この記事でわかること
- 酵素洗顔の酵素が、肌の表面で何を切っているか
- パパイン・ブロメライン・プロテアーゼ・リパーゼの違い
- 粉末が多い理由と、アレルギーの注意
「酵素洗顔」や「酵素パウダー」はよく見かけるけれど、酵素が肌の上で何をしているのか、肌に強すぎないのか、気になりますよね。
結論から言うと、酵素は決まった相手のつなぎ目だけを切る、たんぱく質でできたはさみです。酵素洗顔に入っているのはたんぱく質を切る酵素で、肌の表面に残った古い角質のような、たんぱく質の汚れに向けた洗顔料です。パパイアからとれる酵素のようにアレルギーを起こすことがあるものもあるので、合わないと感じたらやめましょう。
酵素は、決まった相手のつなぎ目だけを切ります。
肌の表面
古い角質を拡大すると
- 古い角質
- たんぱく質(ケラチン)
- たんぱく質を切る酵素
酵素は、決まった相手だけを切るはさみ
酵素は、自分は変わらずに相手の反応を速める、たんぱく質でできた道具です。結びつく相手が鍵と鍵穴のように決まっていて、この性質を基質特異性といいます。だから、たんぱく質を切る酵素は油を切れず、油を切る酵素はたんぱく質を切れません。
たんぱく質は、アミノ酸がペプチド結合というつなぎ目でつながった鎖です。切る酵素は分解酵素と呼ばれ、水を加えてこのつなぎ目を切る反応を助けます。切ったあとも酵素そのものは変わらないので、くり返し働けます。酵素を見かけたら、何を切る酵素なのかを見ると、その製品のねらいがわかります。
パパインやブロメラインは、果物からとれるたんぱく質のはさみ
化粧品で出てくる酵素は、ほとんどがたんぱく質を切るプロテアーゼの仲間と、油を切るリパーゼです。プロテアーゼはたんぱく質を切る酵素をまとめた呼び名で、パパインとブロメラインはその仲間です。
化粧品の酵素は、ほとんどがたんぱく質か油を切る仲間です。
未熟なパパイアで肉がやわらかくなるのは、パパインが肉のたんぱく質を分解するからです。パイナップルで肉がやわらかくなるのも同じ理屈で、こちらはブロメラインの働きです。洗剤用のプロテアーゼも、自然界から取り出した細菌がつくったものです。リパーゼは油をグリセリンと脂肪酸に分ける酵素で、肌の上ではニキビに関係するアクネ菌もリパーゼを出しています。パパイン、ブロメライン、プロテアーゼ、リパーゼは、どれも食品添加物の名簿にも載っています。
酵素洗顔は、古い角質のたんぱく質に向けた洗顔料
酵素洗顔は、はがれかけた古い角質のような、たんぱく質の汚れに向けて酵素を入れた洗顔料です。洗顔で落とす汚れの中に、たんぱく質でできたものがあるからです。
洗顔で落とす汚れには、余分な皮脂や古くなった角層のように内側から出るものと、ちりやほこり、メイクのように外からつくものがあります。このうち、役目を終えてはがれかけた角層の主成分は、ケラチンというたんぱく質です。余分な古い角質は、肌をくすんで見せたり、ごわついた手ざわりにしたりします。毛穴の角栓も、古い角質と皮脂が固まったものです。
酵素そのものは、肌の中には入りにくい大きさです。だから働くのは、肌の表面に残った汚れです。
酵素は大きく、角層のすきまを通り抜けにくいので、働くのは肌の表面です。
分子量500未満の小さな分子
酵素(分子量は数万)
- 角層の細胞
- すきまの脂
皮膚を通り抜けやすいのは分子量500未満がめやすとされ、パパインは212個のアミノ酸がつながった、分子量が数万の規模のたんぱく質です。化粧品として言えるのは「(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする」などの範囲です。肌のごわつきやくすみが気になるときに、肌の表面の汚れを落とす洗顔料として選びましょう。
酵素は熱で形がくずれるので、粉末のものが多い
酵素はたんぱく質なので、熱で形がくずれると働かなくなります。これを失活といいます。酵素は、たたまれた形にできたくぼみに相手がはまることで働くからです。
一度くずれた形は元に戻らないので、酵素はもう切れません。
ふだんの酵素
熱で形がくずれた酵素
たんぱく質は、熱を加えると立体の形がくずれ、そこから元に戻らない状態になることがわかっています。酵素洗顔に、粉末で1回分ずつ分けたものが目立つのは、酵素を働ける状態のまま届けるための工夫と考えられます。熱いお湯で溶かさず、ぬるま湯で使いましょう。
パパインは、アレルギーを起こすことがある
パパインは、アレルギーを起こすことが知られている物質です。粉末の酵素洗顔は粉を吸い込まないように使い、肌に合わないと感じたらやめる、この2つが基本です。
多いのは、粉を吸い込むことによる仕事上のアレルギーです。植物由来のたんぱく質を切る酵素は、空気中の粒子を吸い込むことでアレルギーを起こすことがあり、パパインやブロメラインで報告があります。日本でも、パパイン入りの洗顔料で、肌にふれたところにじんましんが出た例が報告されています。使っていて赤みやかゆみが出たら、使うのをやめて皮膚科に相談しましょう。肌トラブルの相談窓口も頼れます。
SODは、活性酸素を別の物質に変える酵素
成分表で見かけるSOD、正式にはスーパーオキシドジスムターゼは、切る酵素ではなく、活性酸素を別の物質に変える酵素です。
