この記事でわかること
- ニキビが毛穴の中でどう始まり、進むのか
- 医薬品・医薬部外品・化粧品で、使える成分と言えることの違い
- ノンコメドジェニックの読み方と、洗顔の回数・食べ物との関係
「この成分がニキビにいい」という話を見ると試してみたくなりますが、それが薬の話なのか、化粧品の話なのか、迷いますよね。
結論から言うと、ニキビは皮膚の病気で、治療は医薬品の役目です。薬用化粧品とも呼ばれる医薬部外品で言えるのは「にきびを防ぐ」まで、ふつうの化粧品では洗顔料の「洗浄によりニキビ、アセモを防ぐ」だけです。まずは、ニキビが肌の中でどう始まるのかから見ていきましょう。
ニキビは皮膚の病気で、治療は医薬品の役目
ニキビは皮膚の病気なので、よくするための治療は医薬品が受け持ちます。化粧品や医薬部外品が、ニキビを治療するとうたえないのはこのためです。
日本皮膚科学会のガイドラインは、ニキビの正式な病名である尋常性痤瘡を慢性炎症性疾患としています。毛穴と皮脂腺の部分で起こり、面皰、つまりコメドから始まって、赤いぶつぶつや膿をもったもの、さらには袋状のしこりや硬いしこりができることもあり、炎症がおさまったあとに痕が残ることがあります。思春期以降に顔や胸、背中に出やすく、ホルモンの影響による皮脂の代謝の乱れ、毛穴の出口の角化の異常、菌が増えることが複雑に関わっています。
重症度も数で決まっていて、片側の顔にある炎症をともなうニキビが5個以下なら軽症、6〜20個で中等症、21〜50個で重症、51個以上で最重症です。
赤いニキビがいくつも続くときは、化粧品を探すより皮膚科に相談するのが近道です。
ニキビは、目に見えない毛穴のつまりから始まる
ニキビは、目に見えない「微小面皰」という毛穴のつまりから始まります。毛穴の出口がふさがって、中に皮脂がたまった状態で、ニキビとして見える前の段階です。
そこから皮脂腺の働きが活発になって皮脂が増え、毛穴の出口の角化が進むと、皮脂が毛穴の中にたまって面皰になります。毛穴の口が閉じた閉鎖面皰が白ニキビ、口が開いた開放面皰が黒ニキビです。さらに進んで赤くなったものや膿をもったもの、そのまわりの赤みは、まとめて「炎症性皮疹」と呼ばれます。
ニキビは、毛穴の出口がつまって皮脂がたまるところから始まります。
増える
つまる
ニキビに
赤ニキビに
炎症に関わるのが、アクネ菌です。アクネ菌は、毛穴を中心に皮膚にふだんからすんでいる、脂を好み、酸素が少なくても育つ菌です。皮脂の中性脂肪を分解して脂肪酸をつくり、この脂肪酸が毛穴の角化を進めたり、炎症を起こしたりします。菌そのものより、菌がつくり出すものが炎症に関わるのです。なお、アクネ菌は2016年に学名が新しくなったため、ガイドラインでは「痤瘡桿菌」と書かれています。同じ菌です。
ニキビは、毛穴のつまり → 皮脂がたまる → 菌が増えて炎症という一続きの流れで進みます。毛穴のしくみもあわせて読むと、わかりやすくなります。
黒ニキビが黒いのは、酸化よりメラニンと毛のため
黒ニキビは、皮脂が空気に触れて酸化したから黒い、と思いますよね。でも、化粧品の用語集が黒い理由として挙げているのは、酸化ではなくメラニンと毛です。
ひとつは、毛穴の上のほうで、色素細胞からメラニンを受け取った表皮の細胞が重なっていること。もうひとつは、毛穴の中で数本以上の毛が面皰の中身に埋まっていることです。
黒ニキビの黒さは、汚れや酸化だけのせいではないと覚えておきましょう。
皮膚科で中心になる薬は、アダパレンと過酸化ベンゾイル
皮膚科でニキビの治療の中心になるのは、アダパレンと過酸化ベンゾイルです。どちらも、面皰、炎症をともなうニキビ、よくなった状態を保つ維持期のすべてで、ガイドラインの推奨度A、つまり「行うよう強く推奨する」とされています。
皮膚科で使う薬は、ニキビの原因のそれぞれの段階に働きます。
アダパレン
つまりに働く
過酸化ベンゾイル
菌とつまりに働く
抗菌薬
菌に働く
2つは、ニキビの流れの別のところに働きます。面皰のもとは、毛穴の出口の角化が進みすぎて、出口がつまることでした。アダパレンはレチノイドに似た働きをもつ薬で、表皮の細胞の分化をおさえて、この角化の進みすぎに働きます。過酸化ベンゾイル、略してBPOは強い酸化剤で、分解してできる反応しやすい分子が菌の膜などを直接傷つけ、アクネ菌などに抗菌作用を示します。角層をはがす作用もあるので、つまりにも働きます。
どちらも効能・効果は「尋常性ざ瘡」で、医師の処方が必要です。アダパレンは、妊娠中または妊娠の可能性がある人には使えません。ほかに推奨度Aには、アダパレンとBPOの配合ゲル、抗菌薬とBPOの配合ゲル、塗る抗菌薬、飲む抗菌薬があります。
ガイドライン全体に通じるのは、抗菌薬を長く使わないという考え方です。抗菌薬を長く使うと、薬の効きにくいアクネ菌が出てくることが心配されているからです。そのため、よくなったあとの維持期には、アダパレンやBPOのような抗菌薬を含まない薬に切り替えます。
