この記事でわかること
- シワが肌の中のどこで起きているのか
- バクチオールとレチノールで、シワについて言えることの違い
- 「植物性レチノール」という呼び名の受け取り方
「植物性レチノール」と紹介されるバクチオール。レチノールの代わりに使えるのか、同じようにシワに効くのか、気になりますよね。
結論から言うと、バクチオールはレチノールの代わりではなく、立場の違う化粧品の成分です。「しわを改善する」効能が国に認められているのは医薬部外品の有効成分のレチノールで、バクチオールが入った化粧品で言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
浅いシワは角層、深いシワは真皮で起きている
シワには、角層が乾いてできる浅いシワと、角層よりずっと下の真皮で刻まれる深いシワがあります。原因の場所が違うので、化粧品で手入れできる範囲も変わります。
化粧品が働くのは角層までなので、言えるのは浅い小ジワの範囲です。
乾燥による小ジワ
深いシワ
- 角層
- 水分
- 真皮のハリを支える線維
角層は、皮脂膜・天然保湿因子・細胞間脂質の3つでうるおいを保っていて、このバランスが崩れて乾くと表面に浅い溝ができます。これが乾燥による小ジワです。深いシワは、紫外線や年齢によって真皮で肌のハリを支える線維が衰え、表面の溝が深く刻まれてできます。
「しわを改善する」と言えるのは、医薬部外品のレチノール
シワについて「改善する」と言えるのは、医薬部外品の有効成分のレチノールで、バクチオールは化粧品の成分です。同じシワの話でも、化粧品と医薬部外品では言えることの決まりが違います。
化粧品は「目立たなくする」、医薬部外品は「改善する」と、言える動詞が違います。
レチノールはビタミンAの仲間で、2017年に、有効成分の純粋レチノールで医薬部外品の「しわを改善する」効能が日本で初めて認められました。バクチオールは医薬部外品の有効成分ではなく、化粧品が「乾燥による小ジワを目立たなくする」とうたうにも、専門の学会のガイドラインに基づく試験か、それと同等以上の試験で効果を確かめる必要があります。広告では、加齢によるシワなども含めて、すべてのシワに効果があると誤解されるような表現をしてはならないと決められています。
研究では、バクチオールでシワが目立ちにくくなった結果もある
研究では、バクチオールのクリームで顔のシワが目立ちにくくなったという結果があります。ただ、研究の結果と、化粧品の製品がうたえる効能は別のものです。
たとえば、バクチオール0.5%のクリームとレチノール0.5%のクリームを顔に使うと、どちらもシワの面積と色むらが減り、2つの差は小さかったという結果があります。レチノールの刺激が気になる人のあいだでバクチオールが話題になるのは、この結果のためです。
皮むけやヒリつきは、レチノールのほうに多く出ました。
バクチオール0.5%
レチノール0.5%
- 赤み
- 皮むけ
それでも、バクチオールが入った化粧品で言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。研究の結果を知ったうえで、製品に書かれた効能の範囲で期待するのが安心です。
バクチオールは、マメ科のオランダビユに由来する化粧品の成分
バクチオールの由来植物とされるのは、マメ科のオランダビユです。卵形で縁にぎざぎざのある葉をもつ一年草で、中国名や生薬名は補骨脂、読みはホコツシといいます。
成分表示では「バクチオール」と書かれます。
オランダビユ(マメ科)
生薬の補骨脂は、熟した種子
食品としての扱いを決める国のリストでは、オランダビユの果実であるホコツシは、医薬品的な効能効果をうたわない限り医薬品とは判断しない側に入っています。ただしこれは食品での扱いで、化粧品に入れてよいかどうかの根拠は化粧品基準のほうになります。
バクチオールは、日本化粧品工業会の成分表示名称リストに、成分番号564392として載っています。このリストは、国際的な成分名をもとに、全成分表示に書く日本語の名前を決めた台帳です。載っているのは名前が決まっているということで、有効性や安全性が評価されたということではありません。医薬部外品の有効成分の承認とは別の話です。
「植物性レチノール」は、同じ効果という意味ではない
「植物性レチノール」と書かれていると、レチノールと同じ効果があるように思いますよね。でも、この呼び名は、レチノールと同じ効果がある植物の成分という意味ではありません。化粧品が、医薬部外品の有効成分と同じ効果を持つかのように書けば、効能の範囲を超えるからです。
