この記事でわかること
- 頭皮の外に出た髪が、元に戻らない理由と3つの層
- 髪をつくる毛包・毛母・毛乳頭のつくり
- 髪が伸びる速さと、生えて抜ける毛周期
髪は毎日伸びて、毎日抜けていくのに、傷んだところは元に戻らない。髪ってどんなつくりなのか、ふしぎに思いますよね。
結論から言うと、頭皮の外に出ている髪は生きていない細胞の集まりで、髪をつくっているのは頭皮の中の毛包(毛を包んでつくり出す組織)です。毛包は、生えて、伸びて、抜ける周期をくり返しています。外に出た髪のつくりと、頭皮の中のつくりを順番に見ていきましょう。
頭皮の外に出た髪は、生きていない細胞でできている
頭皮から外に出ている髪は毛幹(もうかん)と呼ばれ、生きていない細胞の集まりです。そのため、一度できたつくりは自分では元に戻りません。
新しい毛は、毛包の底にある毛母(毛をつくる細胞が集まった場所)でつくられます。毛母で増えた細胞は上へ押し上げられ、乾いて死に、かたい毛幹になります。髪は、根元に新しい部分が足されて伸びていくだけなのです。
肌の表皮では、いちばん下で生まれた細胞が押し上げられ、一定の周期で入れ替わります。毛幹にはこの入れ替わりがないので、傷ついた部分はそのまま残ります。しかも髪には、痛いという感覚もありません。肌は入れ替わるけれど、髪は入れ替わらない。これが、傷んだ髪が元に戻らない理由です。
髪は外側から、キューティクル・コルテックス・メデュラの3層
毛幹は、外側から順にキューティクル・コルテックス・メデュラの3つの層でできています。いちばん外側のキューティクルが、内側を取り巻いて守るつくりです。
- 1キューティクル いちばん外側。うろこのように重なって内側を守る。全体の10〜15%
- 2コルテックス 髪の大部分。ケラチンの線維がつまり、メラニンで色がつく。85〜90%
- 3メデュラ 中心。やわらかいタンパク質が網目状になった、すき間の多いつくり
キューティクル(毛小皮)は、根元から毛先へ向かってうろこのように重なり、健康な髪では1本あたり6〜8枚が密着しています。1枚1枚も、さらに3つの薄い層からできています。
コルテックス(毛皮質)の細胞は毛の向きに細長く伸び、中はケラチンの線維で満たされています。メデュラ(毛髄質)は、太い毛にはありますが、産毛などにはないこともあります。
髪のケラチンは硬ケラチンと呼ばれ、シスチンというアミノ酸を約16%も含みます。表皮のやわらかいケラチンのシスチンは3%以下なので、髪はそれよりずっとかたく、熱にも安定しています。日本人の頭髪は約10万本、太さは0.05〜0.15mmほどです。髪は、かたいケラチンの線維を、うろこの層が包んだ一本の糸のようなものです。
髪をつくるのは、頭皮の中の毛包
髪は、頭皮の中にある毛包でつくられます。毛包は、表皮が真皮の中へ落ちこむようにして、根元のふくらんだ毛球(もうきゅう)の底まで管をつくった組織です。
頭皮の中の、毛包の断面です。
毛球の底には毛乳頭(もうにゅうとう:毛母に囲まれた、真皮からできた小さなかたまり)があり、中に神経と毛細血管のループが入っています。毛乳頭は毛の成長を指示する中心と考えられていて、その大きさは毛の太さにほぼ比例します。
毛包には、皮脂腺、アポクリン汗腺、立毛筋(毛を立たせる小さな筋肉)が付いています。立毛筋が付くところのふくらみはバルジ(毛隆起)と呼ばれ、いろいろな細胞のもとになる幹細胞があると考えられています。
髪の色をつくるのも毛包です。毛包のメラノサイト(メラニンをつくる細胞)は表皮のものより大きく、成長期にメラニンをつくって、コルテックスに色をつけます。黒っぽい色はユウメラニン、赤っぽい色はフェオメラニンという色素によるものです。毛包は、髪の形も色も決める、髪の工場です。
髪は1日0.3〜0.4mm伸び、成長期・退行期・休止期をくり返す
頭髪は1日に0.3〜0.4mm、1か月でおよそ1cm伸びます。ただし毛包はずっと伸ばし続けるのではなく、毛周期(ヘアサイクル)という周期をくり返しています。
女性の頭髪の毛周期です。
4〜6年
2〜3週間
3〜4か月
生え変わる
成長期は、男性では3〜5年です。頭髪のうち約85〜90%が成長期、10〜15%が休止期、約1%が退行期にあります。まゆ毛やまつ毛の成長期は、1〜6か月と短くなっています。
休止期を終えた毛は抜け落ち、同じ毛包から次の毛が生えてきます。そのため頭髪では、毎日50〜100本ほどが自然に抜けています。休止期の終わりに、バルジの幹細胞が毛乳頭の細胞とふれることで次の成長期が始まる、という考え方もあります。
