この記事でわかること
- プロテオグリカンが角層で何をしているのか
- ヒアルロン酸との形・表示名・保水の違い
- 化粧品で言える範囲と、飲む食品との分け方
プロテオグリカンとヒアルロン酸は、どちらも「うるおい成分」としてよく名前を見かけるので、何が違うのか、どちらを選べばいいのか迷いますよね。
結論から言うと、どちらも化粧品では、角層に水を抱えさせてうるおいを与える成分で、違うのは形です。ヒアルロン酸は糖のつながった糸だけ、プロテオグリカンはたんぱく質の芯に糖の糸がたくさんついたブラシのような形をしています。どちらが上というより、うるおいの成分として使い心地で選んでかまいません。まずは、肌の乾燥がどこで起きているかから見ていきましょう。
乾燥は、角層の水分が逃げて足りなくなること
肌の乾燥は、いちばん外側の角層から水分が逃げて、うるおいが足りなくなることで起きます。プロテオグリカンもヒアルロン酸も、この角層の水分に関わる成分だからです。
角層は、この3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つのバランスで、うるおいを保っています。細胞間脂質の約50%はセラミドです。このバランスが崩れると、角層の水分が逃げて、かさつきにつながります。
乾燥の手入れでは、角層に水分を抱えさせることが大事になります。
プロテオグリカンは、少ない量でもたくさんの水を抱える
化粧品に入るプロテオグリカンの役目は、角層の表面で水を抱えて、肌にうるおいを与えることです。プロテオグリカンについている糖の鎖は水となじみやすく、しかも伸びた形をとりやすいので、重さのわりにとても大きな場所を占めるからです。
水溶性プロテオグリカンは、角層の表面で水を抱えてうるおいを与えます。
そのため濃度が低くてもゲルになるほどで、少ない量でもたくさんの水を抱えられます。ヒアルロン酸も同じ糖の鎖の仲間なので、肌の上でしている仕事はよく似ています。
プロテオグリカンは、もともと私たちの体の中にもある成分で、細胞と細胞のすき間を埋める細胞外マトリックスの主な成分のひとつです。皮膚では、こうした糖の鎖の多くが真皮にあり、水分ややわらかさを保っています。ただし、これは体の中のプロテオグリカンの話です。化粧品でいう浸透は、肌のいちばん外側にある角層までで、塗ったプロテオグリカンが働くのも角層です。
プロテオグリカンは、乾燥が気になるときに、角層に水を抱えさせる保湿成分です。
化粧品に入るのは、鮭の鼻の軟骨からとった水溶性プロテオグリカン
化粧品に入っているプロテオグリカンは、鮭の鼻の軟骨から取り出したもので、全成分表示には「水溶性プロテオグリカン」と載っていることが多い成分です。
名前を分けると、「プロテオ」はたんぱく質、「グリカン」は糖の鎖のことです。プロテオグリカンは、芯になるたんぱく質に、グリコサミノグリカンと呼ばれる糖の鎖が1本以上しっかり結びついた物質をまとめた呼び名で、種類によって糖の鎖の大きさや本数は大きく違います。なかでも軟骨に多いアグリカンというタイプは、芯からたくさんの糖の鎖が生えた、試験管ブラシのような形をしています。
鮭の鼻軟骨のプロテオグリカンは、このアグリカンです。ウシのアグリカンと比べると、糖の鎖の数は約3分の1と少ないかわりに、1本1本が1.5〜3.3倍長いという報告があります。この糖の鎖はコンドロイチン硫酸という種類で、哺乳動物や魚の軟骨から取り出したコンドロイチン硫酸ナトリウムとして、それだけで保湿剤にも使われています。
つまり水溶性プロテオグリカンは、うるおいの成分として知られる糖の鎖を、たんぱく質の芯ごと取り出したものです。
ヒアルロン酸との違いは、たんぱく質の芯があるかどうか
プロテオグリカンとヒアルロン酸のいちばんの違いは、たんぱく質の芯があるかどうかです。ヒアルロン酸もプロテオグリカンの糖の鎖と同じグリコサミノグリカンの仲間ですが、芯のたんぱく質を持たず、糖の鎖だけの形で存在しているからです。たとえるなら、ヒアルロン酸は毛だけ、プロテオグリカンは芯と毛がそろったブラシです。
軟骨では、1本のヒアルロン酸の鎖に、ブラシの形をしたプロテオグリカンがたくさんつながります。
