この記事でわかること
- 皮膚にある5種類の受容器と、その深さ
- 痛み・温度・かゆみを受け取る神経の先
- 1平方センチあたりの感覚点の数
指先で小さなでこぼこがわかったり、熱いものに触れた瞬間に手を引っこめたり。皮膚がどうやってこんなに多くの感覚を感じ分けているのか、不思議に思いますよね。
結論から言うと、皮膚には、触る・押す・ふるえ・伸び・痛み・温度を受け取る受容器(刺激を受け取る神経の先)が、種類ごとにちがう深さに並んでいます。かゆみも、表皮のあたりの神経の先から生まれる感覚です。まずは、受容器の並び方から見ていきましょう。
皮膚の感覚は、深さのちがう5種類の受容器が受け取る
皮膚の感覚は、自由神経終末・メルケル細胞・マイスナー小体・ルフィニ終末・パチニ小体の5種類の受容器が受け取っています。受容器ごとに、いる深さと、受け取りやすい刺激がちがうからです。
受容器は種類ごとに深さがちがい、受け取る刺激もちがいます。
- 1自由神経終末 痛み・熱さ・冷たさ
- 2メルケル細胞 表面のでこぼこ・押される感じ
- 3マイスナー小体 こすれる動き・ゆっくりしたふるえ
- 4ルフィニ終末 皮膚の伸び・押され続ける感じ
- 5パチニ小体 速いふるえ
皮膚の神経は、真皮の下のほうを膜に包まれた束になって走り、枝分かれしながら真皮の浅いところや、毛包・汗腺のまわりに広がっています。感じたことを脳へ伝える知覚神経のほかに、汗腺や血管を動かす自律神経も来ています。
神経の先の数は体の部位によってちがい、指先やつま先は神経が多く、触った感じにとくに敏感です。皮膚は、場所ごとに感度のちがう感覚の器官です。
触る・押す感覚は、4つの受容器が分担している
触る・押す感覚は、メルケル細胞・マイスナー小体・ルフィニ終末・パチニ小体の4つが分担して受け取っています。同じ「触る」でも、表面のでこぼこ、こすれる動き、皮膚の伸び、ふるえと、刺激の種類がちがうからです。
メルケル細胞は表皮の基底層にいる細胞で、表皮の細胞の約0.5%です。真皮側で神経の先とつながっていて、指先や口の中の粘膜、毛のまわりに多くいます。マイスナー小体は、手のひらや唇などの真皮乳頭(表皮の下に入りこんだ真皮の出っぱり)にあり、平たい細胞が重なった中を神経がらせん状に走る形です。
ルフィニ終末は真皮にあります。パチニ小体は手のひらや足の裏などの真皮の深いところから皮下組織にあり、神経のまわりを膜が何重にも包んだ、直径約1ミリの楕円形です。ふるえへの反応は、マイスナー小体が1秒に5〜50回ほど、パチニ小体が50〜700回ほどと、受け持つ速さが分かれています。触る感覚は、4つの受容器の組み合わせで成り立っています。
痛み・熱さ・冷たさは、表皮までのびる自由神経終末が受け取る
痛み・熱さ・冷たさは、表皮の中までのびている自由神経終末が受け取ります。自由神経終末は、膜に包まれていないむき出しの神経の先で、真皮の上部から表皮の中まで入りこんでいるからです。
自由神経終末は、真皮の上部や真皮乳頭に広がり、一部は表皮の中に、一部はメルケル細胞に接しています。中には、強く押される刺激、熱、酸、痛みを起こす物質など、いくつもの種類の刺激に反応するポリモーダル受容器もあります。
温度を知らせる受容器は表皮と真皮にあり、温かさを伝える神経と、冷たさを伝える神経に分かれています。痛みの受容器は、体を傷つけるおそれのある強い刺激や、極端な温度に反応します。痛みは、体に危険を知らせる見張りの感覚です。
感覚点は、痛点がいちばん多く、温点がいちばん少ない
皮膚の感覚点の数は、1平方センチあたり、痛点が100〜200でもっとも多く、温点は0〜3でもっとも少なくなっています。感覚を受け取るしくみは皮膚にまんべんなく広がっているのではなく、点のように散らばっているからです。
濃い部分は少ないほうの数、薄い部分は多いほうの数までを表しています。
痛点・触圧点・冷点・温点のように、その感覚が起きる皮膚の上の点を感覚点と呼びます。分布は体の部位によってもちがいます。冷点は温点よりずっと多く、皮膚は、痛みを受け取る点がいちばん細かく並んだ面だといえます。
かゆみは、表皮と真皮の境目あたりの神経の先から生まれる
かゆみは、表皮の中や、表皮と真皮の境目あたりにある神経の先が刺激されて生まれる感覚です。表皮がすっかりなくなった場所では、かゆみを起こす物質を当ててもかゆみが起きないからです。
