この記事でわかること
- ワセリンとミネラルオイルの形とふたをする力の差
- 化粧品と医薬品で変わる成分表示名
- 肌に悪いと言われる理由と目的別の選び方
ワセリンもミネラルオイルも石油からできた油と聞くと、何が違うのか、肌に悪くないのか、どちらを使えばいいのか迷いますよね。
結論から言うと、2つは同じ仲間の油で、いちばんの違いは形です。ワセリンは半固形、ミネラルオイルは液体で、肌にふたをする力はワセリンのほうが強いとされています。どちらも化粧品に使われるものは高度に精製されていて、肌に塗る使い方では、健康へのリスクは予想されないと評価されています。まずは、形の違いから見ていきましょう。
ワセリンは半固形、ミネラルオイルは液体
ワセリンとミネラルオイルは、どちらも炭素と水素だけでできた炭化水素という油の仲間で、いちばんの違いは常温での形です。ワセリンには、液体の油の成分に加えて、ろうの成分が混ざっているからです。
日本化粧品技術者会の用語集では、ワセリンは白から少し黄色みのある軟膏のような半固形、ミネラルオイルの別名である流動パラフィンは、無色透明でにおいのない液体とされています。同じ石油由来でも、固くて結晶になるパラフィンはまた別の成分です。
ミネラルオイルは、原油を300℃以上で分けた部分から固形のパラフィンを取り除いて精製したもので、液体の炭化水素だけが残った油です。一方、ワセリンは液体の油の成分と、ろうの成分が混ざったもので、ろうが混ざっているぶん、常温で形を保ちます。
同じ石油由来の油でも、ワセリンは油とろうが混ざった半固形、ミネラルオイルは液体です。
ワセリン
半固形
ふたが強い
ミネラルオイル
液体
軽く広がる
医薬品の品質の基準である日本薬局方では、白色ワセリンは水にほとんど溶けず、温めると澄んだ液体になり、融点は38〜60℃と決められています。流動パラフィンは、ほとんど蛍光を発しない澄んだ油で、においも味もないとされています。ワセリンは油とろうが混ざった半固形、ミネラルオイルは固形分を除いた液体と覚えておきましょう。ミネラルオイル単独の詳しい性質はミネラルオイルの記事で紹介しています。
肌にふたをする力は、ワセリンのほうが強い
どちらも肌の表面に油の膜をつくって水分の蒸発を防ぐ油ですが、ふたをする力はワセリンのほうがはるかに強いとされています。乾燥は、角層の水分が外へ逃げていくことで起きるからです。
肌のいちばん外側の角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っています。細胞間脂質の約50%はセラミドです。皮脂が足りなかったり、すき間の脂が減ったりすると、角層の水分が逃げやすくなります。ワセリンやミネラルオイルは、この角層の上に油の膜をつくり、水分の出口をふさぎます。
どちらも角層の上に油の膜をつくって水分の蒸発を防ぎ、その力はワセリンのほうが強いとされています。
その力の差は数字にも出ています。保湿剤についての総説では、ワセリンは肌をおおうタイプの保湿剤のなかで最も効果が高く、5%以上の濃度で、皮膚から逃げる水分を98%より多く減らしうるとされています。一方、ミネラルオイルは、ラノリンやシリコーンと並んで20〜30%ほど減らしうるとされています。
ただし、どちらも自分で水分を抱えこむ成分ではありません。肌をおおう保湿剤は湿った肌に塗ったときにいちばん効果が大きいとされていて、入浴や洗顔のあとに塗るのが向いています。弱点はべたつく使い心地です。しっかりおおえるワセリンはべたつきやすく、液体のミネラルオイルは軽いぶんふたは弱いという関係だと考えるとわかりやすいでしょう。
化粧品ではワセリン・ミネラルオイル、薬では白色ワセリン・流動パラフィンと書かれる
化粧品の成分表では「ワセリン」「ミネラルオイル」、医薬部外品や医薬品では「白色ワセリン」「流動パラフィン」と書かれていることがあります。同じ成分でも、区分によって表示名が違う場合があるからです。
化粧品は2001年から、医薬部外品は2006年4月から業界の自主基準で、すべての成分が表示されるようになっています。ミネラルオイルと流動パラフィンは、同じ油の別の呼び名です。
また「鉱物油」は、ワセリンもミネラルオイルも含めて石油由来の油をまとめた呼び方です。ただし、何を鉱物油に含めるかを決めた公的な定義はなく、「鉱物油フリー」の範囲は製品によって違うことがあります。入っているかどうかは、全成分表示で名前を確かめるのが確実です。
ワセリンは軟膏やクリーム、ミネラルオイルはクレンジングやベビーオイルに使われる
ワセリンは形を保つ固めの製品に、ミネラルオイルはさらっと広がる液体の製品に使われます。半固形か液体かという形の違いが、そのまま向いている製品の違いになるからです。
