成分辞典やさしい解説

エモリエント効果をやさしく解説!肌をやわらかく保つしくみとは?

あるコスメオタク・2026.09.28・更新 2026.10.21・成分辞典
ケア保湿

乳液やクリームの説明でよく見かける「エモリエント」。保湿と何が違うのか、油を塗ると本当に肌がやわらかくなるのか、気になりますよね。

結論から言うと、エモリエントは、肌から水分が逃げるのを防いでうるおいを保ち、肌をやわらかくする働きの名前です。やわらかさを生んでいるのは主に肌の中の水で、油はその水を逃がさない役目をしています。まずは、言葉の意味から見ていきましょう。

エモリエントは、うるおいを保って肌をやわらかくする働きの名前

エモリエントは成分の名前ではなく、皮膚から水分が蒸発するのを防いでうるおいを保ち、皮膚を柔軟にするという働きの名前です。日本の化粧品の専門用語集で、そう説明されている言葉だからです。この働きを示すものは、エモリエント剤と呼ばれます。

エモリエント剤は、枠で囲んだ段階で働きます。

油が
肌をおおう
水が
逃げにくい
角層の水が
保たれる
肌が
しなやか

たとえば、皮脂は肌の表面で膜をつくってうるおいを守っていて、皮膚にとっていちばん理想的なエモリエント剤は皮脂そのものとされています。エモリエント剤は、皮脂の役目を外から補うものと考えるとわかりやすいでしょう。

ただ、ふだんの商品の説明では言葉の使い方がゆるやかです。保湿を目的としたクリームは、保湿クリーム、モイスチャークリーム、エモリエントクリームとも呼ばれ、エモリエントが保湿と同じ意味で使われることもあります。もとの意味は、水を逃がさず、肌をやわらかく保つ働きです。

肌をやわらかくしているのは、主に角層の水

油を塗るとやわらかくなるのだから、油がやわらかさのもとだと思いますよね。でも、肌のやわらかさを左右するのは、肌のいちばん外側にある角層の水分です。角層の水が、角層の細胞をしなやかに保っているからです。

健康な角層は重さの約20〜30%の水分を含み、その水は主に角層の細胞の中にあるケラチンという線維と、天然保湿因子と呼ばれる小さな保湿成分に蓄えられて、角層のやわらかさに影響しています。角層の水分が減ると乾燥肌になってやわらかさが落ち、表面がめくれやすくなります。水分は、肌の表面の細かい溝を浅くして、肌をなめらかでしなやかにするともされています。

エモリエント剤は、1の皮脂膜の役目を補います。

角層の下の表皮 1 2 3
  1. 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
  2. 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
  3. 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド

角層が水を保つしくみは、表面をおおう皮脂膜、細胞のすき間を埋める細胞間脂質、細胞の中で水を抱える天然保湿因子の3つで、とりわけ天然保湿因子の役割が大きいとされています。細胞間脂質の約50%はセラミドです。やわらかさのもとは、この3つで保たれている角層の水です。

エモリエント剤は、油で上をおおって角層に水をとどめる

エモリエント剤の役目は、油で角層の上をおおって、角層の中に水をとどめることです。角層の水分は、何もしなければしだいに蒸発して減っていくからです。

たとえば、水だけを塗っても長くは残りません。角層の水分は一時的に増えますが、まもなく塗る前の量に戻ってしまいます。油で上をおおうと、内側からの水が逃げにくくなり、角層の水分量が長い時間高く保たれます。

油の膜が水分の蒸発を防ぎ、角層の水が保たれます。

使う前 水分が逃げて、かたくなる 使ったあと 水をとどめて、やわらかい 油の膜 角層 表皮 真皮

水がとどまれば、肌のやわらかさも保たれます。つまり、エモリエント剤が直接肌をやわらかくするのではなく、水を逃がさないことで、やわらかさが保たれるのです。

保湿成分の分け方は、資料によって2通りと3通りがある

ワセリンはエモリエントなのか、それとも別のものなのか、資料によって書き方が違って迷う人は多いと思います。保湿成分の分け方は、日本の資料では2通り、海外の総説では3通りで、エモリエントが指す範囲が違います。

日本の化粧品の専門用語集や皮膚科の手引きでは、保湿のための成分を2つに分けます。ひとつは、アミノ酸や尿素のように角層の成分となじんで水を抱える成分で、ヒューメクタント、皮膚科の手引きではモイスチャライザーと呼ばれます。もうひとつがエモリエントで、それ自体は水を蓄えませんが、肌の上をおおって角層に水をとどめます。日本の2つの分け方では、ワセリンはエモリエントの代表です。

