この記事でわかること
- ヨモギエキスが肌にしていること
- ヨモギ葉エキスとカワラヨモギ花エキスの違い
- 花粉症やキク科アレルギーとの関係
韓国コスメの棚でよく見かける「ヨモギ」。草もちやお灸でおなじみのあのヨモギが、肌に何をしてくれるのか気になりますよね。
結論から言うと、化粧品のヨモギエキスは、肌にうるおいを与えて整える目的で入っている植物の成分です。昔から薬草として使われてきた植物ですが、化粧品として期待するのは「肌を整える」範囲にとどめておくのが安心です。まずは、肌の上で何をしているのかから見ていきましょう。
ヨモギエキスは、肌にうるおいを与えて整える成分
化粧品のヨモギエキスについて言えるのは、「肌を整える」「皮膚にうるおいを与える」「皮膚をすこやかに保つ」といった、国が定めた化粧品の効能の範囲です。ヨモギエキスは医薬部外品の有効成分ではなく、化粧品の成分として入っているからです。
肌のうるおいは、いちばん外側の角層で守られています。表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つです。このバランスが崩れると角層から水分が逃げ、かさつきや肌あれにつながります。
角層は、この3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
ヨモギエキスは、こうした角層にうるおいを与えて整える植物エキスのひとつです。たとえば、ヨモギのエキスを培養したヒトの表皮の細胞に加えると、角層をつくるフィラグリンやロリクリンというたんぱく質の遺伝子の働きが高まったという結果があります。ヨモギの葉の成分を動物の耳に塗ると、わざと起こしたかぶれの腫れが抑えられたという結果もあります。
ただ、韓国コスメでは肌を落ち着かせるイメージで売られることが多い成分ですが、赤みや炎症を抑えるという言い方は、化粧品の効能に入っていません。ヨモギが昔から湿疹や皮膚のかゆみに使われてきた薬草であることと、化粧品のエキスが肌にすることは分けて、うるおいを与えて肌を整える成分として見ておきましょう。
ヨモギ葉エキスとカワラヨモギ花エキスは、別の植物のエキス
成分表示に「ヨモギ」とつく名前がいくつかあって、同じものなのか迷いますよね。ヨモギの葉から取ったものが「ヨモギ葉エキス」、同じ仲間のカワラヨモギの頭花、つまり小さな花の集まりから取ったものが「カワラヨモギ花エキス」で、別の植物の別の部位のエキスです。成分表示の名前は、植物と部位ごとに分けてつけられているからです。
ヨモギはキク科の植物で、日本と韓国に広く自生しています。韓国コスメで多いのは、サジャバルという品種のヨモギや、チョウセンヨモギです。サジャバルは、5月に刈ったヨモギを海風の通る日陰で3年以上熟成させる方法が、産地の特産品として紹介されています。
英語の「ムグワート」は、欧米ではオウシュウヨモギという別の種を指すのがふつうで、韓国コスメのムグワートは日本のヨモギに近い種です。同じ呼び名でも植物が違うことがあるので、成分表示の名前で見るのが確実です。
主な成分は、ユパチリンやヤセオシジンというフラボノイド、セスキテルペンと呼ばれる一群の成分、そして香りのもとになる精油です。精油には1,8-シネオールやツジョンなどが含まれますが、化粧品のエキスは水やブチレングリコールなどで抽出したもので、精油を蒸留したアロマオイルとは別物です。精油の成分の割合は産地や品種で大きく変わります。
ヨモギのエキスを見分けるときは、「葉」か「花」か、植物の名前まで見てみましょう。
生薬のヨモギは飲む薬の話で、化粧品のエキスとは別
ヨモギは薬草として知られているので、薬のような働きがあるのかと思いますよね。でも、生薬としてのヨモギは飲む薬としての使い方で、化粧品のエキスの働きとは別の話です。同じ植物でも、薬として飲むことと、エキスを肌に塗ることは目的も決まりも違うからです。
