この記事でわかること
- ワセリンが肌の上でしていることと、向いている悩み
- 黄色・白色・プロペトの違いと、塗る量・注意
- 油焼けや赤ちゃんのアトピー予防のよくある誤解
乾燥が気になるときはワセリン、とよく聞くけれど、塗ると肌の上で何が起きているのか、べたつくけれど肌にいいのか、気になりますよね。
結論から言うと、ワセリンは肌の表面をおおって、角層の水分が逃げていくのを防ぐ油です。自分で水を抱えこむ成分ではありませんが、刺激がほとんどなく、塗り薬の土台や皮膚を守る薬としても長く使われています。
ワセリンは、肌をおおって水分が逃げるのを防ぐ
ワセリンは角層の上に油の膜をつくり、水分の出口をふさぎます。肌のうるおいは、表面の皮脂膜、細胞の中の天然保湿因子、すきまを埋める細胞間脂質の3つで保たれていて、細胞間脂質の約50%はセラミドです。皮脂やすきまの脂が足りないと角層の水分が逃げやすくなり、かさつきにつながります。皮脂が足りずに肌が乾く状態は、皮脂欠乏症と呼ばれます。
膜が出口をふさぎ、水分が角層にとどまります。
何も塗らない肌
ワセリンを塗った肌
- 角層の細胞
- すきまの脂
- 水分
- ワセリンの膜
日本皮膚科学会の皮脂欠乏症の手引きでは、保湿剤を、水分を抱えこむ成分を含むモイスチャライザーと、肌をおおって水分の蒸発を防ぐエモリエントに分けていて、ワセリンはエモリエントの代表です。海外の総説でも、肌をおおうタイプの保湿剤のなかでいちばん効果が高いものとして紹介されています。角層のバリアが傷ついた肌に塗ると、ワセリンが角層のすきまにまで入りこみ、バリアが元に戻るのを早めたという結果もあります。
一方で、角層の水分そのものを増やす力は、ヘパリン類似物質や尿素を含むモイスチャライザーのほうが強く、べたつきが出やすいことも手引きで弱点として挙げられています。ワセリンは水分を与えるのではなく、逃がさないための油です。
向くのは、乾燥と肌あれが気になるとき
ワセリンが向くのは、乾燥と肌あれが気になるときです。水分が逃げるのを防ぎ、肌を外から守る働きが、この2つの悩みに合うからです。アトピー性皮膚炎の一般向けの解説でも、白色ワセリンなどの油は、べたつくものの刺激がほとんどなく、保湿の効果が長続きするとされています。
化粧品のワセリンで言えるのは「皮膚の乾燥を防ぐ」「皮膚の水分、油分を補い保つ」「肌荒れを防ぐ」などの範囲です。薬局で買える第3類医薬品の白色ワセリンには「手足のひび、あかぎれ、皮膚のあれ、その他皮膚の保護」の効能が認められていて、ひびやあかぎれへの効能は薬だけのものです。角層の水分を増やしたいときは、水分を抱える保湿剤と組み合わせると考えやすくなります。乾燥肌のケアでは、逃がさない役のワセリンと覚えておきましょう。
黄色・白色・プロペトの違いは、精製の度合い
ワセリンは、石油から得られる炭化水素という油が混ざり合った、半固形のやわらかい固まりで、精製の度合いで呼び名が変わります。液体の流動パラフィンや、固くて結晶になるパラフィンとは違い、軟膏のようなかたさが特徴です。ほかの成分と反応しにくいので、クリームやメイクアップ化粧品、塗り薬の土台に広く使われ、成分表示ではそのまま「ワセリン」と書かれます。
呼び名の違いは、精製の度合いの違いです。
医薬品の品質の基準である日本薬局方には、黄色ワセリンと白色ワセリンが定められていて、白色ワセリンは精製したうえで色を抜いたものです。プロペトは白色ワセリンの規格に入る医薬品で、混じっている有機酸などが少なく、刺激のもとになるものをほとんど含まないとされます。
「石油からつくられるから肌に悪い」と心配する声もありますが、海外の公的なリスク評価機関は、化粧品に使う高度に精製された鉱物油は皮膚からほとんど吸収されず、塗る人に健康リスクは予想されないという見解を出しています。ワセリンは精製の度合いで呼び名が変わる、品質の決められた油です。
塗る量は、人さし指の第1関節まで
