この記事でわかること
- 表情ジワができるしくみと、シンエイクの働きとされる内容
- シンエイク入りの化粧品で言える範囲と、選ぶときに見る表記
- ヘビの毒やボツリヌス製剤との違い
「ヘビの毒をまねた成分」と聞くと、本当にシワに働くのか、肌に塗って大丈夫なのか、気になりますよね。
結論から言うと、シンエイクはヘビの毒の成分の形をまねて人工的につくったペプチドで、毒そのものは入っていません。表情ジワを目立ちにくくするとされる成分ですが、シンエイク入りの化粧品として言えるのは、試験を済ませた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
表情ジワは、表情の筋肉が縮むたびに肌が動いてできる
表情ジワは、笑ったり眉を寄せたりして表情の筋肉が縮むたびに、その上の肌が動いてできるシワです。顔の表情をつくる筋肉は骨ではなく肌につながっているので、筋肉が縮むと肌もいっしょに引っぱられます。
表情の筋肉は肌につながっていて、縮むたびに上の肌も動きます。
表情をゆるめているとき
笑う・眉を寄せると
- 表情をつくる筋肉
シワには、ほかにも種類があります。角層が乾いてできる浅い溝が乾燥による小ジワで、深いシワは、紫外線や年齢によって真皮で肌のハリを支える線維が衰え、溝が深く刻まれてできます。表情ジワは、この真皮の衰えと、筋肉が縮むことのくり返しが重なって刻まれていきます。眉間や目尻の表情ジワに、筋肉に注射して筋肉をゆるめる医薬品が承認されているのも、筋肉の動きが表情ジワのもとになっているからです。
シンエイクは、筋肉への合図をさえぎる形をまねたペプチド
シンエイクは、筋肉が縮む合図をさえぎるヘビの毒の成分の形をまねて、表情ジワ向けにつくられたペプチドです。筋肉は、神経の末端から出るアセチルコリンという合図の物質を、筋肉の側にある受け取り口で受け取って縮みます。手本になったのはテンプルピットバイパーというヘビの毒に含まれるワグレリン1で、この受け取り口をふさいで合図を止めるペプチドです。
毒そのものではなく、受け取り口をふさぐ形だけを短いペプチドでまねています。
ヘビの毒のワグレリン1
形をまねたシンエイク
- 筋肉の受け取り口
- 合図の物質
- 筋肉
シンエイクは、受け取り口を元に戻る形でふさぎ、筋肉をゆるんだ状態に保つとされています。神経をつないで育てた筋細胞にシンエイクを加えると、筋細胞が縮む回数が減ったという結果があります。また、シンエイクを4%入れたものを塗ると、額などのシワが目立ちにくくなったという結果もあります。シンエイクは、表情ジワのもとになる筋肉の合図に目をつけてつくられた成分です。
化粧品として言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」まで
シンエイク入りの化粧品で言えるのは、試験を済ませた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。化粧品が働くのは肌のいちばん外側の角層までで、シンエイクは医薬部外品の有効成分ではなく、化粧品の成分として配合されるからです。
小ジワの言葉は「効能評価試験済み」の表記とセットで見ます。
成分表示で探す
効能の表記を見る
- ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミド
「乾燥による小ジワを目立たなくする」と書けるのは、日本香粧品学会の抗シワ製品の評価ガイドラインにもとづく試験か、それと同等以上の試験で効果を確かめた製品だけで、そうした製品には「効能評価試験済み」と表記されます。この効能で、年齢によるシワまで含めてすべてのシワに働くと思わせる表現をしてはいけないことも決まっています。医薬部外品の有効成分ではないので、「シワを改善する」ともうたえません。
広告の言葉にも決まりがあります。「筋肉をゆるめる」「神経の合図を止める」のように体の働きに作用することを前に出す言い方は、化粧品の広告では言えない種類の表現です。特定の成分だけを目立たせる場合は、有効成分と誤解されないよう、何のために配合したかを添えることになっています。表情ジワや深いシワは、シワの種類によって化粧品と医療のどちらで向き合うかが分かれます。
シンエイクに、ヘビの毒は入っていない
名前に「ヘビ」と聞くと、毒が入っているのかと心配になりますよね。シンエイクは人工的につくったペプチドで、ヘビの毒は入っていません。ヘビの毒の成分の形をまねていますが、毒そのものを取り出して入れているわけではないからです。
中身は、3つのアミノ酸の単位にベンジルアミドという部分をつなげ、酢酸と組み合わせたペプチドです。シンエイクは原料の呼び名で、日本の成分表示では「ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミド」と書かれます。
日本では、医薬品の成分ではなく、化粧品基準で配合が禁止や制限されている成分にも当たらないため、化粧品に配合できます。安全性は製造販売業者が自らの責任で確かめるしくみで、試験管の中では、細胞への毒性や遺伝子への影響は見られず、抗酸化の働きが見られたという結果があります。新しい化粧品を使うときと同じように、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
