この記事でわかること
- 成分の組み合わせを「役割分担」で考える理由
- 保湿成分やセラミドなどの脂質の、組み合わせ方の基本
- 相性の悪い組み合わせと、広告の言葉の読み方
「この成分とこの成分を組み合わせると、もっと効く」と聞くと、何と何を合わせればいいのか、本当にそうなのか迷いますよね。
結論から言うと、成分の組み合わせは、効き目が何倍にもなる掛け算ではなく、それぞれが違う仕事を受け持つ「役割分担」で考えるとわかりやすくなります。保湿の成分、角層の脂、紫外線のダメージから守る成分と、場面ごとに見ていきましょう。
成分の組み合わせは、掛け算ではなく役割分担
組み合わせる意味は、1つの成分では受け持てない仕事を、別の成分に任せられることです。肌の悩みは、角層のうるおい、メラニン、紫外線のダメージなど、原因の場所がそれぞれ違うからです。
化粧品として言える効能も、組み合わせたからといって広がるわけではありません。たとえば複数の有効成分が入った医薬部外品でも、表示される効能は、成分ごとに国が認めた効能を並べる形です。
たとえばレチノールとナイアシンアミドは、レチノールがシワに、ナイアシンアミドがシワに加えてしみや肌あれを防ぐ側に働く、という分担の組み合わせです。組み合わせを見るときは、それぞれが何の役目かから考えましょう。
保湿は、水分を抱える・油分を補う・ふたをするの3役で組む
保湿成分は、水分を抱える成分、油分を補う成分、ふたをする成分の3つを組み合わせるのが基本です。角層は、いくつかの要素のバランスでうるおいを保っているからです。
角層は、この3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
角層では、皮脂膜が表面をおおい、天然保湿因子が細胞の中で水を抱え、細胞間脂質がすき間を埋めて水分を逃がしません。このバランスが崩れると、角層の水分が逃げて乾燥します。保湿剤は、この働きを外から補うために、役目の違う成分を組み合わせています。
保湿剤の多くは、この3つの役目の成分を組み合わせています。
水分を抱える
グリセリンなど
油分を補う
植物の油など
ふたをする
ワセリンなど
水分を抱える成分は、水になじんで水分をつかまえる保湿成分で、グリセリンや乳酸、尿素などです。油分を補う成分はエモリエント剤と呼ばれ、肌をやわらかく保ちます。天然の油脂や脂肪酸エステル、ラノリンなどです。ふたをする成分はオクルーシブと呼ばれ、肌の上に水をはじく膜をつくって水分を閉じ込めます。
中でも、ふたをする成分と水分を抱える成分の組み合わせは、肌が水分を保ちやすくなるとされています。水分を抱える成分は、肌の内側から表面側へも水を引き寄せるため、そのままでは表面で蒸発しやすいからです。実際に、グリセリンとワセリンを両方含むクリームを使うと、ワセリンは水分の逃げにくさに、グリセリンは肌の水分量にそれぞれ関わっていたという結果があります。
保湿は、3つの役目がそろっているかで考えると、組み合わせを選びやすくなります。
セラミドは、コレステロール・脂肪酸と3つそろえて補う
角層のすき間の脂を補うなら、セラミドだけでなく、コレステロールと脂肪酸もそろえるのが基本です。この3つが組になって、水分が逃げにくい状態を保っているからです。
細胞のすき間を埋める細胞間脂質は、約50%をセラミドが占め、ほかにコレステロールや脂肪酸を含みます。乾燥した肌では、このすき間の脂が足りなくなり、水分が逃げやすくなります。
セラミド・コレステロール・脂肪酸は、角層のすき間の脂の材料として3つで働きます。
たとえば、角層が傷ついた肌にこのうち1つか2つだけを塗ると、元の状態に戻るのがかえって遅れたという結果があります。3つをそろえると遅れは出ず、どれか1つを3倍まで多めにすると、戻るのが早まりました。年齢を重ねた肌では、コレステロールを多めにした混合物のほうが早く戻ったという結果もあり、どれを多めにするとよいかは肌の状態で変わります。
ただし、成分表は配合量の多い順に並び、1%以下のものは順不同なので、表示から3つの比率を読み取ることはできません。化粧品として言えるのは、「皮膚の水分、油分を補い保つ」といった範囲です。セラミド入りを選ぶときは、コレステロールや脂肪酸も一緒に入っているかを目安にするとよいでしょう。
ビタミンC・Eは酸化から守る役、フェルラ酸は壊れにくくする役
ビタミンCとビタミンEは紫外線による酸化のダメージから守る役、フェルラ酸はその2つを壊れにくくする役を受け持ちます。紫外線を浴びると、肌の中で不安定な物質ができ、赤みや日焼けで傷んだ細胞につながるからです。
ビタミンC・Eは枠で囲んだところで働き、入り口の紫外線を防ぐのは日焼け止めの役目です。
浴びる
物質ができる
傷んだ細胞
実際に、ビタミンC15%とビタミンE1%を一緒に皮膚に塗ってから紫外線を当てると、赤みと日焼けで傷んだ細胞のでき方を、どちらか1つより抑えたという結果があります。この液にフェルラ酸を加えると、温かい場所に置いたあともビタミンCとEがほとんど壊れずに残っていたという結果もあり、フェルラ酸は2つのビタミンを守る役目もしています。
ただし、使われたのは酸性の強い液に溶かした純粋なビタミンCで、日本の化粧品に多いビタミンC誘導体に同じことは当てはめられません。また、抗酸化成分の入った日焼け止めを調べると、紫外線から守る働きの大半は紫外線防止剤によるものだったという結果があります。