どれくらい塗ればいいのか迷う人は多いと思います。めやすは、チューブから大人の人さし指の先から第1関節まで出した量、約0.5gです。皮脂欠乏症の手引きにある保湿剤のめやすです。
この量で、体の表面のおよそ2%の広さに塗れます。
指の第1関節まで出して
手のひら2枚分の広さに
入浴後は角層から水分が逃げやすいので保湿剤を塗りますが、直後でなくてもかまいません。入浴の1分後と1時間後に塗って比べても、角層の水分に差はなかったという結果があります。塗り忘れたら、気づいたときに指の第1関節ぶんを手のひら2枚分に塗れば大丈夫です。
かぶれはきわめてまれでも、ゼロではない
ワセリンでかぶれることは、きわめてまれです。ワセリンだけを貼るパッチテストで陽性になったのは0.03%、強い陽性は0.003%だったという結果があります。厚生労働省の副作用の対応マニュアルでも、白色ワセリンはパッチテストで薬を混ぜる土台や、比べるための見本として扱われています。
ただ、ゼロではありません。病院で使う白色ワセリンやプロペトの添付文書には、副作用として接触皮膚炎、つまりかぶれが頻度不明で記載されています。薬局で買える白色ワセリンでは、発疹や赤み、かゆみが出たら使うのをやめて相談すること、目に入らないようにすることが決められています。薬などでアレルギーを起こしたことがある人や、湿ってただれがひどい人は、使う前に医師や薬剤師に相談しましょう。
油焼けや毛穴づまりは、心配しすぎなくていい
ワセリンを塗って日に当たるとしみになる「油焼け」や、毛穴がつまってニキビになる、という話を聞いて不安になりますよね。どちらも、ワセリンについては心配しすぎなくて大丈夫です。
日焼けについては、ワセリンを薄く塗っても厚く塗っても、肌が赤くなるのに必要な紫外線の量が増え、むしろ赤くなりにくくなったという結果があります。そのため、皮膚科で紫外線を当てる治療の前には塗らないほうがよいとされています。ただし、SPFやPAが示された製品ではないので、紫外線対策は日焼け止めに任せましょう。
毛穴については、ワセリンはニキビのもとになる毛穴のつまりをつくらなかったという結果があります。ただ、肌に合うかどうかは人によって違い、ニキビのある人は刺激が少なくニキビのもとができにくい化粧品を選ぶ配慮が必要だと、日本皮膚科学会のガイドラインで示されています。紫外線対策とニキビ対策は、それぞれ専用の製品で考えるのが安心です。
アトピー予防の研究で毎日塗ったのは、ワセリンではない
「赤ちゃんにワセリンを塗るとアトピーを防げる」という話は、研究の中身とずれています。よく引用される研究で、赤ちゃんに毎日塗ったのは乳液タイプの保湿剤で、ワセリンは必要なときだけ使うものとして渡されていました。この研究では、乳液タイプの保湿剤を毎日塗った赤ちゃんで、アトピー性皮膚炎や湿疹になる子が少なくなりました。
その後、多くの研究をまとめた結果では、健康な赤ちゃんに保湿剤などでスキンケアをしても、湿疹の予防にはおそらくつながらず、皮膚の感染はおそらく増え、食物アレルギーが増えるかもしれないとされました。国内の一般向けの情報では、新生児期からの保湿はアトピー性皮膚炎を予防できる可能性がある、と紹介されています。赤ちゃんの肌のケアで迷ったら、小児科や皮膚科に相談すると安心です。
まとめ
- ワセリンは角層の上に油の膜をつくり、水分が逃げるのを防ぐ油です
- 角層の水分そのものを増やす力は、ヘパリン類似物質や尿素のほうが強いとされています
- 黄色ワセリン・白色ワセリン・プロペトの違いは精製の度合いです
- 塗る量のめやすは指の第1関節まで(約0.5g)を手のひら2枚分です
- アトピー予防の研究で毎日塗ったのは乳液で、ワセリンではありません
ワセリンは、水分を与えるのではなく、逃がさないための刺激の少ない油です。かぶれはきわめてまれでもゼロではないので、赤みやかゆみが出たら使うのをやめて相談してください。
よくある質問
ワセリンは肌に水分を与えますか?
