この記事でわかること
- 髪の傷みが、髪のどこで起きているのか
- 加水分解ケラチンが傷んだ髪にどう付くのか
- 表示名の見分け方と、大きさによる付き方の違い
トリートメントの成分表で加水分解ケラチンを見かけると、傷んだ髪が元に戻るのか、髪の中まで入るのか、気になりますよね。
結論から言うと、加水分解ケラチンは羊毛などのたんぱく質を小さく切った成分で、傷んだ髪の表面に付いて、手ざわりやつやを整えます。ただし、傷んだ髪を元に戻すものではありません。まずは、髪の傷みがどこで起きているのかから見ていきましょう。
髪の傷みは、表面のキューティクルがはがれることから始まる
髪の傷みは、いちばん外側のキューティクルが欠けたり、はがれたりすることから始まります。キューティクルは、髪の内側を守る役割をもつ表面の層です。
健康な髪では、キューティクルが整って並んでいます。ところが、ドライヤーやヘアアイロンの熱、ブラッシングの摩擦、くり返しのパーマやカラーで、キューティクルがはがれやすくなります。ブラッシングの時間が長いほど、また負荷が大きいほど、枝毛もできやすくなります。
加水分解ケラチンは、枠で囲んだ「表面がはがれた」ところに付いて整えます。
熱・摩擦
はがれる
切れ毛に
髪は死んだ細胞でできているので、一度傷むと元には戻りません。だから、いちばん大切なのは髪を傷めないこと、傷んだらそれ以上進まないようにケアすることです。
加水分解ケラチンは、傷んだ表面のすき間にたまって整える
加水分解ケラチンは、傷んだ髪の表面に付いて、手ざわりやつやを整えるコンディショニング成分です。シャンプーやトリートメント、整髪料などに使われています。
羽毛のケラチンから作った小さなかけらを、染めた髪やブリーチした髪に使うと、キューティクルの継ぎ目に成分がたまったという結果があります。このたまった成分がキューティクルのすき間をふさぎ、つやと柔らかさを増すのに役立っているとみられています。
ヘアケア製品にできるのは、髪の表面をおおったり、傷んだところにたんぱく質などを補ったりすることです。シャンプーやトリートメントが化粧品として言えるのも、「毛髪にはり、こしを与える」「裂毛、切毛、枝毛を防ぐ」といった、国が定めた効能の範囲です。
加水分解ケラチンは、傷んだ髪を元どおりにする成分ではなく、表面を整えて扱いやすくする成分、と考えましょう。
羊毛などのケラチンを、酵素や酸で小さく分解したもの
加水分解ケラチンは、ケラチンというたんぱく質を、酸や酵素などで小さく分解したものです。髪の主な成分も、同じケラチンです。
主な原料は羊毛と牛のひづめや角で、ヤギのカシミヤの毛やニワトリの羽毛が使われることもあります。かつてはヒトの髪が主な原料でしたが、EUがヒト由来の原料を化粧品に使うことを禁じているため、今はあまり使われていません。
加水分解ケラチンの作り方の一例です。
の原料
油を除く
分解する
かけらに
作り方の一例では、羊毛を洗って汚れを落とし、煮て残った油分を除いてから、穏やかな条件で酵素で分解します。できた小さなかけらはペプチドと呼ばれ、その大きさは製品によってさまざまです。
表示名は、前に付く部分を見ると形がわかる
同じ加水分解ケラチンの仲間でも、名前の前に付く部分を見ると、どんな形のものかがわかります。ケラチンに別の部分を付け足したものは、別の表示名になるからです。
- トリモニウムやジモニウムを含む名前は、陽イオンの形にしたもの
- シリルを含む名前は、シリル化したもの
- イソステアロイルのような脂肪酸の名前が前に付くものは、油に溶けるようにしたもの
名前の後ろには、羊毛のような原料の名前が添えられることがあります。成分表で見かけたら、前と後ろの両方を見てみましょう。
小さいものは髪の内側へ、大きいものは表面に付く
加水分解ケラチンは、大きさによって髪への付き方が変わります。大きさは製品によって、分子量でいうと数百から数万まであります。
150ほどの小さなものもありますが、1,000〜3,000くらいのものが多いとみられ、原料のカタログには400から30,000までの品番が並んでいます。
髪に使うと、分子量221や約2,577の小さなものは髪の内側の奥まで入り、約75,440の大きなものは主に表面に付いたという結果があります。中くらいと大きいものでは髪が硬くなり、湿度が高くても低くても切れにくくなりました。
小さいものは内側、大きいものは表面と、付く場所が違います。どちらかに決めるより、つやや手ざわりなど、自分が求める仕上がりで選ぶのが現実的です。
