この記事でわかること
- 冬に肌が乾く原因と、角層で減るもの
- 冬にかゆくなるしくみ
- 保湿の回数と量、お湯の温度、湿度の目安
冬になると、顔がつっぱったり、すねや背中がかゆくなったりして、何が原因なのか、どう手入れすればいいのか迷いますよね。
結論から言うと、冬は乾いた空気と暖房で角層の水分と脂が減り、かゆみを感じやすくなる季節です。保湿剤を1日2回たっぷり塗り、熱いお湯とこすり洗いを避け、部屋を加湿することが手入れの柱になります。まずは、冬の空気から見ていきましょう。
冬は湿度が1年でいちばん低く、暖房でさらに乾く
冬に肌が乾くいちばんの原因は、空気の乾燥です。東京の平年値では、1年のうち湿度がいちばん低いのが冬だからです。
東京の月ごとの平均の湿度(%)で、色の濃い12〜2月が1年でいちばん低い時期です。
東京の平均の湿度は12月が56%、1月が51%、2月が52%で、1月が1年の最低です。日平均気温も12月の7.7℃、1月の5.4℃と低く、暖房で部屋を暖めると、室内の湿度はさらに下がります。日本皮膚科学会の皮脂欠乏症の手引きも、冬の乾燥肌の原因として、外の空気や室内の空調による湿度の低い環境を挙げています。
地域によっても違います。外の湿度が高い日本海側でも、暖房の効いた室内は乾いた環境になります。くわしくは季節と肌の関係で解説しています。
外も中も、冬の空気は肌の水分を奪いやすいと考えておきましょう。
皮脂は冬に少なめで、紫外線は雪の照り返しで増える
冬は、肌の表面をおおう皮脂も少なめになり、紫外線もゼロにはなりません。湿度のほかにも、冬ならではの原因があるのです。
皮脂腺から出る皮脂は夏にいちばん多く、冬は夏より少なめです。皮脂は、肌の表面をおおう皮脂膜のもとになるものです。ただし、乾燥肌の医学的な名前である皮脂欠乏症に「皮脂」とあっても、原因は皮脂の不足だけではなく、角層が水分を抱えるしくみの崩れも関わります。
紫外線は冬でもなくなりません。1月でも、ピークの月に比べてUVBで約5分の1、UVAで約2分の1あります。気象庁の2017年のUVインデックスでは、那覇の1月は3.9で、札幌の4月の3.6より高い数字でした。さらに新雪は紫外線の80%を反射するので、雪の照り返しで浴びる量は2倍近くになり、高い山ではとくに多くなります。
冬だから日焼け止めはいらない、と思いますよね。でも、雪のある場所や高い山に行く日は、冬でも紫外線対策が必要です。
角層では、水分もセラミドも減って水分が逃げやすくなる
冬の乾いた空気の中では、肌のいちばん外側の角層から、水分もうるおいを守る脂も減っていきます。
角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っています。細胞間脂質の約50%はセラミドです。健康な角層には、重さの約20〜30%の水分が含まれています。
冬の角層は、この水分が夏より少なくなります。冬は部屋を夏と同じ温度に暖めても、角層の水分量は戻らなかったという結果があります。その日の部屋の温度より、季節に体が合わせていることが関わると考えられています。うるおいを守る脂も減り、角層の細胞に結びついたタイプのセラミドが、春夏の約半分になっていたという結果もあります。
顔では、見た目に荒れていなくても、冬は角層から逃げる水分が増え、ごく軽い炎症の状態になっていたという結果があります。保湿クリームを毎日塗ると、水分量が上がり、逃げる水分が減りました。
冬の角層は水分もすき間の脂も減り、保湿剤で水分を補って逃がさないようにします。
湿度や気温が低いと、角層の守りは全体に弱まり、こすれなどの刺激にも弱くなります。冬の手入れは、角層の水分を補って、逃がさないことが中心です。
乾いた肌では、かゆみを伝える神経が表皮まで伸びてくる
冬になると、すねや背中がかゆくて困る人は多いと思います。乾いた肌がかゆくなるのは、かゆみを伝える神経が、肌の表面近くまで伸びてくるからです。
乾燥した肌では、神経を伸ばす物質が増えて、神経を遠ざける物質が減ります。そのため、かゆみを伝える神経が表皮の中まで伸びてきて、ふだんなら気にならない刺激でもかゆみを感じやすくなります。乾いた肌をかき壊すことをくり返すと、湿疹になります。
すねや指に出るしもやけは、乾いた冷たい空気にくり返しさらされて起きる反応で、かゆみや痛み、赤み、腫れが出ます。いちばんの対策は、冷たい空気にさらされないようにすることです。
冬のかゆみは、早めに保湿したいサインです。かゆみや湿疹が続くときは、皮膚科で相談しましょう。
保湿剤は1日2回、たっぷりの量を塗る
冬の保湿剤は、1日2回が基本です。保湿剤のヘパリン類似物質を1日2回塗るほうが、1回よりも肌の水分がはっきり高くなったという結果があるからです。
量の目安は、人差し指の先から第1関節まで押し出した分を、手のひら2枚分の広さに塗ることです。日本皮膚科学会のかゆみのガイドラインでも、かゆみを伴う乾燥肌では保湿剤でかゆみがやわらぐことが見込まれるとされ、ヘパリン類似物質、尿素、ワセリンが挙げられています。ヘパリン類似物質や尿素は水を引き寄せて角層の水分を増やすタイプ、ワセリンは肌をおおって水分が逃げるのを防ぐタイプです。
洗い方も大切です。乾燥肌では、洗浄料をよく泡立てて、手のひらでやさしく洗うのが基本です。角層から逃げる水分を増やすナイロンタオルやブラシは使いません。
塗る量と回数を守ることが、冬の保湿のいちばんのコツです。
お湯は38〜40℃、部屋の湿度は40〜70%を目安にする
寒い日は熱いお風呂に入りたくなりますよね。でも、お湯は38〜40℃くらいのぬるめにして、部屋の湿度は40〜70%を目安にします。熱いお湯は、角層から逃げる水分を増やしてしまうからです。
日本皮膚科学会のかゆみのガイドラインは、かゆみを生じるほど熱いお湯を避けるとしていて、目安は38〜40℃くらいです。約41℃のお湯に手をつけると、角層から逃げる水分が1時間1平方メートルあたり25.75gから58.58gと約2倍に増え、約11℃の冷たい水でも34.96gに増えたという結果があります。
手をつけたあとに角層から逃げる水分の量で、熱いお湯では約2倍になりました。
水に長くふれるほど角層の守りは弱まり、熱いお湯ではその影響がさらに大きくなります。手洗いにも、ぬるま湯を使うのがよいとされています。
