この記事でわかること
- 表情ジワができるしくみと、アルジルリンが関わるとされる場所
- 塗ったアルジルリンが肌のどこまで入るか
- 配合量の数字の読み方と、ボトックスとの違い
「表情ジワに」「塗るボトックス」と紹介されるアルジルリン。本当にシワに関係があるのか、注射と同じような働きをするのか、気になりますよね。
結論から言うと、アルジルリンは表情ジワのしくみに関わるとされる人工のペプチドですが、化粧品として言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。塗った量のほとんどは肌の表面にとどまるので、筋肉に注射する医薬品とは別ものと考えましょう。
アルジルリンは、6つのアミノ酸をつないだ人工のペプチド
アルジルリンは原料の商品名で、中身は6つのアミノ酸をつなぎ、両端に手を加えた人工のペプチドです。ペプチドは、タンパク質の部品であるアミノ酸がいくつかつながったものです。自然のものを取り出したのではなく、神経の末端にあるタンパク質の端の部分をまねるように設計してつくられました。
日本の成分表示では「アセチルヘキサペプチド-8」と書かれ、以前はアセチルヘキサペプチド-3という名前で呼ばれていました。化粧品の中での役割は肌の調子を整える成分として分類されていて、シワを取る成分という分類ではありません。成分表で探すときは、アセチルヘキサペプチド-8の名前が目印です。
表情ジワは、筋肉が縮むのをくり返して刻まれる
表情ジワは、笑ったり目を細めたりして顔の筋肉が縮むのを、くり返すうちに刻まれていくシワです。顔の筋肉は、神経の末端から出るアセチルコリンという合図の物質を受け取って縮み、そのたびに肌が折りたたまれるからです。
神経も筋肉も、化粧品が触れる角層よりずっと下にあります。
神経の合図で、筋肉が縮む
くり返すと、溝が残る
- 合図の物質
- 表情をつくる筋肉
合図の物質を外へ押し出すには、神経の末端でいくつかのタンパク質が組み合わさった集まりができる必要があります。目もとの細かいシワには、角層が乾いてできる浅い小ジワもまざっていて、化粧品が働けるのはこの角層の側です。くわしくはシワの種類の記事で解説しています。
アルジルリンは、筋肉への合図をじゃまするとされる
アルジルリンは、合図の物質を押し出すタンパク質の集まりができるのをじゃまして、合図が出るのを抑えるとされています。集まりの部品となるタンパク質の端をまねた形をしているので、本物の部品のかわりに入りこむと考えられているからです。
試験管の中では、アルジルリンを加えると合図の物質が出にくくなりました。
加えないとき
アルジルリンを加えたとき
- アルジルリン
- 合図の物質
濃度が高いほど集まりができにくくなったという結果もありますが、抑えられる度合いは、医薬品に使われるボツリヌス毒素よりはるかに小さいものでした。アルジルリンは、試験管の中で合図に関わるとされる成分として見ておくと、ほかの話と混ざりません。
目もとに塗ると、シワが目立ちにくくなったという結果がある
アルジルリンを含むものを目のまわりに塗ると、シワが目立ちにくくなったという結果があります。人の肌でも、塗ったあとの見た目や表面の凹凸が調べられているからです。
たとえば、アルジルリンを入れた乳液を目のまわりに塗ると、シワの深さが最大で30%浅くなったという結果があります。また、目のまわりに塗った人の約半数でシワが目立ちにくくなったと判定され、肌の表面の粗さも下がったという結果もあります。この約半数は、シワが半分になったという意味ではなく、目立ちにくくなったと判定された人の割合です。
塗った量のほとんどは、肌の表面にとどまる
肌に塗ったアルジルリンは、ほとんどが表面にとどまります。分子が大きく、水になじみやすい性質なので、角層を通りにくいからです。
塗った量の99%超は表面にとどまり、角層に残ったのは0.22%でした。
肌の断面
表面を拡大すると
- アルジルリン
- 角層の細胞
表皮に入ったのはさらにわずかで、その下の真皮までは届きませんでした。表情をつくる筋肉は、真皮よりさらに下にあります。アルジルリンは肌の表面で使われる成分と考え、分子の大きさと肌への入りやすさの関係もあわせて見てみてください。
配合量の「10%」は、ペプチドにすると0.005%
商品で「アルジルリン10%」と見かけたら、それは原料の液としての量で、ペプチドそのものは0.005%と読むのが自然です。アルジルリンは、ペプチドを0.05%だけ含む液の形で化粧品に入るので、その液を10%入れると、ペプチドは0.05%の10分の1になるからです。
化粧品成分の安全性を評価する専門家の委員会は、0.005%までの濃度なら化粧品に安全としていて、実際に使われている濃度も最大0.005%でした。くり返し塗ってもアレルギーの反応は出なかったという結果もあります。それでも、新しい化粧品と同じように、赤みやかゆみが出たら使うのをやめましょう。
