この記事でわかること
- アスタキサンチンがどこから来た、どんな色素なのか
- 飲む研究と、塗る化粧品で言えることの違い
- 天然と合成の違いと、使うときの注意
オレンジがかった赤い美容液でよく見かけるアスタキサンチン。肌に何をしてくれるのか、飲むのと塗るのでは何が違うのか、気になりますよね。
結論から言うと、アスタキサンチンはサケやエビと同じ赤い色素の仲間で、塗る化粧品として言えるのは、肌にうるおいやはりを与える範囲です。肌についての研究の多くは飲んで試したもので、その結果は飲む食品の話として読むのが正解です。
アスタキサンチンは、藻がつくる赤い色素
アスタキサンチンは、小さな藻や酵母などがつくる赤い色素です。ニンジンのβ-カロテンやトマトのリコペンと同じカロテノイドという赤や黄色の色素の仲間で、その中でも酸素を含むキサントフィルというグループに入ります。藻や植物、酵母、細菌がつくり、サケ、マス、タイ、エビ、ロブスター、魚卵に含まれます。
エサを通じて、藻の色が魚の身にたまります。
ヘマトコッカス藻が赤い色をためる
エサを通じてサケの身が赤く
サケの身が赤いのもこの色素で、アメリカの規則では、養殖サケの身の色を強めるためにエサに加える色素として定められています。化粧品や食品の原料によく使われるのは、ヘマトコッカスという緑の藻で、ストレスを受けると赤いアスタキサンチンをためこみます。日本の食品添加物の名簿にも「ヘマトコッカス藻色素」という名前で載っています。見つかったのはザリガニからで、名前の「アスタ」もザリガニの学名から来ています。アスタキサンチンは、藻から始まって、エサを通じて魚の身を赤くする色素です。
赤く見えるのは、分子の長い鎖が光を吸収するから
美容液が赤いのは、アスタキサンチンの分子の形のためです。二重結合と単結合が交互に長く続く「共役二重結合」という鎖が特定の光を吸収するので、赤く見えます。
赤い色の鎖は、「抗酸化」の鎖でもあります。
二重結合が交互に続く長い鎖
青や緑の光を吸収して赤く見える
この鎖は、電子を与えたり、フリーラジカルと呼ばれる不安定な分子と反応したりして、強い抗酸化剤として働きます。カロテノイドには、一重項酸素という活性の高い酸素を捕まえる作用もあります。ただし、これは成分そのものの性質の話で、活性酸素を捕まえる性質と、化粧品に入れたときに肌でどう働くかは、別の話です。
肌の研究の多くは飲む試験で、塗る化粧品とは分けて読む
アスタキサンチンの肌の研究を読むときは、「飲んだのか、塗ったのか」を分けて考えます。肌についての研究の多くは飲んで試したもので、塗る化粧品の話とは別だからです。
飲む研究は、塗る化粧品とは分けて読みます。
肌の乾燥は、角層から水分が逃げて、うるおいが足りなくなることで起きます。飲む研究では、アスタキサンチンのカプセルを飲むと、紫外線を当てた部分の水分の減りが少なかったという結果があり、飲むことと塗ることを組み合わせると、シワや肌のうるおいがよい方向に変わったという結果もあります。飲む食品では、血中脂質の酸化をおさえる機能と、「肌の潤いを守るのを助ける」機能が報告されている、という機能性表示食品の届け出もあります。どれも飲んだときの話で、飲むか塗るかで使える言葉が変わるのは、飲む美容と同じしくみです。
化粧品で言えるのは、うるおいとはりを与える範囲
塗る化粧品としてアスタキサンチンに言えるのは、「皮膚にうるおいを与える」「肌にはりを与える」などの範囲です。化粧品の効能は決められた範囲の中で書くもので、アスタキサンチンが入っていても同じだからです。乾燥が気になるならうるおいを与える化粧品の1つとして、エイジングが気になるなら「肌にはりを与える」範囲の手入れとして選べます。
いっぽうで、化粧品では「抗酸化成分」という配合目的は認められていません。アスタキサンチンは油になじむ性質の成分で、美容液の赤い色は成分そのものの色です。化粧品のアスタキサンチンは、うるおいとはりを与える範囲の成分として見ておくと安心です。
天然と合成の違いは、分子の形の比率
天然のアスタキサンチンと合成品の違いは、分子の形の比率です。同じアスタキサンチンでも、立体異性体と呼ばれる、鏡に映したように形の違うものがあるからです。
合成品は、3つの形が1:2:1でまざっています。
天然(ヘマトコッカス藻)
合成
- 3S,3′S 型
- メソ型
- 3R,3′R 型
自然界のものは主に「3S,3'S」という1種類の形で、ヘマトコッカス藻もこの形を主につくります。合成品は3種類の形が1:2:1で混ざったもので、市場全体では95%以上が合成品とされています。天然か合成かは、形の比率の違いと覚えておけば十分です。
使うときは、服やタオルへの色移りに気をつける
化粧品のアスタキサンチンで気をつけたいのは、色移りです。色の濃い成分なので、白い衣類やタオルにつくと目立ちやすいからです。化粧品基準に、アスタキサンチンの配合量の制限はありません。
