この記事でわかること
- ミネラルオイルと鉱物油・流動パラフィンの関係
- 保湿とクレンジングでのミネラルオイルの役割
- 肌に悪いと言われる理由と、評価機関の見方
ミネラルオイルは、クレンジングオイルや乳液、クリームの成分表でよく見かける油です。でも「石油からできているから肌に悪い」とも聞くので、使って大丈夫なのか気になりますよね。
結論から言うと、化粧品用のミネラルオイルを肌に塗る場合は、健康へのリスクは予想されないと評価されています。石油から取り出した油を高度に精製した、色もにおいもない透明な油で、肌の表面にとどまって水分が逃げるのを防いだり、メイクになじんで浮かせたりするために使われています。まずは、肌の上での働きから見ていきましょう。
ミネラルオイルは、肌をおおって水分の蒸発を防ぐ油
ミネラルオイルの肌への働きの中心は、肌の表面に油の膜をつくり、水分が蒸発するのを防ぐことです。皮膚からはほとんど吸収されず、塗ったあとも肌の表面にとどまるからです。
肌のいちばん外側の角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つで、うるおいを保っています。それでも水分は表面から少しずつ蒸発していて、空気が乾いていたり皮脂膜が少なかったりすると、角層が乾きやすくなります。
ミネラルオイルは、ほかの成分と反応しにくい安定した油です。皮脂膜と同じように表面をおおう膜になって、角層から逃げる水分を減らします。
ミネラルオイルは肌の表面にとどまって膜をつくり、角層の水分が蒸発するのを防ぎます。
たとえば、ラノリン、ミネラルオイル、ジメチコンなどのシリコーンは、皮膚から蒸発する水分を20〜30%ほど減らしうるとされています。肌をおおう保湿剤の素材として最も大事なものに、流動パラフィンとワセリンが挙げられているほどです。ただ、液体のミネラルオイルに比べると、半固形のワセリンのほうが、肌にふたをする力は強いとされます。
乳液やクリーム、メイクアップ化粧品の油の成分として広く使われているのは、この性質のためです。化粧品として言えるのは「皮膚の乾燥を防ぐ」「肌を保護する」といった範囲で、乾燥が気になるときに、表面からふたをする油と考えるとわかりやすいでしょう。
クレンジングの主成分になるのは、メイクになじんで浮かせるから
ミネラルオイルは、メイクの油性の汚れになじんで浮かせる役目で、メイク落としの主成分に使われています。ほかの成分と反応しにくく、皮膚からの吸収も弱い油なので、この役目に向いているとされます。
ただし、油だけでは水で洗い流せません。クレンジングオイルは油に界面活性剤を合わせてつくられていて、肌の上ではメイクを溶かしこみ、水を加えると洗い流しやすい状態に変わるように設計されています。
クレンジングオイルの中で、ミネラルオイルは枠で囲んだ「メイクになじむ」ところで働きます。
なじむ
加える
形になる
流す
具体例として、界面活性剤の状態を調整すると、メイクがよく落ちて、洗い流したあとに肌に残る油もきわめて少ないクレンジングオイルができたという結果があります。
ミネラルオイルは、クレンジングの中でメイクをとらえる役を受けもっているのです。
正体は、流動パラフィンと同じ石油系の炭化水素
ミネラルオイルは流動パラフィンとも呼ばれ、炭素と水素だけでできた炭化水素という油の仲間です。主に炭素の数が15〜35ほどの飽和炭化水素がまざり合ったもので、石油の原油のうち300℃以上で分かれてくる部分から、固形のパラフィンを除いて精製してつくられます。
同じ石油系の炭化水素には、ペースト状のワセリンや、ろう状のパラフィン、マイクロクリスタリンワックスがあり、ミネラルオイルとは形が違うだけの仲間です。化粧品の成分表ではミネラルオイルと書かれますが、流動パラフィンという名前で出てくることもあります。
流動パラフィンは日本薬局方にも品質の規格がある医薬品で、無色でにおいも味もない澄んだ油として、軟膏の基剤、つまり塗り薬の土台として調剤に使われています。食品添加物としても指定されていて、化粧品向けに精製を重ねた流動パラフィンが、日本薬局方や医薬部外品原料規格、食品添加物の規格に合うものとして示されている例もあります。
同じ名前の油でも、工業用と化粧品・医薬品用とでは精製の度合いが違うと考えておくとわかりやすいでしょう。
鉱物油はミネラルオイルを含む呼び名で、「鉱物油フリー」に公的な定義はない
鉱物油とは、石油に由来する油をまとめた呼び方で、成分表ではミネラルオイル、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンなどの名前で出てきます。地下の資源である石油から得られるため「鉱物」と呼ばれ、石油からつくる炭化水素は鉱物性の原料と呼ばれることもあります。
