この記事でわかること
- 皮脂膜ができるしくみと、その材料
- トリグリセリドなど皮脂の成分の割合
- 水分を守るふたとしての役割
「皮脂膜」と聞いても、皮脂とどう違うのか、肌の上にどんな膜があるのか、イメージしにくいと思いますよね。
結論から言うと、皮脂膜は、毛穴から出る脂が汗や水分とまざって、肌の表面に広がったごく薄い膜です。肌のいちばん外側で、水分が逃げすぎないようにふたをしています。材料、成分、役割の順に見ていきましょう。
皮脂膜は、脂と汗がまざって肌の表面をおおう膜
皮脂膜は、肌の表面で、脂が汗や水分とまざり合った状態でできている膜です。油と水はそのままではまざりませんが、皮脂膜では脂と汗が乳化(油と水が細かい粒になってまざり合うこと)した状態になっています。
脂は毛穴から、汗は汗腺(汗をつくる腺)の出口から肌の表面に出てきて、表面で1つの膜になります。皮脂膜は、肌のうるおいや、しっとりした手ざわりに大切な役割を果たしています。
毛穴から出る皮脂と汗腺から出る汗が、表面でまざります。
皮脂膜は、肌が自分でつくっている、脂と水の薄い膜です。
皮脂膜の材料は、皮脂腺の脂、表皮の脂、汗の3つ
皮脂膜の材料は、皮脂腺から出る脂、表皮の細胞から出る脂、そして汗です。肌の表面の脂は、皮脂腺と表皮という2つの出どころの脂がまざったものだからです。
皮脂腺は真皮の上のほうで毛穴につながっていて、トリグリセリドやワックスエステル、スクワレンなどの脂をつくります。表皮の細胞からは、コレステロールなどの脂が加わります。狭い意味では皮脂腺の脂だけを皮脂と呼び、広い意味では両方をまとめて皮脂と呼びます。
汗をつくるのは、唇などの一部をのぞく全身にあるエクリン汗腺です。1平方センチメートルあたり130〜600個、全身で約300万個あり、1日に平均700〜900mLの汗をつくります。皮脂膜は、2種類の脂と汗が、肌の表面で出会ってできる膜なのです。
皮脂でいちばん多い成分は、トリグリセリド
皮脂の成分でいちばん多いのはトリグリセリドで、重さの30〜60%を占めます。次にワックスエステル、遊離脂肪酸、スクワレンが続き、この4つが皮脂の大部分をつくっています。
皮脂の成分の重さの割合で、薄い色の部分は人による幅です。
トリグリセリドは、毛穴の中にいる細菌の出す酵素などで分解され、ジグリセリドやモノグリセリド、遊離脂肪酸に変わります。肌の表面に遊離脂肪酸があるのはこのためです。スクワレンは、体の中では皮脂腺に特有の脂です。ワックスエステルには、ほかの組織では見られないサピエン酸という脂肪酸が多く含まれます。
皮脂は、トリグリセリドを中心にした、何種類もの脂のまぜ合わせです。
皮脂膜は、角層の水分が逃げすぎるのを防ぐふた
皮脂膜は、肌の表面をおおって、角層の水分が蒸発しすぎるのを防ぐふたの役目をしています。脂の膜が表面をおおうことで、水分が外へ出ていく道がふさがれるからです。角層が水分を保つ3つのしくみのうち、皮脂膜はいちばん外側を受け持っています。
皮脂には、肌を保護する働きや、表面のpHが急に変わらないように受け止める働き、細菌などの微生物から肌を守る働きもあるとされています。皮脂膜は、水分を閉じこめ、表面を守る、角層の外側のふたです。
皮脂膜の遊離脂肪酸が、肌の表面を酸性に傾ける
肌の表面が酸性を示すことには、皮脂膜に含まれる遊離脂肪酸がかかわっています。トリグリセリドが分解されてできた遊離脂肪酸によって、肌の表面は酸性になるからです。
健康な肌の表面は、ふつうpH5〜7の弱酸性に保たれています。pHは酸性かアルカリ性かを表す数字で、7が中性、小さいほど酸性です。肌のpHについては皮脂と肌のpHの記事で解説しています。皮脂膜は、肌の表面の弱酸性を支える膜でもあります。
皮脂膜は、皮脂腺・汗腺と角層をつなぐいちばん外側の膜
皮脂膜のもとになる皮脂の量は、人によって大きく違い、性別や年齢、体の場所によっても変わります。皮脂をつくる皮脂腺の数や働きが、場所や年齢で違うからです。
皮脂膜は角層の上にあり、角層の中では細胞間脂質が細胞のすき間を、天然保湿因子が細胞の中を受け持っています。モイスチャーバランスは、この3つをまとめて見る考え方です。
皮脂膜は、真皮の皮脂腺と汗腺から届いたものでできる、肌のいちばん外側の膜です。
まとめ
- 皮脂膜は、脂が汗や水分と乳化して、肌の表面をおおっている膜です
- 材料は、皮脂腺の脂、表皮の細胞の脂、エクリン汗腺から出る汗です
- 皮脂でいちばん多いのはトリグリセリドで、重さの30〜60%を占めます
- 皮脂膜は、角層の水分が蒸発しすぎるのを防ぐふたの役目をしています
- トリグリセリドが分解されてできた遊離脂肪酸が、肌の表面を酸性に傾けます
皮脂膜は、肌が自分でつくっている、いちばん外側のふたです。皮脂と汗が表面で出会ってできる膜だとイメージすると、角層のしくみとのつながりが見えてきます。
よくある質問
皮脂と皮脂膜は何が違いますか?
皮脂は脂そのもの、皮脂膜は脂が汗とまざった膜です。皮脂が肌の表面で汗や水分と乳化すると、皮脂膜になります。
皮脂膜は何でできていますか?
皮脂腺の脂、表皮の細胞の脂、汗でできています。脂ではトリグリセリドがいちばん多く、重さの30〜60%を占めます。
スクワレンとは何ですか?
皮脂の重さの10〜20%を占める脂の1つです。体の中では、皮脂腺に特有の脂です。
皮脂膜にはどんな役割がありますか?
角層の水分が蒸発しすぎるのを防ぐふたの役割です。肌を保護し、表面のpHが急に変わらないように受け止める働きもあるとされています。
肌の表面が弱酸性なのはなぜですか?
皮脂膜の遊離脂肪酸がかかわっています。皮脂のトリグリセリドが分解されてできた遊離脂肪酸によって、肌の表面は酸性を示します。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「皮脂膜」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「皮脂」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「脂腺」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「角層保湿機能」
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「pH」
- 伊藤雅章(新潟大学大学院 皮膚科)「脂腺の構造と機能」ラジオNIKKEI 皮膚科セミナー
- Ludovici M, et al. Influence of the sebaceous gland density on the stratum corneum lipidome. Sci Rep 2018;8:11500
- 木原章雄(北海道大学大学院薬学研究院)「脂肪酸の多彩な代謝,生理機能と関連疾患」生化学 2010;82(7):591-605
- 北海道大学大学院医学研究院 皮膚科学教室 公開資料「皮膚の構造と機能 付属器 脂腺・汗腺」