ワセリンは、用語集では整髪料やクリーム、メイクアップ化粧品に使われるとされ、リップクリームや保湿剤、ヘアケア、ベビーケアの製品にも入っています。医薬品では、親水軟膏や白色軟膏など、塗り薬の土台として広く使われています。ワセリンだけをつめた化粧品もあります。
ミネラルオイルは、ほかの成分と反応しにくく、皮膚にほとんど吸収されない液体なので、メイクになじませて浮かせるクレンジングの主成分として使われます。乳液やクリーム、メイクアップ化粧品の油の成分にもなり、ベビーオイルには、全成分がミネラルオイルとビタミンEの仲間だけというシンプルな化粧品もあります。
医薬品の流動パラフィンも、効能は「軟膏基剤として、調剤に用いる。」とされていて、塗り薬の土台という点ではワセリンと同じ役目をもっています。
どちらも、高度に精製されたものが使われている
化粧品や医薬品に使われるワセリンとミネラルオイルは、どちらも高度に精製されたものです。石油由来の油で心配されるのは、精製が足りない油に含まれうる多環芳香族炭化水素などの成分だからです。
日本薬局方の白色ワセリンには、多環芳香族炭化水素の量を調べる純度試験があり、上限を超えないことが決められています。白色ワセリンは石油から得た半固形の混合物を精製し、色を抜いたもので、さらに精製を進めたものもあります。黄色・白色・プロペトの違いはワセリンの記事で詳しく紹介しています。
評価機関の見方も、肌に塗る使い方についてはおおむね一致しています。海外の公的なリスク評価機関は、化粧品に使う鉱物油を肌に塗る人に、健康へのリスクは予想されないとの見解を出しています。この鉱物油にはワセリンもミネラルオイルも含まれ、皮膚からはほとんど吸収されないとされています。別の国の保健当局も、売られている製品には高度に精製されたワセリンが使われ、今の使用量では健康に害はないと評価しています。
海外の化粧品の規則でも、鉱物油は原則として使えず、精製の工程がすべてわかっていて、原料に発がん性がない場合などに限って使えることになっています。ミネラルオイルも、皮膚からはほとんど入らないとされています。口に入りうるリップの製品は、評価を分けて考える必要があるとされています。肌に塗る化粧品として使うぶんには、精製されたものなら心配しすぎなくて大丈夫です。
「肌に悪い」「毛穴がつまる」は、心配しすぎなくていい
「石油からつくるから肌に悪い」「毛穴がつまる」と聞いて、不安になる人も多いと思います。どちらも、化粧品に使われるワセリンやミネラルオイルについては、心配しすぎなくて大丈夫です。高度に精製したものが使われ、肌に塗る使い方では健康リスクは予想されないと評価されているからです。
毛穴については、ワセリンは毛穴のつまりをつくらなかったという結果があり、化粧品用のミネラルオイルもつくらなかったと報告されています。ただし肌に合うかどうかは人それぞれです。
「塗って日に当たるとしみになる」という油焼けの話もありますが、ワセリンを塗ると、紫外線で肌がむしろ赤くなりにくくなったという結果があります。昔問題になった化粧品による顔の色素沈着は、原因の多くがタール系の色素を含む化粧品とされています。
かぶれは、ワセリンでもきわめてまれながらゼロではありません。ワセリンだけを貼るパッチテストで陽性になったのは0.03%という結果があります。塗って赤みやかゆみが出たら、使うのをやめて相談しましょう。
しっかりおおうならワセリン、軽さを求めるならミネラルオイル
結局どちらを使えばいいのか、迷いますよね。乾燥が気になる部分をしっかりおおいたいならワセリン、べたつきが苦手なときや広い範囲に塗りたいときはミネラルオイルが目安です。ふたをする力と使い心地が、ちょうど反対の関係にあるからです。
たとえば、乾きやすいところにだけ重ねるならワセリン、体全体にのばすならミネラルオイルを配合した乳液やオイルが使いやすいでしょう。メイク落としなら、ミネラルオイルを主成分にしたクレンジングが一般的です。
手足のひびやあかぎれ、皮膚のあれへの効能が認められているのは、薬局で買える第3類医薬品の白色ワセリンです。化粧品のワセリンやミネラルオイルで言えるのは「皮膚の乾燥を防ぐ」「皮膚を保護する」などの範囲になります。薬などでアレルギーを起こしたことがある人や、湿ってただれがひどい人は、使う前に医師や薬剤師に相談しましょう。
どこまでおおいたいかと、べたつきをどこまで許せるかで選ぶと迷いません。ほかの油との違いは化粧品の油の種類の記事も参考になります。
まとめ
- ワセリンとミネラルオイルの違いは形で、ワセリンは油とろうが混ざった半固形、ミネラルオイルは液体です
- どちらも角層の上に油の膜をつくりますが、ふたをする力はワセリンが強く、逃げる水分を98%より多く減らしうるのに対し、ミネラルオイルは20〜30%ほどとされています
- 化粧品では「ワセリン」「ミネラルオイル」、医薬部外品や医薬品では「白色ワセリン」「流動パラフィン」と書かれることがあります
