この記事でわかること
- 馬油の正体と、肌の上での働き
- 顔への塗り方と、黒く・赤くなる話の考え方
- 保存のしかたと、馬油シャンプーで馬油が受け持つ役目
馬油は昔からある油ですが、顔に塗っても大丈夫なのか、「黒くなる」「赤くなる」という話は本当なのか、気になりますよね。
結論から言うと、馬油は馬の脂肪からとる動物性の油で、肌の表面を油分でおおって乾燥を防ぐ成分です。酸化しやすいので新しいうちに使い、はじめは少量で試せば、顔にも取り入れられます。まずは、馬油がどんな油なのかから見ていきましょう。
馬油は、馬の脂肪からとる油脂で、読み方は「ばーゆ」
馬油とは、馬の脂肪からとる動物性の油脂で、読み方は「ばーゆ」です。化粧品の成分表でも、そのまま「馬油」と書かれます。化粧品では、肌にうるおいを与え、乾燥から守る油分として配合されます。
化粧品の油の分類では、馬油はオリーブ油やシア脂と同じ油脂の仲間です。油脂は、グリセリンに脂肪酸が3つ結びついたトリグリセリドが主成分で、人の皮脂の主成分と同じ種類のつくりをしています。同じ「オイル」と呼ばれていても、ホホバオイルはろうの仲間、スクワランは炭化水素の仲間で、つくりが違います。
馬油が「皮脂に近い」と紹介されるのは、主成分のトリグリセリドが、人の皮脂の主成分と同じ種類だからです。
馬油の効果は、油分で肌の表面をおおって乾燥を防ぐこと
馬油の効果は、油分で肌の表面をおおい、角層の水分が逃げるのを防ぐことです。肌の乾燥は、肌のいちばん外側の角層から水分が逃げて足りなくなることで起きるからです。
角層は、3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
角層では、皮脂膜が表面をおおい、天然保湿因子が細胞の中で水を抱え、細胞間脂質が細胞のすき間を埋めて水分を逃がしません。皮脂が少なかったり、乾いた空気にさらされたりすると、角層の水分が逃げて、かさつきにつながります。
馬油は、この表面をおおう油分を補う側の成分です。油分で肌の表面をおおって水分が逃げるのを防ぎ、肌をやわらかく保つ働きは、エモリエントと呼ばれます。
馬油の油分が肌の表面をおおうと、角層の水分が逃げにくくなります。
化粧品として言えるのは、「皮膚にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」「皮膚を保護する」といった範囲です。乾燥が気になるところの、ふた役の油として使いましょう。
やけどや傷に使う話は言い伝え。やけどは医療機関へ
やけどや傷に馬油を使う話は、昔からの言い伝えで、化粧品の効能ではありません。化粧品の馬油として言えるのは、先ほどのうるおいや乾燥を防ぐ範囲だからです。
馬油は、アジアの国々で昔からやけどや皮膚の傷に使われてきたとされ、中国の古い本草書にもそうした記述があるとされています。こうした使われ方が、馬油が「やけどに効く」と言われるもとになっています。
やけどをしたときは、自分の判断で馬油などの油を塗らず、医療機関に相談しましょう。
中身はオレイン酸などの脂肪酸で、肌の温度でとけやすい
馬油は、オレイン酸などの脂肪酸でできていて、手のひらや肌の温度でとけやすい油です。脂肪酸の組み合わせによって、油のとけ方が変わるからです。
馬油をつくる脂肪酸を調べると、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸が多く、α-リノレン酸も含まれています。豚や牛の脂と比べると、馬の脂は不飽和の度合いが高いという結果があります。割合は、調べたものによって幅があります。
馬油のとけ方を調べると、室温より低い温度から体温に近づくまでのあいだに、大部分がとけていくという結果があります。とける温度に幅があるので、季節によって固く感じたり、やわらかく感じたりします。
冬に固く感じたら、手のひらで温めてから使うと、のばしやすくなります。
酸化しやすい油なので、熱と光を避けて早めに使う
馬油は酸化しやすい油なので、高温や直射日光を避けて保管し、開封したら早めに使い切ります。リノール酸やα-リノレン酸のような不飽和脂肪酸は、酸化しやすい部分をもっているからです。
不飽和脂肪酸の多い油は、紫外線や熱で酸化が速まり、傷みやすくなります。
多い油
酸素と反応
できる
油の中の不飽和結合という部分が酸素と反応すると、過酸化脂質というものができます。紫外線や熱は、この反応を速めます。皮脂の成分が酸化してできた過酸化脂質は、ニキビや日焼けの原因になるともいわれています。
実際に、馬油は保存する温度が高いほど、酸化が速く進んだという結果があります。ろうの仲間で酸化しにくいホホバオイルなどと比べると、馬油は傷みやすい側の油です。
においや色がいつもと違うと感じたら、使わないのが安心です。使用期限や保管のしかたは、製品の表示に従ってください。
顔には、少量を手のひらで温めてうすくのばす
顔に油を塗ると、べたつかないか、合わなかったらどうしようと思いますよね。馬油の使い方は、まずは製品に書かれた使い方に従い、少量から始めるのが基本です。
馬油だけでできた製品なら、少量を手のひらにとって温め、とけてやわらかくなってから、乾燥が気になるところにうすくのばすと扱いやすいでしょう。馬油は油分を補うもので、水分そのものを与えるものではない点も覚えておくと、使いどころを考えやすくなります。
顔に塗るときは、はじめは腕の内側などで少量を試し、目に入らないように気をつけましょう。馬油に限らず、化粧品の成分はどれでも肌に合わないことがあります。馬油クリームのように、クリームや乳液に馬油が入っている場合は、香料や防腐剤など一緒に入っているほかの成分も成分表で見ておくと手がかりになります。
赤みやかゆみ、ぶつぶつが出たら使うのをやめ、続くときは皮膚科に相談しましょう。
