この記事でわかること
- エラスチン線維のつくりと伸び縮みのしくみ
- 真皮の中での並び方と役割
- コラーゲン線維とのちがい
エラスチンは、コラーゲンとセットで名前を見かけることが多いけれど、何がちがうのか、よくわからないと思いますよね。
結論から言うと、エラスチン線維は、真皮の中でゴムのように伸び縮みして、肌に弾力を与える線維です。弾性線維とも呼ばれ、量は真皮の線維の数%と少ないものの、皮膚の弾力を受けもっています。つくり、真皮での並び方、コラーゲン線維とのちがいの順に見ていきましょう。
エラスチン線維は、伸びて元に戻るゴムのような線維
エラスチン線維は、伸び縮みする性質で、皮膚に弾力を与えてはりを保つ線維です。弾性線維、弾力線維とも呼ばれます。
エラスチン線維は、皮膚のほか、動脈の壁や肺、腱、靭帯など、伸び縮みが必要な場所にあります。大動脈や靭帯では乾燥重量(水分を除いた重さ)の約50%を占めますが、皮膚では量が少なく、真皮の線維の数%です。太さは1〜3マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)で、真皮の深いところほど太くなります。
量は少なくても、皮膚の働きのうえでは重要な線維です。少ない量で、皮膚の弾力を受けもっています。
中心のエラスチンを、細いミクロフィブリルが取りまいている
エラスチン線維は、中心のエラスチンと、そのまわりを取りまくミクロフィブリル(ごく細い糸状の足場)でできています。エラスチンが伸び縮みを生み、ミクロフィブリルがその足場になっています。
ミクロフィブリルは太さ10〜12ナノメートルの細い糸で、フィブリリンというたんぱく質が集まってできています。2つの成分の割合は真皮の中の場所によってちがい、その組み合わせが線維の形と働きに表れています。
エラスチンのもとは、トロポエラスチンというたんぱく質です。トロポエラスチンのアミノ酸の約4%はリシンで、このリシンどうしが架橋(分子のあいだにかかる橋)でつながり、水に溶けない網になります。橋の中には、4つのリシンをまとめてつなぐデスモシンという形もあります。
エラスチン線維のつくりと架橋。
架橋されて溶けなくなったエラスチンが、ゴムのように伸び縮みする性質をもっています。架橋でつながった網が、伸びても戻る力のもとです。
基底膜から網状層まで、つながった網をつくっている
真皮のエラスチン線維は、表皮のすぐ下の基底膜から皮下組織まで、切れ目なくつながった網をつくっています。真皮の深さによって、線維の太さと向きが変わります。
いちばん上のオキシタラン線維は、ミクロフィブリルを多く含む細い線維で、基底膜から真下に向かって乳頭層をつらぬいています。その先で、水平に走る少し太いエラウニン線維につながります。網状層には、エラスチンを主成分とする太い成熟した弾性線維が、コラーゲン線維のあいだを皮膚の表面と平行に走っています。
真皮の深さごとのエラスチン線維。
基底膜のすぐ下で縦に伸びるミクロフィブリルは、基底膜を真皮につなぎとめる役目もしています。真皮の深いところの線維は、体の部位ごとに決まった方向に走っています。深さごとに形を変えながら、1つの網として真皮全体に広がっています。
コラーゲン線維は強さ、エラスチン線維は戻る力を受けもつ
コラーゲン線維は引っぱる力に強いけれどあまり伸びず、エラスチン線維は強さでは及ばないけれど弾力に富んでいます。皮膚を支える役目を、この2つの線維で分担しているからです。
量と太さもちがいます。真皮の線維の90%以上はコラーゲン線維で、エラスチン線維は数%です。太さは、コラーゲン線維の束が2〜15マイクロメートル、エラスチン線維が1〜3マイクロメートルです。材料も、コラーゲン線維はコラーゲン、エラスチン線維はエラスチンと、別のたんぱく質です。
引っぱったときの2つの線維のちがい。
線維の並び方を調べた研究では、エラスチン線維はコラーゲン線維の束に沿って、同じ向きに走っていた、という結果があります。真皮を酵素で消化して見ると、エラスチン線維は、なめらかに枝分かれしたゴムバンドのような形をしています。コラーゲン線維が強さ、エラスチン線維が戻る力を受けもつ組み合わせです。
エラスチン線維は、ほとんど入れかわらない
エラスチン線維は、一度できるとほとんど入れかわらず、長く使われ続けます。入れかわりがとても遅いため、年月による変化がそのまま積み重なっていきます。
皮膚のエラスチンにたまる、古いたんぱく質の目印を年齢ごとに調べた研究では、目印が年齢とともに増え続け、ほとんど入れかわりがない、という結果があります。自然に年を重ねると、エラスチン線維は少しずつ減っていきます。
エラスチン線維をつくるのは、コラーゲン線維と同じく線維芽細胞です。真皮の中で、線維芽細胞がつくり、コラーゲン線維と組んで働く線維です。
まとめ
- エラスチン線維は弾性線維とも呼ばれ、ゴムのように伸び縮みして皮膚に弾力を与える線維です
- 中心のエラスチンを、太さ10〜12ナノメートルのミクロフィブリルが取りまいています
- トロポエラスチンが架橋でつながれ、溶けない網になることで伸び縮みします
- 基底膜から網状層まで、オキシタラン線維・エラウニン線維・成熟した弾性線維とつながっています
- 量は真皮の線維の数%。コラーゲン線維が強さ、エラスチン線維が戻る力を受けもち、ほとんど入れかわりません
少ない量でも、真皮全体に網を広げて肌の弾力を受けもっているのが、エラスチン線維です。
よくある質問
エラスチン線維とは?
真皮にある、ゴムのように伸び縮みする線維です。皮膚に弾力を与えてはりを保ち、弾性線維とも呼ばれます。
弾性線維とエラスチンのちがいは?
弾性線維は線維の名前、エラスチンはその主成分のたんぱく質です。弾性線維は、エラスチンと、そのまわりを取りまくミクロフィブリルでできています。
エラスチン線維は真皮にどのくらいある?
真皮の線維の数%です。90%以上を占めるコラーゲン線維に比べると、ずっと少ない量です。
コラーゲン線維とエラスチン線維のちがいは?
コラーゲン線維は強さ、エラスチン線維は弾力を受けもちます。コラーゲン線維は引っぱる力に強いもののあまり伸びず、エラスチン線維は強さでは及ばないものの伸び縮みします。
エラスチン線維は入れかわる?
ほとんど入れかわりません。入れかわりがとても遅く、一度できたエラスチン線維が長く使われ続けます。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「エラスチン線維」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「コラーゲン線維」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「真皮」
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「皮膚の構造と機能」1章 表皮
- 北海道大学 皮膚科学教室 公開資料「皮膚の構造と機能」1章 真皮
- 中邨智之「弾性線維形成におけるファイブリンファミリータンパク質の役割」生化学 第81巻第1号 2009年
- Ritz-Timme S, et al. Aspartic acid racemization: evidence for marked longevity of elastin in human skin. Br J Dermatol 2003
- 京都大学「刺しゅう枠で皮膚の線維構造を解明 コラーゲンと弾性線維の網目構造」2019年