この記事でわかること
- 浅い小ジワと深いシワが、肌のどこで起きているのか
- 化粧品と薬用化粧品で言えることの違い
- 紫外線対策と皮膚科で相談できること
目もとのシワが気になってクリームを探すと、「小ジワを目立たなくする」と書いたものと「シワを改善する」と書いたものがあって、何が違うのか迷いますよね。
結論から言うと、シワには角層の乾燥でできる浅い小ジワと、真皮の変化でできる深いシワがあり、ふつうの化粧品が言えるのは浅いほうの「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。「シワを改善する」は、国の審査を通った医薬部外品、つまり薬用化粧品だけが使える言葉です。まずは、シワが肌のどこで起きているのかから見ていきましょう。
シワは深さで3つに分かれ、原因の場所が違う
シワは、できている深さで3つに分けて考えられています。深さによって、肌の中で変化が起きている場所が違うからです。
いちばん浅いのは、おもに角層の乾燥から起こる乾燥性のしわで、保湿剤で対応できるタイプとされています。次が目尻などに出る小じわで、表皮から真皮のいちばん上のあたりまでが形を変えてできています。そして長く深くはっきりした深いしわは、真皮の変化によるもので、永久的なものと考えられています。
同じ「シワ」でも、浅いほど角層、深いほど真皮の話になる、と覚えておくとわかりやすいです。
乾燥による小ジワは、角層の水分が減ってできる
浅い小ジワは、肌のいちばん外側の角層が乾いてできます。角層の水分が少なくなると、角層のやわらかさが失われるためと考えられています。
角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っています。細胞間脂質の約50%はセラミドです。このすき間の脂が減ると水分が逃げやすくなり、乾いた角層の表面に浅い溝ができます。
乾燥による小ジワは角層で起きていて、化粧品の保湿が働くのもこの角層までです。
乾燥による小ジワは角層の中の話なので、グリセリンやヒアルロン酸などの保湿剤で水分を補うと目立ちにくくなります。ただし、目のまわりや口もとの細かい小じわには、年齢や日光で表皮と真皮の境目にある基底膜や弾性線維が変わり、真皮の上のほうがゆるむことも関わると考えられています。
小ジワがすべて乾燥のせいとは限りませんが、乾燥でできた小ジワなら、保湿で目立ちにくくできると考えておきましょう。
深いシワは、真皮の線維が衰えて刻まれる
深いシワは、角層よりずっと下の真皮で、肌のハリを支える線維が衰えて刻まれます。真皮ではコラーゲン線維とエラスチン線維がハリを支えていて、年齢とともにその質が変わっていくからです。
柔軟性を失った皮膚は、表情を動かすたびに折りたたまれる部分が元に戻りにくくなり、深いしわになっていきます。目尻や眉間にできる線のようなしわは、医薬品の世界では「表情皺」と呼ばれています。
深いシワは、角層よりずっと下の真皮で、ハリを支える線維が衰えて刻まれます。
年齢
衰える
失われる
刻まれる
この流れの入り口にあるのが、紫外線による光老化です。年齢による老化では皮膚が薄くなっていくのに対し、光老化では紫外線から身を守る反応で皮膚が厚くごわごわになります。真皮でハリを保つ弾性線維が壊れて団子のように固まり、ハリが失われてしわやたるみができます。光老化にはUVBの影響が強く、真皮まで届くUVAも関わります。
深いシワは、真皮の線維の変化に、紫外線による光老化が重なってできるのです。
化粧品が言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」まで
化粧品に「小ジワに」と書いてあると、シワ全体に効きそうに思いますよね。でも、ふつうの化粧品がシワについて言えるのは、国が決めた効能の56番目、「乾燥による小ジワを目立たなくする」だけです。化粧品が働くのは角層までなので、言えるのも角層の乾燥でできた小ジワまで、ということです。
この効能は2011年に加わったもので、乾燥でできた小ジワを、うるおいで目立たなくすることを意味します。どの化粧品でも書けるわけではなく、日本香粧品学会のガイドラインにもとづく試験か、それと同等以上の試験で効果を確かめた製品だけが書けます。その場合は「効能評価試験済み」と書き添えます。メイクでシワを目立たなく見せるという表現は、これとは別に認められています。
書き方にも枠があります。「小ジワを解消する」「小ジワを予防する」といった表現や、若返り、老化を防ぐといった表現は使えず、年齢によるシワまで含めてすべてのシワに効くと思わせることも禁じられています。紫外線によるシワを防ぐという効能もありません。
化粧品の「小ジワ」は、乾燥による浅いシワのことだと覚えておきましょう。
「シワを改善する」は、国が審査した医薬部外品の効能
「シワを改善する」は、医薬部外品、つまり薬用化粧品で、国が有効成分ごとに審査して認める効能です。化粧品の小ジワとの違いは、効果の確かめ方にはっきり表れています。
