この記事でわかること
- 皮脂がつくられ、皮脂膜になるまで
- 皮脂を形づくる油の種類と割合
- 肌が弱酸性に保たれるしくみと働き
皮脂というとテカリのイメージが強いですが、そもそも何でできていて、肌の表面が「弱酸性」とはどういうことなのか、よくわからないと思いますよね。
結論から言うと、皮脂は皮脂腺(皮脂をつくる小さな袋)の細胞が油をためてこわれ、毛穴から出てくる油の集まりです。表面で汗と混ざって皮脂膜になり、肌の表面は脂肪酸などの働きでpH5〜7の弱酸性に保たれています。まずは、皮脂がどこでつくられるのかから見ていきましょう。
皮脂は、皮脂腺の細胞が油をためてこわれることで出てくる
皮脂は、皮脂腺の細胞が自分の中に油をため、最後にこわれて中身ごと出てくる油です。この出し方を全分泌(細胞がまるごとこわれて分泌物になるしくみ)と呼びます。汗のように、細胞が液体だけを外に出すしくみとは違います。
皮脂腺は真皮(表皮の下にある、肌の土台の層)にあり、多くは毛包(毛を包む管)の上のほうに開いています。皮脂腺の細胞は、袋のふちで生まれ、油のつぶをためながら出口へ移動し、出口に着くとこわれて、細胞の成分と一緒に油を出します。
皮脂腺は、手のひらと足の裏をのぞく全身にあります。ふつうは1cm²あたり100個以下ですが、額や鼻などの皮脂の多い場所では1cm²あたり400〜900個と多く、腺そのものも大きくなります。皮脂腺の働きは男性ホルモンの仲間(アンドロゲン)にもっとも強く調節されていて、生まれてすぐと思春期に皮脂が多く出ます。
皮脂は、細胞が姿を変えてできた油なのです。
皮脂の中身は、トリグリセリドを中心とした何種類もの油
皮脂は1種類の油ではなく、何種類もの油が混ざったものです。皮脂腺でつくられる油と、表皮の細胞から出る油が、肌の表面で一緒になるからです。
量でいうと、約95%が皮脂腺から、残りの約5%が表皮から来ています。皮脂腺からはトリグリセリド(脂肪酸が3本ついた油)、スクワレン、ワックスエステルなどが、表皮の細胞からはコレステロールとその仲間が出てきます。平均すると、トリグリセリドは皮脂の約40%、スクワレンは大人で約12%、コレステロールとその仲間は約2%です。
トリグリセリドは、皮脂腺の出口や常在菌(ふだんから肌にすんでいる菌)がもつ酵素によって、少しずつ分解されます。脂肪酸が1本ずつ外れて、ジグリセリド、モノグリセリドへと進むので、肌の表面にはこれらと遊離脂肪酸(外れた脂肪酸)がまざっています。脂肪酸のうち約60%は、パルミチン酸、パルミトレン酸、オレイン酸の3種類です。
皮脂は、表面に出たあとも少しずつ形を変えていく油の集まりです。
皮脂は汗と混ざって、肌の表面をおおう皮脂膜になる
毛穴から出た皮脂は、汗と混ざって肌の表面をおおう皮脂膜になります。皮脂腺は毛包に開いているので、皮脂は毛穴を通って表面に出て、汗腺から出た汗と一緒に広がるからです。
皮脂は、汗と混ざって皮脂膜になります。
皮脂が出る
表面へ
混ざる
なる
皮脂には、肌を保護する作用、pHが急に変わらないように受け止める緩衝作用(酸やアルカリを受け止めてpHを保つ働き)、細菌などから肌を守る作用があるとされています。保護する作用とは、角層(表皮のいちばん外側の層)の水分が必要以上に蒸発するのを防ぎ、外から異物が入るのを防ぐ働きです。
皮脂膜は、肌が自分でつくる、いちばん外側の薄い膜です。
肌の表面はpH5〜7の弱酸性で、角層の奥ほど中性に近い
健康な肌の表面は、ふつうpH5〜7の弱酸性に保たれています。pHは酸性かアルカリ性かの度合いを表す数字で、7が中性、小さいほど酸性、大きいほどアルカリ性です。
角層の中でも、pHは場所によって違い、外側ほど酸性が強くなっています。角層の水分量も、下層の約70%に対して表層は約20〜30%と、外側ほど少なくなります。
角層は、外側ほど酸性が強くなります。
pHには男女差や部位による差もあり、女性は男性より平均で0.5ほど高い値になります。肌の表面は、外へ向かって少しずつ酸性になっていく層だと考えるとイメージしやすいです。
弱酸性は肌が自分でつくる酸で保たれ、酵素の働きを支えている
肌の弱酸性は、肌が自分でつくる酸によって保たれていて、角層の酵素が働く条件になっています。