ヨモギの葉は「艾葉」、読みはガイヨウという生薬で、日本薬局方に載っています。漢方では体を温めて出血を止める目的で、おなかの冷えによる痛みや鼻血などに使われます。カワラヨモギの頭花は「茵蔯蒿」、読みはインチンコウという生薬として、黄疸や胆道の病気に使われてきました。葉の裏の毛はお灸のもぐさの原料で、民間では生の葉のしぼり汁を切り傷や虫刺されに塗る使い方もあります。
医薬部外品の有効成分でもありません。厚生労働省が示した薬用化粧品の有効成分リストに、ヨモギもカワラヨモギも入っていないので、「国が認めた効能」をもつ成分ではありません。医薬部外品の原料としての規格は定められていますが、それは原料の品質の決まりで、効能が認められたという意味ではありません。
化粧品のヨモギエキスは、化粧品の効能の範囲で選ぶのが基本です。
ヨモギはキク科。かぶれた経験がある人は試してから使う
花粉症があると、ヨモギの化粧品を使っても大丈夫か心配になりますよね。キク科の植物でかぶれた経験がある人や、ヨモギ花粉症の人は、顔に使う前に腕の内側などの目立たない場所で試してから使いましょう。ヨモギはキク科の植物で、花粉は花粉症の原因のひとつだからです。
ヨモギの開花の時期は、地域によって5月から10月です。ヨモギ花粉のアレルギーがある人の95%以上が反応する主なアレルゲンがあり、ブタクサの花粉やカモミールとも反応が重なることが知られています。ただしこれは花粉を吸いこんだときのアレルギーの話で、ヨモギ花粉症の人がヨモギエキスの化粧品を使えないと決まっているわけではありません。
肌に触れてのかぶれでは、キク科の植物がセスキテルペンラクトンという成分でかぶれを起こすことが知られていて、ヨモギでも接触皮膚炎の症例報告が少数あります。報告されているのは植物そのものに触れた場合やお灸のもぐさによるもので、まれなものです。原料の1%の水溶液を動物の皮膚に塗った試験では、刺激は見られなかったという結果があります。
キク科の植物でかぶれた経験がある人は、この順で試してから使います。
かぶれた
試す
かゆみ
皮膚科へ
キク科のブタクサやカモミール、菊でかぶれた経験がある人は特に、試してから使い、赤みやかゆみが出たらやめるようにしましょう。敏感肌で肌がゆらいでいるときも同じで、続くときは皮膚科に相談してください。
天然だから安全ではなく、シカの仲間でもない
植物のエキスと聞くと、肌にやさしそうと思う人は多いと思います。でも、天然の成分だから安全とは言えず、シカと同じ働きの成分でもありません。植物の成分でもかぶれることはあり、シカとヨモギは別の植物だからです。
キク科は古くからかぶれの原因植物として知られ、ヨモギの花粉は主要なアレルゲンのひとつです。ドクダミや白樺のような植物エキスと同じく、植物由来は安全の保証ではありません。
シカのもとになるツボクサはセリ科、ヨモギはキク科で、別の植物です。含まれる成分も、ツボクサのマデカッソシドやアジアチコシドと、ヨモギのユパチリンやヤセオシジンでは違います。ツボクサには、欧州の医薬品当局がまとめた薬草の評価書や、化粧品成分の安全性評価があります。
ヨモギエキスは、「シカの仲間」ではなく、別の植物の別の成分として見ておきましょう。
まとめ
- 化粧品のヨモギエキスに言えるのは、肌を整え、うるおいを与える範囲です。赤みや炎症を抑えるという言い方は化粧品の効能に入っていません
- 「ヨモギ葉エキス」はヨモギの葉、「カワラヨモギ花エキス」はカワラヨモギの頭花で、別の植物です。韓国コスメではサジャバルという品種やチョウセンヨモギが多く使われます
- 生薬の艾葉や茵蔯蒿は飲む薬の話で、薬用化粧品の有効成分リストにもヨモギは入っていません
- ヨモギはキク科。ブタクサやカモミールでかぶれた経験がある人やヨモギ花粉症の人は、腕の内側で試してから使いましょう
- 天然だから安全とは言えず、シカのもとのツボクサとは別の植物の別の成分です
「薬草だから効く」「天然だから安全」のどちらにも寄らず、肌を整える植物エキスのひとつとして、自分の肌に合うかを確かめて選んでみてください。
よくある質問
ヨモギエキスは肌に何をしてくれますか?
