この記事でわかること
- フケが、頭皮のどこで、どう起きているのか
- フケ用シャンプーの有効成分の種類と違い
- ピリチオン亜鉛がEUで使えなくなった理由
フケやかゆみが気になってフケ用シャンプーを見てみると、知らない成分の名前が並んでいて、どれを選べばいいのか迷いますよね。
結論から言うと、フケ用シャンプーの多くは医薬部外品で、有効成分の多くは頭皮にいる真菌が増えすぎるのを抑えて「ふけ・かゆみを防ぐ」ためのものです。成分ごとの違いは、働き方と国の決まりの違いです。まずはフケがどう起きているのかから見ていきましょう。
フケは、皮脂と頭皮にいる真菌マラセチアから始まる
フケ症には、皮脂と、頭皮にふだんからいる真菌のマラセチアが関わると考えられています。真菌はカビの仲間で、マラセチアは皮脂を好む、皮膚の常在菌の中の主な真菌です。
マラセチアが皮脂を分解すると、脂肪酸などができます。これが頭皮の炎症のもとになり、フケやかゆみにつながるとみられています。皮脂と常在の真菌が関わって起こる皮膚の炎症が、脂漏性皮膚炎です。
有効成分の多くは、枠で囲んだ「真菌が皮脂を分解する」段階に関わります。
出る
分解する
できる
かゆみ
マラセチアは健康な人の皮膚にもいるので、ゼロにするものではありません。そのため、フケ用シャンプーの有効成分の多くは、真菌が増えすぎるのを抑える側に働きます。フケの原因は、頭皮の皮脂と真菌のバランスにある、と覚えておけば大丈夫です。
「ふけ・かゆみを防ぐ」と書けるのは医薬部外品だけ
「ふけ・かゆみを防ぐ」とうたえるのは、医薬部外品の薬用シャンプーだけです。国が有効成分と効能を審査して認めているからです。
厚生労働省の薬用シャンプーの審査の決まりでは、効能は「ふけ・かゆみを防ぐ」「毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ」のほか、毛髪や頭皮を清浄にする、すこやかに保つ、毛髪をしなやかにする、といったものから選びます。薬用リンスでも「ふけ・かゆみを防ぐ」効能がうたえます。
ふつうの化粧品のシャンプーに認められているのは、「フケ、カユミを抑える」「フケ、カユミがとれる」という言い方です。似ていますが「防ぐ」とは別の枠です。パッケージに医薬部外品や薬用とあるかが、見分ける目印になります。
迷ったら、まず医薬部外品の表示と有効成分の名前を見る、と覚えておきましょう。
有効成分の多くは、真菌が増えすぎるのを抑える
フケ用シャンプーでよく見る有効成分は、ピリチオン亜鉛、ミコナゾール硝酸塩、ピロクトンオラミン、サリチル酸などです。名前は違っても、多くは先ほどの流れの「真菌」の段階に関わります。
国の審査の決まりには、有効成分と量の表があります。ピリチオン亜鉛は50%の水性懸濁液として0.8〜1.6%、サリチル酸は0.1〜2%です。ほかにイソプロピルメチルフェノールやグリチルリチン酸ジカリウムなども載っています。ピリチオン亜鉛は、ジンクピリチオンとも呼ばれます。
表にないミコナゾール硝酸塩やピロクトンオラミンは、前例や有効性・安全性の資料をもとに審査され、これらを有効成分にした医薬部外品のフケ用シャンプーも売られています。
それぞれ、次のような結果があります。
- ピリチオン亜鉛は、マラセチアを含む酵母の細胞の中に銅を運び込み、増えるのを抑えるしくみがわかっています。
- ミコナゾール硝酸塩0.75%入りのシャンプーは、有効成分を除いた同じシャンプーより、フケ症の人で効果が見られた割合が高かったという結果があります。皮膚真菌症の診療ガイドラインも、フケ症でマラセチアに対する働きが示されているとしています。
- ピロクトンオラミンは、クリンバゾールと組み合わせたシャンプーで、ピリチオン亜鉛1%のシャンプーと同じくらいフケを減らしたという結果があります。
どの成分も、フケのもとになる真菌の増えすぎに向けた成分です。表示を見て、自分の頭皮に合うものを選びましょう。
ピリチオン亜鉛は、EUでは使えないが日本では使える
ピリチオン亜鉛は、EUでは2022年3月1日から化粧品に使えなくなりましたが、日本では今も使える成分です。EUで使えなくなったのは、分類のルールによるものです。
ピリチオン亜鉛は、動物の試験の結果をもとに、生殖に影響するおそれのある物質の区分1Bに分類されました。EUではこの区分の物質は原則として化粧品に使えず、例外として使うには、代わりになる適当な成分がないことと、専門の委員会が安全と認めることが条件です。
EUの委員会は、洗い流すヘア製品のフケ防止成分として1%までなら安全と判断していました。それでも代わりの成分がないことが示されなかったため、使えない成分の一覧に移されました。区分は生殖への影響で、発がん性ではありません。
日本では、化粧品基準で洗い流す化粧品なら100gあたり0.10gまでの防腐剤として認められ、薬用シャンプーの有効成分の表にも載っています。EUの決まりと日本の決まりは別と考えると、わかりやすいです。
赤みやかゆみが続くなら、シャンプーより皮膚科へ
赤みや湿疹、強いかゆみがあるときや、フケが続くときは、皮膚科を受診しましょう。脂漏性皮膚炎は皮膚科で治療する病気で、医薬部外品のシャンプーは治療をうたえないからです。
フケ用シャンプーの使い方と、皮膚科に行く目安です。
見て選ぶ
やめる
皮膚科へ
予防に