コスメでよく見る成分では、アゼライン酸の外用とイオウ製剤の外用が推奨度C1、つまり「選択肢の一つとして推奨する」です。ケミカルピーリングはC1ないしC2、ビタミンCの外用はC2で「十分な根拠がないので推奨しない」とされています。アゼライン酸、ケミカルピーリング、ビタミンCの外用は保険適用外です。
ニキビの治療は、つまりと菌の両方に働く薬を、医師のもとで続けるのが基本です。
医薬部外品は「にきびを防ぐ」まで。効能の書き方は2つ
医薬部外品で言えるのは「にきびを防ぐ」までで、書けるのは薬用石けん、洗顔料、化粧水、パック、クリーム、乳液の6つの種類に限られます。国が示す効能効果の範囲で、そう決まっているからです。
薬用石けんや薬用洗顔料は、国の承認基準で、効能の書き方と、必ず入れる有効成分が対応しています。効能欄の書き方は、次の2つのどちらかです。
- イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸、濃ベンザルコニウム塩化物液50のいずれか1つ以上を入れたもの:「皮膚の清浄・殺菌・消毒」「体臭・汗臭及びにきびを防ぐ」
- グリチルリチン酸ジカリウムかグリチルレチン酸ステアリルを入れたもの:「皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ」
有効成分は2種までで、量も決まっています。イソプロピルメチルフェノールは0.1〜0.5%、グリチルリチン酸ジカリウムは0.05〜0.4%、グリチルレチン酸ステアリルは0.05%、サリチル酸は0.2%、濃ベンザルコニウム塩化物液50は0.47%です。また、1つめのグループの成分を入れた場合は、2つめの「肌あれを防ぐ」効能を名乗ることはできません。
成分の働きで見ると、サリチル酸や硫黄は角層をはがしたり溶かしたりして、つまりに働きます。イソプロピルメチルフェノールや塩化ベンザルコニウム、トリクロサンは菌に働き、グリチルリチン酸ジカリウムなどのグリチルリチン酸の仲間は消炎剤として働きます。ほかに、皮脂の分泌をおさえるホルモン類や植物エキスもニキビ用の成分に使われます。
いっぽう、薬用の化粧水やクリームには承認基準がなく、種類ごとに有効成分の規格と量の前例を示した「有効成分リスト」があるだけで、そこに効能は書かれていません。前例は、イソプロピルメチルフェノールが化粧水とクリーム・乳液で0.05〜0.1%、グリチルリチン酸ジカリウムが化粧水で0.05〜0.5%、クリーム・乳液で0.05〜0.2%、サリチル酸が化粧水で0.05〜0.7%、クリーム・乳液で0.1〜1.5%です。
そのため、リストにある成分を「国がニキビの有効成分として定めた成分」と読むのは誤りです。医薬部外品を選ぶときは、まず効能欄の書き方を見ましょう。
化粧品でニキビに触れられるのは、洗顔料だけ
ふつうの化粧品でニキビについて言えるのは、洗顔料の「洗浄によりニキビ、アセモを防ぐ」だけです。化粧品の効能56項目のうち、ニキビに触れているのはこの第18項の1つだけだからです。
同じニキビでも、医薬品・医薬部外品・化粧品で言えることが違います。
医薬品
「尋常性ざ瘡」の治療
医薬部外品
「にきびを防ぐ」まで
化粧品
洗顔料だけ
「洗浄により」は働き方を、「洗顔料」は使い方をしぼる言葉です。そのため、化粧品の化粧水や美容液、クリームは、ニキビについて何もうたえません。書けるのは「肌を整える」「皮膚をすこやかに保つ」といった一般的な効能までです。
「ニキビ専用」という書き方も、特定の肌向けだと強調すると、効果や安全性について事実と違う受け取り方をさせるおそれがあるとして、業界の広告ガイドラインで原則として認められていません。店頭で「ニキビが気になる方に」という表現が多いのは、このためです。
化粧品は、予防や軽いもののお手入れとして考え、状態がひどいときは皮膚科医に相談するものです。
「ノンコメドジェニックテスト済み」は、選ぶときの目安の1つ
「ノンコメドジェニックテスト済み」と書いてあると、安心できそうに思いますよね。これは、ニキビのもとができにくいかを確かめた目安の1つで、ニキビができないことを保証する表示ではありません。公的な定義や統一の基準がなく、試験の方法や判定の基準は各社にまかされているからです。
テストでは、塗った部分でコメド、つまりニキビのもとのできにくさを観察して評価します。ただ、「テスト済み」という言葉から、試験の厳密さまでは読み取れません。
それでも学会は、選ぶときの目安としてこの言葉を使っています。ガイドラインは、ニキビのある人がニキビ用の基礎化粧品を使うことを推奨度C1の選択肢の一つとし、ニキビの人での使用試験が報告されている、刺激が少なくノンコメドジェニックなものを選ぶといった配慮が必要だとしています。メイクについても、女性のニキビの人に生活の質をよくする目的で化粧の指導をすることを推奨度C1としていて、「化粧をやめなさい」とは言っていません。