「塗るボトックス」と呼ばれても、医薬品とは別もの
アルジルリン入りの化粧品が「塗るボトックス」と呼ばれることがありますが、ボトックスは医薬品の名前で、中身も働く場所も別ものです。化粧品には医薬品の成分を入れてはいけないと、国の化粧品基準で決まっているからです。
名前が並べて語られても、中身も働く場所も別ものです。
ボトックスは、講習を受けた医師が筋肉に注射するボツリヌス製剤で、毒薬・処方箋医薬品に分類される医薬品です。アルジルリン入りの化粧品にボツリヌス毒素は入っておらず、塗ったアルジルリンは筋肉まで届きません。また、化粧品は決められた効能以外の薬理作用による効能を表現できないと、国の広告基準の解説で決まっていて、「神経の合図を止める」「筋肉をゆるめる」といった言い方はこれにあたります。
同じく表情ジワの話で出るシンエイクとも、働くとされる場所が違います。シンエイクは筋肉の側で合図の受け取り口をふさぐとされ、アルジルリンは神経の側で合図を押し出すしくみをじゃまするとされています。化粧品のアルジルリンは、小ジワのケアの1つとして選ぶと考えやすいです。
まとめ
- アルジルリンは人工のペプチドで、成分表示ではアセチルヘキサペプチド-8と書かれます
- 表情ジワは、神経の合図で筋肉が縮むのをくり返して刻まれます
- アルジルリンは、試験管の中で合図が出るのをじゃまするとされ、目もとのシワが目立ちにくくなったという結果があります
- 塗った量のほとんどは肌の表面にとどまり、配合量の「10%」はペプチドにすると0.005%です
- 化粧品として言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」までで、ボトックスとは別ものです
「塗るボトックス」という言葉に出会ったら、化粧品として言える範囲とあわせて読んでみてください。
よくある質問
アルジルリンはシワにどう働きますか?
神経から筋肉への合図に関わるタンパク質の集まりをじゃまして、表情ジワを目立ちにくくするとされています。化粧品として言えるのは、試験をした製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。
アルジルリンはボトックスと同じ効果がありますか?
同じではありません。ボトックスは医師が筋肉に注射する医薬品で、化粧品にボツリヌス毒素は入っていません。試験管の中でも、アルジルリンが合図を抑える度合いは毒素よりはるかに小さいものでした。
アルジルリンは塗ると肌の深いところまで届きますか?
ほとんど届きません。人の皮膚に塗った実験では、塗った量の99%超が表面を洗うと取れ、真皮までは届きませんでした。
アルジルリンは成分表示でどう書かれますか?
「アセチルヘキサペプチド-8」と書かれます。以前はアセチルヘキサペプチド-3と呼ばれていました。アルジルリンは原料の商品名です。
アルジルリンの濃度はどれくらいまで安全とされていますか?
化粧品成分の安全性の評価では、0.005%までなら化粧品に安全とされています。商品の「10%」は原料の液としての量と読むのが自然で、ペプチドにすると0.005%です。
この記事で参照した情報
- Blanes-Mira C, et al. A synthetic hexapeptide (Argireline) with antiwrinkle activity. Int J Cosmet Sci 2002;24(5):303-310
- Wang Y, et al. The Anti-Wrinkle Efficacy of Argireline, a Synthetic Hexapeptide, in Chinese Subjects: A Randomized, Placebo-Controlled Study. Am J Clin Dermatol 2013;14:147-153
- Kraeling MEK, et al. In vitro skin penetration of acetyl hexapeptide-8 from a cosmetic formulation. Cutan Ocul Toxicol 2015;34(1)
- Cosmetic Ingredient Review「Safety Assessment of Acetyl Hexapeptide-8 Amide as Used in Cosmetics」最終報告(2021年4月5日)
- ボトックスビスタ注用50単位 添付文書(KEGG MEDICUS)
- 厚生省「化粧品基準」(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
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