この記事でわかること
- 線維芽細胞の形と、真皮での居場所
- つくる働きと、分解して組み立て直す働き
- 傷ができたときの動きと、分裂の回数
線維芽細胞という名前は聞いたことがあっても、どんな形の細胞で、真皮の中で何をしているのかは、想像しにくいと思いますよね。
結論から言うと、線維芽細胞は、真皮の中でコラーゲン線維やエラスチン線維、そのすき間を埋める基質をつくっている細胞です。つくるだけでなく分解もして、真皮の中身を組み立て直しています。つくるもの、形、まわりとのつながり、働き方の順に見ていきましょう。
線維芽細胞は、真皮の線維と基質をつくる細胞
線維芽細胞は真皮の主な細胞で、真皮の中身のほとんどをつくっています。真皮の大部分を占める線維と基質は、この細胞が送り出したものだからです。
線維芽細胞は、全身の結合組織(体の組織どうしをつなぎ、支える組織)に散らばっている細胞で、皮膚では真皮にいます。つくるものは、コラーゲン線維、エラスチン線維、そしてヒアルロン酸などの糖の鎖です。糖の鎖は、線維のすき間を埋める基質になります。
線維芽細胞がつくって送り出すもの。
つくった物は、表皮と真皮の境目にある基底膜(表皮と真皮をつなぐ薄い膜)にも使われます。基底膜のシートをつくるIV型コラーゲンは、線維芽細胞と表皮の細胞の両方がつくっています。真皮の線維と基質のつくり手が、線維芽細胞です。
細長い紡錘形で、休むと小さな線維細胞になる
線維芽細胞は、両はしがとがった細長い紡錘形の細胞です。体の結合組織のもとになる、間葉という組織から分かれてできた細胞です。
電子顕微鏡で中を見ると、粗面小胞体(たんぱく質をつくる場所)とゴルジ装置(できたたんぱく質を仕上げて送り出す場所)がたくさん見えます。コラーゲンなどのたんぱく質を、たくさんつくって外へ送り出す細胞だからです。
働きを休むと、線維細胞と呼ばれる姿になり、核(細胞の中で遺伝情報をしまっている部分)が小さくなります。
働いているときと休んでいるときの姿。
よく働くときは大きく、休むときは小さく。働き方によって姿を変える細胞です。
まわりはコラーゲン線維に囲まれ、線維とつながっている
線維芽細胞はまわりをコラーゲン線維に囲まれていて、ほかの細胞とはあまり接していません。そのかわり、ほとんどの部分でコラーゲン線維と結びついています。
そのため、まわりのコラーゲン線維の状態が、線維芽細胞の働きに大きくかかわります。物をつくる量や分解する量、線維の組み立て方、細胞の増え方が、線維の状態によって変わります。
線維と基質をまとめた細胞外マトリックス(細胞の外を満たす物質)は、以前は体を支えるだけの物と考えられていましたが、今は細胞の働き・形・増え方・移動にかかわると考えられています。線維芽細胞と線維は、おたがいに影響し合う関係です。
つくるだけでなく、分解もして組み立て直す
線維芽細胞は、細胞外マトリックスをつくるだけでなく、分解もして、組み立て直しています。つくる働きと分解する働きの両方を、1つの細胞が受けもっているのです。
つくる側では、コラーゲンのもとになるプロコラーゲン(コラーゲンの1つ前の形)を細胞の外に送り出し、外で線維に組み上げます。分解する側では、コラーゲンを分解する酵素のコラゲナーゼをつくります。
皮膚のコラーゲンは、約15年で半分が入れかわる、という研究結果があります。真皮の線維は、線維芽細胞のつくる働きと分解する働きのバランスで保たれています。
傷ができると、集まってコラーゲンで埋めていく
組織が傷つくと、線維芽細胞はまわりから傷のところへ移動して増え、コラーゲンをつくって傷がふさがるのを進めます。結合組織をつくる細胞なので、失われた部分を埋める役目も受けもっています。
この動きは、皮膚の小さなかけらを体の外で育てる実験でも見られます。かけらを培養(体の外で細胞を育てること)すると、かけらから線維芽細胞がはい出して、増えていきます。
ふだんは真皮の中身を少しずつ入れかえ、傷ができると集まって埋める。線維芽細胞は、真皮をつくり、保つ細胞です。
線維芽細胞が分裂できる回数には限りがある
線維芽細胞が分裂できる回数には、限りがあります。細胞を体の外で育てる実験では、分裂できる回数は、細胞を提供した人の年齢が高いほど少なくなります。
若い人の線維芽細胞を何度も分裂させると、高齢の人の細胞に似た形や働きに変わっていきます。こうした細胞では、コラーゲンをつくる力が下がり、コラゲナーゼをつくる指令が増える、という結果があります。体の中でも、年齢とともに真皮のコラーゲン線維は細くなり、量が減っていきます。
線維芽細胞がつくる線維は、真皮の大部分を占めています。線維芽細胞の働きが、真皮の中身を形づくっています。
まとめ
- 線維芽細胞は真皮の主な細胞で、コラーゲン線維・エラスチン線維・ヒアルロン酸などの基質をつくります
- 細長い紡錘形で、たんぱく質をつくる粗面小胞体とゴルジ装置が多く、休むと小さな線維細胞になります
- まわりをコラーゲン線維に囲まれ、線維の状態が細胞の働きにかかわります
- つくるだけでなく分解もして、真皮の中身を組み立て直しています
- 傷ができると集まってコラーゲンで埋め、分裂できる回数には限りがあります
線維芽細胞は、コラーゲン線維やエラスチン線維のつくり手です。線維の記事とあわせて読むと、真皮のしくみが立体的に見えてきます。
よくある質問
線維芽細胞とは?
真皮で線維や基質をつくる細胞です。コラーゲン線維やエラスチン線維、ヒアルロン酸などの糖の鎖をつくり、細胞の外に送り出します。
線維芽細胞はどこにいる?
皮膚では真皮にいます。皮膚だけでなく、全身の結合組織に散らばっている細胞です。
線維芽細胞は何をつくる?
コラーゲン線維、エラスチン線維、基質の糖の鎖をつくります。つくるだけでなく、コラゲナーゼなどで分解もして、真皮の中身を組み立て直しています。
線維芽細胞と線維細胞のちがいは?
線維細胞は、働きを休んでいる線維芽細胞の姿です。働いているときにくらべて、核が小さくなっています。
線維芽細胞は何回でも分裂できる?
できません。分裂できる回数には限りがあり、細胞を提供した人の年齢が高いほど少なくなります。