部屋の湿度は、ビルなどの衛生の基準で40〜70%が目安です。冬の暖房で湿度が下がるときは、加湿器などで補います。新しい肌着は使う前に水洗いし、爪を短く切ってなるべくかかないことも、かゆみのガイドラインに挙がる基本です。
お湯はぬるめ、部屋はうるおいを足す、と肌のまわりの温度と湿度を整えることも、冬の大事な手入れです。
まとめ
- 東京の湿度は12月56%、1月51%、2月52%で、1月が1年の最低です。暖房で室内はさらに乾きます
- 皮脂は冬に少なめで、紫外線は冬もゼロにならず、雪の照り返しで2倍近くになります
- 冬の角層は水分もセラミドも減り、水分が逃げやすくなります
- 乾いた肌では、かゆみを伝える神経が表皮まで伸びて、かゆみを感じやすくなります
- 保湿剤は1日2回たっぷり、お湯は38〜40℃、部屋の湿度は40〜70%が目安です
冬の手入れは、特別なものを足すより、塗る量と回数、お湯の温度、部屋の湿度を整えるところから始めてみてください。
よくある質問
冬に肌が乾燥するのはなぜですか?
冬は湿度が1年でいちばん低く、暖房で室内はさらに乾くためです。東京の湿度は1月の51%が1年の最低で、冬の角層は水分もセラミドも減ります。
冬にすねや背中がかゆくなるのはなぜですか?
乾燥した肌では、かゆみを伝える神経が表皮の中まで伸びてきて、ふだんなら気にならない刺激でもかゆみを感じやすくなるためです。かき壊しをくり返すと湿疹になるので、早めに保湿しましょう。
冬の保湿剤はどれくらい塗ればいいですか?
1日2回が基本で、人差し指の先から第1関節まで押し出した分を、手のひら2枚分の広さに塗るのが目安です。ヘパリン類似物質では、1日2回のほうが1回より肌の水分が高くなったという結果があります。
お風呂は熱いほうが肌にいいですか?
いいえ。かゆみを生じるほど熱いお湯は避けるのが日本皮膚科学会の方針で、目安は38〜40℃です。熱いお湯に手をつけると、角層から逃げる水分が約2倍に増えたという結果があります。
冬も日焼け止めは必要ですか?
必要な場面があります。1月でもUVBはピークの約5分の1、UVAは約2分の1あり、新雪は紫外線の80%を反射するので、雪の照り返しで浴びる量は2倍近くになります。
この記事で参照した情報
- 気象庁「過去の気象データ検索」東京 月ごとの平年値(統計期間1991〜2020年)
- 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」(日皮会誌131(10):2255-2270)
- 日本皮膚科学会「皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020」(日皮会誌130(7):1589-1606)
- 岡田ほか「Seasonal changes in water content of the forearm skin (stratum corneum)」日本生気象学会雑誌 52(2):131, 2015
- Kikuchi K, et al. Improvement of Mild Inflammatory Changes of the Facial Skin Induced by Winter Environment with Daily Applications of a Moisturizing Cream. Dermatology 2003;207(3):269-275
- Fujiwara A, et al. Age-related and seasonal changes in covalently bound ceramide content in forearm stratum corneum of Japanese subjects. Arch Dermatol Res 2018
- Rogers J, et al. Stratum corneum lipids: the effect of ageing and the seasons. Arch Dermatol Res 1996;288(12):765-770
- Youn SW, et al. Regional and seasonal variations in facial sebum secretions. Skin Res Technol 2005;11(3):189-195
- Engebretsen KA, et al. The effect of environmental humidity and temperature on skin barrier function and dermatitis. J Eur Acad Dermatol Venereol 2016;30(2):223-249
- Herrero-Fernandez M, et al. Impact of Water Exposure and Temperature Changes on Skin Barrier Function. J Clin Med 2022;11(2):298
- 持田ヘルスケア スキンケア講座(監修:東京医科大学病院皮膚科)
- 厚生労働省 健康局長通知「建築物における衛生的環境の維持管理について」(平成20年1月25日 健発第0125001号)
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」(2020年3月改訂版)
- 気象庁「紫外線のデータ集」(日最大UVインデックスの月平均値)
- MSDマニュアル家庭版「非凍結性の組織障害」(2024年11月更新)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層水分量」
- マルホ「ヒルドイド」医薬品インタビューフォーム(2025年7月改訂 第22版)
- Sethi A, et al. Moisturizers: The Slippery Road. Indian J Dermatol 2016;61(3):279-287
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
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