この2つは、体の中では組んで働きます。軟骨のアグリカンは芯の端にヒアルロン酸とくっつく部分を持ち、1本のヒアルロン酸の鎖にたくさんのアグリカンがつながって、とても大きな集まりをつくります。このつながりは、リンクたんぱく質と呼ばれる小さなたんぱく質がさらに安定させています。皮膚でも、バーシカンという同じ仲間が、ヒアルロン酸と大きな集まりをつくります。
水を抱える力は、比べ方を見て受け取ります。ヒアルロン酸は1gで水約6Lを保てるとされますが、これは真皮にあるヒアルロン酸についての数字で、理論上は2〜6Lと幅があります。プロテオグリカンは、乾いた環境でヒアルロン酸と同じくらい水を保ったという結果があり、「それ以上」とする資料もあります。
表示名も違います。ヒアルロン酸はかつて鶏のとさかから取り出されていましたが、いまはバイオ技術でつくられ、全成分表示では「ヒアルロン酸Na」と載ります。ほかにも、小さく分解した加水分解ヒアルロン酸、水を抱える量を高めたとされるカルボキシメチルヒアルロン酸Na、洗い流したあとも髪や肌にとどまりやすいとされるヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、アセチルヒアルロン酸Naなどがあります。ヒアルロン酸の大きさの違いは、表示名と合わせて見ると選びやすくなります。
2つは上下の関係ではなく、形の違う仲間です。プロテオグリカンが入っているかは「水溶性プロテオグリカン」という名前を探せばわかります。
化粧品で期待できるのは、うるおいとはりまで
化粧品のプロテオグリカンに期待できるのは、肌にうるおいを与える、乾燥を防ぐ、はりを与えるといった範囲です。化粧品は、薬のように体に作用して効き目を認められたものではないからです。
たとえば、真皮まで届いて若返る、といった体の中への作用をうたう言い方はできません。商品の説明にそうした言葉があったら、飲む食品の話や原料の宣伝文句が混ざっていないかを見てみましょう。
飲む食品では、鮭の鼻軟骨のプロテオグリカンで「肌弾力を維持」をうたう機能性表示食品の届出が受理されています。機能性表示食品は国の許可ではなく、会社が届け出るしくみで、これは食品の話です。塗る化粧品のプロテオグリカンとは、分けて考えましょう。
「何倍も水を抱える」「1gで3,000万円」はそのまま受け取らない
「プロテオグリカンはヒアルロン酸より何倍も水を抱える」「1gで3,000万円の成分」と聞くと、特別な成分のように思いますよね。でも、どちらも、そのまま受け取らなくて大丈夫です。数字の中身が、言い方とずれているからです。
保水力は、ヒアルロン酸と同じくらい、またはそれ以上とされるところまでで、比べる条件がそろわない「何倍」は、キャッチコピーとして受け取っておくのがちょうどよいでしょう。そもそも2つは体の中で組んで働く仲間です。
「1gで約3,000万円」は、取り出す技術が生まれる前の、牛からとった研究用の試薬の値段です。そのころは大量に取り出すのが難しく、1mgで約3万円もしました。その後、鮭の鼻の軟骨に多く含まれることがわかり、食用の酢酸とアルコールだけで安く大量に取り出す技術ができて、身近な成分になりました。その流れは、鮭の鼻軟骨を使う郷土料理の氷頭なますの調理と基本的に同じだとされます。それまで産業廃棄物として処理されていた鮭の鼻軟骨が、健康食品や化粧品の原料になっています。
プロテオグリカンは、特別な成分というより、身近になったうるおい成分として見ておきましょう。
まとめ
- 乾燥は、角層の水分が逃げて足りなくなることで起きます
- プロテオグリカンは、少ない量でもたくさんの水を抱え、角層にうるおいを与えます
- 化粧品に入るのは、鮭の鼻軟骨からとった「水溶性プロテオグリカン」です
- ヒアルロン酸とのいちばんの違いは、たんぱく質の芯があるかどうかで、体の中では組んで働きます
- 化粧品で期待できるのはうるおいとはりまでで、飲む食品の話とは分けて考えます
どちらが上かで選ぶより、全成分表示で名前を確かめて、うるおいの成分として使い心地で選ぶのがおすすめです。
よくある質問
プロテオグリカンとヒアルロン酸は何が違いますか?
