この記事でわかること
- 施術後の肌に化粧品ができることの範囲
- 「ダウンタイムを早める」広告の読み方
- 施術後に遮光と保湿が大切な理由
施術を受けたあと、少しでも早く肌を落ち着かせたくて、化粧品で何かできないかと思いますよね。
結論から言うと、化粧品にできるのは肌を「健やかに保つ」ことまでで、「ダウンタイムを早める化粧品」はありません。化粧品は、肌の手当てをするためのものではないからです。施術後のケアは、施術したクリニックの指示がいちばんです。そのうえで、制度から見た化粧品の役割を整理していきましょう。
化粧品は、施術後の肌を手当てするためのものではない
化粧品は、施術後の肌を手当てするためのものではありません。法律で、化粧品の目的が決められているからです。
医薬品医療機器等法、いわゆる薬機法の第2条第3項は、化粧品の目的を、体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や毛髪を健やかに保つ、という5つに限っています。しかも人体に対する作用が緩和なものという条件がつきます。さらに条文のただし書きで、病気の診断や治療、予防をあわせて目的とする物は化粧品から除かれるので、治療の目的を持たせた時点で、それはもう化粧品ではなくなるという決まりです。
医薬部外品も、定義に「人体に対する作用が緩和なもの」が入っています。用途もあせもやただれの防止、脱毛の防止や育毛、除毛などに限られ、施術後の肌を扱う区分ではありません。
厚生労働省が定める化粧品の効能56項目で使われている言葉も、「清浄にする」「整える」「保つ」「防ぐ」「与える」「保護する」「柔らげる」「目立たなくする」です。どれも肌を保つ・防ぐための言葉で、傷の手当てや回復にあたる言葉は入っていません。
施術直後の肌は、化粧品の「使わない部位」に当たりうる
施術直後の肌に、いつもの化粧品を使っていいのか迷う人は多いと思います。化粧品は、自分で「異常のある部位には使わないでください」と書いていて、施術直後の肌はこの部位に当たりうる状態です。
日本化粧品工業会の「化粧品の使用上の注意表示に関する自主基準」は、記載例として「傷やはれもの、しっしん等、異常のある部位にはお使いにならないでください。」という文を挙げています。対象は皮膚に使う化粧品で、洗髪用や頭髪用の化粧品、口紅、リップクリームまで含むので、ほぼすべてのスキンケアにあたります。
この自主基準は、厚生労働省の通知が別添として都道府県に知らせたもので、業界と行政の両方が関わっています。もとをたどると40年以上前の自主基準までさかのぼり、化粧品は長く、こう書き続けてきました。
だから、施術直後の肌のために化粧品を探しにいくより、まずクリニックの指示を確かめるほうが合っています。
「ダウンタイムを早める」「医師推奨」の広告は、制度の上で認められていない
「ダウンタイムを早める」「医師推奨」といった広告は、制度の上では認められていない書き方です。広告のルールで、効能の表し方と、医師の推薦の使い方が決められているからです。
広告のルールでは、承認が必要な製品の効能効果についての表現は、はっきり書いたか、それとなく思わせたかにかかわらず、承認された範囲を超えてはならないとされています。つまり、はっきり書かなくても、そう思わせる書き方はできません。また、具体的な効能効果や安全性を挙げて、それが確実であると保証するような表現も禁じられています。
医師や病院などの推薦についても決まりがあり、医師などが指定し、公認し、推薦し、指導し、または選んで使っている、といった広告はしてはならないとされています。一般の消費者への影響が大きいため、事実であっても原則として認められません。
「医師が施術後にすすめている化粧品」という広告を見かけたら、制度の上では使えない書き方だと思い出してください。
施術後にすることは、遮光・保湿・合わなければ中止の3つ
日本皮膚科学会がケミカルピーリング後の注意として挙げているのは、遮光・保湿・合わなければ中止の3つです。どれも、施術で薄くなった角層を外から守るための手入れです。
日本皮膚科学会がケミカルピーリング後の注意として挙げている3つです。
遮光
毎日必ず紫外線を防ぐ
保湿
いつもより多めに補う
合わなければ中止
いつもの化粧品も一時やめる
まず遮光では、紫外線散乱剤を使った低刺激性・低アレルギー性の、SPF18、PA++程度のサンスクリーン剤で、毎日必ず紫外線を防ぐよう求めています。
次に保湿です。角層はふだん、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つで水分を保っています。ピーリングのあとは角質が落ちて保湿力が下がるので、自分の肌に合った保湿剤や乳液で十分に補い、いつもより多めに使うようにとしています。
そして、施術後にいつもの化粧品が肌に合わなくなった場合は、化粧品を一時やめます。皮膚が赤くなったりかさかさしたりするのは「たいていは2、3日で治まります」が、水ぶくれや浅い傷、小さいかさぶたができることもあり、その状態が続くようなら皮膚科専門医に相談するよう書かれています。
これはケミカルピーリングについての案内で、ほかの施術にそのまま当てはまるものではありません。受けた施術のことは、受けた医療機関に聞きましょう。
遮光がいちばんなのは、角層がはがれて紫外線が通りやすくなるから
施術後に遮光がいちばん大切なのは、角層が紫外線から肌を守る働きを担っていて、ピーリングでそれがはがれると、紫外線が肌を通りやすくなるからです。
