この記事でわかること
- 尿素が角層で水を抱え、角質をやわらげるしくみ
- 濃度による働きの違いと、区分ごとに言える効能
- しみる感じや顔・傷に使うときの注意
ハンドクリームやかかと用のクリームでよく見かける「尿素」。肌に何をしているのか、濃いものを使っても大丈夫なのか、気になりますよね。
結論から言うと、尿素は角層にもともとある保湿成分のひとつで、水を抱えて角層の水分を増やす成分です。濃くなるとかたい角質をやわらげる働きが加わり、ガサガサに硬くなったかかとやひじの手当てをする薬にも使われます。濃度と区分を見て、使う場所に合ったものを選ぶのがコツです。
尿素は、角層の細胞の中で水を抱える成分
尿素は、角層の細胞の中で水を抱えている「天然保湿因子」のひとつです。肌の乾燥は、角層が水分を抱えきれなくなることで起きるので、その水を抱える役目の成分ということです。
尿素は、細胞の中で水を抱える天然保湿因子のひとつです。
肌の断面
角層の細胞の中を拡大すると
- 尿素
- アミノ酸など
- 水分
- 角層の細胞
- すきまの脂
肌のいちばん外側の角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子、細胞のすきまを埋める細胞間脂質の3つでうるおいを保っています。天然保湿因子は、アミノ酸類やピロリドンカルボン酸、ミネラル塩類、有機酸などの小さな分子の集まりで、尿素もその成分です。この3つのバランスが崩れると、かさつきや肌荒れにつながります。
尿素を補うと、角層の水分が増える
尿素は、水を引き寄せて抱え、角層の水分を直接増やす保湿成分です。皮膚科の保湿剤の分け方でも、尿素はヘパリン類似物質と並んで、角層の水分を直接増やすタイプに入ります。
尿素が水を引き寄せると、角層の細胞がふっくらうるおいます。
水分が足りない角層
尿素が水を抱えた角層
肌をおおって水分が逃げるのを防ぐワセリンのようなタイプよりも、角層の水分を増やす力が強いとされています。実際に、尿素入りの保湿剤を使うと、肌から逃げる水分の量が減り、洗浄成分による刺激反応も小さくなったという結果があります。化粧品の尿素は、肌がもともと持っている保湿成分を外から足すもの、と考えるとわかりやすいでしょう。
濃くなるほど、かたい角質をやわらげる働きが強まる
尿素は、濃度によって働きが変わる成分です。低い濃度では水を抱える保湿が中心ですが、濃くなると、かたくなった角質に水を含ませてやわらげたり、溶かしたりする働きが強まります。
化粧品は0.01〜10%、医療用のクリームは10%と20%です。
2〜10% うるおす
10〜30% やわらげる
30%以上 溶かす
- 尿素
- 水分
- かたい角質
海外の皮膚科の総説では、2〜10%は主に保湿のために、10〜30%は保湿と角質をやわらげる目的で、30%以上は角質を溶かす目的で使い分けられています。日本の医療用の尿素クリームでは、20%のものは角質の水分を増やす作用に加えて角質を溶かしてはがす作用があるとされ、10%のものは角層の水分を保つ作用が中心です。角質を溶かすと聞くと心配になりますよね。でも尿素入りの保湿剤では、肌から逃げる水分が減ったという結果があります。顔やからだのうるおいには低い濃度、かかとのガサガサには高い濃度、と目的で選びましょう。
言える効能は、化粧品・医薬部外品・医薬品で違う
尿素が向くのは乾燥と肌荒れが気になるときですが、言える効能は区分で違います。効能は成分ではなく、製品ごとに認められるものだからです。
同じ尿素でも、言える効能は区分で決まります。
化粧品として言えるのは「肌にうるおいを与える」「肌を柔らげる」「肌を滑らかにする」といった範囲で、白く硬くなったかかとやひじ、荒れた手をしっとりさせる目的でハンドクリームなどによく配合されています。医薬部外品では尿素は有効成分として使われ、化粧水やクリーム、乳液、ハンドクリームに入れる量の目安が国のリストに載っています。クリームなどの効能は「肌あれ・あれ性」「皮膚の乾燥を防ぐ」といった範囲です。
医薬品では、医療用の10%・20%クリームの効能に、老人性乾皮症や魚鱗癬、アトピー皮膚、進行性指掌角皮症が含まれ、市販の20%クリームの効能には手指のあれがあります。手湿疹では、5%の尿素を含む保湿剤を使った人のほうが、湿疹の出ない期間が長かったという結果もあります。パッケージの区分の表示を見て選ぶことが大切です。
尿素は体の中でもできる成分で、精製したものは白い結晶
尿素は、体の中でたんぱく質が分解されるときにできて、尿として外に出ていく成分です。名前から尿を思い浮かべやすいのですが、精製された尿素は無色から白色の結晶で、成分表には「尿素」と表示されます。
ハンドクリームだけでなく、髪をふくらませる成分としてパーマ液に、水分を保つ成分としてシャンプーに入るほか、石けん、ファンデーション、日焼け止め、シェービング用品、アイクリームなどにも広く使われています。化粧品から薬まで、幅広く使われる保湿成分です。
気をつけるのは、しみる感じと塗る場所
尿素でいちばん多いのは、塗ったところがしみる、ピリピリするといった刺激です。海外の総説では、濃度が高いほど刺激が出やすくなりうるとされています。
医療用の20%クリームでは、ぴりぴり感や赤み、かゆみ、痛みが0.1〜5%未満の頻度で、10%クリームでは痛みや熱感が5%以上の頻度で副作用として挙げられています。また、傷やひび割れには塗らないのが基本です。医療用は潰瘍やただれ、傷のある面に直接すり込まないこと、市販の20%クリームは傷口や亀裂、かさぶたのようにはがれているところ、ただれたり赤くはれたりしているところには使わないことになっています。ぱっくり割れたかかとやあかぎれ、目のまわりや粘膜にも使いません。