化粧品として言えるのは、肌を整え、うるおいを与え、すこやかに保つ範囲です。赤みや炎症を抑えるという言い方は化粧品の効能に含まれていません。
ヨモギ葉エキスとカワラヨモギ花エキスは同じものですか?
別の植物の別の部位から取ったエキスです。ヨモギ葉エキスはヨモギの葉、カワラヨモギ花エキスはカワラヨモギの頭花から取ったもので、生薬としての名前も艾葉と茵蔯蒿で違います。
ヨモギエキスは医薬部外品の有効成分ですか?
厚生労働省が示した薬用化粧品の有効成分リストに、ヨモギもカワラヨモギも入っていません。生薬の艾葉や茵蔯蒿は飲む薬としての使い方で、化粧品のエキスの効能ではありません。
ヨモギ花粉症があるとヨモギエキスの化粧品は使えませんか?
使えないと決まっているわけではありませんが、顔に使う前に腕の内側などで試すのが安心です。ヨモギはキク科で、花粉はブタクサやカモミールと反応が重なり、植物やお灸のもぐさによる接触皮膚炎の症例報告も少数あります。
ヨモギエキスはシカと同じ働きですか?
別の植物の別の成分です。シカのもとのツボクサはセリ科、ヨモギはキク科で、含まれる成分もツボクサのマデカッソシドやアジアチコシドと、ヨモギのユパチリンやヤセオシジンでは違います。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省 薬用化粧品の有効成分リスト(別紙)
- 熊本大学薬学部 薬用植物園 薬草データベース「ヨモギ」
- 熊本大学薬学部 薬用植物園 薬草データベース「カワラヨモギ」
- 化粧品成分オンライン「ヨモギ葉エキス」(※化粧品成分の解説サイト)
- 化粧品成分オンライン「カワラヨモギ花エキス」(※化粧品成分の解説サイト)
- Yun C, et al. Anti-Inflammatory Effects of Artemisia Leaf Extract in Mice with Contact Dermatitis In Vitro and In Vivo. Mediators Inflamm 2016;2016:8027537
- Hirano A, et al. Artemisia princeps Extract Promoted the Expression of Filaggrin and Loricrin via the AHR/OVOL1 Pathway. Int J Mol Sci 2017;18(9):1948
- Kim MJ, et al. In Vitro antioxidant and anti-inflammatory activities of Jaceosidin from Artemisia princeps Pampanini cv. Sajabal. Arch Pharm Res 2008;31:429-437
- Wei WJ, et al. Artemisia argyi H. Lév. & Vaniot: a comprehensive review on traditional uses, phytochemistry, and pharmacological activities. Phytochem Rev 2024;23(3):821-862
- Chizzola R, Gansinger D. Chemical Composition and Antioxidant Activity of Artemisia argyi Essential Oil and Hydrolate. Compounds 2023;3(3):521-531
- 江華郡(韓国 仁川広域市)公式サイト 特産品「江華サジャバル薬ヨモギ」
- Thermo Fisher Scientific アレルゲン百科事典「w6 Mugwort」(2020年12月更新)
- Mitchell JC, et al. Allergic contact dermatitis caused by Artemisia and Chrysanthemum species. The role of sesquiterpene lactones. J Invest Dermatol 1971
- Haw S, Cho HR, Lee MH. Allergic contact dermatitis associated with mugwort (Artemisia vulgaris). Contact Dermatitis 2010
- Wu P, et al. Allergic contact dermatitis by Artemisia: Report of two cases. Contact Dermatitis 2020
- Xie Z, et al. Allergic contact dermatitis caused by a traditional Chinese medicine treatment- moxibustion. Contact Dermatitis 2021
- EMA "European Union herbal monograph on Centella asiatica (L.) Urb., herba" (rev.1, 2022)
- CIR "Safety Assessment of Centella asiatica-Derived Ingredients as Used in Cosmetics" (2023)