酸のもとの1つは脂肪酸です。角層の中では、細胞の膜の成分であるリン脂質から、酵素が脂肪酸を切り出しています。表面では、常在菌が皮脂のトリグリセリドを分解して脂肪酸を出し、これもpH5前後の酸性に関わっています。ほかに、天然保湿因子(角層の細胞の中で水を抱える成分)のもとになるたんぱく質が分解されてできる酸や、細胞が水素イオンを外へくみ出す働きも、酸性をつくる一部です。
角層では、セラミド(細胞のすき間を埋める脂の主な成分)をつくる2つの酵素が、pH5前後でいちばんよく働きます。古い角層の細胞どうしをつなぐ部分は、弱酸性ではゆっくり分解され、pHが上がると分解が速く進みます。弱酸性は、細菌やウイルス、カビの仲間が増えるのを抑える働きも助けています。
生まれたばかりの赤ちゃんの肌の表面は、中性に近いpHです。弱酸性は、生まれたあとに肌がつくり上げていく状態でもあります。
皮脂とpHは、毛穴・常在菌・角層のしくみとつながっている
皮脂とpHは、ほかの肌のしくみと深くつながっています。皮脂は毛穴を通って出てくるので、毛包と皮脂腺のつくりを知ると、皮脂の出方がよくわかります。くわしくは毛穴のつくりの記事で解説しています。
皮脂を分解して脂肪酸をつくる菌については常在菌の記事、皮脂膜と天然保湿因子・細胞間脂質が角層の水分を保つしくみはモイスチャーバランスの記事で読めます。皮脂とpHは、角層を外側から支えるしくみの一部です。
まとめ
- 皮脂は、皮脂腺の細胞が油をためてこわれ、中身ごと毛穴に出てくる油です
- 皮脂腺は手のひらと足の裏をのぞく全身にあり、額や鼻などでは1cm²あたり400〜900個と多くなります
- 皮脂はトリグリセリド約40%、スクワレン約12%などの油の集まりで、表面で汗と混ざって皮脂膜になります
- 肌の表面はpH5〜7の弱酸性で、角層の中では外側ほど酸性が強く、下層は約7です
- 弱酸性は脂肪酸などでつくられ、セラミドをつくる酵素はpH5前後でよく働きます
皮脂も弱酸性も、肌が自分でつくり出しているしくみです。どこで何が起きているかを知ると、肌の表面の見え方が変わってきます。
よくある質問
皮脂はどこでつくられる?
真皮にある皮脂腺でつくられます。皮脂腺の細胞が油をためてこわれ、中身ごと毛穴に出てきます。手のひらと足の裏には皮脂腺がありません。
皮脂は何でできている?
何種類もの油の集まりです。平均するとトリグリセリドが約40%、スクワレンが大人で約12%、コレステロールとその仲間が約2%で、ワックスエステルや脂肪酸なども含まれます。
肌の表面はどのくらいの酸性?
pH5〜7ほどの弱酸性です。角層の中では表層が約4.5〜6.5、下層が約7で、外側ほど酸性が強くなっています。
肌はなぜ弱酸性になる?
肌が自分で酸をつくっているからです。細胞の膜の成分から切り出される脂肪酸や、常在菌が皮脂を分解してできる脂肪酸などが、酸性に関わっています。
肌が弱酸性だと何がいい?
角層の酵素が働く条件になります。セラミドをつくる酵素はpH5前後でよく働き、弱酸性は細菌などが増えるのを抑える働きも助けています。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「皮脂」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「脂腺」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「pH」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層」
- 北海道大学大学院医学研究院 皮膚科学教室 公開資料「皮膚の構造と機能 E. 付属器」
- Elias PM. Stratum corneum acidification: how and why? Exp Dermatol 2015;24(3):179-180
- Grice EA, Segre JA. The skin microbiome. Nat Rev Microbiol 2011;9(4):244-253
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