つまり鉱物油はミネラルオイルだけを指す言葉ではなく、ワセリンも鉱物油の仲間です。鉱物油という言葉には、国が決めた成分名としての定義はありません。
商品で見かける「鉱物油フリー」や「鉱物油不使用」は、その製品に鉱物油を入れていないという表示ですが、何を鉱物油に含めるかを決めた公的な定義はなく、範囲は製品によって違うことがあります。化粧品の表示の公正競争規約の運用基準では、成分を入れていないことを理由に安全であるかのように見せる表示はしないことになっています。
鉱物油が入っていなくても、植物油やエステル油などほかの油は入っていることがあるので、中身は全成分表示で確かめるのが確実です。
化粧品用を肌に塗るなら、健康へのリスクは予想されない
「石油由来だから肌に悪い」と思いますよね。でも、化粧品用のミネラルオイルを肌に塗る場合、健康へのリスクは予想されないと評価されています。心配のもとになる成分は精製で減らせるうえ、皮膚からはごくわずかしか吸収されないからです。
心配のもとは、精製が足りない鉱物油に含まれうる、芳香族の炭化水素という成分です。その一部は発がん性をもつおそれがあるとされますが、精製や抽出、水素を加える処理といった工程で、減らしたり取り除いたりできます。化粧品に使う鉱物油は高度に精製されたもので、ヨーロッパの化粧品の規則でも、精製の工程がすべて分かっていて原料に発がん性がない場合などに限って使えることになっています。
ドイツ連邦リスク評価研究所は、鉱物油は皮膚からごくわずかしか吸収されず、化粧品に含まれる鉱物油を肌から取り込むことによる健康へのリスクは予想されないという見方を示しています。一方で、口紅のように口から入りうる製品は、最終的なリスクの評価がより難しいとしています。そのためヨーロッパの化粧品の業界団体は、唇のケア製品には、1日に摂ってよい量が定められた種類の鉱物油だけを使うよう推奨しています。
食品の鉱物油については、ヨーロッパの食品安全機関が、食品からとる飽和炭化水素は健康上の懸念を生じないとする一方で、芳香族の炭化水素の摂取量は多すぎるとし、特に乳幼児を心配しています。ただし、食べ物に混ざる鉱物油の評価と、化粧品を肌に塗る場合の評価は別のものです。
塗るのか、口に入るのか、食べるのかで、答えを分けて考えるのがポイントです。
デメリットは使い心地の面。毛穴や油焼けは化粧品用の話ではない
ミネラルオイルのデメリットとして言えるのは、主に使い心地と性質の面です。スクワランに比べると油っぽさを感じやすく、肌にふたをする力はワセリンより弱いとされます。さっぱりした使い心地が好みなら、成分表でどんな油が入っているかを見て選ぶとよいでしょう。
「ミネラルオイルは毛穴がつまる」という話を聞いて不安になる人も多いと思います。ニキビや毛穴のつまりは、皮脂が毛穴の出口にたまって起きるものです。ミネラルオイルについては、工業用はコメド、つまり毛穴のつまりをつくる可能性があっても、化粧品用のミネラルオイルはつくらないという報告があります。ニキビができやすい人について、日本皮膚科学会のガイドラインは、ニキビの人で使用試験をした低刺激でノンコメドジェニックの化粧品を選ぶといった配慮が必要としていて、成分名より製品ごとの試験の有無が目安になります。
「昔の鉱物油は不純物が多く、1970年代には油焼けでシミができた」という話もよく聞きます。化粧品で顔に色素沈着が起きる女子顔面黒皮症について、皮膚科の教科書では、その本質は顔のかぶれのくり返しで、原因の多くはタール系の色素を含む化粧品とされています。化粧品に使える成分の規制が強まった今では、この病気はほとんど見られなくなっています。
ミネラルオイルを選ぶかどうかは、使い心地の好みで決めて大丈夫です。
まとめ
- ミネラルオイルは石油から精製した透明な油で、流動パラフィンとも呼ばれ、ワセリンやパラフィンと同じ炭化水素の仲間です
- 皮脂膜のように肌の表面をおおって水分の蒸発を防ぎ、メイクを浮かせる油としてクレンジングの主成分にも使われます
- 鉱物油は石油由来の油をまとめた呼び名で、「鉱物油フリー」に公的な定義はなく、中身は全成分表示で確かめます
- 化粧品用のものを肌に塗る場合、健康リスクは予想されないと評価され、リップは口に入るぶん評価がより難しいとされます
- 化粧品用のものは毛穴のつまりをつくらないという報告があり、ニキビが気になるならノンコメドジェニックの試験済み製品が目安です
ミネラルオイルは、肌の上にとどまって乾燥を防ぐ、安定した油です。「石油由来」という言葉だけで判断せず、塗るのか口に入るのか、どんな使い心地が好みかで選んでみてください。
よくある質問
ミネラルオイルとはどんな成分ですか?
