この記事でわかること
- シワ・しみ・肌あれが、肌の中のどこで起きているのか
- レチノールとナイアシンアミドの、それぞれの役割
- 2つを一緒に使う意味
- 塗る順番と、レチノールの始め方
レチノールもナイアシンアミドも気になる成分ですが、一緒に使っても大丈夫なのか、どちらを先に塗ればいいのか迷いますよね。
結論から言うと、2つは一緒に使えます。しかも、働く悩みがそれぞれ違うので、組み合わせる意味のある2つです。まずはそれぞれの役割から見ていきましょう。
シワ・しみ・肌あれは、肌の中のどこで起きているのか
シワ・しみ・肌あれは、肌の中のそれぞれ別の場所で起きています。だから、働く成分も変わります。成分の話の前に、まず肌の中で何が起きているかを見ておきましょう。
肌のいちばん外側の角層は、3つの要素でうるおいを守っています。表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質です。この3つのバランスがとれていると、角層は水分を保てます。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
このうち細胞間脂質が減ると、すき間から水分が逃げて、肌があれやすくなります。角層が乾くと、表面に浅い溝ができます。これが乾燥による小ジワです。
しみは、紫外線を浴びて作られたメラニンという色の粒が、肌の細胞にたまってできます。深いシワは、紫外線や年齢によって、角層よりずっと下の真皮という層で、肌のハリを支える線維が衰え、表面の溝が深く刻まれてできます。
肌あれと小ジワは角層のうるおい、しみはメラニン、深いシワは肌のハリと、原因の場所が違うのです。
レチノールは、シワに働く成分
レチノールは、シワの悩みに働く成分です。
シワには、角層が乾いてできる浅い小ジワと、紫外線や年齢によって刻まれる深いシワがあります。深いシワは、肌のハリを支える真皮の線維が衰えることから始まります。
深いシワが刻まれるまでの流れです。ハリを支える線維は、角層よりずっと下の真皮にあります。
年齢
衰える
失われる
刻まれる
レチノールはビタミンAの仲間で、肌の中でレチノイン酸という形に変わって働きます。こうしてできたシワに対して、医薬部外品の有効成分として「しわを改善する」効能が認められています。
化粧品で言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」まで。「シワを改善する」は、承認を受けた医薬部外品の効能です。
医薬部外品ではない一般の化粧品に入っている場合に言えるのは、効能評価試験をした製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
流れの最初にある紫外線は、UVAという種類が真皮まで届きます。日中の紫外線対策は、深いシワが刻まれる流れの入り口を減らすことにつながります。レチノールを使うなら、日焼け止めとセットで考えましょう。
シワが気になる人にとって、中心になる成分です。ただし保湿のための成分ではないので、うるおいは別の成分で補います。そこで役に立つのが、次のナイアシンアミドです。くわしくはレチノールの記事で解説しています。
ナイアシンアミドは、シワ・しみ・肌あれの3つに働く成分
ナイアシンアミドは、1つで3つの悩みに働く、役割の広い成分です。医薬部外品の有効成分として、シワ、しみ・そばかす、肌あれの3つの効能が認められています。
ナイアシンアミドを有効成分とする医薬部外品で認められている3つの効能です。
シワ
「シワを改善する」
しみ・そばかす
「メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ」
肌あれ
「肌あれ・あれ性」
この3つの働きは、それぞれ肌の中の原因に向けたものです。
肌あれと乾燥による小ジワには、細胞間脂質から働きます。先ほどの細胞間脂質は、その約50%をセラミドが占めています。乾燥した肌では、このセラミドが不足しがちです。ナイアシンアミドには、このセラミドを増やす働きが報告されています。すき間の脂が満たされると、角層が水分を保ちやすくなり、肌あれや乾燥による小ジワを防ぐことにつながります。
医薬部外品では「肌あれ・あれ性」の効能として認められています。
しみには、メラニンの流れから働きます。紫外線を浴びると、メラニンが作られ、まわりの細胞に渡されてたまります。ナイアシンアミドは、この「渡される」ところを遅らせることがわかっています。
ナイアシンアミドは、枠で囲んだ「まわりの細胞に渡される」ところを遅らせます。
浴びる
できる
渡される
しみになる
水を与えたり油でふたをしたりする保湿剤とは違い、ナイアシンアミドは角層が自分でうるおいを保つ力を支える成分です。
シワに働きながら、しみや肌あれを防ぐ守りの役割もある成分です。一般の化粧品に入っている場合は、これらの効能はうたえません。くわしくはナイアシンアミドの記事で解説しています。
組み合わせると、シワの手入れと、しみ・肌あれの予防がまとめてできる
2つを一緒に使う意味は、役割分担です。レチノールはシワに、ナイアシンアミドはシワに加えて、しみや肌あれを防ぐ側に働きます。働く悩みが違うので、片方だけでは届かない悩みまで、まとめて手入れできます。
2つは働く悩みが違うので、組み合わせると手入れできる範囲が広がります。
シワに働く
シワ+しみ・肌あれ
シワ・しみ・肌あれ
実際に、ナイアシンアミドを有効成分にして、レチノールの仲間のパルミチン酸レチノールも入れた医薬部外品があり、1つの製品の中で両方が使われています。また、ナイアシンアミド5%とペプチドなどを含む乳液とクリームに、レチノールの仲間を加えた化粧品のセットを使うと、目もとのシワが目立ちにくくなり、処方薬のレチノイドより赤みや乾燥が出にくかったという結果もあります。
もうひとつ、使い始めの肌のためにも理にかなった組み合わせです。レチノールの使い始めは、肌が乾燥したり赤くなったりしやすく、米国皮膚科学会も保湿剤を一緒に使うよう案内しています。ナイアシンアミドは、角層のセラミドを増やしてうるおいを支える成分です。レチノールでシワの手入れをしながら、ナイアシンアミドで角層のうるおいを支える、という分担ができます。