今の使い方と濃度では安全とされ、アレルギーはまれ
加水分解ケラチンを含むケラチン由来の8成分は、今の使い方と濃度なら安全というのが、米国の化粧品成分の専門家の委員会の結論です。
使われている濃度は、洗い流すヘア製品で0.88%まで、洗い流さない製品で5%までと報告されています。ヒトのくり返しのパッチテストでは、5%までアレルギーの反応は見られませんでした。
一方で、コンディショナーを使ったあとに目のまわりが強くむくみ、目や手がはれてかゆくなった例が報告されています。加水分解ケラチンによる、使ってすぐに出るタイプのアレルギーでした。まれな例ですが、使ったあとに異常が出たら使うのをやめ、皮膚科に相談しましょう。
まとめ
- 髪の傷みは、熱や摩擦、パーマやカラーで表面のキューティクルがはがれることから始まります
- 加水分解ケラチンは、傷んだ表面のすき間にたまって、つやや手ざわりを整える成分です
- 羊毛などのケラチンを酵素や酸で小さく分解したもので、表示名の前に付く部分で形がわかります
- 小さいものは髪の内側まで、大きいものは主に表面に付きます
- 今の使い方と濃度では安全とされていますが、傷んだ髪を元に戻すものではありません
加水分解ケラチンは、傷んだ髪の表面を整えてくれる成分です。髪を傷めない習慣と組み合わせて、仕上がりの好みで選んでみてください。
よくある質問
加水分解ケラチンは髪の内側まで入りますか?
小さいものは髪の内側の奥まで入り、大きいものは主に表面に付いたという結果があります。分子量221や約2,577のものは内側へ、約75,440のものは表面に付きました。
加水分解ケラチンで傷んだ髪は元に戻りますか?
元には戻りません。髪は死んだ細胞でできていて一度傷むと戻らないため、加水分解ケラチンは傷んだ表面を整える成分として考えます。
加水分解ケラチンは何から作られていますか?
主な原料は羊毛と牛のひづめや角です。ヤギのカシミヤの毛やニワトリの羽毛が使われることもあり、酸や酵素で小さく分解して作ります。
加水分解ケラチンは安全ですか?
米国の専門家の委員会は、今の使い方と濃度なら安全と結論しています。アレルギーはまれですが、コンディショナーで目のまわりがむくんだ例があります。
小さいケラチンと大きいケラチンはどちらを選べばいいですか?
小さいものは内側、大きいものは表面と付く場所が違います。表示名で形を確かめ、つやや手ざわりなど求める仕上がりで選ぶのが現実的です。
この記事で参照した情報
- Burnett CL, et al. Safety Assessment of Keratin and Keratin-Derived Ingredients as Used in Cosmetics. International Journal of Toxicology 2021(CIR 最終報告)
- Cosmetic Ingredient Review. Safety Assessment of Keratin and Keratin-Derived Ingredients as Used in Cosmetics(審議用ドラフト、2016年3月7日)
- 成和化成「SEIWAKASEI Product Catalogue 成和化成製品カタログ 第1版」(2023年5月8日)
- HABA 成分辞典「加水分解ケラチン(羊毛)」
- Malinauskyte E, et al. Penetration of different molecular weight hydrolysed keratins into hair fibres and their effects on the physical properties of textured hair. Int J Cosmet Sci 2021;43(1):26-37
- Villa ALV, et al. Feather keratin hydrolysates obtained from microbial keratinases: effect on hair fiber. BMC Biotechnology 2013;13:15
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 公益社団法人 日本毛髪科学協会「毛髪の損傷とヘアケア」
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