この記事でわかること
- 「敏感肌」が病名ではない理由と、肌の中で起きていること
- 洗い方と保湿の見直し方
- 「低刺激」などの表示の読み方と、かぶれとの見分け方
季節の変わり目に化粧水がしみたり、顔がヒリついたりすると、自分は敏感肌なのか、病気なのか気になりますよね。
結論から言うと、敏感肌は病院でつく病名ではなく、乾燥などで肌が刺激を感じやすくなっている状態のことです。まずは洗い方と保湿を見直し、赤みやぶつぶつが出ているなら皮膚科で原因を調べてもらうのが近道です。最初に、敏感肌という言葉の意味から見ていきましょう。
「敏感肌」は病名ではなく、刺激を感じやすくなった肌の状態
「敏感肌」は医学的な診断名ではなく、刺激を感じやすくなっている肌の状態を言い表す言葉です。皮膚科の主な診療ガイドラインに敏感肌という病気の項目はなく、国が定める化粧品の効能56項目にも、医薬部外品で認められた効能の文言にも、敏感肌という言葉は入っていないからです。
化粧品の専門家の用語集では、敏感肌は、かぶれや肌荒れ、にきびなどのトラブルを起こしやすい肌のこととされています。その背景には、角層のバリア機能の低下や乾燥肌、アトピー素因やアレルギー体質があり、そこに気候などの環境や化学物質、体の中の要因がかかわっています。
つまり、病気ではなく状態というのが出発点です。だから、まずは肌の中で何が起きているかを知ることが大切です。
敏感に傾いた肌では、角層から水分が逃げやすくなっている
敏感に傾いた肌では、肌のいちばん外側の角層のすき間がゆるみ、水分が逃げやすく、外からの物質も入りやすくなっていることが多いです。角層は、表面の皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っていて、このバランスが崩れているからです。
すき間の脂が減ると、水分が逃げやすく、外からの物質も入りやすくなります。
細胞間脂質の約50%はセラミドで、この脂が減るとすき間ができます。その目じるしになるのが、体の中から角層を通って知らないうちに逃げていく水分の量です。この量が多いほど、水分が逃げやすく、外からの物質も入りやすい状態だといえます。
背景として挙げられているのは、肌の生まれ変わりが速まること、細胞のすき間を埋める脂が減ること、角層の細胞のつくりが変わることなどです。角層の細胞が育つ流れがうまく回っていない状態で、バリア機能のしくみを知っておくとイメージしやすくなります。
一方で、機器で測ってバリア機能の低下が見られなくても、ヒリつきなどの症状が出ることがあります。測って異常がなくてもヒリつくのは、気のせいではなく、起こりうることなのです。
まずは、洗いすぎ・こすりすぎを減らして保湿する
敏感肌用の化粧品を探す前に、何から変えればいいのか迷う人は多いと思います。まずは、洗いすぎやこすりすぎを減らし、保湿することです。角層から水分が逃げやすい状態なので、肌への刺激を減らして、うるおいを補うことがいちばんの近道だからです。
敏感に傾いた肌の手入れは、この順番で見直します。
すぎない
ない
する
皮膚科へ
皮膚科のガイドラインでも、乾燥した肌を伴うかゆみには、保湿剤でかゆみが軽くなることが見込まれるとされています。敏感肌の手入れも、保湿とバリア機能を整えること、外からの刺激から守ることに役立つ方法で行うことが大切とされています。
反対に、洗顔やマッサージのしすぎでトラブルになる場合もあります。低刺激性や低アレルギー性の化粧品でも、肌質に合わなかったり使い方を誤ったりすれば、肌トラブルになることがあります。
表示を頼りに製品を探すより先に、洗う回数と力加減を見直すほうが役に立つ場面は多いです。
成分で見るなら、乾燥にはセラミド、肌あれにはナイアシンアミド
成分で選ぶなら、乾燥にはすき間の脂を補うセラミド、肌あれには医薬部外品の有効成分のナイアシンアミドが目安になります。どちらも、敏感に傾いた肌で崩れている角層のうるおいに関わる成分だからです。
- 乾燥化粧品として:セラミドは角層のすき間を埋める脂を補い、「うるおいを与える」「乾燥を防ぐ」範囲で使われます。
- 肌荒れ医薬部外品の有効成分として:ナイアシンアミドは「肌あれ・あれ性」の効能をもつ薬用化粧品の有効成分としても使われています。
ただし、どんな成分でも肌質に合わなければトラブルになりえます。合うかどうかは自分の肌で確かめるのがいちばん確実です。
「低刺激」「テスト済み」「無添加」は、安全の保証ではない
パッケージに「低刺激」「アレルギーテスト済み」と書いてあると、安心して使えそうに思いますよね。でも、これらの言葉は安全の保証ではなく、表示のルールを満たしたうえでの表現です。どれも、条件をつけて使い方が決められている言葉だからです。
たとえば「敏感肌専用」という言い方は、特定の肌向けだと強調することで、効果や安全性について事実と違う受け取り方をさせるおそれがあるとして、広告のガイドラインが原則として控えるよう求めています。「低刺激」は、低刺激であることが客観的に確かめられていて、しかもキャッチフレーズなどで強調しない場合にだけ使えます。
「アレルギーテスト済み」にも、表示の業界の決まりが2つの条件をつけています。「全ての方にアレルギーが起こらないということではありません」という注意を、同じくらいの大きさで近くに書くこと、そしてキャッチフレーズにしないことです。
