この記事でわかること
- セラミドが水分を守るしくみ
- NP・APなど記号の意味と、人の肌に多い種類
- 「セラミド3」など旧名との対応と、種類の数え方
成分表に「セラミドNP」「セラミドAP」「セラミドEOP」と記号の違うセラミドが並んでいると、何が違うのか、どれがいいのか迷いますよね。
結論から言うと、記号はセラミドをつくる2つの部品の組み合わせを表していて、どの記号も肌のうるおいを守る脂の仲間です。人の肌にいちばん多いのはNPです。まずは、セラミドが肌の中で何をしているかから見ていきましょう。
セラミドは、角層のすき間を埋めて水分を守る脂
セラミドは、角層の細胞のすき間を埋める脂の主な成分で、水分が逃げるのを防いでいます。この脂が減ると、すき間から水分が逃げて、肌が乾きやすくなるからです。
肌のいちばん外側の角層は、皮脂膜、天然保湿因子、細胞間脂質の3つでうるおいを守っています。このうち細胞のすき間を埋めるのが細胞間脂質で、角層の重さの約15%を占めます。細胞間脂質の約50%はセラミドで、ほかにコレステロールと遊離脂肪酸でできています。
セラミドは1種類だけで働くわけではなく、セラミド、コレステロール、脂肪酸の比率が崩れると、バリア機能が下がることが知られています。たとえばアトピー性皮膚炎の肌ではセラミドの割合が下がっていて、水分を保つ力が損なわれます。症状の出ていない場所でも、今の記号でEOSにあたるセラミドがもっとも減っていた、という結果もあります。
塗ったセラミドが働くのは角層までで、すき間の脂を補ってうるおいを保ちます。
化粧品で塗るセラミドが働くのは角層までで、すき間の脂を補い、うるおいを与える範囲の成分です。だから、乾燥が気になる肌に向きます。
記号が違っても、角層のすき間の脂の仲間としてうるおいを支える、という役割は同じです。
記号は、1文字目が脂肪酸、2文字目が骨組み
セラミドの記号は、1文字目が脂肪酸、2文字目が骨組みの種類を表しています。セラミドは1つの物質ではなく、骨組みと脂肪酸がつながった分子をまとめた呼び名だからです。
骨組みにはスフィンゴシン、スフィンガニン、フィトスフィンゴシンなどがあり、そこにつながる長い脂肪酸にも、ふつうの脂肪酸、αヒドロキシ脂肪酸、ωヒドロキシ脂肪酸があります。炭素の数も16から30以上までさまざまです。
セラミドNPは、ふつうの脂肪酸のNと、フィトスフィンゴシンという骨組みのPがつながった形です。
1文字目の脂肪酸は、ふつうの脂肪酸がN、αヒドロキシ脂肪酸がA、エステル結合した脂肪酸がE、ωヒドロキシ脂肪酸がOです。2文字目の骨組みは、ジヒドロスフィンゴシンがDS、スフィンゴシンがS、フィトスフィンゴシンがP、6-ヒドロキシスフィンゴシンがHです。たとえばセラミドNPはふつうの脂肪酸とフィトスフィンゴシン、セラミドAPはαヒドロキシ脂肪酸とフィトスフィンゴシンの組み合わせです。
セラミドEOPは少し特別で、ωヒドロキシ脂肪酸の先に、リノール酸などの別の脂肪酸がさらにくっついた、長いセラミドです。記号は「骨組み × 脂肪酸」の組み合わせをそのまま文字にしたもの、と覚えておけば読めるようになります。
ヒトの肌でいちばん多いのはNPで、NH・AHが続く
ヒトの角層でいちばん多いセラミドはNPで、次いでNH、AHが多く、この3つで全体の約3分の2を占めます。人の肌のセラミドは、フィトスフィンゴシン型のPと、6-ヒドロキシスフィンゴシン型のHの骨組みが多いからです。
上位の3つで、ヒトの角層のセラミドの約3分の2を占めます。
上位3つのあとには、AP、NDS、NS、AS、EOH、EOS、EOP、ADSが続きます。骨組みで見ると、P型が35%、H型が45%です。一方、マウスの角層ではS型が約90%を占め、P型は約1%しかありません。動物実験の結果をそのまま人に当てはめにくい理由のひとつです。
こうしたヒトの角層と同じ構造のセラミドが、一般に「ヒト型セラミド」と呼ばれています。成分表でよく見るNPは、実際に人の肌でいちばん多い種類なのです。
「セラミド3」は「セラミドNP」に変わった
昔の「セラミド3」は、今の「セラミドNP」と同じものです。数字の名前では中身がわからなかったため、構造が読める記号に置き換えられたからです。
アメリカの化粧品成分の安全性評価の資料にもとづくと、セラミド1はセラミドEOP、セラミド3はセラミドNP、セラミド4と5はセラミドAS、セラミド6IIはセラミドAPにあたります。セラミド2だけは、スフィンゴシン型のセラミドNSと、スフィンガニン型のセラミドNGの2つに分かれました。
古い成分表で数字のセラミドを見かけたら、この対応で今の記号に読みかえられます。
種類の数は、数え方によって変わる
セラミドが何種類あるかは、数え方によって変わります。骨組みと脂肪酸の組み合わせで数えるか、炭素の数まで分けて分子で数えるかで、答えが違うからです。