- どちらも高度に精製されたものが使われ、化粧品用を肌に塗る使い方では健康リスクは予想されないと評価されています
- しっかりおおうならワセリン、軽さやクレンジングならミネラルオイル、ひび・あかぎれは第3類医薬品が目安です
ワセリンとミネラルオイルは、同じ石油由来の仲間で、形とふたをする力が違う油です。使い心地と目的に合わせて選び、肌に赤みやかゆみが出たら使うのをやめて相談してください。
よくある質問
ワセリンとミネラルオイルの違いは何ですか?
違いは形で、ワセリンは半固形、ミネラルオイルは液体です。どちらも石油由来の炭化水素で、肌の表面をおおって乾燥を防ぎますが、ワセリンは油とろうが混ざっているぶん形を保ち、ふたをする力も強いとされます。
ミネラルオイルと流動パラフィンは同じですか?
同じ油の別の呼び名です。化粧品の成分表ではミネラルオイル、医薬部外品や医薬品では流動パラフィンと書かれることがあります。医薬品の流動パラフィンは日本薬局方に規格があり、塗り薬の土台として使われます。
ワセリンとミネラルオイルはどちらが保湿力が高いですか?
水分の蒸発を防ぐ力は、ワセリンのほうが強いとされています。ワセリンは5%以上で逃げる水分を98%より多く減らしうるのに対し、ミネラルオイルは20〜30%ほどです。どちらも水分を与える成分ではありません。
ワセリンやミネラルオイルは肌に悪いですか?
化粧品用を肌に塗る使い方では、健康リスクは予想されないと評価されています。日本薬局方の白色ワセリンには、多環芳香族炭化水素の純度試験もあります。ただし赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
ひび・あかぎれにはワセリンとミネラルオイルのどちらがいい?
ひびやあかぎれの効能が認められているのは、第3類医薬品の白色ワセリンです。化粧品のワセリンやミネラルオイルで言えるのは「皮膚の乾燥を防ぐ」などの範囲です。湿ってただれがひどいときは、使う前に医師や薬剤師に相談しましょう。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ワセリン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「流動パラフィン」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 日本薬局方 医薬品各条「白色ワセリン」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 日本薬局方 医薬品各条「黄色ワセリン」
- 流動パラフィン 医療用医薬品 添付文書(日本薬局方 流動パラフィン、PMDA)
- 日本薬局方白色ワセリン(第3類医薬品、KEGG MEDICUS)
- 厚生労働省 医薬部外品添加物リスト
- 製薬会社の成分表示の説明ページ(化粧品と医薬部外品の表示名の例)
- Purnamawati S, et al. The Role of Moisturizers in Addressing Various Kinds of Dermatitis: A Review. Clin Med Res 2017;15(3-4):75-87
- BfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)Opinion No. 008/2018 Highly refined mineral oils in cosmetics(2018年2月27日)
- Health Canada. Petrolatum
- A toxicological review of topical exposure to white mineral oils. Food Chem Toxicol 1996;34(2):213-25
- Schnuch A, et al. White petrolatum (Ph. Eur.) is virtually non-sensitizing. Contact Dermatitis 2006;54(6):338-343
- Kligman AM. Petrolatum is not comedogenic in rabbits or humans. J Soc Cosmet Chem 1996;47(1)
- Effects of topical petrolatum and salicylic acid on the erythemogenicity of UVB. Eur J Dermatol 2002;12(2):154-156
- DiNardo JC. Is mineral oil comedogenic? J Cosmet Dermatol 2005(ScienceDaily 2005年5月31日)