石油から取り出した油を高度に精製した、色もにおいもない透明な油で、流動パラフィンとも呼ばれます。肌をおおって水分の蒸発を防ぐ油として乳液やクリームに、メイクを浮かせる油としてクレンジングに使われます。
ミネラルオイルと鉱物油は同じですか?
鉱物油は石油に由来する油をまとめた呼び方で、ミネラルオイルはその仲間の一つです。ワセリンやパラフィンも鉱物油に含まれます。鉱物油という言葉に、国が決めた成分名としての定義はありません。
ミネラルオイルは肌に悪いですか?
化粧品用の高度に精製されたミネラルオイルを肌に塗る場合、健康へのリスクは予想されないと、ドイツ連邦リスク評価研究所が評価しています。口紅のように口に入りうる製品は、評価がより難しいとされます。
ミネラルオイルのデメリットは?毛穴がつまりますか?
使い心地の面では、スクワランに比べて油っぽさを感じやすく、肌にふたをする力はワセリンより弱い油です。毛穴については、化粧品用のミネラルオイルは毛穴のつまりをつくらないという報告があります。ニキビができやすい人は、ニキビの人で使用試験をしたノンコメドジェニックの製品を選ぶのが目安です。
ミネラルオイルがクレンジングに使われるのはなぜ?
ほかの成分と反応しにくく、皮膚にほとんど吸収されない油なので、メイクになじんで浮かせる役目に向いているからです。クレンジングオイルは界面活性剤と合わせてつくられていて、水を加えると洗い流しやすい状態に変わります。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「流動パラフィン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「炭化水素」
- 日興製薬「流動パラフィン「ニッコー」」医療用医薬品 添付文書(日本薬局方 流動パラフィン、2023年6月改訂 第1版、PMDA)
- 厚生労働省 事務連絡「食品衛生法第13条第2項に違反して製造された健康食品用ハードカプセルに内容物を充填した食品の取扱いについて」(令和4年8月9日)
- MORESCO「モレスコバイオレス U-8」製品資料
- 花王「鉱物油に関する考え方」
- 花王 化粧品Q&A「鉱物油が肌に悪いと聞いたのですが?」
- 花王 製品Q&A「鉱物油はシミや油やけの原因になるの?」
- Purnamawati S, et al. The Role of Moisturizers in Addressing Various Kinds of Dermatitis: A Review. Clin Med Res 2017;15(3-4):75-87
- 渡辺啓ほか「界面活性剤の相平衡制御によるクレンジングオイルの高性能・高機能化」日本化粧品技術者会誌 46(4):287-294(2012)
- 化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約運用基準」
- BfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)Questions and answers on mineral oil in cosmetic products(2015年5月26日)
- BfR Opinion No. 008/2018 Highly refined mineral oils in cosmetics: Health risks are not to be expected according to current knowledge(2018年2月27日)
- Cosmetics Europe. Mineral Hydrocarbons in Cosmetic Lip Care Products, Recommendation N°14(2018年9月17日)
- BfR Communication No. 035/2023 New EFSA risk assessment: Some mineral oil residues in food remain a health concern(2023年7月27日)
- DiNardo JC. Is mineral oil comedogenic? J Cosmet Dermatol 2005(出版社 Blackwell の発表、ScienceDaily 2005年5月31日)
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 北海道大学 皮膚科 公開資料「16章 色素異常症」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「女子顔面黒皮症」