日本香粧品学会の評価法では、化粧品の小ジワは2週間以上使い、塗った場合と塗らない場合を比べて、目視・写真・機器のどれか1つで差が出ればよいとされます。医薬部外品のシワは2か月以上使い、有効成分を抜いた製剤と、どちらを塗ったか分からない形で比べ、目視か写真の評価と機器での測定の両方で差が出る必要があります。
この効能は2016年に初めて承認され、その後、純粋レチノールやナイアシンアミドなども、「シワを改善する」効能をもつ有効成分として使われています。どの成分でも、認められているのは「シワを改善する」までで、シワがなくなるという表現は承認された範囲を超えます。実際に、「深いシワも完全消滅」などとうたった美容クリームの通信販売業者に、消費者庁が3か月の業務停止を命じた例もあります。
「シワに」と書かれた商品を見たら、医薬部外品かどうかを確かめると、期待できる範囲がはっきりします。
紫外線対策は、深いシワの流れの入り口を減らす
深いシワには光老化が関わるので、紫外線対策はシワの話でもあります。流れの入り口にある紫外線を減らせば、光老化を防ぐことにつながるからです。光老化は、その気になれば防げるものとされています。
実際に、日焼け止めを毎日塗ると、肌の老化が進みにくかったという結果があります。ただし、日焼け止めの化粧品としての効能は「日やけを防ぐ」「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までで、シワを防ぐとはうたえません。
日焼け止めの塗り方の目安は、顔なら真珠の玉2個分ほどを全体にのばし、3時間に1回くらい塗り直すことです。うなじや耳たぶ、胸、首、手の甲は塗り忘れやすいので、意識して塗りましょう。
深いシワが気になるなら、毎日の紫外線対策から始めるのが近道です。
表情ジワや深いシワは、皮膚科で相談する
表情ジワや深いシワには、皮膚科や美容医療で使える医薬品や施術があります。化粧品の働きは角層までで、真皮で起きる深い変化には、医師が扱う方法があるからです。
眉間や目尻の表情ジワには、ボツリヌス製剤という注射の医薬品が、国に効能を認められています。皮膚科などの学会がまとめた美容医療の診療指針では、表情ジワへのボツリヌス製剤の注入は「強く推奨する」、ヒアルロン酸の注入やレーザー、高周波、超音波を使う施術は「弱く推奨する」という位置づけです。ヒアルロン酸の注入は合併症も軽いものがほとんどですが、血管の中に誤って入ると重い合併症が起こりうることに注意が促されています。
海外では、トレチノインという塗り薬が光老化による顔のシワに使われていて、細かいシワも粗いシワも目立ちにくくなったという結果があります。ただし、日本ではシワに使うトレチノインの塗り薬は承認されていません。
施術を受けるときは、受け方にも気をつけたいところです。国民生活センターは、しわ取り注射で高額な請求を受けた例を挙げ、リスクなく簡単にきれいになれるとうたう広告をうのみにせず、望まない当日の施術ははっきり断るよう呼びかけています。エステサロンでの超音波の施術では、やけどや神経の損傷が起きた例もあり、医師以外による施術は受けないよう注意を促しています。
深いシワや表情ジワが気になるときは、まず皮膚科で相談するのが確実です。
シワに関わる成分は、区分で言えることが違う
シワに関わる成分は、化粧品か医薬部外品かで言える効能が変わります。同じ「シワ」でも、国が認めた範囲が区分ごとに違うからです。
- 保湿成分 化粧品の成分です。グリセリンやヒアルロン酸などが角層に水分を与えます。決められた試験をした製品なら「乾燥による小ジワを目立たなくする」と書けます。
- 純粋レチノール 医薬部外品の有効成分として、「しわを改善する」効能が認められています。レチノールを塗ると、細かいシワが目立ちにくくなったという結果もあります。
- ナイアシンアミド 医薬部外品の有効成分として、「シワを改善する」効能が認められています。5%を顔に塗ると、シワが目立ちにくくなったという結果もあります。
- 日焼け止め 化粧品として言えるのは「日やけを防ぐ」までです。毎日塗ると、肌の老化が進みにくかったという結果があります。
どの成分を選ぶときも、まず商品の区分と効能の言葉を見ると、期待できる範囲がわかります。
まとめ
- シワは深さで3つに分けられ、浅い小ジワは角層、深いシワは真皮で起きています
- 乾燥による小ジワは角層の水分が減ってできるので、保湿で目立ちにくくなります
- 深いシワは、真皮の線維の変化に、紫外線による光老化が重なってできます
- 化粧品が言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」まで、「シワを改善する」は医薬部外品の効能です
- 紫外線対策は毎日。表情ジワや深いシワは皮膚科で相談し、シワ用のトレチノインの塗り薬は日本では承認されていません
同じ「シワ」でも、深さと区分で向き合い方が変わります。商品の言葉を一つずつ見分けて、自分のシワに合ったケアを選んでみてください。
よくある質問
化粧品でシワは消えますか?
