この記事でわかること
- 脂漏性皮膚炎が出やすい場所と、2つの年齢の山
- マラセチアと皮脂が関わる原因と、悪化しやすい条件
- 皮膚科の治療薬と市販薬、シャンプーとふだんのケア
小鼻のわきや眉のあたりの赤みと皮むけがなかなか引かない、頭皮のフケが続く。調べるうちに「脂漏性皮膚炎」という名前にたどり着いて、どんな病気なのか、どうすればいいのか不安になりますよね。
結論から言うと、脂漏性皮膚炎は、皮脂腺の多い頭皮や顔、胸の中央に、赤みとフケのような皮むけが出る皮膚の病気です。皮膚科の塗り薬で治療し、ふだんは刺激の少ない洗浄と無香料の保湿で肌を支えるのが基本です。化粧品ではなく、薬で治療する病気だと考えておきましょう。
脂漏性皮膚炎とは、皮脂腺の多い場所に赤みとフケ状の皮むけが出る病気
脂漏性皮膚炎は、皮脂腺が密に集まる場所に、赤みと鱗屑、つまりフケのようにはがれる皮むけが出る病気です。皮脂の多い場所に出るのは、あとで見るように、原因に皮脂が関わっているからです。
顔では眉や眉間、額、小鼻のわきの溝、耳と耳の後ろに出やすく、頭皮や髪の生えぎわ、胸の中央にも出ます。皮むけは黄色っぽく脂っぽいことが多く、かゆみは軽いことが多いとされています。一般の人の1〜3%にみられるとされる、身近な病気です。
多い年齢には2つの山があります。1つは乳児期で、生後1か月頃から頭皮に黄色いかさぶたのような皮むけと赤みが出ますが、乳児は1〜2か月のうちに自然に軽くなることが多いものです。もう1つは思春期以降の大人で、特に中年以降に多く、うすい赤みと皮むけが出て、大人は慢性に続き、よくなってもくり返しやすい経過をとります。
診断は、出ている場所と見た目から皮膚科で行います。小鼻のわきの赤みはニキビや酒さと、頭皮や顔の湿疹はアトピー性皮膚炎と見分けが必要です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、出やすい場所の症状に加えて体や手足に湿疹や乾燥があれば、アトピー性皮膚炎の可能性が高くなるとしています。
赤みと皮むけが何週間も続くときは、自分で病名を決めずに皮膚科で見てもらうのがいちばんの近道です。
原因には、肌の常在菌マラセチアと皮脂が関わる
脂漏性皮膚炎には、誰の肌にもいる常在菌のマラセチアと、皮脂が関わると考えられています。マラセチアは皮脂をえさにするカビの仲間で、皮脂を分解してできる物質が炎症のきっかけになるからです。
枠で囲んだ、マラセチアという菌が皮脂を分解するところから、炎症が始まると考えられています。
皮脂が出る
分解する
できる
皮むけ
マラセチアは常在菌の一つで、皮脂を分解して脂肪酸をつくります。この脂肪酸や菌がつくる物質が肌の刺激になり、赤みや皮むけにつながると考えられています。脂漏性皮膚炎の人では、ふだんは肌の表面にいるこの菌が、角層に入り込んでいるという報告もあります。
ただ、同じ菌がいても炎症が出る人と出ない人がいます。そのため、菌そのものより、菌に対する人の側の反応の違いが大事だという見方が中心です。パーキンソン病などの神経の病気がある人や、免疫が落ちた状態の人では、頻度が高く重くなりやすいことも知られています。
名前に脂漏とついていますが、皮脂の量やなりたちは、たいてい正常です。米国皮膚科学会の患者向けの資料でも、不潔が原因ではなく、アレルギーの病気でもないとされています。洗い方が足りないせいだと自分を責めなくて大丈夫です。
脂漏性皮膚炎は、皮脂とマラセチア、それに対する肌の反応が重なって起きる病気と考えましょう。
脂漏性皮膚炎は、冬に悪化しやすく、男性に多い
脂漏性皮膚炎が悪化しやすいのは冬で、男性に多い病気です。寒くて乾燥した気候で重くなり、暖かく湿った季節に軽くなる人が多いからです。
中高年の人を調べた研究では、夏に脂漏性皮膚炎がある人は冬の約6割で、男性は女性の約2倍でした。全身が乾燥肌の人に多い傾向も報告されています。ストレスも、悪化のきっかけとして挙げられることがあります。
ビタミンB2が極端に足りない欠乏症では、症状として小鼻のわきや耳、まぶたに脂漏性皮膚炎が出ることがあります。ただし、これは欠乏症の話で、ふだんの食事でビタミンが足りている人の脂漏性皮膚炎とは分けて考えます。