いちばんの違いは、たんぱく質の芯があるかどうかです。ヒアルロン酸は糖の鎖だけで、プロテオグリカンはたんぱく質の芯に糖の鎖がたくさんついています。軟骨では、プロテオグリカンがヒアルロン酸とつながって大きな集まりをつくります。
プロテオグリカンはヒアルロン酸より保水力が高いですか?
ヒアルロン酸と同じくらい、またはそれ以上とされるところまでです。どちらも化粧品では、角層にうるおいを与える保湿成分として入っています。
全成分表示ではどう書かれていますか?
化粧品では「水溶性プロテオグリカン」と載っていることが多く、鮭の鼻の軟骨から取り出した成分です。ヒアルロン酸は「ヒアルロン酸Na」や「加水分解ヒアルロン酸」などの名前で載ります。
プロテオグリカンを塗るとシワに効きますか?
化粧品としてうたえるのは、うるおいを与える、乾燥を防ぐ、はりを与えるなどの範囲です。「肌弾力を維持」は飲む機能性表示食品の届出の言葉で、塗る化粧品とは分けて考えます。
プロテオグリカンが1gで3,000万円というのは本当ですか?
昔の研究用試薬の値段で、いまの化粧品原料の値段ではありません。鮭の鼻軟骨から安く大量に取り出す技術ができて、身近な成分になりました。
この記事で参照した情報
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「プロテオグリカン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「グリコサミノグリカン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ヒアルロン酸」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「コンドロイチン硫酸ナトリウム」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「細胞外マトリックス」
- 三上雅久・北川裕之「グリコサミノグリカン鎖の硫酸化修飾の制御機構とその異常による疾患発症機構」生化学 96(2), 2024
- 柿崎育子「プロテオグリカンの種類」日本応用糖質科学会
- Timothy E. Hardingham「軟骨:アグリカン-リンクプロテイン-ヒアルロン酸の会合」GlycoForum Vol.2(1998年6月15日)
- Kakizaki I, Tatara Y, Majima M, Kato Y, Endo M. Identification of proteoglycan from salmon nasal cartilage. Arch Biochem Biophys 2011;506(1):58-65
- Kakizaki I, et al. Biochemical and atomic force microscopic characterization of salmon nasal cartilage proteoglycan. Carbohydr Polym 2014;103
- 青森県「青森県発機能性素材 プロテオグリカン(PG)」
- 一般社団法人あおもりPG推進協議会「あおもりPG(プロテオグリカン)」
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース(サケの鼻軟骨からのプロテオグリカン抽出法に関する事例、読売新聞 2004年10月31日の記事を紹介)
- 弘前大学「食品に応用できるユニークな新規プロテオグリカン複合体の開発」(2015年3月17日)
- 一丸ファルコス株式会社 技術資料「プロテオグリカン」(原料メーカーの説明)
- 一丸ファルコス株式会社 研究開発「サケ鼻軟骨由来プロテオグリカン」(2020年12月25日、原料メーカーの説明)
- 一丸ファルコス株式会社 PGフォーラム「プロテオグリカンとは」(原料メーカーの説明)
- 一丸ファルコス株式会社 ニュースリリース「プロテオグリカンの新ヘルスクレーム「肌弾力を維持」が機能性表示食品に受理」(2020年7月20日)
- 株式会社角弘「プロテオグリカンの紹介」(原料メーカーの説明)
- キユーピー株式会社 ファインケミカル「ヒアルロン酸とは」(原料メーカーの説明)
- キユーピー株式会社「ヒアルロンサンHA-LQH」規格書(表示名称 ヒアルロン酸Na)
- キユーピー株式会社「ヒアロオリゴ」(表示名称 加水分解ヒアルロン酸)
- キユーピー株式会社「ヒアロキャッチ」(表示名称 カルボキシメチルヒアルロン酸Na)
- キユーピー株式会社「ヒアロベール」(表示名称 ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム)
- 岡 隆史・柳 敏夫「アセチル化ヒアルロン酸 ―角質柔軟効果の優れた新規保湿剤―」高分子 47(10), 1998
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
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