かゆみのきっかけになる物質には、たんぱく質やアミノ酸の仲間、ヒスタミンなどがあります。ヒスタミンは、真皮にいる肥満細胞(血管を広げる物質をたくわえた細胞)の中にためられていて、刺激を受けると外に出されます。かゆみには、ほかにもたんぱく質を分解する酵素など、いくつかの物質が関わっています。
かゆみは長いあいだ痛みの一種と考えられてきましたが、いまは痛みとは別の感覚とする考え方もあります。かゆみは、皮膚の浅いところで生まれ、神経が脳へ伝える感覚です。
皮膚の神経は、汗腺・血管・毛の筋肉にも合図を送っている
皮膚の神経は、感じたことを伝えるだけでなく、汗腺や血管、毛を立てる筋肉に合図を送る役目もしています。皮膚には、知覚神経のほかに、自律神経の一つである交感神経が来ているからです。
エクリン汗腺に来ている交感神経は、先からアセチルコリン(神経が出す合図の物質)を出して汗を出させます。いっぽう、血管や、毛を立てる立毛筋(毛包についた小さな筋肉)に来ている交感神経は、別の種類の物質で働きます。寒さやこわさで鳥肌が立つのは、この神経が立毛筋を縮めるためです。
メルケル細胞がいる表皮の層については表皮の4つの層、皮膚全体の断面は皮膚の構造の記事で見られます。皮膚の神経は、外の世界を感じる線と、体を動かす線の両方です。
まとめ
- 皮膚には5種類の受容器が、表皮から皮下組織まで、種類ごとにちがう深さに並んでいます
- 触る・押す感覚はメルケル細胞・マイスナー小体・ルフィニ終末・パチニ小体が分担しています
- 痛み・熱さ・冷たさは、表皮までのびる自由神経終末が受け取ります
- 感覚点は1平方センチあたり痛点が100〜200でもっとも多く、温点は0〜3です
- かゆみは、表皮や表皮と真皮の境目あたりの神経の先から生まれます
指先が小さなでこぼこまで感じ取れるのも、熱いものからとっさに手を離せるのも、皮膚の浅いところから深いところまで並んだ受容器のおかげです。
よくある質問
皮膚はどんな感覚を受け取っていますか?
触る・押す・ふるえ・伸び・痛み・温かさ・冷たさです。かゆみも、表皮のあたりの神経の先から生まれる皮膚の感覚です。
触覚を受け取る受容器はどこにありますか?
表皮から皮下組織まで、種類ごとにちがう深さにあります。メルケル細胞は表皮の基底層、マイスナー小体は真皮乳頭、ルフィニ終末は真皮、パチニ小体は真皮の深いところから皮下組織にあります。
痛みを感じるのはどの神経ですか?
自由神経終末です。膜に包まれていないむき出しの神経の先で、真皮の上部から表皮の中までのび、熱さや冷たさも受け取ります。
痛点は皮膚にどれくらいありますか?
1平方センチあたり100〜200ほどです。感覚点の中でもっとも多く、触圧点は約25、冷点は6〜23、温点は0〜3です。
かゆみは皮膚のどこで生まれますか?
表皮の中や、表皮と真皮の境目あたりの神経の先です。真皮の肥満細胞がためているヒスタミンなどが、かゆみのきっかけになります。
この記事で参照した情報
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 C. 真皮 d. 脈管および神経」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 自律神経・皮下脂肪組織」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 メラノサイト・ランゲルハンス細胞・メルケル細胞」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「メルケル細胞」
- MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能」
- MSDマニュアル家庭版「かゆみ」
- コトバンク「皮膚感覚」(日本大百科全書・百科事典マイペディア・最新 心理学事典)
- コトバンク「かゆみ」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
- 海藤俊行「体性感覚研究の進展」顕微鏡 46巻4号(2011)
- 米国国立医学図書館 StatPearls「Anatomy, Skin (Integument), Epidermis」