この記事でわかること
- パンテノールとビタミンB5の関係
- 角層の水分と肌あれへの働き方
- 化粧品と医薬部外品での表示名の違いと、髪・かぶれの注意
化粧水やヘアケア製品の成分表でよく見かけるパンテノール。ビタミンB5と同じものなのか、肌や髪に何をしているのか、気になりますよね。
結論から言うと、パンテノールは肌の中でビタミンB5に変わる前の形の成分で、化粧品では角層の水分を保つ保湿成分として入っています。薬用の化粧水やクリームには、有効成分として使われることもあります。
パンテノールは、肌の中でビタミンB5に変わる前の形
「パンテノールはビタミンB5そのもの」と思っている人は多いと思います。でも、パンテノールはビタミンB5そのものではなく、肌の中でビタミンB5に変わる前の形です。肌に塗ると吸収され、酵素の働きでパントテン酸に変わるとされているからです。
肌の中で酵素が働き、端の形が変わります。
パンテノール(プロビタミンB5)
パントテン酸(ビタミンB5)
- アルコールの形の端
- 酸の形の端
パントテン酸はビタミンB群に属する水に溶けるビタミンで、ビタミンB5とも呼ばれます。体の中では補酵素Aという物質の材料になり、たくさんの酵素の働きを支えています。皮膚にとっても大事な物質で、足りなくなると表皮や髪に障害が出ることが知られています。パンテノールは、パントテン酸の端をアルコールの形に変えた成分で、プロビタミンB5とも呼ばれます。D体とL体という2つの形があり、ビタミンとしての働きにつながるのはD体だけです。仲間には、水に溶けるパントテン酸カルシウムや、油に溶けて安定性のよいアセチルパントテニルエチルエーテルもあり、パントテン酸カルシウムは湿気を吸いやすく、少しずつ分解しやすい性質があります。
乾燥は、角層の水分が逃げて足りなくなること
肌の乾燥は、いちばん外側の角層から水分が逃げて、うるおいが足りなくなることで起きます。角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすきまを埋める細胞間脂質の3つのバランスでうるおいを保っていて、細胞間脂質の約50%はセラミドです。このバランスが崩れると水分が逃げやすくなり、かさつきや肌あれにつながります。だから乾燥の手入れでは、角層の水分を保ち、逃がさないことが大事になります。
パンテノールは、角層の水分を保ち、逃げる量を減らす
化粧品のパンテノールは、角層の水分を保ち、肌から逃げる水分を減らす保湿成分として入っています。塗ったときに、角層の水分と、肌から逃げる水分の両方に変化が見られているからです。
塗ったパンテノールは、角層で水分を保ちます。
肌の断面
角層を拡大すると
- 角層の細胞
- パンテノール
- 水分
たとえば、パンテノールを1%か5%入れた製剤を毎日塗ると、肌から水分が逃げる量が減ったという結果があります。油性の基剤に2.5%入れた製剤では、基剤だけのものと比べて、角層の水分量が上がり、水分が逃げる量が減ったという結果もあります。化粧品の中では、髪のコンディショニング成分や、ほかの成分を溶かす溶剤としても使われます。化粧品として言えるのは、製品全体として「皮膚にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」といった範囲です。
肌あれには、刺激で角層の水分が下がるのを抑える側で働く
パンテノールと肌あれの関係は、刺激で角層の水分が下がるのを抑え、荒れを防ぐ側の話です。洗浄成分などの刺激を受けると、角層の水分が下がりやすくなるからです。
刺激を受けても、水分が下がりませんでした。
パンテノールなしのバーム
パンテノール5%のバーム
- 洗浄成分
- パンテノール
- 水分
刺激のある洗浄成分を肌に塗ったとき、パンテノールを入れていないバームの側では角層の水分量が下がり、パンテノールを5%入れたバームの側では下がらなかったという結果です。医薬部外品では、薬用の化粧水やクリームなどに有効成分として0.1〜0.3%入れた前例があり、薬用化粧品に認められうる効能には「肌あれ。あれ性。」があります。ただし、どの効能がつくかは商品ごとの承認で決まります。
「ニキビ跡に効く」という話も見かけますが、パンテノールの塗り薬で研究のまとめがあるのは、医療や美容の施術のあとにできる浅い傷の治りの話で、医薬品の分野です。化粧品でうたえる効能に、ニキビ跡は入っていません。パンテノールは、荒れを防ぐ側で働く成分と覚えておきましょう。
表示名は、化粧品では「パンテノール」、医薬部外品では別の名前
成分表の名前は、化粧品では「パンテノール」、医薬部外品では「D-パントテニルアルコール」と書かれ、原料としては同じものです。成分表の名前の決まりが、商品の区分によって違うからです。仲間のパントテニルエチルエーテルは、化粧品ではパンテニルエチルと表示されます。
原料は同じで、区分によって名前が変わります。
厚生労働省の薬用化粧品の有効成分リストには、D-パントテニルアルコールが載っています。化粧水、クリームや乳液、パック、洗顔料を含む薬用石けんで配合量は0.1〜0.3%、洗い流す使い方のパックや石けんでは0.1%です。このリストは商品の種類ごとに、過去に認められた配合量をまとめた一覧で、成分ごとの効能は書かれていません。そのため、「国が肌荒れ防止成分と認めた」というのは正確ではありません。気になるときは、成分名より医薬部外品の効能の欄を見るのが確実です。
化粧品での配合量の例としては、アメリカの報告で、ボディ用やハンド用の製品に最高5.3%、洗浄料やヘアコンディショナーに最高5%まで使われていました。これは日本の上限ではありません。成分表では、化粧品と医薬部外品で名前が変わると覚えておきましょう。
髪には、うるおいを与える成分として入っている
パンテノールは、ヘアケア製品では髪のうるおいを保つコンディショニング成分として入っています。化粧品として言えるのは、製品として「頭皮、毛髪にうるおいを与える」「裂毛、切毛、枝毛を防ぐ」といった範囲だからです。
たとえば、カフェイン、ナイアシンアミド、パンテノール、ジメチコン、アクリレートポリマーの5つを組み合わせた処方で、今ある髪1本1本の直径が2〜5μm太くなり、断面積で約10%の増加に相当したという結果があります。これは5つの成分の組み合わせの結果で、今ある髪が太くなったという話です。新しく髪が生えるという話ではありません。パントテン酸の仲間は育毛剤やヘアトニックにも使われますが、「育毛」「発毛促進」「脱毛の予防」などは医薬部外品の育毛剤に認められうる効能で、ふつうの化粧品のシャンプーやトリートメントではうたえません。