化粧品業界の広告ガイドラインでも、効能効果の表現は厚生労働省の定める範囲を超えてはならないとされています。特定の成分を取り上げることも、その成分が有効成分であるかのような誤解を生むため、原則として行わないとしています。効能効果が確実なことや安全なことを保証するような表現、最大級の表現も認められていません。
これは、バクチオールが危ない成分だという意味ではありません。シワを改善したいなら医薬部外品のレチノール、化粧品の中から選ぶならバクチオールも候補のひとつ、というように、レチノールとは立場の違う成分として選ぶことが大切です。
まとめ
- 浅い小ジワは角層の乾き、深いシワは真皮の線維の衰えで起き、化粧品が働くのは角層までです
- 「しわを改善する」効能が認められているのは、医薬部外品の有効成分のレチノールです
- バクチオールの化粧品で言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」までで、試験が必要です
- 研究では、バクチオールのクリームでシワが目立ちにくくなり、レチノールより皮むけやヒリつきが少なかったという結果があります
- 由来植物はマメ科のオランダビユで、成分表示名称リストに載っているのは名前が決まっているという意味です
バクチオールは、レチノールの代わりではなく、立場の違う化粧品の成分です。製品に書かれた効能の範囲を見て、期待の置きどころを決めましょう。
よくある質問
バクチオールはレチノールの代わりになる?
同じ立場の成分ではありません。「しわを改善する」効能が国に認められているのは、医薬部外品の有効成分のレチノールです。バクチオールは化粧品の成分です。
バクチオール配合の化粧品でシワについて言えることは?
化粧品として言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。これをうたうにも、効果を確かめる試験が必要です。
バクチオールでシワが目立ちにくくなった研究はある?
バクチオール0.5%のクリームとレチノール0.5%のクリームで、どちらもシワの面積と色むらが減り、皮むけやヒリつきはレチノールのほうが多かったという結果があります。ただし、化粧品の製品がうたえる効能は「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
バクチオールは何の植物からとれる?
由来植物として挙げられるのは、マメ科のオランダビユです。生薬名は補骨脂(ホコツシ)で、生薬には成熟した種子が使われます。
「植物性レチノール」はレチノールと同じ効果という意味?
そういう意味ではありません。化粧品が医薬部外品の有効成分と同じ効果があるように書くと、効能の範囲を超えてしまいます。成分表示名称リストに載っていることも、名前が決まっているという意味で、効果や安全性の承認ではありません。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品工業会「化粧品の成分表示名称リスト」
- 日本化粧品工業会「成分表示名称に関するよくある質問」
- 熊本大学薬学部薬用植物園 薬草データベース「オランダビユ」
- 富山大学薬学部附属薬用植物園 植物データベース「オランダビユ」
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示」別添3(非医リスト)
- 厚生労働省「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示について」(令和2年3月31日 薬生監麻発0331第9号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」(平成23年7月21日 薬食審査発0721第1号・薬食監麻発0721第1号)
- 日本化粧品工業会「化粧品で表示できるようになった〝シワに対する効能表現〟」
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」(2020年版)
- WWDJAPAN「資生堂が『エリクシール』からシワ改善クリーム発売」(2017年4月20日)純粋レチノールの「シワを改善する」承認の報道
- Dhaliwal S, Rybak I, Ellis SR, et al. Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing. Br J Dermatol 2019;180(2):289-296
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