この記事でわかること
- しみができる流れと、トラネキサム酸が働くところ
- 止血の薬がしみ対策に使われる理由
- 塗る医薬部外品・飲む医薬品・化粧品の見分け方
トラネキサム酸は、化粧品にも、のどの薬にも、しみの飲み薬にも入っていて、結局肌に何をする成分なのか迷いますよね。
結論から言うと、塗るトラネキサム酸は、医薬部外品の有効成分として、しみ・そばかすができるのを防ぐ成分です。もとは血を止める薬で、その働きがしみの始まりにも関わっています。肝斑に使えるのは飲み薬の医薬品で、ふつうの化粧品に入っているだけでは、しみを防ぐとはうたえません。
しみは、紫外線の「合図」から始まる
しみは、紫外線を浴びた肌の中で出る「メラニンを作れ」という合図から始まります。合図を受けた表皮の底の色素の細胞がメラニンという色の粒を作り、まわりの細胞に渡すからです。
トラネキサム酸が働くのは、流れのはじめの「合図」のところです。
紫外線で「メラニンを作れ」の合図
メラニンがまわりにたまる
- 紫外線
- 合図
- 色素の細胞(メラノサイト)
- メラニン
- トラネキサム酸が働くところ
メラニンは本来、肌を紫外線から守るためのものです。作られすぎてたまったまま残ると、しみとして見えるようになります。
トラネキサム酸は、合図に関わるプラスミンを抑える
トラネキサム酸は、色素の細胞に届く合図を抑えて、メラニンが作られるのを防ぐとされています。紫外線を浴びた肌では、この合図にプラスミンという酵素が関わっているからです。
紫外線を浴びた表皮の細胞ではプラスミンが増え、メラニンづくりを促す物質を増やします。トラネキサム酸はこのプラスミンの働きを抑えるので、医薬部外品の有効成分として「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」効能が認められています。
ポイントは「消す」ではなく「防ぐ」であることです。すでにできたしみを薄くするのではなく、これからできるしみを防ぐ方向の成分です。
止血としみ対策は、同じ働きでつながっている
「血を止める薬が、どうしてしみに?」と不思議に思いますよね。止血としみ対策は、どちらもプラスミンを抑える働きを使っています。
プラスミンは、もともと血のかたまりを溶かす酵素です。トラネキサム酸はアミノ酸のリジンに似た形をしていて、プラスミンがかたまりにとりつくための「リジン結合部位」というくぼみにはまり込みます。
くぼみがふさがったプラスミンは、血のかたまりを溶かせません。
リジンとよく似た形
プラスミンのくぼみにはまる
- プラスミン(酵素)
- 血のかたまり
医療では、出血しやすいときの止血のほか、扁桃炎によるのどの痛みや腫れ、口内炎の痛み、湿疹の赤みやかゆみにも処方されています。肌の中でも同じプラスミンが合図に関わっているので、止血としみ対策は根っこが同じ働きなのです。
肝斑に使えるのは、飲み薬の医薬品だけ
肝斑に使えるのは、トラネキサム酸を主成分とする飲み薬の医薬品です。塗る医薬部外品の効能は「しみ・そばかすを防ぐ」で、肝斑の効能は含まれていないからです。
同じトラネキサム酸でも、区分によってうたえることが違います。
肝斑は「かんぱん」と読み、主に両頬に左右対称にできるしみです。飲み薬は第1類医薬品で、効能は「しみ(肝斑に限る)」と範囲が決まっていて、薬剤師から説明を受けて買います。両頬のしみが肝斑なのか迷うときは、薬剤師や皮膚科医に相談するのが確実です。
しみを防ぐとうたえるのは「有効成分」の欄にあるものだけ
「トラネキサム酸配合」と書かれていても、しみ・そばかすを防ぐとうたえるのは医薬部外品だけです。ふつうの化粧品で書けるのは、「肌にうるおいを与える」などの化粧品の効能の範囲だからです。
「有効成分」の欄にあれば、しみ・そばかすを防ぐ効能が認められた製品です。
医薬部外品(薬用)
化粧品
パッケージの「薬用」「医薬部外品」の表示も目印になります。この見分け方は、医薬部外品でいくつもの効能に使われるナイアシンアミドも同じです。
まとめ
- しみは、紫外線で出た「メラニンを作れ」の合図から始まります
- トラネキサム酸は、合図に関わるプラスミンを抑えて、メラニンが作られるのを防ぎます
- 塗るものの効能は、医薬部外品の「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」で、「消す」ではなく「防ぐ」です
- 止血としみ対策は、どちらもプラスミンのくぼみにはまる働きでつながっています
- 肝斑の効能をもつのは第1類医薬品の飲み薬です。化粧品は、入っていてもしみを防ぐとはうたえません
トラネキサム酸を選ぶときは、成分の名前だけでなく、「薬用」の表示と「有効成分」の欄まで見ると、何が期待できるのかがはっきりします。
よくある質問
トラネキサム酸入りの化粧品で、しみは防げますか?
しみ・そばかすを防ぐとうたえるのは、医薬部外品(薬用)の場合だけです。「薬用」の表示と「有効成分」の欄で見分けましょう。
トラネキサム酸は、できてしまったしみにも使えますか?
医薬部外品の効能は「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」で、これからできるしみを防ぐ方向の効能です。
止血剤がしみ対策に使われるのはなぜですか?
どちらもプラスミンという酵素を抑える働きを使っているからです。紫外線を浴びた肌では、プラスミンがメラニンを作る合図に関わっています。
肝斑の飲み薬と、塗るものはどう違いますか?
飲み薬は第1類医薬品で、効能は「しみ(肝斑に限る)」です。塗る医薬部外品の効能は「しみ・そばかすを防ぐ」で、肝斑の効能はありません。
医薬部外品かどうかは、どこで見分けますか?
「薬用」「医薬部外品」の表示と、「有効成分」の欄にトラネキサム酸があるかで見分けます。全成分の欄にあるだけなら、入っているという以上の意味はありません。
この記事で参照した情報
- 一般社団法人 日本血栓止血学会 用語集「トラネキサム酸・イプシロンアミノカプロン酸」
- KEGG 医療用医薬品情報 トラネキサム酸を有効成分とする錠剤(効能・効果)
- Sheu SL. Treatment of Melasma Using Tranexamic Acid: What's Known and What's Next. Cutis 2018;101(2):E7-E8
- 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会ほか「美容医療診療指針」(令和元年度厚生労働科学特別研究事業)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 一般用医薬品 詳細表示 トラネキサム酸を含む第1類医薬品(効能・効果「しみ(肝斑に限る)」)
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「美白剤」
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)