海外の皮膚科の総説では、肌の上に水をはじく膜をつくる閉塞剤、水を引き寄せる吸湿剤、脂質で角層の細胞のすき間を埋めて肌をなめらかでやわらかくするエモリエントの3つに分けます。海外の3つの分け方では、ワセリンは閉塞剤に入ります。さらにイギリスの公的な医療では、エモリエントは保湿剤全体の呼び名で、ローションから軟膏まで、保湿のために肌に塗るものすべてを指します。

エモリエントという言葉は、資料によって指す範囲が違うだけで、どちらかが間違いというわけではありません。

エモリエント剤は油で、乳液・クリーム・化粧オイルに多く入る

エモリエント剤には、肌の上になめらかに伸びて、肌をおおう力の高い油が向いています。肌をおおって水をとどめるのが役目だからです。

天然の油脂、脂肪酸エステル、ラノリン、高級アルコール、炭化水素、リン脂質、脂肪酸などが使われ、肌質や季節に合わせて種類や量を使い分けます。化粧品の油の定番でいえば、スクワランは流動パラフィンより油っぽさが少なく、ホホバ油は酸化しにくくさっぱりした使い心地で、2-エチルヘキサン酸セチルは肌になじみやすいエステル油です。

製品では、乳液やクリームがエモリエント剤を多く含みます。クリームは肌に水分と油分を補って保湿とやわらかさを与えることがいちばんの目的で、油分の多いタイプは乾燥肌のケア用として使われてきました。エモリエントクリームとも呼ばれる保湿用のクリームには、グリセリンなど水を抱える成分も一緒に入っています。乳液の油分はおよそ数%〜30%程度で、水の中に油を分散させたタイプが主流です。ホホバ油やスクワランなどを主な成分とする化粧オイルも、エモリエント効果をもたらす保護用の化粧品です。

エモリエント剤を足したいときは、乳液・クリーム・化粧オイルを選ぶと考えればわかりやすいです。

化粧品で言えるのは「肌を柔らげる」などの言葉まで

エモリエントは働きをまとめて呼ぶ言葉で、化粧品の効能として国が定めた言葉ではありません。化粧品で言える効能は、厚生労働省が定める56項目に限られているからです。

56項目のうち、エモリエントの中身に近いのは、「皮膚の柔軟性を保つ」「肌を柔らげる」「肌を滑らかにする」「皮膚の水分、油分を補い保つ」「皮膚の乾燥を防ぐ」「皮膚を保護する」といった言葉です。

なお、皮膚科の手引きには、水を抱えるタイプの保湿剤のほうがワセリンなどより角層の水分を増やす効果が強いという記述があります。これはヘパリン類似物質や尿素を含む医薬品とワセリンを比べた話で、化粧品の乳液やクリームの優劣に当てはめるものではありません。パッケージでは、「肌を柔らげる」などの言葉を目印にしましょう。

まとめ

エモリエントという言葉を見かけたら、水を逃がさないための油の働きのことだと思い出してみてください。

よくある質問

エモリエント効果とは何ですか?

水分が逃げるのを防いでうるおいを保ち、肌をやわらかくする働きのことです。この働きを示すものをエモリエント剤と呼び、いちばん理想的なエモリエント剤は皮脂そのものとされています。

ワセリンはエモリエントですか?

分け方によって変わります。日本の2つの分け方ではエモリエントの代表で、海外の総説の3つの分け方では閉塞剤に入ります。どちらかが間違いというわけではありません。

油を塗ると肌がやわらかくなるのですか?

肌をやわらかくしているのは主に角層の水です。油の役目はその水を逃がさないことで、やわらかさはその結果として保たれます。水だけを塗っても、まもなく塗る前の水分量に戻ってしまいます。

エモリエントは化粧品の効能の言葉ですか?

効能の言葉ではありません。化粧品の効能56項目で近いのは「皮膚の柔軟性を保つ」「肌を柔らげる」「肌を滑らかにする」などです。

エモリエント剤はどんな化粧品に入っていますか?

乳液やクリーム、化粧オイルに多く入っています。乳液の油分はおよそ数%〜30%程度で、化粧オイルはホホバ油やスクワランなどが主な成分です。

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この記事を書いた人:あるコスメオタク日本化粧品検定1級

中央大学大学院に通う大学院生。韓国コスメが好きすぎて、気になったアイテムは自腹で試して回っている一消費者です。スキンケアと、成分・制度の背景を調べるのが好きです。公的資料やメーカーの公式情報にあたって、「化粧品にできること・できないこと」を分けて書くことを心がけています。(運営方針)

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