この記事でわかること
- 表情ジワができるしくみと、SNAP-8が働くとされる場所
- 化粧品として言える範囲
- アルジルリンとの関係と配合量の読み方
SNAP-8は「表情ジワに」とうたう化粧品で見かける成分ですが、本当にシワに働くのか、塗るボトックスのようなものなのか気になりますよね。
結論から言うと、SNAP-8は表情をつくる筋肉が縮む合図に割り込むとされるペプチドで、化粧品として言えるのは、試験を済ませた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。医師が注射するボツリヌス製剤とは別ものです。
表情ジワは、表情をつくる筋肉が縮むことで刻まれる
眉間や目尻の表情ジワは、表情をつくる筋肉が縮むことで刻まれるシワです。角層が乾いてできる浅い小ジワとは、原因が違います。
表情をつくる筋肉は皮膚の下にあり、神経の末端から出るアセチルコリンという合図の物質を受け取って縮みます。笑ったり眉を寄せたりするたびに筋肉が縮み、それをくり返すうちに表情ジワとして刻まれます。
表情ジワは、神経の合図で表情をつくる筋肉が縮むことで刻まれます。
つくる
合図を出す
縮む
が刻まれる
医薬品のボツリヌス製剤は、この合図が出るのを抑える注射薬で、眉間や目尻の表情ジワに使われます。
つまり表情ジワの原因は、角層の乾燥ではなく、筋肉の動きにあります。
SNAP-8は、筋肉が縮む合図に割り込むとされる成分
SNAP-8は、筋肉が縮む合図に割り込み、表情ジワを目立ちにくくするとされる成分です。合図の物質を外へ押し出すしくみの部品に、似た形をしているからです。
神経の末端では、合図の物質を押し出すために、いくつかのタンパク質が組み合わさった部品が働いています。SNAP-25というタンパク質はその部品のひとつです。SNAP-8は、このSNAP-25の端の部分をまねた配列をもち、本来のタンパク質と部品の中の位置を取り合うとされています。
ただ、塗ったペプチドが皮膚の下の筋肉まで届くかは、働きの説明とは分けて考える必要があります。仲間のアルジルリンを入れた乳液を皮膚に塗った結果では、塗った量の99%超が表面に残り、表皮の下の真皮からは検出されませんでした。SNAP-8でシワが減ったとして紹介される数字は、原料をつくる会社が自社のウェブサイトで公開したデータです。
化粧品として言えるのは、効果を確かめる試験を済ませた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。表情ジワに働くという話は、化粧品の効能の外と考えておきましょう。
成分表示では「アセチルオクタペプチド-3」と書かれる
SNAP-8は原料の商品名で、日本の成分表示では「アセチルオクタペプチド-3」と書かれます。商品で探すときは、この名前が目印です。
アミノ酸が短くつながったペプチドの一種で、同じくシワ向けとして知られるアルジルリンのペプチドを2つ長くして、アミノ酸8個にした仲間とされています。アルジルリンは、成分表示では「アセチルヘキサペプチド-8」と書かれます。
SNAP-8は、アルジルリンのペプチドを2つ長くした仲間とされています。
人工的につくったペプチドで、原料はペプチドを溶かした溶液の形で売られています。ボツリヌス毒素のような医薬品の成分とは別ものです。
配合量の3〜10%は、原料の溶液としての量
SNAP-8を製品に入れる量の目安は、原料の溶液として3〜10%とされています。この数字はペプチドそのものの濃さではないので、%の大きさだけで比べないのが安心です。
濃ければ濃いほどよい、とも言えません。仲間のアルジルリンについて、アメリカの化粧品成分の評価機関は、ペプチドそのものの濃さで0.005%までなら化粧品として安全と結論しています。配合量の%表示は、数字が大きいほど安心とは限りません。
広告の言葉にも注意しましょう。「筋肉をゆるめる」「神経の合図を止める」のように、体の働きに作用することを前に出す言い方は、化粧品では使えない種類の表現です。化粧品は決められた効能のほかに、そうした作用による効果はうたえないと、厚生労働省の広告基準の解説で決められています。
新しい化粧品と同じように、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
「塗るボトックス」とは、中身も働く場所も違う
SNAP-8のようなペプチドは「塗るボトックス」と呼ばれることがありますが、中身も働く場所も違います。比べられているのは、医師が筋肉に注射する医薬品のボツリヌス製剤だからです。
