この記事でわかること
- 塗りつぶさずに隠す2つの方法
- 粉の形と肌の透け感で変わる仕上がり
- 「小じわを目立たなく見せる」の意味とSPF
ファンデーションを塗ると、厚塗りに見えたり、くすみや毛穴が隠れきらなかったり。どうすれば自然に隠せるのか、迷いますよね。
結論から言うと、ファンデーションの隠し方は、光をよく跳ね返す粉で上から覆う方法と、丸い粉で光を散らしてぼかす方法の2つで、塗りつぶすより、ぼかすほうが自然に見えます。肌が半透明で、中から光が出てきているからです。まずは、2つの隠し方から見ていきましょう。
隠し方は、光を跳ね返して覆うか、光を散らしてぼかすかの2つ
ファンデーションは、光の扱い方で肌の欠点を隠しています。くすみや色むら、しみ、そばかすなどの欠点を隠し、小じわや毛穴を目立たなくするのがファンデーションの役目で、つまり肌色の補正と肌の凹凸の補正を行うものです。中身はおおまかに、粉と、その粉を均一に散らばらせる土台の液に分けられ、粉の性質が仕上がりを決めます。
覆う力を隠ぺい力、ぼかす力をデフォーカス効果と呼びます。
覆う
光を跳ね返す粉で
上から隠す
ぼかす
丸い粉で光を
散らして隠す
1つめの隠ぺい力は、顔料が光を反射し、散乱させ、吸収することで下地を覆い隠す力のことです。顔料の表面で反射される光が多いほど隠ぺい力は高くなるので、光を曲げる度合いを表す屈折率が大きい物質ほど効果があり、化粧品での代表が酸化チタンの粉末です。ただし、まわりの物質の屈折率が顔料に近いと透明に近づきます。化粧品に使う油の屈折率はおよそ1.4〜1.56なので、これに近いシリカやナイロンは油と混ぜると透明になります。
粒も、小さくすればいいわけではありません。粒が小さくなると表面積が増えて反射が大きくなり、隠ぺい力は増えますが、小さくなりすぎると逆に透明になってきます。隠ぺい力がいちばん大きくなるのは、粒の大きさが光の波長の2分の1前後のときです。
2つめのデフォーカス効果は、ソフトフォーカス効果とも呼ばれます。塗りつぶすのではなく、粉から反射する光をいろいろな方向に散らして、下にあるものを見えにくくする効果です。この効果を出すには球状の粉がよく使われ、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル樹脂、シリカ、シリコーン樹脂などが、使い心地に合わせて選ばれます。
酸化チタンのような隠ぺい力の高い粉で補正する方法もありますが、デフォーカス効果を使うほうが、より自然に仕上がります。
粉の形で仕上がりが変わる。球状はふんわり、板状はつややか
ツヤ肌とマット肌、どちらのファンデーションを選べばいいのか迷う人は多いと思います。この差は粉の形で決まり、球状の粉はふんわりぼかし、板状の粉はつややかな透明感を与えます。形によって、光の返し方が違うからです。
同じ粉でも、形によって光の返し方が変わり、仕上がりが変わります。
球状の粉
光を散らして
ふんわり
板状の粉
光を返して
つややか
パール剤
色の光で
くすみを補正
球状の粉では反射した光がさまざまな方向へ広がり、肌の表面をふんわりぼかすので、しみ、そばかす、毛穴などの欠点が自然に目立たなくなります。板状の粉では光が一定の方向へ強く反射し、つややかで透明感のある仕上がりになります。ただ、球状の粉は転がって肌につきにくいので、マイカなどの板状の粉の上に、子持ち昆布のように球状の粉を均一につけた複合粉体もあります。こうすると粉っぽさが減って肌に均一につくため、より効率よくぼかせます。
パール剤は、板状のマイカの表面に酸化チタンを均一にかぶせたものです。かぶせる量を調整すると、光の干渉によってさまざまな色の光を反射するようになり、赤や黄色の光は肌のくすみを補正して自然な肌色に、青色の光は肌の透明感を高めて見せます。化粧下地の色が「ピンク」「イエロー」「ブルー」と分かれているのは、この理屈です。
ベースになる粉のタルクは、含水ケイ酸マグネシウムを主成分とする白い粉で、滑石という鉱物を細かくくだいて精製したものです。モース硬度1の柔らかい鉱物で、薄い板のような粒の表面がなめらかなうえ、弾力があって肌にもよくつきます。マイカは雲母のことです。
ふんわり見せたいなら球状の粉、ツヤを出したいなら板状の粉、となりたい仕上がりで粉の形を選ぶと考えるとわかりやすいです。
肌は半透明。中から出る光を残すと自然に見える
ファンデーションを薄く塗るほうが自然に見えるのは、肌が半透明で、中から光が出てきているからです。完全に覆うとその光がふさがれて不自然になるので、透明な粉で光を散らしてぼかす設計が生まれました。
人の肌では、光は表面で反射されるだけでなく、内部にも入りこんでいます。レーザーポインターの光を肌に当てると、当たったところのまわりもぼーっと光が広がって見えますが、これは半透明の肌の中に光が入りこんで広がったものです。入った光の大部分は肌の中で散乱をくり返しながら伝わり、その一部が外に出てきます。なお、ここでいう「浸透」は光の話で、化粧品の成分については、浸透といえるのは角層までに限られます。
