この記事でわかること
- ほうれい線ができるしくみ
- 化粧品やマッサージで言えることの範囲
- ヒアルロン酸注入を考えるときの注意
ほうれい線が目立ってくると、乾燥のせいなのか年齢のせいなのか、クリームやマッサージでどうにかなるのか迷いますよね。
結論から言うと、ほうれい線は、小鼻のわきから口の端へのびる溝で、骨や脂肪、筋肉の変化が重なってできるものです。乾燥による小ジワとは成り立ちが違うので、化粧品でなくすことはできず、溝そのものを埋めるのは医師が行う治療です。まずは、溝ができるしくみから見ていきましょう。
ほうれい線は、小鼻から口の端への溝で、原因は大きく3つ
ほうれい線は、皮膚の下にある骨や脂肪、筋肉のつくりが表に出てできる溝です。医学では鼻唇溝と呼ばれ、左右の小鼻のわきから口の端へ向かってのびています。角層が乾いてできる浅い小ジワとは、原因の場所が違います。
原因は大きく3つに分けられます。1つめは、小鼻のわきで顔を支える上あごの骨が後ろへ下がり、その部分のボリュームが足りなくなることです。2つめは、頬の脂肪と皮膚が下がって、溝の上の頬側と下の口元側で厚みに差ができることです。3つめは、上唇を引き上げる筋肉が溝のあたりに付いていることです。
つまり、ほうれい線はひとつの原因ではなく、顔のつくりの変化が重なってできるものなのです。
年齢とともに、小鼻のわきの骨が下がり、頬の脂肪の重なりが変わる
年齢とともにほうれい線が深くなるのは、骨の支えが減り、頬の脂肪と皮膚が下がるからです。以前は皮膚や脂肪のゆるみだけが原因と考えられていましたが、いまは骨の変化も関わるとされています。
小鼻のわきの骨の支えが減り、頬の脂肪と皮膚が下がると、溝の上下の厚みの差が目立ちます。
減る
下がる
深く見える
顔の骨の中で、年齢とともにもっとも大きく減るのは上あごの骨です。とくに鼻の骨の開口部は、年齢とともに縁が後ろへ下がって広がり、その後退は小鼻のわきのあたりでいちばん大きくなります。ここで骨の支えが減ることが、ほうれい線が深くなることにつながります。
顔の皮下脂肪は、ひと続きの層ではなく、いくつもの区画に分かれています。ほうれい線のすぐ上には鼻唇脂肪という区画があり、口元の横の脂肪と重なっています。さらに、皮膚とその下の組織をつなぎとめる靭帯も、年齢とともに弾力を失っていきます。
骨の支えが減り、脂肪の重なりが変わり、つなぎとめる力が弱まる。この3つが重なって、溝をはさんだ頬側と口元側の厚みの差が目立つようになります。
たばこと紫外線も、ほうれい線に関わる
暮らしの習慣では、たばこと紫外線がほうれい線に関わります。どちらも、顔のつくりの変化に加わる要因として挙げられているからです。
たとえば、遺伝的に同じ一卵性の双子を比べると、たばこを吸っている側でほうれい線がより目立つ傾向があったという結果があります。上下の唇のしわや口元の横のたるみも目立ち、違いの多くは顔の中央から下に見られました。
紫外線も見逃せません。長い年月に浴びた紫外線は、角層よりずっと下の真皮を傷める光老化のもとになり、光老化の症状として深いしわや頬のたるみが挙げられています。たばこを避け、毎日の紫外線対策を続けることは、毎日の暮らしの中で自分でできることです。
化粧品で言えるのは、乾燥による小ジワを目立たなくするまで
クリームでほうれい線をなんとかしたい、と思いますよね。でも、化粧品がシワについて言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」までです。しかも、決められた方法の試験で効果を確かめた製品に限られ、製品には効能評価試験済みと書き添えることになっています。
ほうれい線は、骨や脂肪、筋肉がつくる溝で、角層の乾燥でできる小ジワとは別のものです。そのため、化粧品の小ジワの効能を、ほうれい線を薄くするという意味に読みかえることはできません。医薬部外品で認められている「シワを改善する」効能も、承認された効能の言葉にほうれい線は入っていません。年齢によるシワまで含めて、すべてのシワに効くと思わせる表現も禁じられています。
名前が同じでも、塗るヒアルロン酸と、医療で溝に注入するヒアルロン酸は別物です。化粧品のヒアルロン酸が働くのは角層までで、役目は肌にうるおいを与えることです。溝の影を目立ちにくく見せたいときは、ハイライトやコンシーラーで光の当たり方を整えるのがメイクの役目です。
マッサージは、溝の下の骨や脂肪の形を変えるものではない
マッサージやローラーは、ほうれい線の原因である骨や脂肪の形を変えるものではありません。溝は、骨の支えが減り、脂肪の重なりが変わってできるもので、皮膚の表面の問題ではないからです。
顔の筋肉を動かすトレーニングやローラーについては、たるみの記事にまとめています。マッサージは気分転換として楽しむくらいにして、肌を強くこすらないようにしましょう。ほうれい線そのものを変えたいときは、医師に相談するのが近道です。
ヒアルロン酸注入は医師が行う治療で、重い合併症もある
ほうれい線の溝そのものを埋めるのは、医師が行う治療です。日本では、鼻唇溝などの中等度から重度のしわや溝を修正する目的で、ヒアルロン酸の注入材が医療機器として承認されています。美容医療の診療指針では、顔のシワの治療としてのヒアルロン酸注入は推奨度2、弱くすすめるという位置づけです。
気をつけたいのは、重い合併症があることです。注入材が誤って血管の中に入ると、その血管が届けている範囲の皮膚が壊死することがあり、目の網膜の動脈まで詰まりが及ぶと失明につながります。失明は鼻、眉間、額への注入に集中しているとされ、承認された注入材の添付文書でも、目のまわりや眉間への注入で失明や脳卒中が起こるおそれがあると警告されています。
