この記事でわかること
- しみができるしくみと、コウジ酸が働くところ
- 医薬部外品として認められた効能と配合の量
- 安全性についての国の判断と、麹・発酵食品との関係
薬用化粧品の成分表示でコウジ酸を見かけると、味噌やお酒の麹と関係があるのか、肌に塗っても大丈夫なのか、気になりますよね。
結論から言うと、コウジ酸は麹菌などのカビがつくる成分で、医薬部外品の有効成分として「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」などの効能が認められています。一時は国が新しくつくるのを止めたこともありますが、その後、決められた使い方なら安全性に特段の懸念はないと判断されています。
しみは、紫外線でできたメラニンがたまってできる
しみのもとは、紫外線を浴びて作られるメラニンという色の粒です。表皮のいちばん下にある色素の細胞(メラノサイト)が、紫外線の刺激を受けてメラニンをさかんに作り、まわりの細胞に渡すからです。
コウジ酸が働くのは、色素の細胞がメラニンを作るところです。
紫外線でメラニンができる
まわりの細胞にたまってしみに
- 紫外線
- 色素の細胞(メラノサイト)
- メラニン
- コウジ酸が働くところ
メラニンを作るときに欠かせないのが、チロシンというアミノ酸からメラニンを作るチロシナーゼという酵素です。しみを悪くするいちばん大きな原因は紫外線とされていて、しみを防ぐ手がかりは、流れの入り口の紫外線と、メラニンができるところにあります。
コウジ酸は、麹菌などのカビがつくる成分
コウジ酸は、麹菌などのカビがつくる、水に溶ける成分です。1907年に、味噌やしょうゆ、日本酒づくりに使われてきた麹菌から見つかりました。
名前に「コウジ酸」とあっても、効能が認められているのは医薬部外品の有効成分だけです。
麹菌の仲間のほか、アオカビの仲間や一部の細菌もコウジ酸をつくります。水に溶けやすい一方で、保存しているあいだに不安定になりやすいことが、化粧品に使ううえでの課題です。成分表示で見かけるジパルミチン酸コウジ酸は、油になじみやすく安定しやすくした仲間ですが、有効成分のコウジ酸とは別の成分なので、同じ効能があるとは考えないほうが安心です。
コウジ酸は、メラニンを作る酵素の銅をはさみ込む
コウジ酸は、チロシナーゼが働くのに必要な銅をはさみ込んで、酵素の働きを抑えると考えられています。チロシナーゼは、材料が入るくぼみに銅をもっているからです。
銅をつかまえられた酵素は、メラニンを作れなくなります。
酵素のくぼみには銅がある
コウジ酸が銅をはさみ込む
- チロシナーゼ(メラニンを作る酵素)
- 銅
- チロシン(材料)
- コウジ酸
- メラニン
コウジ酸は、チロシナーゼのじゃまをする成分のなかでもよく調べられてきたもので、新しい成分の強さを比べるときの基準としてもよく使われています。メラニンを作る酵素を抑えることで、紫外線を浴びたあとにメラニンができすぎるのを防ぐ、というのがコウジ酸の役割です。
効能は「防ぐ」で、できたシミを消すものではない
しみに効く成分と聞くと、今あるシミが薄くなるのか期待しますよね。でも、コウジ酸の効能は、しみを「防ぐ」ことです。働くのはメラニンができるところなので、すでにたまったメラニンをなくすための成分ではないからです。
日本では、コウジ酸は1988年4月に医薬部外品の有効成分として承認されました。配合する量は0.1〜1.0%で、「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」などの効能が認められています。一般の化粧品に入っている場合は、この効能はうたえません。
皮膚科での肝斑というしみの治療では、4%のハイドロキノンのクリームのほうが、コウジ酸にビタミンCを合わせたクリームより全体として上回ったという結果があります。コウジ酸とハイドロキノンを組み合わせたものが最もよかったという結果もあります。どちらも医療としての使い方で、薬用化粧品とは使い方が違います。シミ対策で選ぶなら、「医薬部外品」の表示と有効成分の欄を見て、毎日の紫外線対策と一緒に使いましょう。
正しく使えば、安全性に特段の懸念はないと国が判断した
一度止められた成分と聞くと、不安になりますよね。2005年に国は、医薬部外品として正しく使われる場合には、安全性に特段の懸念はないと結論づけています。
見合わせから2年で、正しく使えば懸念はないと見直されました。
見つかる
有効成分に
見合わせ
懸念なし
見合わせのきっかけは、動物に多い量を食べさせると甲状腺や肝臓の腫瘍が増えたという結果で、肌に塗ったものではありませんでした。その後、コウジ酸を配合したクリームを人の顔に塗っても、血液に移る量は非常に少ないことがわかりました。くわしい経緯はしみ対策の成分の扱いの記事で解説しています。
ヨーロッパの評価でも、シミ対策の目的で化粧品に使う場合は1%までなら安全とされ、ほかの国の審査でも目安は同じく1%です。ただし、ピーリング剤との組み合わせには注意が必要とされています。角層の守りが弱まって、皮膚から吸収される量が増えるおそれがあるためです。コウジ酸によるアレルギーのかぶれはごく少ないとされていますが、かゆみや赤みが出たら使うのをやめて、皮膚科に相談しましょう。
発酵食品のコウジ酸は、有効成分とは分けて考える
麹を使った食品と、医薬部外品の有効成分のコウジ酸は、分けて考えるのが安心です。食品に入っている量はごくわずかで、決まりも別だからです。
食品に加える添加物としては、コウジ酸は2003年から使えなくなっています。動物の試験で肝臓への発がん性が疑われ、遺伝子への影響も否定できないことや、国内外で使われておらず必要性が低いことから、国が基準を改めました。これは食品にわざと加える場合の決まりです。