シワがなくなるという効能はありません。化粧品が言えるのは、試験をした製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までで、すべてのシワに効くと思わせる表現は禁じられています。
「シワを改善する」と書ける化粧品はありますか?
医薬部外品、つまり薬用化粧品なら書けます。国が有効成分ごとに審査して認める効能で、純粋レチノールやナイアシンアミドなどが、この効能をもつ有効成分です。
化粧品の小ジワと薬用化粧品の「シワを改善する」は、試験がどう違いますか?
化粧品は2週間以上、薬用化粧品は2か月以上の試験が求められます。薬用化粧品は有効成分を抜いた製剤と、どちらを塗ったか分からない形で比べ、目視か写真と機器の両方で差が出る必要があります。
日焼け止めでシワは防げますか?
効能として「シワを防ぐ」とはうたえません。ただ、日焼け止めを毎日塗ると、肌の老化が進みにくかったという結果があります。深いシワには紫外線による光老化が関わるので、毎日の紫外線対策が大切です。
トレチノインは日本でシワに使えますか?
シワに使うトレチノインの塗り薬は、日本では承認されていません。日本で医療用に承認されているトレチノインは、急性前骨髄球性白血病の飲み薬です。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「しわ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「小じわ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「抗しわ剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「光老化」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「日焼け」Q5
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「日焼け」Q3
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「日焼け」Q13
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」(平成23年7月21日 薬食審査発0721第1号・薬食監麻発0721第1号)
- 日本香粧品学会「化粧品機能評価法ガイドライン」
- 日本化粧品工業連合会「化粧品で表示できるようになった“シワに対する効能表現”」(2011年8月3日)
- 日本化粧品工業連合会 適正広告研究部会 解説資料(京都府掲載)
- 薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録(2016年5月20日)
- 薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録(2018年10月22日)
- 資生堂 ニュースリリース「有効成分純粋レチノールによるしわを改善する効能効果の承認を日本で初めて取得」(2017年2月28日)
- コーセー ニュースリリース「ONE BY KOSÉ ザ リンクレス」(2018年7月3日)
- 消費者庁「通信販売業者【株式会社SUNSIRI】に対する行政処分について」(2024年10月4日)
- Hughes MCB, et al. Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med 2013;158:781-790
- ボトックスビスタ注用 添付文書(KEGG)
- PMDA ボトックスビスタ 承認申請資料(2016年掲載)
- 日本皮膚科学会ほか「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」
- KEGG 商品一覧「トレチノイン」
- ベサノイドカプセル10mg 添付文書(KEGG)
- Huang HY, Lee LTJ. Tretinoin for Photodamaged Facial Skin: Systematic Review and Meta-Analysis of RCTs. Dermatol Pract Concept 2025;15(4)
- Kafi R, et al. Improvement of Naturally Aged Skin With Vitamin A (Retinol). Arch Dermatol 2007;143(5):606-612
- Boo YC. Mechanistic Basis and Clinical Evidence for the Applications of Nicotinamide (Niacinamide) to Control Skin Aging and Pigmentation. Antioxidants 2021;10(8):1315
- 国民生活センター「60歳以上の女性の美容医療トラブルが高額化!」(2016年9月15日)
- 国民生活センター「エステサロン等でのHIFU機器による施術でトラブル発生!」(2017年3月2日)
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
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