また、承認された製剤だけでなく、承認されていない製剤も使われている実態が報告されています。注入したヒアルロン酸を分解する薬は、日本では未承認です。厚生労働省は、治療方法を選んで提案するのは医師の判断で、資格のないカウンセラーなどが行えば違反になりうること、メールやチャットだけの診療は医師法に反するおそれがあることを通知で示しています。
ヒアルロン酸注入を考えるときに、決める前に確かめたい順番です。
診察を受ける
確かめる
説明を聞く
施術を考えるときは、使う製剤が承認されたものかどうかも含めて、医師の診察で説明を受けてから決めることが大切です。
まとめ
- ほうれい線は小鼻のわきから口の端への溝で、骨の後退、脂肪と皮膚の下垂、筋肉の付き方の3つが関わります
- 年齢とともに小鼻のわきの骨の支えが減り、頬の脂肪の重なりが変わることで、溝が深く見えるようになります
- たばこを吸う側でほうれい線が目立つ傾向があったという結果があり、紫外線も光老化のもとになります
- 化粧品で言えるのは「乾燥による小ジワを目立たなくする」までで、マッサージも骨や脂肪の形を変えるものではありません
- ヒアルロン酸注入は医師が行う治療ですが、失明などの重い合併症があり、医師の診察で説明を受けて決めます
ほうれい線は顔のつくりが関わる溝です。化粧品は乾燥の手入れとメイクに使い、紫外線対策を続けながら、溝そのものが気になるときは医師に相談してみてください。
よくある質問
ほうれい線の原因は何ですか?
骨・脂肪と皮膚・筋肉の変化が重なることです。小鼻のわきで顔を支える上あごの骨が後ろへ下がること、頬の脂肪と皮膚が下がって溝の上下で厚みに差ができること、上唇を引き上げる筋肉が溝のあたりに付いていることが挙げられます。
ほうれい線は化粧品でなくせますか?
化粧品でほうれい線をなくすことはできません。化粧品がシワについて言えるのは、試験をした製品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」までで、ほうれい線は顔のつくりが関わる溝です。
マッサージでほうれい線はなくなりますか?
ほうれい線の原因は骨の支えの減少や脂肪の重なりの変化なので、マッサージで形を変えるものではありません。肌を強くこすらないようにしましょう。
ほうれい線のヒアルロン酸注射は安全ですか?
重い合併症がある医療の施術です。注入材が血管に入ると皮膚の壊死や失明につながることがあり、失明は鼻・眉間・額への注入に集中しているとされます。医師の診察で説明を受けて決めることが大切です。
タバコを吸うとほうれい線ができやすいですか?
一卵性の双子を比べると、たばこを吸っている側でほうれい線がより目立つ傾向があったという結果があります。たばこを避けることは、自分でできる手立てのひとつです。
この記事で参照した情報
- Hong GW, et al. Why Do Nasolabial Folds Appear? Exploring the Anatomical Perspectives and the Role of Thread-Based Interventions. Diagnostics 2024;14(7):716
- Rohrich RJ, Pessa JE. The fat compartments of the face: anatomy and clinical implications for cosmetic surgery. Plast Reconstr Surg 2007;119(7):2219-2227
- Mendelson B, Wong CH. Changes in the Facial Skeleton With Aging: Implications and Clinical Applications in Facial Rejuvenation. Aesthetic Plast Surg 2012;36:753-760
- 米国形成外科学会 プレスリリース(2013年10月29日。Okada HC, Alleyne B, Varghai K, Kinder K, Guyuron B. Facial changes caused by smoking: a comparison between smoking and nonsmoking identical twins. Plast Reconstr Surg 2013;132(5):1085-1092 の紹介)
- 上出良一「光老化」日本皮膚科学会雑誌 122巻14号(2012年)
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省医薬食品局審査管理課長・監視指導・麻薬対策課長「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」(平成23年7月21日。岐阜県掲載)
- 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会ほか「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」日本美容外科学会会報 Vol.44 特別号(2022年)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 添付文書「ジュビダームビスタ ウルトラ XC」(ヒアルロン酸使用軟組織注入材、承認番号 22700BZX00139000、2023年8月 第1版)
- 厚生労働科学研究補助金 令和3年度 分担研究報告書「美容医療の診療指針(令和3年度版)報告」(研究代表者 大慈弥裕之)
- 厚生労働省医政局長「美容医療に関する取扱いについて」(令和7年8月15日 医政発0815第21号)
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