飲む場合の安全性は、海外と国内の機関が評価しています。ヨーロッパの食品安全の機関は、1日の許容摂取量を体重1kgあたり0.2mgとしました。日本の食品安全委員会は、飼料添加物としての評価で、自然界に広くあり食品として日常的に食べられていることから、1日の許容摂取量を「設定しない」と判断しています。塗るときは、乾くまで白い服にふれないようにすると安心です。
まとめ
- アスタキサンチンは藻などがつくるカロテノイドの仲間の赤い色素で、サケの身の色もこれです
- 赤く見えるのは、二重結合と単結合が交互に長く続く鎖が光を吸収するからです
- 肌の研究の多くは飲む試験で、その結果は飲む食品の話として読みます
- 化粧品として言えるのは、うるおいやはりを与える範囲です
- 天然と合成は分子の形の比率が違います。使うときは色移りに気をつけます
赤い美容液を手に取ったときは、「サケと同じ色」と「研究の多くは飲む話」の2つを思い出してみてください。
よくある質問
アスタキサンチンは塗っても効果がある?
化粧品として言えるのは、「皮膚にうるおいを与える」「肌にはりを与える」などの範囲です。肌についての研究の多くは飲んで試したもので、その結果は飲む食品の話として読みます。
アスタキサンチンの美容液が赤いのはなぜ?
アスタキサンチンという成分そのものの色です。サケの身やエビの殻と同じ色素で、二重結合と単結合が交互に長く続く分子の鎖が光を吸収するため、赤く見えます。
天然と合成のアスタキサンチンは何が違う?
分子の形の比率が違います。自然界のものは主に1種類の形でできていて、合成品は3種類の形が1:2:1で混ざったものです。
「抗酸化」の働きは肌にも効く?
抗酸化は成分そのものの性質の話で、化粧品として肌でそう働くとは言えません。化粧品では「抗酸化成分」という配合目的は認められていません。
服やタオルに色がつくことはある?
色の濃い成分なので、色移りに気をつけると安心です。とくに白い衣類やタオルには注意しましょう。
この記事で参照した情報
- ChEBI CHEBI:40968 astaxanthin
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「カロテノイド」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「カロテン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「抗酸化剤」
- Snell TW, Carberry J. Astaxanthin Bioactivity Is Determined by Stereoisomer Composition and Extraction Method. Nutrients 2022;14(7):1522
- Shah MM, et al. Astaxanthin-Producing Green Microalga Haematococcus pluvialis: From Single Cell to High Value Commercial Products. Front Plant Sci 2016;7:531
- 米国FDA 21 CFR 73.35 Astaxanthin (色素添加物)
- 食品安全委員会「飼料添加物アスタキサンチンに係る食品健康影響評価について(案)」
- 厚生労働省「既存添加物名簿」(平成8年厚生省告示第120号)
- 消費者庁「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業 平成29年度報告書」
- Tominaga K, et al. Cosmetic benefits of astaxanthin on humans subjects. Acta Biochim Pol 2012;59(1):43-47
- Ito N, et al. The Protective Role of Astaxanthin for UV-Induced Skin Deterioration in Healthy People. Nutrients 2018;10(7):817
- Zhou X, et al. Systematic Review and Meta-Analysis on the Effects of Astaxanthin on Human Skin Ageing. Nutrients 2021;13(9):2917
- EFSA NDA Panel. Safety of astaxanthin for its use as a novel food in food supplements. EFSA Journal 2020;18(2):e05993
- 厚生労働省「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- 日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」F5.5