実際に肌から出てくるのは、表皮にある褐色のメラニンと、血液にある赤いヘモグロビンという2つの色を映した光です。気になる部分を隠して肌色を補正するだけでは、透明感が少なく、やや不自然な仕上がりになってしまいます。こうして、肌の中からの光も大切にしようと、透明な顔料で色を補正する考え方が生まれました。
凹凸の補正は、曇りガラスと同じ原理です。曇りガラスを通して肌を見ると、表面の小さな凹凸で光が乱反射するため、小さなしわや毛穴は見えません。同じように、肌の表面で乱反射する球状の粉を配合すると、小さなしわや毛穴を見えにくくできます。毛穴そのものを小さくすることはできなくても、見えにくくすることは光の性質を使えばできる、というのがこの技術の立ち位置です。
ムラなく仕上がるかどうかは、粉をどれだけ細かく均一に散らばらせるかにもかかっています。この工程は、粉を液になじませる「濡れ」、機械で細かくほぐす「解砕」、その状態を保つ「安定化」の3つの段階からなり、顔料の粒が細かく均一に散らばると色も鮮やかになります。厚く重ねるより、薄く均一に塗って中からの光を残すのが、自然に見せるコツです。
「小じわを目立たなく見せる」は見た目の話。「する」とは別
ファンデーションの広告にある「小じわを目立たなく見せる」は、メーキャップ効果という見た目の話です。肌そのものが変わったという意味ではありません。
化粧品の広告では、国が定めた効能のほかに、「化粧くずれを防ぐ」「小じわを目立たなく見せる」「みずみずしい肌に見せる」といったメーキャップ効果や、「清涼感を与える」「爽快にする」といった使用感を書くことが、事実に反しない限り認められています。一方、「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、試験で確かめる必要がある化粧品の効能です。
見た目の話としては書けても、肌そのものが変わったとは書けません。「する」と「見せる」の差が線引きになっています。
ファンデーションのSPFは、日焼け止めと同じ表示ルール
ファンデーションのSPF表示は、日焼け止めと同じ表示ルールに乗っています。SPFは、主にUVBによって肌が赤くなる日やけ、つまりサンバーンを防ぐ効果の目安で、数値が大きいほどその効果が高くなり、50よりはっきり高い場合は「SPF50+」と表示されます。
ファンデーションの紫外線対策の主役は、酸化チタンや酸化亜鉛といった紫外線散乱剤です。これらは主に粉で、肌の表面に届く紫外線を乱反射させて影響を防ぎます。一方、紫外線吸収剤は、成分そのものが紫外線を吸収して肌への影響を防ぐものです。化粧品基準では、紫外線吸収剤を「紫外線を特異的に吸収する物」で、紫外線の有害な影響から皮膚や髪を守るために配合するものとし、別表第4のリストに載っているものに限っています。散乱剤はこの定義に当てはまらないので、リストには載っていません。吸収と散乱でしくみが違うため、制度上の扱いも分かれているのです。
ただし、粒の大きさで役割は変わります。超微粒子の酸化チタンは、粒の大きさが目に見える光の波長の10分の1と小さいため、隠ぺい力や色をつける力は小さい一方、400nm以下の波長を吸収するので紫外線を防ぐ力にすぐれています。つまり、散乱だけでなく吸収もしているのです。
表示のルールは同じでも、測定と同じ量を塗れているかは別の問題です。薄く塗るファンデーションだけに頼りすぎないようにしましょう。
ナノ粒子はEUで1〜100nm。成分名にナノの表示が義務
海外のファンデーションの成分表で、酸化チタンの名前のあとに「ナノ」を意味する表示があって、気になったことがあるかもしれません。EUでは、ナノマテリアルの形で入っている成分に、その表示が義務づけられています。
EUの化粧品規則1223/2009は、ナノマテリアルを1〜100nmの範囲にある、水に溶けないか分解されにくい、意図して製造された材料と定義しています。ナノマテリアルの形で含まれる成分は、成分表で名前のあとに、かっこ書きでナノを表す英語の表示を添える決まりです。さらに、ナノマテリアルを含む製品は、市販の6か月前に欧州委員会へ届け出ることも求められています。酸化亜鉛には別の条件もあり、ナノの形の酸化亜鉛は最大濃度が25%で、吸いこむことで使う人の肺にふれるおそれのある用途には使いません。
日本では、業界団体の日本化粧品工業会が、これまでの調査と研究の結果から、ナノマテリアルを配合しても化粧品の安全性に問題はないと考えているという見解を出しています。成分表のナノの表示は、EUの決まりで粒の大きさを知らせるためのものと読んでおきましょう。
まとめ
- ファンデーションは肌色の補正と肌の凹凸の補正を行うもの。隠し方は、光を跳ね返す粉で覆う隠ぺい力と、丸い粉でぼかすデフォーカス効果の2つです
- 隠ぺい力は、粒の大きさが光の波長の2分の1前後で最大。球状の粉はふんわり、板状の粉はつややか、パール剤は赤・黄でくすみ補正、青で透明感