かぶれはまれだが、起きることもある
パンテノールは、低刺激をうたう日用品や薬にも多く使われている成分ですが、まれにかぶれ、つまりアレルギー性の接触皮膚炎を起こすことがあります。
たとえば、皮膚炎でパッチテストを受けた人のうちパンテノールに陽性だった割合は、以前の0.2〜0.7%から近年は1.2%に増えているという報告があります。これは皮膚炎で検査を受けた人の中での割合で、使った人の1%がかぶれるという意味ではありません。低刺激とうたう製品で、パンテノールによるかぶれが起きた例も報告されています。
アメリカで化粧品成分の安全性を審査する専門家委員会は、パンテノールとその仲間について、今の使い方と濃度なら化粧品に安全に使えると結論づけています。それでも、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。パンテノール入りの商品でかぶれたことがある人は、成分表で「パンテノール」と「D-パントテニルアルコール」の両方の名前を確かめると安心です。
まとめ
- パンテノールは、肌や体の中でパントテン酸、つまりビタミンB5に変わる前の形の成分です
- 化粧品では角層の水分を保ち、肌から逃げる水分を減らす保湿成分として入っています
- 肌あれには、刺激で角層の水分が下がるのを抑える、荒れを防ぐ側で働きます
- 成分表の名前は、化粧品では「パンテノール」、医薬部外品では「D-パントテニルアルコール」です
- 髪には化粧品としてうるおいを与える範囲で入り、まれにかぶれることもあります
パンテノールは、うるおいを保つ側で働く成分です。医薬部外品かどうかと表示名をあわせて見ると、その商品に何のために入っているのかがわかりやすくなります。
よくある質問
パンテノールはビタミンB5ですか?
ビタミンB5そのものではなく、肌や体の中でパントテン酸、つまりビタミンB5に変わる前の形です。体の中で働くのは、変わったあとのパントテン酸です。
パンテノールとD-パントテニルアルコールは違う成分ですか?
原料としては同じものです。化粧品の成分表では「パンテノール」、医薬部外品では「D-パントテニルアルコール」と書かれます。
パンテノールは国が認めた肌荒れ防止成分ですか?
そうとはいえません。国の薬用化粧品の有効成分リストは商品の種類ごとの配合量の一覧で、化粧水やクリームなどで0.1〜0.3%とされているものです。効能は商品ごとの承認で決まります。
パンテノール入りのシャンプーで髪は生えますか?
化粧品で髪が生えるとはいえません。化粧品として言えるのは頭皮や毛髪にうるおいを与えるといった範囲で、髪の太さの研究は5つの成分を組み合わせた処方の結果です。
パンテノールでかぶれることはありますか?
まれですが、あります。皮膚炎でパッチテストを受けた人での陽性の割合は近年1.2%という報告があり、これは使った人ではなく検査を受けた人の中での割合です。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「パントテン酸」
- パンテノール注100mg/250mg/500mg「KCC」添付文書(2023年8月改訂 第1版、ネオクリティケア製薬)
- パントール注射液 医薬品インタビューフォーム(2023年2月改訂 第8版、トーアエイヨー)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- Cosmetic Ingredient Review. Safety Assessment of Panthenol, Pantothenic Acid, and Derivatives as Used in Cosmetics(2017年 報告書案)
- Scott LN, et al. Safety Assessment of Panthenol, Pantothenic Acid, and Derivatives as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2022;41(3_suppl):77-128
- Camargo FB Jr, Gaspar LR, Maia Campos PMBG. Skin moisturizing effects of panthenol-based formulations. J Cosmet Sci 2011;62(4):361-369
- Biro K, et al. Efficacy of dexpanthenol in skin protection against irritation: a double-blind, placebo-controlled study. Contact Dermatitis 2003;49(2):80-84
- Proksch E, et al. Topical use of dexpanthenol: a 70th anniversary article. J Dermatolog Treat 2017;28(8):766-773
- Cho YS, et al. Use of Dexpanthenol for Atopic Dermatitis—Benefits and Recommendations Based on Current Evidence. J Clin Med 2022;11:3943
- Gorski J, et al. Dexpanthenol in Wound Healing after Medical and Cosmetic Interventions. Pharmaceuticals 2020;13(7):138
- Davis MG, et al. A novel cosmetic approach to treat thinning hair. Br J Dermatol 2011;165(s3):24-30
- Weber B, Hylwa S. Panthenol Allergic Contact Dermatitis: Sources of Exposure, Reported Cases, and a Call for More Frequent Testing. Dermatitis 2025;36(4):343-351
- Han J, Warshaw EM. Allergic Contact Dermatitis to Panthenol in "Hypoallergenic" Products. Dermatitis 2023;34(1)
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