パラベン無添加のような「〇〇フリー」は、成分名をはっきり書けば表示できますが、入っていないことを理由に安全であるかのように見せてはいけません。肌トラブルの原因になりがちな香料や着色料を含まない、といった書き方も不正確なので、無香料や無着色といった言い方にとどめるよう求められています。パラベンを抜けば、そのぶん別の防腐の工夫が必要になります。
入っていないとは言えても、だから安全、だから刺激が少ない、とはつながらないと覚えておきましょう。
赤みや湿疹が出ているなら、かぶれを疑う
実際に赤くなったり湿疹が出たりしているなら、敏感肌ではなく、接触皮膚炎、つまりかぶれを疑いましょう。かぶれは原因の物質がはっきりある皮膚の病気で、肌が弱いからと片づけると、同じものに何度もふれてしまうからです。皮膚科のガイドラインによると、かぶれには性格の違う2つの種類があります。
ひとつは刺激性のかぶれで、体が前もって反応を覚えていなくても、刺激のある物質が肌にふれることで起こります。健康な皮膚なら角層は分子量1,000以上の物質を通しませんが、角層が傷んでいると刺激物質が入りこみ、肌の細胞を刺激して炎症が起きます。濃度と量しだいなので、誰にでも起こりえます。
もうひとつはアレルギー性のかぶれです。一度目にふれたときに体が相手を覚え、次にふれたときに反応が出ます。アレルギーのもとになるハプテンという小さな物質は、ほんのわずかでも皮膚炎を起こしうるのが特徴です。
アレルギー性のかぶれは、体が覚えたあとにふれたときに出るので、昨日まで平気だったものでも起きます。
ふれる
覚える
ふれる
湿疹が出る
だから、昨日まで平気だった化粧品で急に出ることがあります。相性が悪くなったと感じる現象の一部は、これで説明がつきます。
原因を探すには、皮膚科でパッチテストを受けます。アレルギー性のかぶれを見分けるのにいちばん役立つ検査で、試薬を貼ってから2〜4日後と、1週間たったころに判定します。結果が陰性でも、濃度や貼り方を確かめ直すことがあるので、症状が続くときは医師と相談を続けましょう。
赤みや湿疹が出たら、使っていたものをやめて、皮膚科で原因を確かめるのがいちばんの近道です。
まとめ
- 「敏感肌」は医学的な診断名ではなく、刺激を感じやすくなった肌の状態を表す言葉です
- 背景には角層のすき間の脂が減り、水分が逃げやすくなることが多く、測って異常がなくても症状が出ることはあります
- まずは洗いすぎ・こすりすぎを減らして保湿します。乾燥を伴うかゆみは、保湿剤で軽くなることが見込まれます
- 「敏感肌専用」は原則控える表現。「低刺激」「アレルギーテスト済み」「〇〇フリー」は条件つきの表示で、安全の保証ではありません
- 赤みや湿疹が出ているなら、刺激性かアレルギー性のかぶれを疑い、パッチテストで原因を調べます
「敏感肌用」を探し続けるより、何にどう反応したのかを一度切り分けてみる。そのほうが、合うものへの近道です。
よくある質問
敏感肌は病気?
敏感肌は病名ではなく、肌が刺激を感じやすくなっている状態を指す言葉です。乾燥などで角層から水分が逃げやすく、外からの刺激に反応しやすくなっている状態で、皮膚の病気とは区別されます。
敏感肌はまず何をすればいい?
洗いすぎ・こすりすぎを減らして、保湿することです。乾燥を伴うかゆみには、保湿剤でかゆみが軽くなることが見込まれるとされています。
「低刺激」と書いてあれば安心?
安全の保証ではありません。低刺激性・低アレルギー性の化粧品でも、肌質に合わない場合や使い方を誤った場合には、肌トラブルになることがあります。
「アレルギーテスト済み」なら誰でもアレルギーが起きない?
起きないという意味ではありません。表示するときは「全ての方にアレルギーが起こらないということではありません」という注意を、同じくらいの大きさで近くに書く決まりです。
昨日まで平気だった化粧品で急にかぶれるのはなぜ?
アレルギー性のかぶれでは、一度ふれて体が覚えたあと、次にふれたときに反応が出るからです。原因は、皮膚科で受けるパッチテストで調べられます。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「敏感肌」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「乾燥肌」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「アトピックドライスキン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「経表皮水分蒸散量」
- 日本皮膚科学会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」(日皮会誌130(4):523-)
- 日本皮膚科学会「皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020」
- 日本皮膚科学会「一般市民の皆様」(皮膚科Q&A)
- 化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則」別表4
- 化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約の運用基準」
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」(2020年版)
- 日本化粧品工業会「化粧品のパッチテスト」(関東裕美)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)