水分を与えるのではなく、肌の表面をおおって水分が蒸発するのを防ぎます。角層の水分を増やす力は、ヘパリン類似物質や尿素を含む保湿剤のほうが強いとされています。
白色ワセリンとプロペトは何が違いますか?
違いは精製の度合いです。プロペトは日本薬局方の白色ワセリンの規格に入る医薬品で、刺激のもとになるものをほとんど含まず、目の軟膏の土台にも使われます。
ワセリンはどれくらいの量を塗ればいいですか?
めやすは、チューブから大人の人さし指の先から第1関節まで出した約0.5gで、大人の手のひら2枚分、体の表面のおよそ2%の広さに塗る量です。
ワセリンを塗って日に当たるとしみになりますか?
ワセリンを塗ると、紫外線で肌がむしろ赤くなりにくくなったという結果があります。ただし日焼け止めの代わりにはならないので、紫外線対策は日焼け止めで行いましょう。
赤ちゃんにワセリンを塗るとアトピーを防げますか?
よく引用される研究で毎日塗ったのは乳液タイプの保湿剤で、ワセリンではありません。多くの研究をまとめた結果では、健康な赤ちゃんへの保湿で湿疹の予防にはおそらくつながらないとされています。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ワセリン」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 日本薬局方 医薬品各条「黄色ワセリン」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 日本薬局方 医薬品各条「白色ワセリン」
- 丸石製薬「プロペト 電子添文」(2023年12月改訂 第1版)
- 日医工「白色ワセリン 添付文書」(2023年11月改訂 第1版、KEGG MEDICUS)
- サイキョウ・ファーマ「日本薬局方白色ワセリン」(第3類医薬品、KEGG MEDICUS)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」(日皮会誌131(10):2255-2270)
- アレルギーポータル(日本アレルギー学会)「アトピー性皮膚炎とは」
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤による接触皮膚炎」(令和5年4月改定)
- BfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)Opinion No. 008/2018 Highly refined mineral oils in cosmetics (2018年2月27日)
- Purnamawati S, et al. The Role of Moisturizers in Addressing Various Kinds of Dermatitis: A Review. Clin Med Res 2017;15(3-4):75-87
- Ghadially R, Halkier-Sorensen L, Elias PM. Effects of petrolatum on stratum corneum structure and function. J Am Acad Dermatol 1992;26(3 Pt 2):387-396
- Horimukai K, et al. Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol 2014;134(4):824-830.e6
- 国立成育医療研究センター プレスリリース(2014年10月1日)
- Kelleher MM, et al. Skin care interventions in infants for preventing eczema and food allergy. Cochrane Database Syst Rev 2022, CD013534
- Kligman AM. Petrolatum is not comedogenic in rabbits or humans. J Soc Cosmet Chem 1996;47(1)
- Effects of topical petrolatum and salicylic acid on the erythemogenicity of UVB. Eur J Dermatol 2002;12(2):154-156
- Schnuch A, et al. White petrolatum (Ph. Eur.) is virtually non-sensitizing. Contact Dermatitis 2006;54(6):338-343
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