この記事でわかること
- エクリン汗腺とアポクリン汗腺のちがい
- 汗腺の場所と数、汗ができるしくみ
- 汗が体温を下げ、肌の表面を守る働き
汗はあまりに身近すぎて、皮膚のどこで、どうやってつくられているのか、改めて考えると意外とわからないですよね。
結論から言うと、汗をつくる汗腺には、ほぼ全身にあって体温を調節するエクリン汗腺と、わきの下などに限られて毛穴に開くアポクリン汗腺の2種類があります。どちらも真皮から皮下組織にかけて埋まっている、細い管の形をした器官です。まずは、2つの汗腺の位置から見ていきましょう。
汗腺は、汗の出口がちがう2種類がある
汗腺はエクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類で、いちばんのちがいは汗の出口です。エクリン汗腺(エクリン腺)は皮膚の表面に直接開き、アポクリン汗腺(アポクリン腺)は毛の通り道である毛包(毛を包む袋のような組織)に開いているからです。
エクリン汗腺は皮膚の表面に、アポクリン汗腺は毛包に開いています。
どちらの汗腺も、汗をつくる分泌部(汗をつくる部分)と、汗を運ぶ導管(汗の通り道)がつながった1本の管です。分泌部は糸玉のように丸まって、真皮の深いところから皮下組織に埋まっています。
皮膚の表面には、皮溝(細かいみぞ)と、みぞに囲まれた小さな盛り上がりの皮丘があります。毛は深い皮溝から生え、エクリン汗腺の出口である汗孔は皮丘に開いています。汗腺の2種類は、表面に開くか、毛包に開くかで見分けられます。
エクリン汗腺はほぼ全身にあり、数は約200万〜500万個
エクリン汗腺は、唇などのごく一部を除くほぼ全身の皮膚にあり、その数は全身で約200万〜500万個とされています。体温を下げるための汗を、体じゅうの皮膚から出す汗腺だからです。
密度は1平方センチあたり約130〜600個で、とくに多いのは手のひら・足の裏・わきの下です。日本人では、全身で約230万個という数字もあります。ふだん「汗」と呼んでいるさらさらした汗は、ほとんどがこのエクリン汗腺の汗です。
1日に出る汗の量は、平均で約700〜900ミリリットルです。暑いところでは、1時間に2〜3リットルもの水分が汗として蒸発します。エクリン汗腺は、数でも量でも、汗の主役です。
エクリン汗腺の汗は、塩分を体に戻してから出てくる
エクリン汗腺の汗は、分泌部でつくられたあと、導管を通るあいだに塩分を体に取り戻してから、皮膚の表面に出てきます。そのため、表面に出てくる汗はほとんどが水です。
エクリン汗腺の汗は、分泌部でつくられ、導管で塩分を戻してから汗孔に出ます。
分泌部では、神経の先から出るアセチルコリン(神経が出す合図の物質)の働きで、ナトリウムと一緒に水分が管の中に出て、汗のもとになる前駆汗ができます。これは体の液より少し濃い液です。導管では、ナトリウムや塩素などが体の側へ取り戻され、薄い汗になります。
こうして出てくる汗は99%以上が水分で、ほかに少しの塩分、乳酸、アミノ酸、尿素などを含みます。乳酸を含むので、pHは5.7〜6.5の弱い酸性です。汗がたくさん出るときは取り戻しが追いつかず、汗はしょっぱくなり、アルカリ性の側に寄ります。汗は、いったんつくってから、塩分を回収して仕上げる液です。
アポクリン汗腺は限られた場所にあり、思春期から働き出す
アポクリン汗腺は、わきの下や乳輪、外陰部など限られた場所にあり、思春期になってから本格的に働き始めます。毛と一緒にできる汗腺で、性ホルモンとの関わりが考えられているからです。
アポクリン汗腺は、生まれたあといったん小さくなり、思春期以降に再び発達します。耳の穴の中や小鼻、へそのまわりにもあり、数はエクリン汗腺より少なめです。分泌部はエクリン汗腺より大きく、汗の出口は毛包の中の、皮脂腺の出口より上にあります。
アポクリン汗腺の汗は粘り気があり、出てきた時点ではにおいがありません。皮膚の表面にすむ常在菌に分解されると、においを帯びます。暑さよりも、気持ちの動きで出やすい汗です。アポクリン汗腺は、場所も働き始める時期も限られた汗腺です。
汗のいちばんの役割は、蒸発するときに体の熱をうばうこと
エクリン汗腺の汗のいちばんの役割は、皮膚の表面で蒸発するときに熱をうばって、体温を下げることです。水が蒸発するには熱が必要で、その熱を皮膚から持っていくからです。この熱を気化熱と呼びます。
