この記事でわかること
- 菌の成分が化粧品に入るとはどういうことか
- 溶解質・発酵液・発酵エキスの読み分け方
- プロバイオティクスとポストバイオティクスの違い
「ビフィズス菌」や「乳酸菌」の名前が入った化粧品を見かけると、菌を肌に塗って大丈夫なのか、どんな意味があるのか気になりますよね。
結論から言うと、ビフィズス菌培養溶解質は、生きた菌ではなく、ビフィズス菌を育てたあとに壊してできた液です。肌にうるおいを与えて整える成分のひとつで、瓶の中の菌が肌の上で生きて働くわけではありません。まずは、どうやってつくられる成分なのかから見ていきましょう。
ビフィズス菌培養溶解質は、菌を育てて壊した液。生きた菌は入っていない
ビフィズス菌培養溶解質は、ビフィズス菌そのものではなく、菌を増やすために育て、その菌の体を壊して中身を出した液です。名前の「培養」は菌を育てたこと、「溶解質」は菌の体を壊したことを表しています。
化粧品に入るのは、菌を育てて壊した液で、生きた菌ではありません。
育てる
壊す
液ができる
入れる
たとえば、ヒトの肌で試された原料も、超音波で菌を壊し、増えることのできない形にしたものでした。菌を壊すということは、菌を死なせるということでもあります。発酵させてつくる原料も、ふつうは滅菌して菌を死なせてから使います。
生きた菌を化粧品に入れるには、菌が生き続けられるか、水分に弱くないか、防腐剤と一緒にいられるかという大きな壁があります。そのため、化粧品で使われる乳酸桿菌やビフィズス菌は、生きた菌としてではなく、発酵物や溶解質として入れられることがはるかに多いとされています。
そもそも化粧品は、菌が増えないようにつくるのが前提です。化粧品の微生物についての国際規格では、ふつうの製品で1gあたり1,000個以下、目の周りや3歳未満の子ども用の製品では100個以下という菌の数の上限があり、大腸菌や黄色ブドウ球菌などは検出されてはいけません。日本でも、病原微生物に汚染された製品の製造や販売は禁止されていて、使っているあいだに菌が増えないかを確かめる防腐効力試験が行われます。
名前に菌が入っていても、中身は菌を育てて壊した液だと覚えておきましょう。
肌にしていることは、うるおいを与えて肌を整えること
菌の成分を塗ると肌の上で何が起きるのか、いちばん気になるところだと思います。化粧品として言えるのは「皮膚にうるおいを与える」「肌を整える」「肌荒れを防ぐ」といった範囲です。ビフィズス菌培養溶解質も、ほかの保湿成分と同じように、肌のいちばん外側の角層のうるおいを支える役目で入っているからです。
角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つでうるおいを守っています。このバランスが崩れると角層から水分が逃げ、かさつきや肌あれにつながります。
角層は、この3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
実際に、ビフィズス菌の溶解質を10%含むクリームを使うと、肌の過敏さが下がり、顔のざらつきや脚の乾燥が減ったという結果があります。乳酸桿菌の溶解質を含むローションでも、角層の水分量が増えたという結果があります。
一方で、化粧品の効能の範囲には、肌の菌のバランスにふれる項目は入っていません。敏感肌が良くなる、肌の菌のバランスが整うといった言葉は、化粧品の効果としては使えません。うるおいを与えて肌を整える成分として見ておくと安心です。
「溶解質」は菌の体の成分あり、「エキス」「ろ液」は原則なし
菌の名前がついた成分はいくつもあって、違いがわかりにくいですよね。「溶解質」は菌の体を壊して中身を出したもので、菌の体の成分を含み、「ろ液」や「エキス」は菌の体を取り除いたもので、原則として菌の体の成分を含みません。成分表の名前は、どうつくられた成分かを表しているからです。
名前に「発酵」が付くものは、菌に豆乳や乳製品などの材料を発酵させた液で、菌の体と培地の両方を含みます。「培養」が付くものは、特定の菌そのものを増やすために育てた液や、そのろ過物です。海外の成分名ではどちらも同じ一つの語で、日本語に訳すときに発酵と培養を使い分ける決まりになっています。
「ろ液」や「エキス」は、発酵液をろ過したり抽出したりしてつくられます。同じ菌の名前でも、溶解質と発酵エキスは中身が別の成分です。