冬は悪化しやすい季節と知っておき、乾燥する時期ほど保湿を意識すると安心です。
治療は皮膚科の塗り薬で。市販のステロイドは顔に広く長く使わない
脂漏性皮膚炎の治療は皮膚科で行い、中心になるのは塗り薬です。原因に関わるマラセチアに直接働く薬が、皮膚科で処方されるからです。
皮膚科で処方されるケトコナゾールの外用薬は、効能に脂漏性皮膚炎の名前があります。マラセチアに働く抗真菌薬で、最初の流れ図の枠のところに働きます。脂漏性皮膚炎には1日2回患部に塗り、ローションでは73.8%、クリームでは71.4%の人で症状がよくなったという結果があります。海外の総説でも、塗る抗真菌薬が治療の中心とされています。
ステロイドの塗り薬も、湿疹・皮膚炎の薬として処方されることがあり、海外の総説では有効だが控えめに使うものとされています。一方、市販のステロイド外用薬の効能は湿疹、皮膚炎、かぶれなどで、脂漏性皮膚炎という病名は入っていません。添付文書では、顔面には広範囲に使わないこと、長期連用しないこと、5〜6日使っても良くならなければ使用をやめて医師や薬剤師に相談することを求めています。
顔の赤みに手もとのステロイドを塗り続けるより、長引く赤みは皮膚科で相談するほうが近道です。
フケ用シャンプーにできるのは「ふけ・かゆみを防ぐ」まで
日本の薬用シャンプーは医薬部外品で、認められた効能は「ふけ・かゆみを防ぐ」までです。マラセチアに働く成分が入ったものもありますが、治療の薬ではなく、日常のケアとして位置づけられているからです。
頭皮の脂漏性皮膚炎で思い浮かぶのがフケ用シャンプーですが、脂漏性皮膚炎の治療薬ではありません。頭皮のフケやかゆみを防ぐために、それぞれの製品の使い方の表示に従って使います。
乳児の場合は、刺激の少ないベビー用シャンプーで洗うのが基本で、多くは1〜2か月のうちに自然に軽くなります。長引くときや気になるときは、小児科や皮膚科で見てもらいましょう。
シャンプーはフケやかゆみを防ぐふだんのケア、赤みが続くなら皮膚科、と分けて考えましょう。
スキンケアは、1日2回の洗顔と無香料の保湿で肌を支える
ふだんのスキンケアは、顔を1日2回洗い、洗ったあとに無香料の保湿剤を塗るのが基本です。米国皮膚科学会の患者向けの手引きでは、うるおった肌は再燃しにくいとされているからです。
米国皮膚科学会の患者向けの手引きにもとづく、ふだんの洗顔と保湿の流れです。
1日2回
洗浄料で洗う
無香料の保湿剤
避けるものとして挙げられているのは、デオドラント石けんと、香料の入ったスキンケア用品で、どちらも肌の刺激になるためです。強い洗浄で皮脂を落としきろうとするより、刺激の少ない洗浄料で洗い、保湿で乾燥を防ぐほうが、手引きの考え方に合っています。
化粧品にできるのは、肌を清浄にして肌あれを防ぎ、皮膚をすこやかに保つ範囲までです。油分の多い化粧品やヘアオイルは、使って悪くなるようなら控える、と自分の肌で見ていきましょう。
赤みと皮むけが続くなら、化粧品を取り替え続けるより、皮膚科の薬を軸に、刺激の少ないケアで支える形を考えてみてください。
まとめ
- 脂漏性皮膚炎は、皮脂腺の多い頭皮・顔・胸の中央に赤みとフケ状の皮むけが出る病気で、乳児期と思春期以降の大人に多いです
- 常在菌のマラセチアが皮脂を分解してできる物質と、それに対する人の側の反応が関わると考えられています。不潔やアレルギーが原因ではありません
- 冬に悪化しやすく、男性に多い病気です
- 治療は皮膚科の塗り薬で、ケトコナゾールの外用薬は効能に脂漏性皮膚炎があります。市販ステロイドは顔に広く・長く使いません
- 薬用シャンプーは「ふけ・かゆみを防ぐ」まで。スキンケアは1日2回の洗顔と無香料の保湿で、香料入りと強い洗浄を避けます
脂漏性皮膚炎は長くつき合うことの多い病気ですが、皮膚科には承認された治療薬があります。小鼻のわきや眉の赤みと皮むけが続くときは、化粧品を変える前に、まず皮膚科で見分けてもらいましょう。
よくある質問
脂漏性皮膚炎とはどんな病気ですか?
