて、日本と同じ数字です。市販の化粧品を調べると、上限を超えるものはなかったという結果もあります。
成分表で見かけても、入れてよい量は決まっていると知っておけば安心です。
エタノールとは、名前が似ているだけの別の成分
名前に「エタノール」とつくので、アルコールの仲間だと思いますよね。でも、フェノキシエタノールとエタノールは、名前が似ているだけで別の成分です。
化粧品でアルコールと言うときは、お酒にも入っているエチルアルコールのことで、成分表示では「エタノール」と書かれます。フェノキシエタノールの名前にエタノールがつくのは、分子の中に水酸基という部分をもつからです。別名のとおり、エチレングリコールにベンゼン環がついた形をしていて、エチルアルコールとは性質も役目も違います。
そのため、「アルコールフリー」や「ノンアルコール」と書かれた製品にフェノキシエタノールが入っていても、表示のうえでは矛盾しません。アルコールフリーの表示は、エタノールを入れていないという意味で使われているからです。
ただ、エタノールとは別の成分だからといって、肌に合わないことがまったくないわけではありません。肌との相性は、このあとの章で見ていきます。
上限の範囲で使うなら、安全という評価
フェノキシエタノールは、上限の範囲で使うなら安全という評価が出ています。ヨーロッパで消費者の安全を見る委員会が、肌から体に入る量も見積もったうえで、1.0%までの濃度なら防腐剤として安全と結論づけているからです。
アメリカで化粧品成分の安全性を評価する専門家委員会も、化粧品成分として安全とまとめています。体への害が見られたのは、化粧品から受ける量よりはるかに多い量のときだけだったという結果もあります。
気をつけたいのは目です。薄めていない原液は、目に強い刺激を与えるという結果があります。製品が目に入ったときは、すぐに水で洗い流してください。
ふだんの使い方なら、上限の範囲で安全と考えて大丈夫です。
赤ちゃんを含めても、1.0%までなら安全という評価
赤ちゃんの肌に使うものは、とくに気になりますよね。ヨーロッパの委員会は、幼い子どもも含めて、1.0%までなら十分な余裕があると結論づけています。大人より多く成分にさらされる可能性も見込んだうえでの評価です。
この評価のきっかけになったのは、フランスの動きです。フランスの保健当局は、3歳未満の子どものおむつが当たる部分に使う化粧品には使わず、3歳未満向けのほかの製品では0.4%までにするよう勧めました。その後、フェノキシエタノールを含む洗い流さない化粧品に、「3歳以下の子どものおしりには使えない」と表示するよう求めたこともあります。
ただし、この勧告はフランスの最高行政裁判所の決定を受けて効力を失い、表示の決定も、2022年に同じ裁判所が取り消しています。ヨーロッパの化粧品の規則のうえで、決定に法的な根拠がないと判断されたためです。そのため、「フランスで禁止された」という話は正確ではありません。
赤ちゃんの肌に使うものは、赤みなど合わないようすがあれば使うのをやめ、続くときは小児科や皮膚科に相談するのが基本です。
アレルギーはまれ。合わなければ使うのをやめる
敏感肌や肌あれのときは、防腐剤が刺激にならないか心配になる人も多いと思います。フェノキシエタノールでアレルギーが起きることは、まれとされています。化粧品に広く使われているわりにアレルギーを起こすことが少なく、防腐剤の中でも肌に受け入れられやすいものの一つと考えられているからです。人の肌での試験でも、刺激やアレルギーは見られなかったという結果があります。
ただし、まれであってもゼロではありません。顔に美容液などを塗ってすぐに、かゆみや赤み、ふくらみが出た人の報告があります。
新しい製品で合わないと感じたときの流れです。
試す
かゆみ
やめる
皮膚科へ
入っているかどうかより、自分の肌に合うかどうかで判断しましょう。敏感肌の人は新しい製品を少しずつ試し、合わないと感じたら使うのをやめて、続くときは皮膚科で相談してください。
まとめ
- フェノキシエタノールは、容器の中で菌やカビが増えるのを抑える防腐剤で、別名はエチレングリコールモノフェニルエーテルです
- 上限は日本で100gあたり1.0g、ヨーロッパで1.0%と同じ数字で、日本では洗い流す製品かどうかで上限は変わりません
- お酒のエタノールとは別の成分で、アルコールフリーの製品に入っていても表示とは矛盾しません
- ヨーロッパの委員会は、子どもも含めて1.0%までなら防腐剤として安全と結論づけています。フランスの乳幼児向けの表示の決定は、2022年に取り消されました
- アレルギーはまれとされますが、ゼロではないので、合わなければ使うのをやめましょう
フェノキシエタノールは、化粧品を使い切るまで清潔に保つための防腐剤です。名前や噂だけで判断せず、自分の肌に合うかどうかで選んでみてください。
よくある質問
フェノキシエタノールとは?別名は?