2つを同じ日に使ったり、重ねて塗ったりすることを禁じる決まりもありません。シワの手入れをしながら、しみや肌あれも防ぎたい人に向く組み合わせです。
塗る順番は、製品の説明どおりでいい
どちらを先に塗るかは、製品の使い方の説明に合わせれば十分です。順番は成分の名前ではなく、製品の形やとろみで決まるからです。
説明がなければ、スキンケアの順番の考え方どおり、水分の多いものから油分の多いものへ重ねます。たとえば、ナイアシンアミド入りの化粧水のあとにレチノール入りのクリーム、という順番です。
迷ったら、さらっとしたものが先、と覚えておけば大丈夫です。
レチノールは夜に少しずつ始める
レチノールは夜だけ使い、1日おきから少しずつ増やします。使い始めは肌が慣れていないので、赤みや皮むけが出やすいからです。
米国皮膚科学会が案内しているレチノールの始め方です。
使う
夜から
増やす
使う
レチノールを有効成分とする医薬部外品にも、使い始めの2週間は2〜3日おきの夜だけ、その後は毎晩という使い方を示すものがあります。レチノール入りの製品どうしは、一度に何品も重ねず、1品ずつ使います。日中は、いつも紫外線対策をしましょう。
ナイアシンアミドはいつもどおりに使い、レチノールだけをゆっくり増やす、と考えるとわかりやすいです。
重ねても、ニコチン酸に変わって赤くなる心配はほとんどない
ナイアシンアミドがニコチン酸に変わって肌が赤くなる、という心配はほとんどいりません。ナイアシンアミドがニコチン酸に変わるのは、強い酸性や強いアルカリ性、高温といった、ふつうの化粧品ではない条件だからです。
ニコチン酸は血行をよくする働きがあり、肌の上で出ると赤くなることがあります。ただ、ナイアシンアミドそのものにはこの性質がなく、ふつうの化粧品の処方の中では安定しています。
それでも、重ねて赤みやヒリつきが出たら、使うのをやめて様子を見ましょう。
妊娠中は、使う前に医師や薬剤師に相談する
妊娠中や妊娠を考えているときは、レチノールを使う前に医師や薬剤師に相談しましょう。米国皮膚科学会は、妊娠中はレチノイドを使わないよう呼びかけています。
日本でも、レチノールの仲間の医薬品であるニキビの塗り薬のアダパレンは、妊婦や妊娠している可能性のある人には使えない薬です。厚生労働省は、妊娠中に薬を使うときは医師か薬剤師に相談するよう案内していて、各地の妊娠と薬情報センターでも相談できます。
化粧品のレチノールでも、迷ったら自分で決めずに相談するのが安心です。
まとめ
- レチノールはシワに働く成分です
- ナイアシンアミドは、シワ・しみ・肌あれの3つに働く成分です
- 役割が違うので、組み合わせるとシワの手入れと、しみ・肌あれの予防がまとめてできます
- 塗る順番は製品の説明どおり。レチノールは夜だけ、1日おきから少しずつ増やします
- ニコチン酸で赤くなる心配はほとんどありません。妊娠中は医師や薬剤師に相談します
レチノールとナイアシンアミドは、役割を分け合える組み合わせです。レチノールを夜に少しずつ取り入れることだけ意識すれば、無理なく続けられます。
よくある質問
レチノールとナイアシンアミドは一緒に使えますか?
一緒に使えます。2つを同じ日に使ったり重ねたりすることを禁じる決まりはなく、1つの製品に両方が入っている医薬部外品もあります。
レチノールとナイアシンアミドを一緒に使うと何がいいですか?
役割が違うので、手入れできる範囲が広がります。レチノールはシワに、ナイアシンアミドはシワに加えて、しみ・そばかすや肌あれを防ぐ側にも働きます。
レチノールとナイアシンアミドはどちらを先に塗りますか?
製品の使い方の説明に従います。書かれていなければ、水分の多いものから油分の多いものへ重ねます。
ナイアシンアミドはニコチン酸に変わって赤くなりますか?
ふつうの化粧品の中でニコチン酸に変わることはほとんどありません。変わるのは、強い酸性や強いアルカリ性、高温の条件です。重ねて赤みやヒリつきが出たら、使うのをやめて様子を見ましょう。
妊娠中にレチノールを使ってもいいですか?
使う前に医師や薬剤師に相談してください。米国皮膚科学会は、妊娠中はレチノイドを使わないよう呼びかけています。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- ファンケル「ナイアシンアミドとレチノール」(2025年5月29日公開)
- ナイアシンアミドを有効成分とする薬用化粧水・クリームの製品ページ(全成分表示)
- Fu JJJ, Hillebrand GG, Raleigh P, et al. A randomized, controlled comparative study of the wrinkle reduction benefits of a cosmetic niacinamide/peptide/retinyl propionate product regimen vs. a prescription 0.02% tretinoin product regimen. Br J Dermatol 2010;162(3):647-654
- American Academy of Dermatology. Retinoid or retinol? (2021年5月25日更新)
- 純粋レチノールを有効成分とする医薬部外品の製品ページ(使い方)
- ドイツ化学会 食品化学会 化粧品作業部会「Data sheets for evaluating the effectiveness of active ingredients in cosmetic products. Niacinamide (Vitamin B3)」
- Finholt P, Higuchi T. Rate Studies on the Hydrolysis of Niacinamide. J Pharm Sci 1962;51:655-661
- ディフェリンゲル0.1%(アダパレン)添付文書(2023年1月改訂)
- 厚生労働省「妊娠と薬」(令和7年10月17日更新)
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