角層は0.02mmほどの薄い層ですが、守りの主役です。施術後は、その角層が薄くなっています。紫外線による色素沈着は炎症のあとに起こり、皮膚の黒化反応とも呼ばれます。
遮光は、枠で囲んだ「紫外線が通りやすい」ところを防ぐための手入れです。
はがれる
通りやすい
もとになる
美容医療の診療指針も、レーザー治療の副作用として炎症後色素沈着を挙げています。肝斑では、まず遮光と薬などを使う保存的治療を行い、それで十分でない場合にレーザーやIPLの照射を組み合わせる、という順番です。遮光は、医療の処置の前に置かれているということです。
施術後の日焼け止めは、学会が挙げる紫外線散乱剤を使った低刺激性・低アレルギー性のものを選ぶと考えやすいです。
体験談やビフォーアフターは、そのまま参考にしない
クリニックの体験談やビフォーアフターの写真は、そのまま参考にしないほうが安心です。医療の広告でも、強い制限がかかっているからです。
厚生労働省の医療広告ガイドラインは、患者などの主観や伝聞にもとづく、治療の内容や効果についての体験談の広告を禁じています。ビフォーアフターの写真も、患者の状態によって結果は異なるので、誤解させるおそれがあるものは医療広告として認められません。
例外は、治療の内容、費用、主なリスクや副作用などの詳しい説明を付けた場合だけで、その説明をリンク先のページに載せたり、よい点に比べて極端に小さな文字で載せたりしてはいけないとされています。医療の側でさえこれだけ制限があるので、化粧品の広告が同じことをする余地は、もっとありません。
国民生活センターに寄せられる美容医療サービスの相談は、2023年度6,281件、2024年度10,744件、2025年度7,944件です。いちばん頼りになるのは施術を受けた医療機関、次が公的機関や学会の情報で、化粧品の広告は、その順番のいちばん後ろです。
まとめ
- 施術後のケアは、施術したクリニックの指示が最優先。この記事は制度の整理で、ケアの手順ではありません
- 薬機法は化粧品の目的を清潔・美化・魅力・容貌・健やかに保つの5つに限っていて、治療の目的を持つ物は化粧品から除かれます
- 化粧品は自分で「傷やはれもの、しっしん等、異常のある部位にはお使いにならないでください。」と書いています
- 広告は思わせるだけでも承認の範囲を超えられず、医師などの推薦は事実であっても原則できません
- 日本皮膚科学会が挙げるのは遮光・保湿・合わなければ中止の3つ。遮光が大切なのは、角層がはがれて紫外線が通りやすくなるためです
化粧品が担当しているのは、健やかな肌を健やかなまま保つこと。日焼けを防いで守り、保湿で補い、合わなければやめる。それ以上が必要な状態なら、相談する相手はクリニックや皮膚科です。
よくある質問
ダウンタイムを早める化粧品はある?
そういう化粧品はありません。化粧品は肌を清潔にしたり健やかに保ったりするためのもので、治療を目的にした時点で化粧品ではなくなります。効能56項目に並ぶのも、肌を保つ・防ぐための言葉です。
施術直後の肌に化粧品を使っていい?
まずは施術したクリニックの指示に従います。化粧品には「傷やはれもの、しっしん等、異常のある部位にはお使いにならないでください」という注意があり、施術直後の肌はこれに当たりうる状態です。
ピーリングのあとに気をつけることは?
毎日の遮光と、いつもより多めの保湿が大切です。角質層がはがれて紫外線が通りやすくなり、保湿力も下がるためです。今までの化粧品が合わなくなったら、使うのを一時やめます。
「医師推奨」の化粧品は信頼できる?
医師などの推薦をうたう広告は、事実であっても原則として認められていません。承認された効能を超える表現も、はっきり書かずに思わせるだけでも認められません。
クリニックのビフォーアフター写真は参考になる?
そのまま参考にはできません。医療広告では体験談が禁じられ、ビフォーアフター写真には治療内容や費用、リスク・副作用の詳しい説明をつけることが求められています。
この記事で参照した情報
- 医薬品医療機器等法 第2条(定義)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 厚生労働省「化粧品等の使用上の注意について」(平成26年5月30日 薬食発0530第2号)
- 日本化粧品工業会「化粧品の使用上の注意表示に関する自主基準」(2016年12月1日)
- 日本化粧品工業会「化粧品の使用上の注意表示に関する自主基準」案内ページ
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ケミカルピーリング」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ケミカルピーリングを行った後はどのようになりますか?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ケミカルピーリングを受けたのですが、気をつけることがありますか?」
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 美容医療診療指針(令和3年度改訂版)日本美容外科学会会報 Vol.44 特別号
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
- 国民生活センター「美容医療サービス」(各種相談の件数や傾向)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「色素沈着」