紫外線を防ぐのは日焼け止め、ビタミンC・Eはその先の酸化のダメージ側、と入り口と次の段階で分担すると考えましょう。
一緒にすると分解しやすくなる組み合わせもある
組み合わせは、いつもプラスに働くとは限りません。成分によっては、一緒にすると光で分解しやすくなるものがあるからです。
たとえば日焼け止めによく使われる紫外線吸収剤のうち、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと、もう1種類の吸収剤を含む日焼け止めに紫外線を当てると、2つが同時に分解したという結果があります。そのため製品では、処方で成分を安定させる工夫がされています。
手元で美容成分を組み合わせるときに気をつけたいのは、分解よりも、刺激を感じやすい成分どうしを重ねることです。レチノールのように使い始めに乾燥しやすい成分なら、米国皮膚科学会も保湿剤を一緒に使うよう案内しています。刺激の出やすい成分には保湿を重ね、日焼けしやすくなる成分を使う日は紫外線対策をする、という守りの分担を意識しましょう。
広告の組み合わせの言葉は、成分ごとの役目を見て読む
「組み合わせで何倍」のような広告を見ると、つい期待してしまいますよね。でも、組み合わせたからといって、化粧品として言える効能の範囲が広がるわけではありません。
化粧品として言える効能は、厚生労働省が定める56項目の範囲に限られます。国の広告の基準では、医薬品や医薬部外品、化粧品などを一緒に広告するときに、組み合わせると効き目が増すかのように誤解させる広告をしないよう求めています。
化粧品業界の自主基準でも、特定の成分を目立たせるときは「保湿剤」のような配合目的を添えることとされ、「製品の抗酸化成分」は認められる一方で、「美肌成分」や「エイジングケア成分」は認められていません。また、効果の大きさを示す表示は、消費者庁から合理的な根拠を示す資料を求められることがあり、出せなければ不当な表示とみなされます。
広告で組み合わせの言葉を見たら、それぞれの成分が何の目的で入っているかを確かめてみてください。
まとめ
- 成分の組み合わせは、効き目の掛け算ではなく、違う仕事を受け持つ役割分担で考えます
- 保湿は、水分を抱える・油分を補う・ふたをするの3役で組みます
- セラミドは、コレステロール・脂肪酸と3つそろえて補うのが基本です
- ビタミンC・Eは酸化から守る役、フェルラ酸は壊れにくくする役。紫外線を防ぐのは日焼け止めです
- 分解しやすくなる組み合わせもあります。広告の言葉は、成分ごとの配合目的を見て読みます
「いい組み合わせ」を探すより、それぞれの成分が何の役目で入っているかを見るほうが、自分に合う商品を選ぶ近道です。
よくある質問
成分を組み合わせると効果は上がりますか?
効き目が何倍にもなると考えるより、それぞれが違う仕事を受け持つ役割分担で考えるとわかりやすくなります。組み合わせても、化粧品として言える効能は厚生労働省が定める56項目の範囲のままです。
保湿成分はどう組み合わせるといいですか?
水分を抱える成分、油分を補う成分、ふたをする成分の役割分担で考えます。水分を抱える成分だけだと表面で蒸発しやすいため、ワセリンのようなふたをする成分と組み合わせることがよく必要になります。
セラミドは3:1:1の比率がいいのですか?
どの比率がよいかは肌の状態で変わります。セラミド・コレステロール・脂肪酸の3つをそろえるのが基本で、どれか1つを3倍まで多めにすると角層が早く元に戻ったという結果や、年齢を重ねた肌ではコレステロール多めが早かったという結果があります。
ビタミンCとビタミンEは一緒に使うといいですか?
2つを一緒に塗ると、紫外線による赤みなどをどちらか1つより抑えたという結果があり、フェルラ酸は2つを壊れにくくする役目をもちます。ただし紫外線を防ぐのは日焼け止めの役目で、純粋なビタミンCでの結果なので、誘導体には当てはめられません。
広告の組み合わせの言葉はどう読めばいいですか?
それぞれの成分が何の目的で入っているかを見ます。組み合わせても化粧品として言える効能は56項目の範囲のままで、医薬部外品でも効能は成分ごとに認められたものを並べる形です。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- American Academy of Dermatology. Retinoid or retinol? (2021年5月25日更新)
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- 日本化粧品工業会「保湿とエモリエント」
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- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」(2020年版)
- 日本化粧品工業会 適正広告研究部会 化粧品等の適正広告ガイドライン解説資料(京都府掲載)
- 消費者庁「不実証広告規制」
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