よく「12種類」「16種類」といわれますが、研究が進むにつれて数は増えています。人の角層からは342種類の分子が見つかったという結果があり、骨組み5種類と脂肪酸5種類の組み合わせで25クラスに分ける数え方もあります。日本語の総説では、ヒトの角層には23クラス、1,500を超える種類のセラミド分子があるとまとめられています。
「十数〜二十数クラス、分子の種類では千を超える」と幅を持たせて覚えておけば十分です。
まとめ
- セラミドは、角層のすき間を埋めて水分を守る細胞間脂質の約50%を占めます
- 記号は1文字目が脂肪酸(N・A・O・EO)、2文字目が骨組み(S・DS・P・H)を表します
- ヒトの角層で多いのはNP・NH・AHで、この3つで約3分の2です
- 「セラミド3」はセラミドNP、「セラミド6II」はセラミドAPになりました
- 種類の数は数え方で変わり、分子の種類では1,500を超えます
記号が読めると、「ヒト型セラミド配合」の中身がどの種類なのかまで見えてきます。成分表を眺めるのが、少し楽しくなるはずです。
よくある質問
セラミドNPのNとPは何の意味?
Nはふつうの脂肪酸、Pはフィトスフィンゴシンという骨組みを表します。記号は1文字目が脂肪酸、2文字目が骨組みの種類で、その組み合わせがセラミドの種類になります。
人の肌にいちばん多いセラミドはどれ?
セラミドNPです。ヒトの角層ではNPが24.2%、次いでNHが23.7%、AHが18.0%で、この3つで全体の約3分の2を占めます。
セラミド3とセラミドNPは同じもの?
同じです。セラミド3はセラミドNPに、セラミド1はEOPに、セラミド6IIはAPにあたります。セラミド2だけは、NSとNGの2つに分かれます。
セラミドは何種類ある?
数え方で変わります。骨組みと脂肪酸の組み合わせで25クラスに分ける数え方や、23クラスとする数え方があり、分子の種類では1,500を超えます。
記号が違うと肌への働きも違う?
どの記号のセラミドも、角層のすき間を埋めてうるおいを守る脂の仲間です。化粧品で塗るセラミドが働くのは角層までで、うるおいを与える範囲の成分です。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「セラミド」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層細胞間脂質」
- Masukawa Y, et al. Characterization of overall ceramide species in human stratum corneum. J Lipid Res 2008;49(7):1466-1476
- Kawana M, et al. Comparative profiling and comprehensive quantification of stratum corneum ceramides in humans and mice by LC/MS/MS. J Lipid Res 2020;61(6):884-895
- Fujii M. The Pathogenic and Therapeutic Implications of Ceramide Abnormalities in Atopic Dermatitis. Cells 2021;10(9):2386
- 木原章雄「セラミドによる皮膚透過性バリア形成の分子機構」オレオサイエンス 25(9):369-378, 2025
- Cosmetic Ingredient Review (CIR) Safety Assessment of Ceramides as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2020
- Imokawa G, et al. Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis. J Invest Dermatol 1991;96(4):523-526
- 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
- Tessema EN, et al. Potential Applications of Phyto-Derived Ceramides in Improving Epidermal Barrier Function. Skin Pharmacol Physiol 2017;30(3):115-138
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」F4.0・F5.6
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