日本の表示名称には、ビフィズス菌培養溶解質のほか、乳酸桿菌溶解質、乳酸桿菌培養溶解質、乳酸桿菌発酵液などがあります。ある美容液の全成分では、ビフィズス菌培養溶解質が水とBGの次の3番目に書かれていました。成分表は配合量の多い順に並ぶ決まりなので、名前と書かれている位置から、どんな液がどれくらい主役なのかを読み取れます。
化粧品の菌の成分は、ポストバイオティクスの考え方に近い
プロバイオティクス、ポストバイオティクスと、似た言葉が多くて混乱しますよね。化粧品の溶解質や発酵物は、生きていない菌からできたものなので、プロバイオティクスではなく、ポストバイオティクスの考え方に近い成分です。2つの言葉は、菌が生きているかどうかで分かれるからです。
プロバイオティクスは、適切な量をとったときに健康に役立つ、生きた微生物のことです。プレバイオティクスは、腸の中の微生物がえさとして使う、イヌリンなどの糖質を指します。そしてポストバイオティクスは、プロバイオティクスとプレバイオティクスの国際的な学術団体が2021年に示した言葉で、健康に役立つ、生きていない菌やその成分からできたものを指します。
ポストバイオティクスには条件があります。菌の体やその成分が残っていること、どの菌株かが特定され、つくり方が記載されていること、そして効果が、比べる相手のあるしっかりした試験で確かめられていることです。ビタミンや短鎖脂肪酸のように菌がつくった物質だけのものや、菌の体の成分が残らないように精製したものは、ポストバイオティクスには当たりません。
「プロバイオティクス配合」と呼ばれる化粧品の多くも、より正確にはこちらに分類されるとされています。ただし、この定義は主に腸や口から取るものを想定した言葉です。そのため、この記事ではポストバイオティクスと呼ばれることがある成分、という言い方にしています。
菌からできた成分でも、合わなければ使うのをやめる
菌からできた成分なら、肌にやさしそうと思いますよね。でも、菌からできた成分だから肌にやさしい、とは言えません。製品には、ほかの化粧品と同じように防腐剤やアルコールも一緒に入るからです。
安全性では、アメリカで化粧品成分の安全性を審査する専門家の委員会が、乳酸桿菌の発酵成分4種について、今の使い方と濃度で安全とする結論を報告書の案でまとめています。評価の対象は、乳酸桿菌の発酵成分です。乳酸桿菌発酵液や、溶解質のろ液を含む製品をヒトの肌に繰り返し貼る試験でも、刺激やかぶれの反応は出なかったという結果があります。
ただ、製品の中身はその成分だけではありません。先ほどの美容液の全成分でも、ビフィズス菌培養溶解質の次に変性アルコールが並び、防腐剤の安息香酸Naも入っていました。
菌の名前だけで選ばず、合わないと感じたら使うのをやめます。
見る
試す
やめる
皮膚科へ
肌が敏感な人は、菌の名前だけで選ばず、敏感肌の化粧品を選ぶときと同じように全成分を見て、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
腸活やヨーグルトとは、別のものとして考える
菌と聞くと、腸活やヨーグルトを思い浮かべる人は多いと思います。化粧品の菌の成分は、腸活やヨーグルトとは別のものとして考えましょう。とり方も、つくり方も違うからです。
腸活と同じ、というのは誤解です。ポストバイオティクスの定義は主に腸や口から取るものを想定していて、腸で確かめられた働きは、皮膚に塗った場合には当てはめられません。肌にすみついている常在菌に働きかけるという言い方も、化粧品の効能の範囲には入っていません。
ヨーグルトを塗るのと同じ、というのも違います。化粧品の原料は、どの菌株かを特定し、つくり方を定めたうえで、滅菌や溶解、ろ過をしてつくられたものです。食品のヨーグルトは、生きた菌や乳成分、糖を含み、肌に塗ることを前提にした防腐の設計もされていない、別のものです。
名前に菌が入っていても、瓶の中で菌が生きているわけではない、と覚えておけば十分です。
まとめ
- ビフィズス菌培養溶解質は、ビフィズス菌を育てて壊した液で、生きた菌は入っていません
- 化粧品として言えるのは、うるおいを与える、肌を整える、肌荒れを防ぐの範囲です
- 「溶解質」は菌の体の成分あり、「エキス・ろ液」は原則なし。名前で中身が読み分けられます
- プロバイオティクスは生きた菌。化粧品の菌の成分はポストバイオティクスの考え方に近いものです
- 菌からできた成分でも、防腐剤やアルコールも一緒に入ります。合わなければ使うのをやめましょう
菌の名前に引かれるより、成分表の「培養」「溶解質」「発酵」「エキス」を読み分けて、どんな液が入っているのかを見てみてください。
よくある質問
ビフィズス菌培養溶解質とは何ですか?