- 肌は半透明でメラニンとヘモグロビンの色が中から出ています。毛穴・小じわは曇りガラスの原理でぼかしています
- 試験が必要な効能の「乾燥による小ジワを目立たなくする」と、メーキャップ効果の「小じわを目立たなく見せる」は別です
- 酸化チタン・酸化亜鉛は散乱剤で紫外線吸収剤のリストの外。EUは1〜100nmをナノマテリアルと定義し、成分名にナノの表示を義務づけています
肌は半透明で、中から光が出てくる。それをふさぐと不自然になるから、透明な粉で光を散らしてぼかす。厚く塗るより薄く均一に塗ったほうがきれいに見えるのは、感覚ではなく光の性質としてそうなっているからです。
よくある質問
ファンデーションを厚塗りすると不自然に見えるのはなぜ?
肌の中から出てくる光をふさいでしまうからです。肌は半透明で、中で散らばった光が外に出ています。完全に覆うとその光がさえぎられるため、透明な粉で光を散らしてぼかす設計が生まれました。
ファンデーションで毛穴や小じわが目立たなくなるしくみは?
曇りガラスと同じ原理です。肌の表面で光を乱反射させる丸い粉を配合すると、小さなしわや毛穴が見えにくくなります。毛穴そのものを小さくするわけではありません。
ツヤ肌とマット肌の仕上がりは何が違う?
入っている粉の形が違います。丸い粉は光を散らしてふんわりぼかし、平たい板状の粉は光を一方向に強く返して、つややかな透明感を出します。
「小じわを目立たなく見せる」と「小ジワを目立たなくする」は違う?
違います。「見せる」は見た目の話であるメーキャップ効果で、事実に反しない限り書けます。「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、試験で確かめる必要がある化粧品の効能です。
ファンデーションのSPFは日焼け止めと同じ?
表示のルールは日焼け止めと同じです。ただし、測定と同じ量を塗れているかは別の問題です。紫外線対策の主役は、酸化チタンや酸化亜鉛などの紫外線散乱剤です。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品工業会 やさしい技術解説「肌を美しく見せる ―ファンデーション―」
- 日本化粧品工業会 やさしい技術解説「粒子を細かく、均一に ―分散―」
- 日本化粧品工業会 やさしい技術解説「肌を彩る ―化粧品に配合される色材―」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ファンデーション」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「隠ぺい力」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「デフォーカス効果」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「光学粉体」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「白色顔料」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「体質顔料」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「パール剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「二酸化チタン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「化粧下地」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「化粧もち」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「板状粉体」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「タルク」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「マイカ」
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」(2020年版)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 日本化粧品工業会「気になる紫外線用語CHECK!」
- 日本化粧品工業会「SPF測定法基準について(自主基準)」(2020年2月21日)
- 日本化粧品工業会「ナノマテリアルについて」
- 欧州化粧品規則 Regulation (EC) No 1223/2009
- Commission Regulation (EU) 2016/621(附属書VIの酸化亜鉛に関する改正)