ピリチオン亜鉛はアレルギーを起こしにくい成分ですが、広く使われているぶん、ピリチオン亜鉛入りのシャンプーで頭皮や顔、首、手にかゆい発疹が出た例も報告されています。使って赤みやかゆみが強くなったら使うのをやめ、目に入ったときはすぐに洗い流しましょう。
皮膚科で症状が落ち着いたあとは、フケ・かゆみ向けのシャンプーで、無理のない範囲で予防を心がける使い方がすすめられています。困ったら一人で悩まず、皮膚科で相談するのが近道です。
まとめ
- フケ症には、皮脂と、頭皮にふだんからいる真菌のマラセチアが関わると考えられています
- 「ふけ・かゆみを防ぐ」とうたえるのは医薬部外品の薬用シャンプーだけです
- 有効成分の多くは、真菌が増えすぎるのを抑える側に働きます
- ピリチオン亜鉛はEUでは使えなくなりましたが、分類のルールによるもので、日本では今も使えます
- 赤みや湿疹、強いかゆみ、続くフケは、シャンプーより皮膚科で相談します
フケ用シャンプーは、病気の治療ではなく、ふけ・かゆみを防ぐための医薬部外品です。パッケージの表示と有効成分の名前を見て、選んでみてください。
よくある質問
フケ用シャンプーはフケの治療に使えますか?
治療のためのものではありません。医薬部外品の薬用シャンプーで認められている効能は「ふけ・かゆみを防ぐ」までで、脂漏性皮膚炎は皮膚科で治療する病気です。
フケにはカビが関係していますか?
頭皮にふだんからいる真菌のマラセチアが関わると考えられています。マラセチアが皮脂を分解してできる脂肪酸などが、頭皮の炎症のもとになるとみられています。
フケ用シャンプーの有効成分にはどんなものがありますか?
ピリチオン亜鉛、サリチル酸、ミコナゾール硝酸塩、ピロクトンオラミンなどがあります。多くは、真菌が増えすぎるのを抑える側に働きます。
ジンクピリチオンはEUで禁止されたのですか?
EUでは2022年3月1日から化粧品に使えなくなりました。生殖への影響の区分1Bに分類され、代わりの成分がないことが示されなかったためで、日本では今も使えます。
化粧品のシャンプーでも「ふけ・かゆみを防ぐ」と書けますか?
書けません。化粧品で認められているのは「フケ、カユミを抑える」「フケ、カユミがとれる」という言い方で、「防ぐ」は医薬部外品の効能です。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省「薬用シャンプー及び薬用リンスの承認審査に係る留意事項について」(平成26年5月2日 薬食審査発0502第1号)
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」[表2]薬用化粧品の効能又は効果の範囲
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)別表第3
- 杉田隆「皮膚マイクロバイオームとしてのマラセチア―脂漏性皮膚炎を例に―」日本皮膚科学会雑誌 131(6):1503-1509(2021)
- 日本皮膚科学会・日本医真菌学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」日皮会誌 135(13):2511-2566(2025)
- 持田ヘルスケア「フケ症とマラセチア属真菌」
- 持田ヘルスケア「コラージュフルフル」ブランドページ
- 全薬工業「ロモコートP」製品ページ
- Reeder NL, et al. Zinc Pyrithione Inhibits Yeast Growth through Copper Influx and Inactivation of Iron-Sulfur Proteins. Antimicrob Agents Chemother 2011;55(12):5753-5760
- 清佳浩ほか「フケ症に対する0.75%硝酸ミコナゾール配合シャンプーの有用性の検討」日本医真菌学会雑誌 38(1):87-97(1997)
- 清佳浩・小林めぐみ・早出恵里「フケ症に対するミコナゾール硝酸塩配合リンスの有用性の検討」Medical Mycology Journal 52(3):229-237(2011)
- Schmidt-Rose T, et al. Efficacy of a piroctone olamine/climbazol shampoo in comparison with a zinc pyrithione shampoo in subjects with moderate to severe dandruff. Int J Cosmet Sci 2011;33:276-282
- Commission Regulation (EU) 2021/1902 of 29 October 2021
- SCCS. Opinion on Zinc pyrithione (ZPT) (SCCS/1614/19), 3-4 March 2020
- Hsieh CW, Tu ME, Wu YH. Allergic contact dermatitis induced by zinc pyrithione in shampoo: a case report. Dermatologica Sinica 2010;28(4):163-166
- 日本化粧品工業会「化粧品の使用上の注意表示に関する自主基準」(2016年12月1日)
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