「塗るボトックス」と呼ばれても、注射の医薬品とは別もの
シンエイク入りの商品は「塗るボトックス」と宣伝されることがありますが、医師が注射するボツリヌス製剤の医薬品とは別ものです。区分も、使い方も、働くとされる場所も違うからです。
区分も、使い方も、働くとされる場所も違います。
ボツリヌス製剤は、毒薬、処方箋医薬品、生物由来製品に分類される医薬品で、神経の末端で合図の物質が出るのを抑えるしくみです。承認された効能は65歳未満の大人の眉間または目尻の表情皺で、効果は通常3〜4か月で切れるため注射をくり返す必要があり、3か月以内の再投与は避けることになっています。シンエイクは、神経の末端ではなく筋肉の受け取り口の側に働くとされています。
この医薬品と同じ効果があるかのように思わせる言い方は、化粧品で言える効能の範囲を超えています。「塗るボトックス」や「ヘビ毒配合」という言葉を見かけたら、肌に塗る化粧品の成分だと読みかえておきましょう。
まとめ
- 表情ジワは、表情の筋肉が縮むたびに上の肌が動き、それがくり返されてできます
- シンエイクは、筋肉の受け取り口をふさぐヘビの毒の成分の形をまねたペプチドで、毒そのものは入っていません
- 化粧品として言えるのは、試験を済ませた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです
- 成分表示では「ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミド」と書かれます
- 医師が注射するボツリヌス製剤とは、区分も使い方もしくみも別ものです
話題の言葉に惹かれたときこそ、商品に書かれた言葉と「効能評価試験済み」の表記を見分けて選んでみてください。神経の側に働くとされるアルジルリンの記事もあわせてどうぞ。
よくある質問
シンエイクはシワにどう働きますか?
筋肉が合図を受け取る口をふさいで筋肉をゆるんだ状態に保ち、表情ジワを目立ちにくくするとされています。ただし化粧品として言えるのは、試験を済ませた製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
シンエイクにヘビの毒は入っていますか?
入っていません。ヘビの毒に含まれるワグレリン1の短い配列をまねて、人工的につくったペプチドです。
シンエイクは塗るボトックスですか?
違います。ボツリヌス製剤は医師が筋肉に注射する医薬品で、シンエイクは肌に塗る化粧品の成分です。承認された効能があるのはボツリヌス製剤のほうで、65歳未満の大人の眉間または目尻の表情皺です。
シンエイク配合の化粧品で言える効能は何ですか?
決められた試験を済ませた製品なら「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。医薬部外品の有効成分ではなく、化粧品の成分として配合されるため、「シワを改善する」とはうたえません。
シンエイクは成分表示でどう書かれますか?
「ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミド」と書かれます。シンエイクは原料の呼び名です。
この記事で参照した情報
- Gorouhi F, Maibach HI. Role of topical peptides in preventing or treating aged skin. Int J Cosmet Sci 2009;31:327-345
- Schagen SK. Topical Peptide Treatments with Effective Anti-Aging Results. Cosmetics 2017;4(2):16
- Errante F, et al. Cosmeceutical Peptides in the Framework of Sustainable Wellness Economy. Front Chem 2020;8:572923
- Gok B, et al. Anti-aging activity of Syn-Ake peptide by in silico approaches and in vitro tests. J Biomol Struct Dyn 2024;42(10):5015-5029
- Small R. Botulinum Toxin Injection for Facial Wrinkles. Am Fam Physician 2014;90(3):168-175
- 厚生省「化粧品基準」(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省 審査管理課長・監視指導・麻薬対策課長通知(平成23年7月21日 薬食審査発0721第1号・薬食監麻発0721第1号)
- 日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」
- 京都府 薬務課掲載「『化粧品等の適正広告ガイドライン』について」(日本化粧品工業連合会 適正広告研究部会の講演資料)
- ボトックスビスタ注用50単位 添付文書(KEGG MEDICUS)
この記事が入っているテーマ別まとめ