汗の出方には3つあります。暑さで全身に出る温熱性発汗、緊張したときに手のひら・足の裏・額に出る精神性発汗、辛いものを食べたときに出る味覚性発汗です。体温の調節を受け持つのは温熱性発汗で、夏の暑さに体が慣れると、汗の量は大きく増えます。
汗には、肌の表面での役割もあります。エクリン汗腺の汗は皮膚の表面に適度な湿り気を与え、皮脂と混ざって皮脂膜になります。さらに汗には、細菌に働く小さなたんぱく質である抗菌ペプチドも含まれています。汗は、体温を下げ、肌の表面を守る液です。
汗腺は、血管と神経に囲まれて働いている
汗腺は、まわりの血管と神経と一緒に働いています。エクリン汗腺のまわりには血管の網がとくに多く、汗を出す合図は神経から届くからです。
エクリン汗腺のまわりの血管は、血液の流れる量を変えて、発汗と一緒に体温を整えています。汗を出す合図を送るのは交感神経(意識しなくても体の働きを調節する神経)で、その先からアセチルコリンが出ます。アポクリン汗腺は、別の種類の合図の物質で動くと考えられています。
汗腺と、毛包・皮脂腺・血管との位置関係は、皮膚の構造の断面図で全体を見るとよくわかります。汗腺は、血管・神経・毛包とつながって働く、皮膚の付属器です。
まとめ
- 汗腺はエクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類。エクリン汗腺は皮膚の表面に、アポクリン汗腺は毛包に開きます
- エクリン汗腺はほぼ全身にあり、全身で約200万〜500万個。手のひら・足の裏・わきの下にとくに多くあります
- 汗は分泌部でつくられ、導管で塩分を戻してから出てきます。99%以上が水分で、pHは5.7〜6.5です
- アポクリン汗腺はわきの下などに限られ、思春期以降に発達します
- 汗は蒸発するときの気化熱で体温を下げ、皮脂と混ざって肌の表面を守ります
汗腺は、目には見えない小さな管ですが、体温を一定に保つという、生きるうえで欠かせない仕事を毎日こなしています。
よくある質問
汗腺は何種類ありますか?
エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類です。エクリン汗腺はほぼ全身にあって体温の調節を受け持ち、アポクリン汗腺はわきの下や乳輪、外陰部などに限られています。
エクリン腺とアポクリン腺のちがいは何ですか?
いちばんのちがいは汗の出口です。エクリン腺は皮膚の表面にある汗孔に直接開き、アポクリン腺は毛包の中の皮脂腺の出口より上に開いています。働き始める時期も、アポクリン腺は思春期以降です。
汗腺は体にいくつありますか?
エクリン汗腺は全身で約200万〜500万個とされています。日本人では約230万個という数字もあり、1平方センチあたり約130〜600個で、手のひら・足の裏・わきの下にとくに多くあります。
汗は何でできていますか?
99%以上が水分です。ほかに少しの塩分、乳酸、アミノ酸、尿素などを含み、乳酸があるためpHは5.7〜6.5の弱い酸性です。
汗をかくと体温が下がるのはなぜですか?
汗が蒸発するときに、皮膚から熱をうばうからです。この熱を気化熱と呼び、暑いところでは1時間に2〜3リットルの水分が汗として蒸発します。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「汗」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「汗腺」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 E. 付属器 d. 汗腺」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 E. 付属器」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 B. 表皮」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「1章 皮膚の構造と機能 C. 真皮 d. 脈管および神経」
- MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能」
- 論文「Cathelicidin anti-microbial peptide expression in sweat, an innate defense system for the skin」(PubMed)