SODは、スーパーオキシドという活性酸素2つから、酸素と過酸化水素をつくる反応を助けます。体の中では、活性酸素を処理する酵素の代表です。化粧品の原料としては、メロンの抽出物などが使われています。ただし、これは体の中での酵素の働きの話で、化粧品として言えるのは「肌を整える」などの範囲です。
まとめ
- 酵素は、決まった相手のつなぎ目だけを切るたんぱく質のはさみです
- パパインはパパイア、ブロメラインはパイナップルからとれ、たんぱく質を切る仲間です
- 酵素洗顔は、古い角質のたんぱく質に向けた洗顔料で、働くのは肌の表面です
- 酵素は熱で形がくずれて働かなくなるので、粉末のものが多くなります
- パパインはアレルギーを起こすことがあるので、粉を吸い込まず、合わなければやめます
肉をやわらかくするパパイアやパイナップルと、洗顔料の中の酵素は、同じしくみの話です。ごわつきが気になるときに、ぬるま湯で、粉を吸い込まないように使いましょう。
よくある質問
酵素洗顔は何を落とす?
はがれかけた古い角質のような、たんぱく質の汚れに向けた洗顔料です。古い角質の主成分はケラチンというたんぱく質で、酵素洗顔にはたんぱく質を切る酵素が入っています。
酵素洗顔でアレルギーが起きることはある?
あります。パパインはアレルギーを起こすことがある物質で、日本でもパパイン入りの洗顔料でじんましんが出た例が報告されています。粉末は吸い込まないように使い、肌に合わないと感じたらやめましょう。
酵素洗顔に粉末タイプが多いのはなぜ?
酵素が働く状態を保つための形と考えられます。酵素はたんぱく質なので、熱で形がくずれると元に戻らず、働かなくなります。これを失活といいます。
パパインとブロメラインの違いは?
とれる植物が違います。パパインはパパイアの果実、ブロメラインはパイナップルの茎からとれ、どちらもたんぱく質を切るプロテアーゼの仲間です。
酵素は肌の中に入る?
入りにくい大きさです。皮膚を通り抜けやすいのは分子量500未満がめやすとされ、パパインは分子量が数万の規模のたんぱく質です。働くのは肌の表面です。
この記事で参照した情報
- 東京薬科大学 生命科学部 キーワード解説「酵素」
- 谷川実「酵素反応の基礎」化学と教育 66(12):584-587, 2018 (日本化学会)
- 岡山大学 プレスリリース「タンパク質の熱失活のしくみ」(2017年9月28日)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「分解酵素」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「プロテアーゼ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「リパーゼ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「抗酸化酵素」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「洗顔料」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層除去」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角栓」
- IUBMB ExplorEnz EC 3.4.22.2 papain
- IUBMB ExplorEnz EC 3.4.22.32 stem bromelain
- IUBMB ExplorEnz EC 3.1.1.3 triacylglycerol lipase
- IUBMB Enzyme Nomenclature EC 1.15.1.1 superoxide dismutase
- 農林水産省 消費者の部屋「パパイヤで肉がやわらかくなるのはなぜ」
- 佐伯勝久「洗剤用セリンプロテアーゼ」化学と教育 59(3), 2011 (日本化学会)
- UniProt P00784 PAPA1_CARPA (Papain)
- 厚生労働省「既存添加物名簿」(平成8年厚生省告示第120号)
- Vouldoukis I, et al. J Ethnopharmacol 2004;94:67-75 (メロン抽出物のSOD活性)
- Giangrieco I, et al. Foods 2023;12(15):2852 (植物由来システインプロテアーゼのアレルギー)
- 池澤善郎ほか「パパイン酵素入り洗顔料による接触蕁麻疹とワサビによるアナフィラキシーの合併例」皮膚病診療 33(5):503-506, 2011 (J-GLOBAL)
- Bos JD, Meinardi MM. The 500 Dalton rule for the skin penetration of chemical compounds and drugs. Exp Dermatol 2000;9(3):165-169
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)