この記事でわかること
- 球状粉体と板状粉体の光の返り方の違い
- 複合粉体とパール顔料の膜が1層・積層のしくみ
- 表面処理と、組み合わせた粉の成分表での書かれ方
メイクの粉には丸い粒と平たい粒があり、さらに単層や積層という言葉も出てきて、何がどう違うのか迷いますよね。
結論から言うと、粉はまず形で分けられ、丸い球状粉体は光を散らしてぼかし、平たい板状粉体は光をそろえて返してつやを出します。単層・積層は、主に平たい粒でできたパール顔料やラメの、膜の重ね方の話です。まずは形の違いから見ていきましょう。
丸い球状粉体はぼかし、平たい板状粉体はつやを出す
粉の仕上がりの違いは、粒の形で決まる光の返り方の違いです。丸い粒は光をいろいろな方向へ散らし、平たい粒は光を一定の方向へ強く返すからです。
しみやそばかす、毛穴が目立つのは、肌の上にあるその色や影がそのまま見えるからです。球状粉体を重ねると、粉から返る光がいろいろな方向へ散らばり、粉の下にあるものが見えにくくなります。この働きはデフォーカス効果、またはソフトフォーカス効果と呼ばれ、しみや毛穴を自然に目立ちにくく見せます。
球状粉体は光をいろいろな方向へ散らし、板状粉体は光を一定の方向へ返します。
いっぽう板状粉体は、光を一定の方向へ強く返すので、つややかで透明感のある仕上がりになります。のびやすべりがよく、肌につきやすいので、おしろいやファンデーションの骨組みになる粉として使われています。チークやハイライトのマットとツヤの違いも、この粉の形の差から生まれます。
球状粉体は粒どうしがふれ合う面が小さいため、さらさらと流れやすくよくのびる反面、押し固めると崩れやすいという弱点もあります。
成分表の名前で見ると、球状にはナイロン-12やシリカ、ポリメチルシルセスキオキサンなどのシリコーンの樹脂の粉、メタクリル酸メチルクロスポリマーなどのアクリル樹脂の粉、セルロースなどがあります。板状にはタルク、マイカ、セリサイト、合成金雲母、窒化ホウ素などがあります。同じ板状でも、タルクはマイカやセリサイトより白っぽく不透明で、合成金雲母は天然のマイカより不純物が少なく、白さと透明感にすぐれるとされています。粒の大きさは、球状の粉で2〜20μmほどのものが多く、同じ成分でも品番によって違います。
ぼかしたいなら球状、つやを出したいなら板状、と覚えておくとわかりやすいです。
複合粉体は、粉を組み合わせて短所を補った粉
複合粉体は、ある粉を芯にして、その表面にほかの粉をつけたりかぶせたりした粉です。組み合わせることで、一方の粉の短所を小さくし、両方の長所を生かせるからです。粉どうしは、化学的な結びつきや静電気、押しつける力などでくっついています。
たとえば、マイカなどの板状の粉の上に球状の粉を均一につけた複合粉体があります。こうすると球状の粉の粉っぽさが減って肌に均一につき、ファンデーションのぼかす働きをより効率よく引き出せるとされています。球状どうしの組み合わせもあり、球状のシリコーンゴムの粉をシリコーンの樹脂で包んだものや、球状のシリコーンの粉に細かなアルミナの粒をつけたものがつくられています。
形が丸くても平たくても、別の素材と組み合わせた粉は複合粉体と呼ばれます。
単層・積層は、パール顔料やラメの膜の重ね方の違い
単層・積層の違いは、板状の粉にかぶせた膜が1層か、何層も重ねたかです。パール顔料の色は、膜で返った光どうしが重なって生まれるので、膜の厚さや重ね方で見え方が変わるからです。
代表的なパール顔料は、板状のマイカの表面に酸化チタンの膜を均一にかぶせたもので、複合粉体の代表でもあります。膜の上の面と下の面で返った光が重なって強め合うと色が生まれ、シャボン玉が虹色に見えるのと同じしくみです。色は膜の厚さで変わり、酸化チタンの膜が約50nmなら銀白色、約120nmなら青い色になるとされています。
膜が1層のものは膜の上と下で返った光が重なって色になり、層を重ねると角度で色が変わりやすくなります。
この1層の膜に対して、光の曲がりやすさを表す屈折率が高い層と低い層を、交互に何層も重ねたパール顔料もあります。層を増やすと、見る角度による色の変化と光を返す強さが高まったという結果があります。土台には合成マイカのほか、シリカやアルミナ、ガラスの薄い板も使われています。さらに大きなラメには、屈折率の違う2種類の樹脂を100層前後重ねたものがあり、数十μmほどのパール顔料に対して、数百μmから数mmの大きさがあります。