一方で、麹菌などを使う発酵食品には、もともとごく少し含まれていることがあります。市販の発酵食品を測った結果では、酢や酒類などから見つかりましたが、多いものでも1kgあたり約2.3mgで、医薬部外品の配合量とはけた違いに少ない量です。麹菌の種類や発酵の条件によっては、つくられないこともあります。味噌や酒粕を食べることと、薬用化粧品でコウジ酸を肌に使うことは、別のこととして考えましょう。
まとめ
- しみは、紫外線を浴びて作られたメラニンが、肌にたまってできます
- コウジ酸は、麹菌などのカビがつくる水に溶ける成分で、1907年に見つかりました
- メラニンを作る酵素の銅をはさみ込んで、働きを抑えると考えられています
- 医薬部外品の効能は「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」などで、配合は0.1〜1.0%です
- 2005年に国は正しく使えば懸念はないと判断し、ヨーロッパも化粧品で1%まで安全と評価しています
コウジ酸は「消す」ではなく「防ぐ」ための成分です。医薬部外品の表示と有効成分の欄を見て、紫外線対策と一緒に、肌に合うかを確かめながら使ってみてください。
よくある質問
コウジ酸とはどんな成分ですか?
麹菌などのカビがつくる水に溶ける成分で、1907年に麹菌から見つかりました。日本では1988年に医薬部外品の有効成分として承認され、配合する量は0.1〜1.0%です。
コウジ酸でシミは消えますか?
できたシミをなくす効能はありません。医薬部外品の有効成分として認められた効能は「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」などで、予防の範囲です。
コウジ酸はどうやってしみを防ぐのですか?
メラニンを作る酵素チロシナーゼが働くのに必要な銅をはさみ込んで、酵素の働きを抑えると考えられています。
コウジ酸は安全ですか?
2005年に国は、医薬部外品として正しく使われる場合には安全性に特段の懸念はないと結論づけました。ヨーロッパの評価でも、化粧品で1%までなら安全とされ、アレルギーのかぶれはごく少ないとされています。
味噌や酒粕にもコウジ酸は入っていますか?
発酵食品にごく少し含まれることがあり、多いものでも約0.0002%でした。医薬部外品の配合量よりけた違いに少ないので、麹を使った食品と有効成分のコウジ酸は分けて考えましょう。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「メラノサイト」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「しみ」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「美白剤」
- 厚生労働省 コウジ酸含有医薬部外品の安全性に関する検討会 資料1-3「コウジ酸を含有する医薬部外品について」(平成17年)
- 厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知「コウジ酸を含有する医薬部外品等に関する安全対策について」(平成17年11月2日 薬食安発第1102003号)
- 厚生労働省「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」(平成15年厚生労働省告示第351号)関係資料
- Bentley R. From miso, saké and shoyu to cosmetics: a century of science for kojic acid. Nat Prod Rep 2006;23:1046-1062
- Cosmetic Ingredient Review. Final report of the safety assessment of kojic acid as used in cosmetics. Int J Toxicol 2010;29(6 Suppl)
- IARC Monographs Vol.79 Kojic acid
- SCCS. Opinion on Kojic acid (SCCS/1637/21, 2022)
- 英国 SAG-CS Final Opinion on Kojic Acid in cosmetic products(2023年2月)
- Chang TS. An Updated Review of Tyrosinase Inhibitors. Int J Mol Sci 2009;10(6):2440-2475
- Monteiro RC, et al. A comparative study of the efficacy of 4% hydroquinone vs 0.75% kojic acid cream in the treatment of facial melasma. Indian J Dermatol 2013;58(2):157
- Kojic acid vis-a-vis its combinations with hydroquinone and betamethasone valerate in melasma: A randomized, single blind, comparative study of efficacy and safety. Indian J Dermatol 2013
- Ayuhastuti A, et al. (総説) Cosmetics 2024;11(2):21
- 陈东洋ほか「Determination of kojic acid in fermented foods by solid-phase extraction coupled with ultra performance liquid chromatography-tandem mass spectrometry」色谱 2023;41(7):632-639
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