この記事でわかること
- エステでできることと、医療の境目
- 契約をやめられる期間と、広告の決まり
- 「業務用」の化粧品が店頭のものと同じ扱いである理由
エステと美容クリニック、どちらも「きれいになる」ためのサービスですが、どこまでがエステでできて、どこからが医療なのか、わかりにくいですよね。
結論から言うと、分かれ目は、医師がやらないと体に害が出るおそれがあるかどうかです。レーザー脱毛やアートメイク、ケミカルピーリング、ハイフと呼ばれる施術は医療とされ、医師以外が仕事として行うことはできません。使う機械が医療用かどうかは関係ありません。まずは、医療の線がどこに引かれているのかから見ていきましょう。
医療かどうかは、体に害が出る「おそれ」で決まる
医療にあたるかどうかは、医師の判断と技術がないと体に害が出るおそれがあるかどうかで決まります。もとになるのは医師法第17条の「医師でなければ、医業をなしてはならない。」という条文です。
厚生労働省の通知では、医業とは、医師の医学的な判断と技術によらなければ人の体に害を与える、または害を与えるおそれのある行為、つまり医行為を、繰り返し続ける意思をもって行うことだと解釈されています。最高裁判所の決定にならった、医療や保健指導に属する行為のうち、医師が行わなければ保健衛生上の害が生じるおそれのある行為、という言い方もあります。
ポイントは2つです。実際に害が出たかどうかではなく、害を与えるおそれがあるかどうかで判断されること。そして1回きりではなく、仕事として行うことが条件になっていることです。
つまり、害が出るおそれのある施術は、医師以外が仕事として行うことはできないのです。
レーザー脱毛・アートメイク・ケミカルピーリングは医療になる
レーザー脱毛、アートメイク、ケミカルピーリングは、仕事として行えば医業にあたります。国の通知が、この3つをまとめて医業と整理しているからです。
通知で取り上げられたのは、医療用のレーザー脱毛機器を操作して脱毛すること、電動式のアートメイク器具で皮膚の表面に墨などの色素を入れること、しみやそばかす、ほくろ、しわなどを取るためにフルーツ酸などの化学薬品を皮膚に塗り、表皮をはがすことの3つです。アートメイクについては別の通知でも、医師免許のない人が仕事として行えば医師法第17条に違反するとされています。
脱毛については、使う機器が医療用かどうかを問わず、レーザー光線などの強い光を毛根に当てて、毛乳頭や皮脂腺の開口部などを壊す行為が医行為とされています。体にふれる施術では、マッサージや指圧、はり、きゅうも、医師以外が仕事にするにはそれぞれの免許が要ると法律で決まっています。
化粧品として売られているAHA・BHAのピーリングと、医療のケミカルピーリングは別物です。機器の種類ではなく、体に何が起きるかで判断されると覚えておきましょう。
ハイフは、機械が医療用でなくても医療になる
エステの機械なら医療用ではないから大丈夫、と思いますよね。でも、ハイフは、使う機器が医療用かどうかを問わず、医行為とされています。ハイフは高密度焦点式超音波のことで、超音波を体に当てて、細胞に熱凝固を起こさせ得る施術だからです。
きっかけは、消費者安全調査委員会の報告書でした。医師免許のない人がハイフで皮下組織に熱を加える施術を行い、急性白内障や神経のまひなどの被害が出た例が相当数あると報告されたのです。
国の通知は、やけどや急性白内障、神経障害といった合併症だけでなく、引き締めなど、ハイフがねらう効果そのものも医行為にあたる理由に含めています。そのため、医師以外が仕事として行えば医師法第17条違反で、医師が行う場合も、医療法で定める医療提供施設で行うこととされています。悪質な場合は、警察と連携するよう求めています。
ハイフを受けるなら、医療機関で、医師のもとでが前提です。
エステと美容医療の契約は、8日以内ならクーリング・オフできる
期間が1か月を超え、金額が5万円を超えるエステや美容医療の契約は、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフできます。特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたるからです。
特定継続的役務提供は、長い期間続けてサービスを受ける代わりに高い代金を約束する取引のことで、7つのサービスが指定されています。語学教室や家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスは期間が2か月を超えるものが対象ですが、エステティックと美容医療は1か月を超えるものから対象です。金額はどれも5万円を超えるもので、美容医療は2017年12月1日から対象に加わりました。
期限は、書面を受け取った日を含めて8日以内です。
受け取る
知らせる
解除できる
クーリング・オフは、書面を受け取った日を含めて8日以内なら、無条件で契約を解除できるしくみです。書面のほか、メールなどでも手続きできます。また、期間の途中でやめる中途解約もでき、サービスが始まったあとの違約金には上限があります。エステティックは2万円か契約残額の10%のいずれか低い額、美容医療は5万円か契約残額の20%のいずれか低い額です。
高額な回数券を契約しても、途中でやめられると知っておくと安心です。
美容医療の広告では、体験談は使えない
美容医療の広告では、体験談は使えません。ビフォーアフター写真は、治療内容や費用、主なリスク、副作用の詳しい説明がついていれば使えます。医療法第6条の5と、医療広告ガイドラインで決まっているからです。
医療法では、医業や病院・診療所の広告でうそをつくことを禁じ、ほかより優れていると広告しないこと、誇大な広告をしないことなどの基準を並べています。ガイドラインでは、患者の主観やうわさ話にもとづく体験談の広告と、治療の内容や効果を誤解させるおそれのある治療前後の写真の広告が禁止です。写真には説明を添えれば使える例外がありますが、体験談にはこうした例外がなく、体験談のほうが厳しい扱いです。
よい面だけを見せる広告が問題にされる、という考え方は化粧品の表示の決まりと同じです。写真を見るときは、リスクや副作用の説明がついているかを確かめましょう。