単層・積層は資料によって数え方が違い、酸化チタンを1層かぶせただけのパール顔料を、土台の雲母も数えて多層と呼ぶこともあります。膜が1層か、屈折率の違う層を何層も重ねたものかという中身で見ておくと迷いません。
表面処理は、粉を油になじませて汗や水に強くするため
粉の多くは、表面を別の成分で処理してから使われます。もともと水になじみやすい粉を油の中に均一に散らしたり、ファンデーションや日焼け止めを汗や水に強くしたりするためです。
代表的なのは、水になじみにくくする処理です。処理には油脂や金属石けん、脂肪酸、シリコーン、フッ素系の化合物などが使われ、フッ素系の処理は皮脂による化粧くずれを防ぐこともできるとされています。シリコーンの処理では、メチコンという成分を粉の表面に結びつけて、網目のようなシリコーンの膜をつくります。
原料の表示例では、ミリスチン酸Mgやステアリン酸、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシカプリリルシラン、水酸化Alといった処理に使われた成分が、粉の名前と並んで書かれています。成分表で粉の近くにこうした名前があれば、表面処理に使われた成分と考えてよいでしょう。
組み合わせた粉は、成分表では成分ごとに分けて書かれる
いくつかの成分が混ざった原料は、全成分表示では混ざっている成分ごとに分けて書くのが決まりです。そのため、1つの粉でも成分名がいくつも並ぶことがあります。
たとえば、パール顔料なら合成金雲母と酸化チタン、アルミナの粒をつけた球状のシリコーンの粉ならポリメチルシルセスキオキサンとアルミナ、ミリスチン酸Mgで処理した板状の硫酸バリウムなら硫酸Baとミリスチン酸Mg、というように並びます。合成金雲母は、合成フルオロフロゴパイトと書かれることもあります。いっぽうで、シリコーンゴムの粉を樹脂で包んだ球状の粉のように、1つの成分名で書かれる例もあります。
並び順にも注意が必要です。成分表はふつう配合量の多い順ですが、1%以下の成分と着色剤は順不同で書いてよく、着色剤をまとめて最後に書く方法も選べます。この着色剤には、色の調整のために入れたタルクやナイロンなどの粉も含めてよいとされています。
だから、タルクや酸化チタンが成分表の最後のほうにあっても、少ししか入っていないとは限りません。
タルクは石綿がないことを確かめたものを使う決まり
日本では、化粧品などに使う原料のタルクは、石綿が0.1重量%を超えていないことを確かめたものを使う決まりです。タルクは滑石という鉱物を細かく砕いて精製した粉で、厚生労働省が通知でこの確認を求めています。
海外にも粉の決まりがあります。EUでは、1〜100nmの大きさをもつナノマテリアルの形で入っている成分は、成分表の名前のあとに、ナノであることを表す言葉を括弧つきで書くことになっています。また、EUのマイクロプラスチックの規制では、5mm以下などの小さな合成ポリマーの粒を意図して加えた製品が段階的に制限され、粒の表面を切れ目なくおおうポリマーの膜も対象になりえます。メイクの製品にこの規制が当てはまるのは2035年10月からで、リップやネイルも同じです。洗い流さない化粧品の2029年10月より、長い猶予がとられています。
日本で売られているタルク入りの化粧品は、石綿の確認をした原料を使っていると覚えておけば安心です。
まとめ
- 粉は形で、光を散らしてぼかす球状粉体と、光をそろえて返しつやを出す板状粉体に分けられます
- 粉にほかの粉を組み合わせたものは複合粉体で、球状の粉にもあります
- 単層・積層は主に板状のパール顔料やラメの話で、膜の厚さや層の重ね方で色の見え方が変わります
- 多くの粉は表面処理されていて、組み合わせた成分は成分表で分けて並びます
- 色の調整に使った粉は最後に順不同で書けるので、並び順だけで量は判断できません
粉の名前を、形、つくり、層、表面の4つの目で見ると、メイクの仕上がりの違いが読み解きやすくなります。
よくある質問
球状粉体と板状粉体の違いは何ですか?