ビフィズス菌を増やすために育て、その菌の体を壊して中身を出した液です。名前の「培養」は菌を育てたこと、「溶解質」は菌の体を壊したことを表し、菌そのものではなく、生きた菌も入っていません。
化粧品に入っている菌は生きていますか?
生きていません。溶解質は菌を壊したもので、発酵液もふつうは滅菌してから使います。化粧品は菌が増えないようにつくるのが前提で、国際規格では菌の数の上限が1gあたり1,000個以下などと決められています。
ビフィズス菌培養溶解質は肌に何をしますか?
化粧品として言えるのは「皮膚にうるおいを与える」「肌を整える」「肌荒れを防ぐ」の範囲です。溶解質を10%含むクリームを使うと、肌の過敏さが下がり、顔のざらつきや脚の乾燥が減ったという結果があります。
溶解質と発酵エキスは同じものですか?
別のものです。溶解質は菌の体を壊して中身を出したもので、菌の体の成分を含みます。発酵エキスやろ液は、発酵液をろ過や抽出で処理して菌の体を取り除いたもので、原則として菌の体の成分は含みません。
ポストバイオティクスとは何ですか?
健康に役立つ、生きていない菌やその成分からできたものを指す言葉で、国際的な学術団体が示しました。化粧品の溶解質や発酵物はこの考え方に近い成分ですが、この言葉は主に腸や口から取るものを想定しています。
この記事で参照した情報
- Guéniche A, et al. Bifidobacterium longum lysate, a new ingredient for reactive skin. Exp Dermatol 2010;19(8):e1-e8
- Cui H, et al. Effects of a lotion containing probiotic ferment lysate as the main functional ingredient on enhancing skin barrier: a randomized, self-control study. Sci Rep 2023;13:16879
- CIR. Safety Assessment of Lactobacillus Ferment Ingredients as Used in Cosmetics, Draft Final Report(2025-08-15)
- PCPC 化粧品成分辞書「Bifida Ferment Lysate」の定義(EWG Skin Deep 掲載)
- 日本化粧品工業連合会「日本化粧品工業連合会表示名称作成ガイドライン」(平成14年2月27日)
- 日本化粧品工業会「化粧品の成分表示名称リスト」
- ランコム公式オンラインショップ「ジェニフィック アドバンスト N」全成分表示(閲覧日 2026年10月1日)
- ISAPP「The Concept of Postbiotics」
- Vinderola G, et al. Frequently asked questions about the ISAPP postbiotic definition. Front Microbiol 2024;14:1324565
- 米国NIH ODS「Probiotics: Fact Sheet for Health Professionals」(2025-03-25更新)
- Chia, et al. The Skin Microbiome Revolution: The Science and Challenges of Prebiotics, Probiotics, and Postbiotics in Skincare. Cosmetics 2026;13(1):43
- ISO 17516:2014 Cosmetics — Microbiology — Microbiological limits(規格のプレビュー)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「微生物汚染」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「防腐効力試験」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「皮膚常在菌」
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」