毛周期は、部位や年齢、栄養状態、ホルモンなどの影響を受け、季節によっても変わります。抜け毛は、毛包が次の毛に入れ替わるときの、ふつうのできごとです。
頭皮は、皮脂腺がとくに多く集まった皮膚
頭皮は、皮脂腺がとくに多く集まった皮膚です。頭皮やおでこでは、1平方センチメートルあたり400〜900個にもなります。
頭皮の皮脂腺は毛包に付いていて、皮脂は毛包の中に出され、毛包の入り口の漏斗のような部分を通って頭皮の表面に出てきます。
一方で、頭皮も表皮と真皮でできた皮膚であることは、顔や体と変わりません。頭皮は、毛包と皮脂腺がとりわけ多い皮膚と覚えておきましょう。
髪は、表皮や爪とつながる角化した組織
毛包は表皮が落ちこんでできた組織で、髪は角層と同じように、角化した(中身がケラチンで満たされてかたくなった)細胞でできています。髪は、表皮から生まれた付属器官(皮膚にくっついて働く器官)だからです。
同じ仲間に、爪があります。爪も角層が変化したもので、髪と同じ硬ケラチンでできています。くわしくは爪のしくみの記事で解説しています。表皮の層のつくりは、表皮の4つの層の記事で見られます。髪・爪・角層は、どれも表皮から生まれた、ケラチンの仲間です。
まとめ
- 頭皮から出ている毛幹は生きていない細胞の集まりで、入れ替わらないので元には戻りません
- 毛幹は外側からキューティクル・コルテックス・メデュラの3層で、かたい硬ケラチンでできています
- 髪は頭皮の中の毛包でつくられ、毛球の底の毛乳頭が成長を指示しています
- 頭髪は1日0.3〜0.4mm伸び、成長期・退行期・休止期をくり返し、毎日50〜100本ほどが抜けます
- 頭皮は皮脂腺がとくに多い皮膚で、髪・爪・角層はどれも表皮から生まれたケラチンの仲間です
外に見えている髪は、頭皮の中の毛包でつくられたものです。毛包のつくりと毛周期を知っておくと、髪が伸びることも抜けることも、からだのふつうの働きとして見えてきます。
よくある質問
髪の毛は生きているの?
頭皮から外に出ている毛幹は、生きていない細胞の集まりです。毛包の底の毛母で増えた細胞が押し上げられ、乾いて死に、かたい毛幹になります。
髪は1日にどれくらい伸びる?
頭髪は1日に0.3〜0.4mm、1か月でおよそ1cm伸びます。成長期は女性で4〜6年、男性で3〜5年続きます。
抜け毛は1日何本くらいが普通?
頭髪では、毎日50〜100本ほどが自然に抜けています。休止期を終えた毛が抜け、同じ毛包から次の毛が生えてくるためです。
髪の色は何で決まる?
コルテックスに含まれるメラニン色素で決まります。メラニンは毛包のメラノサイトが成長期につくり、黒っぽい色はユウメラニン、赤っぽい色はフェオメラニンによるものです。
髪の毛は何本あるの?
日本人の頭髪は約10万本です。太さは0.05〜0.15mmほどで、頭髪の約85〜90%が成長期にあります。
この記事で参照した情報
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「毛髪」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「毛皮質」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「キューティクル」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「毛包」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「毛周期」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「ケラチン」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「爪」
- MSDマニュアル家庭版「毛髪の成長の概要」
- StatPearls「Physiology, Hair」(NCBI Bookshelf、2023年7月30日更新)
- Ludovici M, Kozul N, Materazzi S, et al. Influence of the sebaceous gland density on the stratum corneum lipidome. Sci Rep 2018;8:11500
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