この記事でわかること
- 皮膚の免疫の「壁」と「見張り」の2段がまえ
- ランゲルハンス細胞がリンパ節に知らせる流れ
- 真皮にいる免疫の細胞とそれぞれの役目
「免疫」と聞くと血液やのどの話を思い浮かべて、皮膚にも体を守る細胞がいると言われても、あまりピンとこないですよね。
結論から言うと、皮膚の免疫は、角層という物理的な壁と、表皮や真皮で異物を見張る細胞の、2段がまえでできています。表皮のランゲルハンス細胞が異物を見つけてリンパ節に知らせ、真皮にはマクロファージや肥満細胞、T細胞が待機しています。まずは、どこにどの細胞がいるのかを見ていきましょう。
皮膚の免疫は、壁と見張りの2段がまえ
皮膚は、いちばん外側の角層で異物を入れにくくし、それでも入ってきたものを、表皮と真皮の細胞が見つけて処理します。体の外と内の境目にある皮膚は、まず物理的な壁として、微生物を体に入りにくくしているからです。
表面の壁と、表皮・真皮にいる細胞が、それぞれの場所で体を守っています。
- 1角層 異物を入れにくい壁
- 2汗 抗菌ペプチドをふくむ
- 3ランゲルハンス細胞 表皮で異物を見張る
- 4マクロファージ 血管のまわりで異物を取りこむ
- 5肥満細胞 血管に働く物質を粒にためる
- 6T細胞 異物に立ち向かい、覚える
- 7リンパ管 リンパ節への通り道
免疫(病原体などから体を守るしくみ)には、自分と自分でないものを見分ける、自分でないものを取り除く、一度入ってきたものを覚える、という3つの働きがあります。皮膚の細胞は、この3つを分担しています。
なかでも、異物を取りこんで分解し、その情報をT細胞(異物を攻撃したり、ほかの細胞に指示を出したりするリンパ球)に伝える細胞を、抗原提示細胞と呼びます。皮膚の免疫は、入れない壁と、入ったものを見つけて伝える細胞の組み合わせです。
最初の守りは、角層の壁と汗にふくまれる抗菌ペプチド
いちばん外側の守りは、角層と、汗にふくまれる抗菌ペプチドです。角層は基本的に水を通さず、大半の細菌やウイルスが入るのを防いでいるからです。
角層は、平たい細胞がすき間の脂で貼り合わされた層で、この「入れない・逃がさない」働きはバリア機能と呼ばれます。表皮の細胞の約95%は、この角層をつくるケラチノサイト(表皮をつくる細胞)です。
汗にも守りの役目があります。エクリン汗腺の汗には、カテリシジンやダームシジンという抗菌ペプチド(細菌に働く小さなたんぱく質)がふくまれ、汗の中の条件で、いろいろな細菌に働くことがわかっています。皮膚の表面は、角層の壁と、汗の中の物質で守られているのです。
ランゲルハンス細胞は、表皮で異物を見張ってリンパ節へ知らせる
表皮のランゲルハンス細胞は、入ってきた異物を取りこみ、リンパ節まで運んで、T細胞に知らせる細胞です。異物の情報を見せて免疫を動かす、抗原提示細胞の働きをもっているからです。
ランゲルハンス細胞は、取りこんだ異物の情報をリンパ節まで運んで伝えます。
ランゲルハンス細胞は、骨髄で生まれて表皮にやってきた樹状細胞(木の枝のような突起をもつ細胞)です。表皮の4つの層のうち有棘層の中ほどから上に、1平方ミリあたり400〜1,000個ほどが散らばり、まわりの細胞のすき間に突起を伸ばしています。
この細胞は動き回ることができ、異物の刺激を受けると表皮を離れて、近くのリンパ節へ移ります。また紫外線に影響を受けやすく、中くらいの波長の紫外線であるUVBを浴びると、数や働きが抑えられます。ランゲルハンス細胞は、表皮にいる、免疫の見張り役であり伝令役です。
表皮の細胞も、知らせの物質を出して守りに加わる
表皮の大部分をしめるケラチノサイトも、免疫を動かす物質を出して守りに加わっています。サイトカイン(細胞どうしの連絡に使われるたんぱく質)をつくり、免疫の細胞を働かせるからです。
ケラチノサイトは、いろいろなサイトカインをつくり、その一部を細胞の中にたくさんためています。傷を受けたり、角層の守りがこわれたりすると、ためていたサイトカインを外に出します。出されたサイトカインは、まわりの免疫の細胞を働かせ、炎症(赤くなる・はれるなどの守りの反応)を起こします。
表皮では、ランゲルハンス細胞だけでなく、表皮そのものをつくる細胞も、異変を知らせる役をしているのです。
真皮には、マクロファージ・肥満細胞・T細胞などが待機している
真皮には、異物を取りこむマクロファージ、血管に働く物質をためた肥満細胞、真皮樹状細胞、T細胞などが待機しています。それぞれが、異物を取りこむ、血管に働く、情報を伝える、異物に立ち向かう、という別の役目をもっているからです。