化粧品の中で菌やカビが増えるのを抑える防腐剤です。別名はエチレングリコールモノフェニルエーテルで、ほのかな香りのある無色から淡い黄色の液体です。とくにグラム陰性菌という種類の細菌に強いとされ、シャンプーやクリームなどに使われています。
フェノキシエタノールはアルコール?エタノールとの違いは?
お酒のアルコールであるエタノールとは別の成分です。名前にエタノールとつくのは分子に水酸基という部分をもつからで、性質も役目も違います。アルコールフリーの製品に入っていても、表示のうえでは矛盾しません。
フェノキシエタノールに危険性はある?
上限の範囲で使うなら安全という評価が出ています。日本では100gあたり1.0g、ヨーロッパでは1.0%までと決められていて、ヨーロッパの委員会は1.0%までなら防腐剤として安全と結論づけています。原液は目に強い刺激があるので、目に入ったら洗い流しましょう。
フェノキシエタノールは赤ちゃんに使っても大丈夫?
ヨーロッパの評価では、幼い子どもも含めて1.0%までなら安全とされています。フランスでは3歳以下のおしりに使えないという表示を求める決定がありましたが、2022年に法的な根拠がないとして取り消されました。赤みなど合わないようすがあれば使うのをやめましょう。
敏感肌や肌荒れのときはフェノキシエタノールを避けるべき?
アレルギーを起こすことはまれとされていますが、ゼロではありません。顔に塗ってすぐ赤みやかゆみが出た人の報告もあるので、新しい製品は少しずつ試し、合わないと感じたら使うのをやめて、続くときは皮膚科に相談しましょう。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「フェノキシエタノール」
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)別表第3
- 五十嵐良明・内野正・西村哲治「化粧品中の防腐剤の分析:サリチル酸,安息香酸ナトリウム,デヒドロ酢酸ナトリウム,ソルビン酸カリウム,フェノキシエタノール及びパラベン類」国立医薬品食品衛生研究所報告 第128号(2010)85-90
- SCCS. Opinion on Phenoxyethanol, SCCS/1575/16(2016年3月16日、最終版10月6日)
- 欧州委員会「Phenoxyethanol」(SCCS 意見書の公開ページ・結論)
- Final Report on the Safety Assessment of Phenoxyethanol. J Am Coll Toxicol 1990;9(2):259-277
- 日本化粧品工業会「化粧品に使われるアルコール」
- ANSM「Concentration de phénoxyéthanol dans les produits cosmétiques : information actualisée」(2019年12月12日公開、2021年3月14日更新)
- ANSM「Les produits cosmétiques non rincés contenant du phénoxyéthanol ne doivent pas être utilisés sur les fesses des enfants de 3 ans ou moins」(2019年3月20日)
- Conseil d'État, décision N° 429578(2022年12月29日)の写し(FEBEA 掲載)
- Dreno B, et al. Safety review of phenoxyethanol when used as a preservative in cosmetics. J Eur Acad Dermatol Venereol 2019;33(Suppl 7):15-24
- Marzola E, et al. Site-related contact urticaria from phenoxyethanol. Contact Dermatitis 2024