この記事でわかること
- 真皮の血管の並び方とリンパ管の働き
- 血管のない表皮に栄養が届くしくみ
- 皮膚の血管が体温を調節するしくみ
肌の下には血管が通っていると聞いても、どこにどう並んでいて、いちばん外側の表皮まで届いているのか、なかなかイメージしにくいですよね。
結論から言うと、皮膚の血管とリンパ管は真皮と皮下組織にあり、表皮には血管がありません。表皮の細胞は、真皮のいちばん上まで来ている毛細血管からしみ出す栄養と酸素で生きています。まずは、血管の並び方から見ていきましょう。
皮膚の血管は、2段の網と真皮乳頭のループでできている
皮膚の血管は、真皮の深いところと浅いところに2段の網をつくり、いちばん上で輪のように折り返しています。皮下組織から上がってきた動脈が、枝分かれしながら表皮のほうへ向かうからです。
赤は動脈側、青は静脈側の血管で、毛細血管は表皮のすぐ下で折り返しています。
- 1表皮 血管がない
- 2毛細血管のループ 真皮乳頭の中で折り返す
- 3乳頭下血管叢 浅いところの網
- 4皮下血管叢 深いところの網
- 5リンパ管 壁の薄い細い管から始まる
皮下組織から来た動脈は、まず真皮の深いところでつながり合い、皮下血管叢(皮下の血管の網)をつくります。そこから枝が上がって、真皮の上のほうの乳頭下層で、2つめの網である乳頭下血管叢をつくります。
いちばん上の真皮乳頭(表皮の下に指のように入りこんだ真皮の出っぱり)では、毛細血管が上がってきて輪をつくり、細い静脈に移って戻っていきます。血管は、深い網から浅い網へ、そして乳頭のループへと、だんだん細くなりながら表皮に近づいています。
表皮には血管がなく、真皮からしみ出す栄養で生きている
表皮には血管がなく、表皮の細胞は、真皮の毛細血管からしみ出してくる栄養と酸素を受け取って生きています。表皮のいちばん深い細胞は、真皮の上部の毛細血管から拡散(物が濃いほうから薄いほうへ広がること)によって養われているからです。
表皮と真皮の境目は、表皮が真皮のほうへのびる表皮突起と、真皮乳頭が互いに入り組んだ、波のような形をしています。真皮乳頭の毛細血管のループは、この波の山の中まで上がってきていて、表皮のすぐ下で折り返しています。
表皮の厚さは平均約0.2ミリです。栄養をいちばん近くで受け取るのは、真皮に接する基底層の細胞で、ここで新しい細胞が生まれ、押し上げられて角層になります。表皮が血管なしでやっていけるのは、すぐ下まで来た毛細血管が、しみ出す形で栄養を渡しているからです。
皮膚の血流は、体温の調節のために増えたり減ったりする
皮膚の血管は、暑いときには広がり、寒いときには縮んで、体の熱を逃がす量を調節しています。皮膚の表面近くを流れる血液が多いほど、熱が外へ逃げやすくなるからです。
皮膚の表面近くを流れる血液の量を変えて、体の熱を逃がす量を調節しています。
暑いときに肌が赤っぽく見え、寒いときに白っぽく見えるのは、この血流の変化が肌の色に表れているためです。指先などには、毛細血管を通らずに動脈から静脈へ直接つながる動静脈吻合(動脈と静脈の近道)があり、交感神経の合図で、体の末端を流れる血液の量を変えています。
この近道のうち、球のような形に発達したものはグロムス装置と呼ばれ、とくに指先や爪の下に多く見られます。また、汗を出すエクリン汗腺のまわりは血管の網がとくに多く、血流と発汗が一緒に体温を整えています。皮膚の血管は、栄養の通り道であると同時に、体温を調節するしくみでもあります。
リンパ管は、血管に戻らなかった液を集めてリンパ節へ運ぶ
リンパ管は、血管からしみ出したあと血管に戻らなかった液を集め、リンパ節を通してから静脈へ戻す管です。毛細血管から細胞のすき間に出た液は多くが毛細血管に戻り、残りをリンパ管が受け取るからです。
皮膚では、いちばん細い毛細リンパ管が、真皮の浅い乳頭下層のあたりに分布しています。その壁は薄く、ところどころ途切れていて、血管よりもゆるいつくりです。深いほうへ進むにつれて壁はつながり、管の中には、逆流を防ぐ弁があらわれます。
皮膚のリンパ液は、必ずリンパ節(体のあちこちにある豆のような器官)を通ってから静脈に入ります。リンパ節では、傷ついた細胞や異物がこし取られます。リンパ管は、液を回収する道であり、血管を通らない物や細胞が移動する道でもあります。
血管とリンパ管のまわりには、体を守る細胞が集まっている
真皮の血管とリンパ管は、汗腺や神経、体を守る細胞と並んで、皮膚のほかのしくみを支えています。血管のまわりには、異物に備える細胞が多く集まっているからです。
たとえば、異物を取りこんで処理するマクロファージは主に血管のまわりにいて、血管を広げる物質をたくわえた肥満細胞も、毛細血管や神経のまわりに見られます。皮膚で異物を見つけた細胞は、リンパ管を通ってリンパ節へ向かいます。
血管が通る真皮全体のつくりや、線維との位置関係は表皮と真皮の記事で、表皮の細胞が入れ替わる流れはターンオーバーの記事で見られます。血管とリンパ管は、皮膚の中の細胞どうしをつなぐ通り道です。
まとめ
- 皮膚の血管は真皮と皮下組織にあり、深いところと浅いところに2段の網をつくっています
- 真皮乳頭では、毛細血管がループをつくって表皮のすぐ下で折り返しています
- 表皮には血管がなく、真皮の毛細血管からしみ出す栄養と酸素で生きています
- 皮膚の血管は暑いと広がり、寒いと縮んで、体温を調節しています。指先には動脈と静脈の近道もあります
- リンパ管は血管に戻らなかった液を集め、リンパ節を通して静脈に戻します
肌の色が暑さや寒さで変わって見えるのも、表皮の細胞が生まれ続けられるのも、表皮のすぐ下まで来ている細い血管のおかげです。
よくある質問
表皮に血管はありますか?
表皮に血管はありません。表皮のいちばん深い細胞は、真皮の上部にある毛細血管からしみ出す栄養と酸素で養われています。
皮膚の血管はどこにありますか?
真皮と皮下組織にあります。真皮の深いところに皮下血管叢、浅いところに乳頭下血管叢という2段の網があり、真皮乳頭では毛細血管が輪をつくって折り返しています。
暑いと肌が赤く見えるのはなぜですか?
皮膚の血管が広がり、表面近くの血流が増えるからです。血液が多く流れるほど熱が外に逃げやすくなり、寒いときは反対に血管が縮んで熱を保ちます。
皮膚のリンパ管は何をしていますか?
血管に戻らなかった液を集めて運んでいます。皮膚のリンパ液は必ずリンパ節を通り、そこで傷ついた細胞や異物がこし取られてから静脈に戻ります。
指先の血管にはどんな特徴がありますか?
動脈と静脈を直接つなぐ近道が発達しています。毛細血管を通らずに血液を流す動静脈吻合で、球のような形のグロムス装置は指先や爪の下にとくに多く、体温の維持に関わります。