ノンコメドジェニックは、肌に合うかを自分で確かめながら使う目安として見ておきましょう。くわしくはノンコメドジェニックの記事で解説しています。
洗顔は1日2回。食べ物は一律に制限しなくていい
ニキビがあるときの洗顔は1日2回が勧められていて、食べ物は一律に制限することは勧められていません。洗いすぎると、かえって肌が乾燥したり荒れたりして、毛穴の角化異常の原因になるからです。
洗うときは、刺激の少ない洗浄剤を選び、朝晩や汗をかいたあとに使って肌を清潔にし、洗浄剤が残らないようにしっかりすすぐことが大切です。洗い方は洗顔の記事でも解説しています。
食べ物については、ガイドラインで、ニキビの人に特定の食べ物を一律に制限することは推奨度C2とされています。ただし、一人ひとりの食事指導では、特定の食べ物とニキビの経過との関係を十分に検討して対応することが望ましいともされています。「チョコレートは関係ないと学会が否定した」わけではなく、自分の場合にどうかは観察する価値がある、ということです。
毎日のケアでは、洗いすぎずに1日2回、やさしく洗うことを続けましょう。
まとめ
- ニキビは慢性炎症性疾患という皮膚の病気で、治療は医薬品の役目です
- ニキビは目に見えない毛穴のつまりから始まり、皮脂がたまり、菌が増えて炎症へ進みます
- 皮膚科で中心になる薬はアダパレンと過酸化ベンゾイルで、どちらも推奨度Aです
- 医薬部外品は「にきびを防ぐ」まで、ふつうの化粧品は洗顔料の「洗浄によりニキビ、アセモを防ぐ」だけです
- 「ノンコメドジェニックテスト済み」に公的な基準はなく、選ぶときの目安の1つ。洗顔は1日2回です
炎症をともなうニキビが続くようなら、化粧品を探すより皮膚科に行くほうが早いです。化粧品にできるのは、予防と、治療のじゃまをしないことです。
よくある質問
化粧品でニキビの治療はできる?
できません。ニキビは慢性炎症性疾患で、治療は医薬品の役目です。薬用化粧品で言えるのは「にきびを防ぐ」まで、ふつうの化粧品では洗顔料の「洗浄によりニキビ、アセモを防ぐ」だけです。
皮膚科ではどんな薬が使われる?
中心はアダパレンと過酸化ベンゾイルです。学会の治療ガイドラインで、どちらも最も強く推奨される薬とされ、医師の処方が必要です。
薬用洗顔料の効能欄に、2つの書き方があるのはなぜ?
入れた有効成分によって、書ける効能が決まっているからです。サリチル酸やイソプロピルメチルフェノールなどを入れたものは「体臭・汗臭及びにきびを防ぐ」、グリチルリチン酸ジカリウムなどを入れたものは「にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ」と書きます。
黒ニキビが黒いのは皮脂が酸化したから?
おもな理由は、酸化ではなくメラニンと毛だと考えられています。毛穴の出口に残るメラニンを含んだ細胞が重なっていることと、中に数本の毛が埋まっていることが挙げられます。
ニキビがあるときの洗顔は1日何回?
1日2回が勧められています。洗いすぎはかえって乾燥や肌荒れを招き、毛穴の角化異常の原因になります。刺激の少ない洗浄剤を選び、十分にすすぎましょう。
この記事で参照した情報
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「にきび」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「面皰」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「にきび用剤」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「にきび肌用化粧品」
- 厚生労働省「薬用石けんの承認審査に係る留意事項について」(平成30年 薬生薬審発0329第13号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年 薬食審査発第1225001号)
- 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」別表「医薬部外品の効能効果の範囲」
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- PMDA 添付文書「ベピオゲル2.5%/ベピオローション2.5%」(過酸化ベンゾイル)
- PMDA 添付文書「アダパレンゲル0.1%/クリーム0.1%」
- LPSN(原核生物の命名法に関する標準データベース)「Cutibacterium acnes」
- 日本化粧品工業会(JCIA)「化粧品等の適正広告ガイドライン」(2020年版)
- 花王 化粧品Q&A「ノンコメドジェニックテストとは」