ボツリヌス製剤は、講習を受けた医師が筋肉に注射する医薬品で、毒薬、処方箋医薬品、生物由来製品に分類されます。承認された効能は65歳未満の大人の眉間または目尻の表情皺で、効果は通常3〜4か月ほど続きます。
化粧品には医薬品の成分を配合してはいけないと化粧品基準で決められているため、SNAP-8が入った化粧品にボツリヌス毒素は入っていません。もとになったアルジルリンでも、合図の物質が出るのを抑える働きの大きさは、毒素よりはるかに小さかったという結果があります。
「ボトックスのよう」と呼ばれる成分でも、働くとされる場所は違います。SNAP-8やアルジルリンは神経の末端の部品に割り込むとされ、シンエイクは筋肉の側の受け取り口をふさぐとされています。呼び名より、成分表示の名前と化粧品として言える範囲を見てみてください。
まとめ
- 眉間や目尻の表情ジワは、表情をつくる筋肉が縮むことで刻まれるシワです
- SNAP-8は、筋肉が縮む合図に割り込み、表情ジワを目立ちにくくするとされるペプチドです
- 成分表示では「アセチルオクタペプチド-3」で、アルジルリンのペプチドを2つ長くした仲間とされています
- 配合量の目安の3〜10%は原料の溶液としての量で、ペプチドそのものの濃さではありません
- 化粧品として言えるのは試験済みの製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までで、医薬品のボツリヌス製剤とは別ものです
新しい名前の成分ほど、「とされる働き」と「化粧品として言えること」を分けて読むと、商品を落ち着いて選べます。
よくある質問
SNAP-8はシワにどう働きますか?
表情をつくる筋肉が縮む合図に割り込み、表情ジワを目立ちにくくするとされています。化粧品として言えるのは、試験を済ませた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
SNAP-8とアルジルリンの違いは何ですか?
SNAP-8は、アルジルリンのペプチドを2つ長くして、アミノ酸8個にした仲間とされています。成分表示では、SNAP-8は「アセチルオクタペプチド-3」、アルジルリンは「アセチルヘキサペプチド-8」と表示されます。
SNAP-8でシワが減るという数字はどこから来ていますか?
原料をつくる会社が自社のウェブサイトで公開したデータです。化粧品として言えるのは、試験を済ませた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
SNAP-8の配合量はどれくらいですか?
製品に入れる量の目安は、原料の溶液として3〜10%とされています。ペプチドそのものの濃さではないので、%の数字の大きさだけで比べないのが安心です。
SNAP-8は塗るボトックスですか?
違います。比べられているのは医師が筋肉に注射する医薬品のボツリヌス製剤で、SNAP-8が入った化粧品にボツリヌス毒素は入っていません。
この記事で参照した情報
- Lubrizol 製品ページ「SNAP-8™ peptide solution C」
- Cosmetic-Info.jp 表示名称「アセチルオクタペプチド-3(化粧品)」
- Errante F, et al. Cosmeceutical Peptides in the Framework of Sustainable Wellness Economy. Front Chem 2020;8:572923
- Blanes-Mira C, et al. A synthetic hexapeptide (Argireline) with antiwrinkle activity. Int J Cosmet Sci 2002;24(5):303-310
- Kraeling MEK, et al. In vitro skin penetration of acetyl hexapeptide-8 from a cosmetic formulation. Cutan Ocul Toxicol 2015;34(1)
- Cosmetic Ingredient Review「Safety Assessment of Acetyl Hexapeptide-8 Amide as Used in Cosmetics」最終報告(2021年)
- 厚生省「化粧品基準」(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- ボトックスビスタ注用50単位 添付文書(KEGG MEDICUS)
この記事が入っているテーマ別まとめ