マクロファージ(組織球とも呼ばれる、異物を取りこむ細胞)は主に血管のまわりにいて、異物を食べ、その情報をT細胞に伝えます。肥満細胞は毛細血管や神経のまわりにいて、ヒスタミンなど、血管を広げたり、血管から液を出しやすくしたりする物質を粒の中にためています。
真皮の上のほうには真皮樹状細胞もいて、必要なときにはリンパ節で情報を伝えます。さらに皮膚全体には約200億個のT細胞がいて、血液中のT細胞のほぼ2倍と見積もられています。一部のT細胞は、一度出会った異物を覚えた細胞として、毛包のまわりなどに残ります。真皮は、免疫の細胞が数多く待機している層です。
皮膚の免疫は、リンパ管とリンパ節で全身とつながる
皮膚の免疫の細胞は、リンパ管を通ってリンパ節へ行き、体全体の免疫とつながっています。皮膚のリンパ液は、必ずリンパ節を通ってから静脈に入るからです。
リンパ節には、リンパ球やマクロファージなどの白血球が集まっていて、運ばれてきた異物や傷ついた細胞をこし取ります。また、皮膚の表面には、もともと住んでいる常在菌もいて、皮膚は細菌と隣り合わせで守りを続けています。皮膚の免疫は、皮膚の中だけで閉じず、リンパ節を通して全身の免疫とつながったしくみです。
まとめ
- 皮膚の免疫は、角層の壁と、表皮・真皮で異物を見張る細胞の2段がまえです
- 汗には抗菌ペプチドがふくまれ、皮膚の表面の守りに加わっています
- ランゲルハンス細胞は表皮の有棘層にいて、異物を取りこみ、リンパ節でT細胞に知らせます
- ケラチノサイトもサイトカインを出して、免疫の細胞を働かせます
- 真皮にはマクロファージ・肥満細胞・真皮樹状細胞・T細胞がいて、皮膚全体のT細胞は約200億個です
皮膚は、体を包む壁であると同時に、たくさんの免疫の細胞が見張りを続けている、体でいちばん外側の守りの場所です。
よくある質問
皮膚にも免疫はありますか?
皮膚にも免疫があります。いちばん外側の角層が異物を入れにくくし、表皮のランゲルハンス細胞や、真皮のマクロファージ・T細胞などが、入ってきた異物を見つけて処理します。
ランゲルハンス細胞とは何ですか?
表皮にいる、異物の情報を伝える細胞です。木の枝のような突起をもつ樹状細胞で、異物を取りこむとリンパ節へ移り、T細胞にその情報を知らせます。
ランゲルハンス細胞は表皮のどこにいますか?
表皮の有棘層の中ほどから上にいます。1平方ミリあたり400〜1,000個ほどが散らばり、まわりの細胞のすき間に突起を伸ばしています。
皮膚にT細胞はどれくらいいますか?
皮膚全体で約200億個と見積もられています。血液中のT細胞のほぼ2倍にあたり、一部は一度出会った異物を覚えた細胞として毛包のまわりなどに残ります。
汗にも体を守る働きはありますか?
汗にも守りの働きがあります。エクリン汗腺の汗にはカテリシジンやダームシジンという抗菌ペプチドがふくまれ、いろいろな細菌に働きます。
この記事で参照した情報
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 F. 皮膚の免疫機構」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 F. 皮膚の免疫機構 b. 免疫担当細胞」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 メラノサイト・ランゲルハンス細胞・メルケル細胞」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 C. 真皮」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 C. 真皮 d. 脈管および神経」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「ランゲルハンス細胞」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「真皮」
- MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能」
- MSDマニュアル家庭版「リンパ系の概要」
- 論文「Cathelicidin anti-microbial peptide expression in sweat, an innate defense system for the skin」(PubMed)
- 論文「The vast majority of CLA+ T cells are resident in normal skin」J Immunol 2006