黒くなる・赤くなる話は、かぶれと古い油から考える
「馬油を顔に塗ると黒くなる」「赤くなる」と聞くと、使うのをためらいますよね。この話は、化粧品一般で起こりうる、かぶれのあとの色素沈着と、古くなった油から考えるとわかりやすくなります。
黒くなる話で考えられるのは、かぶれのあとの色素沈着です。合わない化粧品でかぶれをくり返すと、肌に色素沈着が残ることがあります。化粧品のかぶれには、赤みやかゆみが目立たず、色素沈着が中心になる型もあるとされています。その原因として報告されているのは香料や保存料などで、馬油の製品でも、馬油以外の成分を含めて考えます。
もう一つは酸化した油です。酸化したスクワレンやオレイン酸を塗ると、毛穴づまりができやすかったという結果があります。新しいうちに使い、古くなった油を使わないことが大切です。
赤くなる話は、どの成分でも起こりうるかぶれとして考えるのが自然です。塗ったあとに赤みやかゆみが出たら、その製品を使うのをやめましょう。症状が続くときは、自己判断で別の油に替えるより、皮膚科に相談するのが安心です。
馬油シャンプーの馬油は洗う成分ではなく、髪にうるおいを与える油分
馬油シャンプーで髪や頭皮の汚れを落とすのは、界面活性剤という洗浄成分の働きで、馬油は洗う成分ではありません。馬油は、洗ったあとの髪にうるおいを与える目的の油分として入っています。
髪の化粧品として馬油に言えるのは、「毛髪の水分、油分を補い保つ」「毛髪につやを与える」「頭皮、毛髪にうるおいを与える」といった範囲です。髪が生える、抜け毛を防ぐといった効能は、化粧品ではうたえません。
シャンプーは汚れを落とす役目、トリートメントやコンディショナーは髪を整える役目と、ヘアケア製品の役割は分かれています。馬油シャンプーでも、洗う役目を受け持つのは洗浄成分で、馬油はうるおいを補う脇役だと考えると、製品の名前に引きずられずに選べます。
まとめ
- 馬油は馬の脂肪からとる動物性の油脂で、「ばーゆ」と読み、成分表でも「馬油」と書かれます
- 油分で肌の表面をおおって角層の水分が逃げるのを防ぎ、乾燥を防ぎます。やけどに使う話は言い伝えです
- オレイン酸などの脂肪酸が多く、肌の温度でとけやすい一方、酸化しやすいので熱と光を避けて早めに使います
- 顔には少量を温めてうすくのばし、黒く・赤くなる話は、かぶれのあとの色素沈着や古くなった油から考えます
- 馬油シャンプーで洗うのは洗浄成分で、馬油は髪にうるおいとつやを与える油分として入っています
馬油は、肌や髪に油分を補う、とけやすい油脂です。乾燥が気になるところのふた役として、新しいうちに、製品の表示どおりに使ってみてください。
よくある質問
馬油とはどんなもので、読み方は?
馬の脂肪からとる動物性の油脂で、「ばーゆ」と読みます。オリーブ油やシア脂と同じ油脂の仲間で、主成分はトリグリセリドです。化粧品では、肌や髪に油分を補い、乾燥を防ぐために使われます。
馬油の効果は?やけどにも使えますか?
油分で肌の表面をおおい、角層の水分が逃げるのを防ぎます。化粧品として言えるのは、うるおいを与える、乾燥を防ぐ、皮膚を保護するといった範囲です。やけどや傷に使う話は昔からの言い伝えなので、やけどをしたときは自分で油を塗らず、医療機関に相談しましょう。
馬油を顔に塗っても大丈夫?塗り方は?
製品の使い方に従い、はじめは少量で試すのが基本です。馬油だけの製品なら、手のひらで温めてとかし、乾燥が気になるところにうすくのばすと扱いやすいでしょう。はじめは腕の内側などで試し、赤みやかゆみが出たら使うのをやめます。
馬油で顔が黒くなる・赤くなるって本当?
考えられるのは、化粧品一般で起こりうる理由です。合わない化粧品でかぶれをくり返すと色素沈着が残ることがあり、香料や保存料などほかの成分が原因のこともあります。古くなった油は使わず、異変が続くときは皮膚科に相談しましょう。
馬油シャンプーは馬油で髪を洗うのですか?
いいえ、汚れを落とすのは洗浄成分で、馬油は洗う成分ではありません。馬油は、髪の水分や油分を補い保ち、つやを与える目的の油分として入っています。髪が生えるといった効能は、化粧品ではうたえません。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- He ML, Ishikawa S, Hidari H. Fatty Acid Profiles of Various Muscles and Adipose Tissues from Fattening Horses in Comparison with Beef Cattle and Pigs. Asian-Australasian Journal of Animal Sciences 2005;18(11):1655-1661
- 홍동완「済州産馬油の抽出と不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸の分離」済州大学校大学院 学位論文(2019年2月)
- Motoyoshi K. Enhanced comedo formation in rabbit ear skin by squalene and oleic acid peroxides. Br J Dermatol 1983;109(2):191-198
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「過酸化脂質」
- 日本皮膚科学会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」
- 大阪府「化粧品の効能の範囲」(平成12年12月28日 厚生省医薬安全局長通知、平成23年7月21日 改正)