市販の20%クリームは化粧品ではないので、決められた患部だけに使い、ふだんのスキンケアの目的で顔には使わないよう注意書きがあり、15歳未満の子どもには使わせないことになっています。医療用の20%クリームは、妊娠中は治療の利点が危険を上回ると判断される場合にだけ使うものとされています。尿素には、ほかの成分が皮膚に入りやすくなるよう助ける働きもあるとされ、アメリカの安全性評価はこの点に作り手が注意すべきとしたうえで、化粧品での使い方では安全と結論づけています。しみる感じが続くときは、使うのをやめて、医師や薬剤師に相談すると安心です。
「毛穴にいい」「20%なら顔にも使える」は誤解
医療用の効能に毛孔性苔癬が入っているので、尿素は毛穴にいいのかなと思いますよね。でも、毛孔性苔癬は二の腕などにできるぶつぶつの病名で、毛穴の開きや黒ずみとは別のものです。
「病院の薬と同じ20%なら顔にも使える」というのも誤りです。市販の尿素20%クリームには顔に使わないよう注意書きがあり、これは医薬品であるその製品の使い方の決まりです。顔の乾燥が気になるときは、顔に使うことを前提にした製品を選びましょう。
まとめ
- 尿素は角層の天然保湿因子のひとつで、細胞の中で水を抱えています
- 補うと角層の水分を直接増やすタイプの保湿成分です
- 濃くなるほどかたい角質をやわらげる働きが強まり、30%以上では角質を溶かす目的で使われます
- 化粧品で言えるのはうるおいを与える・肌を柔らげるなどの範囲で、乾皮症などの治療は医薬品の効能です
- しみる感じが出ることがあり、傷やひび割れ、顔には市販の20%クリームを使いません
尿素は「かかと用の強い成分」というより、肌にもともとある保湿成分です。区分と濃度を見て、使う場所に合ったものを選んでみてください。
よくある質問
尿素は肌に何をする成分ですか?
角層で水分を抱え込む保湿成分です。肌にもともとある天然保湿因子のひとつで、皮膚科では角層の水分を直接増やすタイプの保湿剤に分けられています。
尿素クリームの10%と20%は何が違いますか?
20%のほうが角質をやわらげる働きが強いとされます。医療用の20%クリームは角質の水分を増やす作用に加えて角質を溶かしてはがす作用があり、10%は角層の水分を保つ作用が中心です。
尿素クリームは顔に使えますか?
市販の尿素20%クリームは、顔には使わないよう注意書きがあります。これは医薬品であるその製品の使い方の決まりで、決められた患部だけに使います。顔には、顔に使うことを前提にした製品を選びましょう。
尿素クリームがしみるのはなぜですか?
尿素は、濃度が高いほど刺激が出やすくなりうるとされています。医療用のクリームでも、ぴりぴり感や痛みが副作用として挙げられています。
ひび割れたかかとに尿素クリームを塗ってもいいですか?
ぱっくり割れた傷や亀裂には使いません。医療用・市販の尿素クリームとも、傷口や亀裂、ただれたところには使わないことになっています。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「尿素」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「天然保湿因子」
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き(平成19年8月)」別表 医薬部外品の効能効果の範囲
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
- ケラチナミンコーワクリーム20% 添付文書(興和、2023年5月改訂)
- 尿素クリーム20%「SUN」添付文書(サンファーマ、2024年7月改訂 第2版)
- ウレパールクリーム10% 添付文書(大塚製薬工場、2024年1月改訂 第1版)
- 興和「ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム」添付文書(第3類医薬品)
- 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」(日皮会誌131(10):2255-2270)
- 日本皮膚科学会・日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会「手湿疹診療ガイドライン」(日皮会誌 2018)
- Piquero-Casals J, et al. Urea in Dermatology: A Review of its Emollient, Moisturizing, Keratolytic, Skin Barrier Enhancing and Antimicrobial Properties. Dermatol Ther 2021;11(6):1905-1915
- Lodén M. Urea-containing moisturizers influence barrier properties of normal skin. Arch Dermatol Res 1996
- Cosmetic Ingredient Review. Final Report of the Safety Assessment of Urea. Int J Toxicol 2005;24(Suppl 3)
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