光の返り方が違います。球状粉体は光をいろいろな方向へ散らして肌をふんわりぼかし、板状粉体は光を一定の方向へ強く返して、つやと透明感を出します。
パール顔料の単層と積層とは何ですか?
かぶせた膜が1層か、何層も重ねたかの違いです。代表的なパール顔料はマイカに酸化チタンの膜を1層かぶせたもので、屈折率の違う層を交互に何層も重ねたものもあります。資料によって数え方が違う呼び方なので、膜が何層かという中身で見ると迷いません。
球状の粉にも積層のものはありますか?
球状の粉で別の素材を組み合わせたものは、複合粉体と呼ばれます。層を重ねるという言い方は、主に板状のパール顔料やラメで使われます。
複合粉体は成分表でどう書かれますか?
混ざっている成分ごとに分けて書くのが決まりです。たとえばパール顔料は合成金雲母、酸化チタンのように並びます。1つの成分名で書かれる例もあります。
タルクが成分表の最後にあるのは少ないからですか?
少ないとは限りません。色の調整のために入れたタルクなどの粉は着色剤として扱い、成分表の最後に順不同で書いてよいことになっています。
この記事で参照した情報
- 国民生活センター『国民生活』2025年7月号「化粧品を選ぶ前に知っておきたい知識 第4回 メイクアップ化粧品」(平尾哲二)
- 日本化粧品工業会「肌を彩る ―化粧品に配合される色材―」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「体質顔料」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「光学粉体」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「球状粉体」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「デフォーカス効果」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ナイロンパウダー」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「粉体高分子」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「板状粉体」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「タルク」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「マイカ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「セリサイト」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「合成フッ素金雲母」
- 堀田肇「粉体特性からみたベースメイクアップ化粧品の使用性と機能」日本化粧品技術者会誌 35(2) 99-106, 2001
- 東レ「ナイロン12微粒子」製品ページ
- 信越化学工業「KMP-590」製品ページ
- 信越化学工業「シリコーンパウダー」製品一覧
- 信越化学工業「KSP-100」製品ページ
- 大東化成工業「ケミカル」製品一覧
- 佐々木隆好「高機能真球状シリカ“サンスフェア®”の特徴と化粧品用途への応用」AGC Research Report 61 (2011)
- トクヤマ「エクセビーズ」製品ページ
- 中川ほか「化粧品の感触・仕上がり改良剤としての窒化ホウ素粉末(1986年~現在)」セラミックス 60(2025) No.8
- 堺化学工業「化粧品材料」製品一覧
- 味の素株式会社 ニュースリリース(2021年4月26日)
- 味の素ヘルシーサプライ「化粧品素材」製品一覧
- 岩瀬コスファ コラム(2024年4月8日)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「複合化微粒子粉体」
- 日興リカ 技術資料 NH-RAS06
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「パール剤」
- 大久保真吾「パール顔料の基礎と最近の技術」色材協会誌 88(5) 132-136, 2015
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「干渉色」
- G. Pfaff, Optical Coatings for Special Effect Pigments. Society of Vacuum Coaters 47th Annual Technical Conference Proceedings, 2004
- G. Pfaff, The world of inorganic pigments. ChemTexts 8, 15 (2022)
- H. Du, et al. An investigation of angle-dependent optical properties of multi-layer structure pigments formed by metal-oxide-coated mica. Powder Technology, 2008
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ラメ剤」
- 日本光研工業「GENESTAR」製品ページ
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「疎水化処理粉末」
- 福井寛「化粧品用粉体の表面をデザインする」色材協会誌 92(11) 311-318, 2019
- 厚生労働省「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(平成13年3月6日 医薬監麻発第220号・医薬審発第163号)
- 日本化粧品工業連合会「化粧品の全成分表示の記載方法に関する自主基準」(粧工連通知2018005号、2018年7月31日)
- 厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「タルクの品質管理について」(平成18年10月16日 薬食審査発第1016002号)
- Regulation (EC) No 1223/2009 on cosmetic products
- Commission Regulation (EU) 2023/2055 (restriction of synthetic polymer microparticles)
- European Commission「Commission Regulation (EU) 2023/2055 - Restriction of microplastics intentionally added to products」