皮脂腺の多い頭皮や顔、胸の中央に、赤みとフケのような皮むけが出る皮膚の病気です。眉や小鼻のわき、耳の周りに出やすく、乳児期と思春期以降の大人に多く、乳児は自然に軽くなることが多い一方、大人は慢性に続きやすいです。
脂漏性皮膚炎の原因は何ですか?
誰の肌にもいるカビの仲間のマラセチアが皮脂を分解してできる物質と、それに対する人の側の反応が関わると考えられています。皮脂の量はたいてい正常で、不潔やアレルギーが原因ではありません。
脂漏性皮膚炎はどうやって治療しますか?
皮膚科の塗り薬で治療します。ケトコナゾールの外用薬は承認された効能に脂漏性皮膚炎があり、1日2回患部に塗ります。大人では慢性でくり返しやすいため、刺激の少ない洗浄と無香料の保湿で肌を支えながら、皮膚科の治療を続けます。
脂漏性皮膚炎に市販薬は使えますか?
市販のステロイド外用薬の効能は湿疹、皮膚炎などで、脂漏性皮膚炎の病名は入っていません。添付文書では、顔面には広範囲に使わず、長期連用せず、5〜6日使っても良くならなければ使用をやめて医師や薬剤師に相談することになっています。
脂漏性皮膚炎にフケ用シャンプーは効きますか?
フケ用の薬用シャンプーは医薬部外品で、認められた効能は「ふけ・かゆみを防ぐ」までです。頭皮のフケやかゆみを防ぐ日常のケアには使えますが、脂漏性皮膚炎の治療薬ではないので、赤みやかゆみが続くときは皮膚科で診てもらいます。
この記事で参照した情報
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「脂漏性皮膚炎」(2024年9月改訂)
- MSDマニュアル 家庭版「脂漏性皮膚炎」(2025年4月改訂)
- 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」(日皮会誌134(11):2741-2843)
- 日本皮膚科学会・日本医真菌学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」(日皮会誌135(13):2511-2566)
- 杉田隆「皮膚マイクロバイオームとしてのマラセチア―脂漏性皮膚炎を例に―」日皮会誌131(6):1503-1509, 2021
- ニゾラールローション2% 添付文書(2022年9月改訂 第4版)
- エクシロンプロ軟膏 添付文書(一般用医薬品)
- Clark GW, Pope SM, Jaboori KA. Diagnosis and Treatment of Seborrheic Dermatitis. Am Fam Physician 2015;91(3):185-190
- Sanders MGH, et al. Prevalence and determinants of seborrhoeic dermatitis in a middle-aged and elderly population: the Rotterdam Study. Br J Dermatol 2018;178(1):148-153
- American Academy of Dermatology「Seborrheic dermatitis: Causes」
- American Academy of Dermatology「Seborrheic dermatitis: Self-care」
- MSD Manual Professional「Riboflavin Deficiency」(2026年6月改訂)