相談は5年で約1.9倍。その場で決めないのがいちばんの対策
勧められると、その場で決めないといけない気がしてしまいますよね。でも、美容医療の契約で迷ったら、その場で決めないことがいちばんの対策です。美容医療のトラブルの相談が増え続けているからです。
国民生活センターによると、美容医療サービスの相談件数は2018年度の1,980件から増え続け、2022年度は3,709件と、5年でいちばん多くなりました。ここでいう美容医療は、医療脱毛や脂肪吸引、二重まぶた手術、審美歯科、植毛など、もっぱら美容のための医療のことです。
国民生活センターに寄せられた美容医療サービスの相談件数です。
国民生活センターは、不安をあおられたり、大幅な割引を勧められたりしても、その日のうちに契約や施術をしないよう呼びかけています。消費者庁も、受ける前の確認として、効果だけでなくリスクや副作用も知って納得したか、ほかの方法の説明も受けて自分で選んだか、その施術は本当に今すぐ必要か、などを挙げています。
割引を勧められても、いったん持ち帰って考えることを選んで大丈夫です。
「業務用」の化粧品も、店頭の化粧品と同じ決まり
サロン専用や業務用と書かれていると、効き目が強そうに思いますよね。でも、化粧品基準には、業務用やサロン用という区分はありません。サロンで使われる化粧品も、店頭の化粧品と同じ基準でつくられているからです。
化粧品基準で区分になっているのは、粘膜に使われることがある化粧品や、髪と爪だけに使う化粧品といった、使う部位です。化粧品で書ける効能は効能56項目の範囲で、これも業務用かどうかで変わりません。
化粧品、医薬部外品、医行為の順に、言えることとできることの範囲が決まっています。
効能56項目
承認の効能
医師だけ
段階で見ると、化粧品は効能56項目の範囲、医薬部外品は国の承認を受けた効能の範囲で、どちらも誰でも買えます。その先にあるのが、医師でなければできない医行為です。施術後のスキンケアを考えるときも、この段階の違いが前提になります。
強い効果をうたうものに出会ったら、それがどの段階のものかを確かめましょう。
まとめ
- 医療かどうかは、医師の判断と技術がないと体に害が出るおそれがあるかどうかで決まります
- レーザー脱毛・アートメイク・ケミカルピーリング・ハイフは、医師以外が仕事として行えません。機器が医療用かどうかは関係ありません
- 1か月を超え5万円を超えるエステや美容医療の契約は、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフでき、中途解約もできます
- 美容医療の広告で体験談は使えず、ビフォーアフター写真はリスクや副作用などの説明が必要です
- 相談は増え続けているので、その場で決めないこと。業務用の化粧品も、店頭の化粧品と同じ決まりです
エステと美容医療の境目は、機械の種類ではなく、体に何が起きるかです。どの段階のサービスなのかを確かめて、迷ったら持ち帰る。それだけで、多くのトラブルは避けられます。
よくある質問
エステでレーザー脱毛やハイフを受けてもいい?
医師以外が仕事として行うことはできません。レーザー脱毛、アートメイク、ケミカルピーリング、ハイフは、仕事として行えば医業にあたると厚生労働省の通知で示されています。
エステの機械が医療用でなければ問題ない?
機械の種類では決まりません。ハイフについての通知は「用いる機器が医療用であるか否かを問わず」医行為にあたるとしていて、体に何が起きるかで医療かどうかが決まります。
エステや美容医療の契約はクーリング・オフできる?
期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約ならできます。契約書面を受け取った日から8日以内が期限です。途中でやめる中途解約もでき、違約金には上限があります。
美容医療の広告で体験談やビフォーアフター写真は使える?
体験談の広告は禁止されています。ビフォーアフター写真は、治療内容・費用・主なリスク・副作用などの詳しい説明がついていれば使えます。
サロン専用や業務用の化粧品は効果が強い?
業務用だから強い、という決まりはありません。化粧品基準に「業務用」「サロン用」という区分はなく、店頭の化粧品と同じ基準でつくられ、書ける効能の範囲も同じです。
この記事で参照した情報
- 医師法(昭和23年法律第201号)
- 厚生省健康政策局医事課「医師法上の疑義について(回答)」(平成12年6月9日 医事第59号)
- 厚生労働省医政局医事課「医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて」(令和5年7月3日 医政医発0703第5号)
- 厚生労働省医政局医事課長「医師免許を有しない者が行った高密度焦点式超音波を用いた施術について」(令和6年6月7日 医政医発0607第1号)
- 消費者安全調査委員会「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書 エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故」(令和5年3月29日)
- 同 報告書本文
- 国民生活センター「増加する美容医療サービスのトラブル-不安をあおられたり、割引のあるモニター契約を勧められても慎重に判断を!-」(2023年8月30日)
- 国民生活センター「男性の美容医療トラブルも増加!」(2026年1月20日)
- 消費者庁「美容医療を受ける前に確認したい事項と相談窓口について」
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」
- 消費者庁「特定商取引法の改正について(2016年改正)」
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)
- 厚生労働省「医療広告規制について」
- 医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5
- あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)