この記事でわかること
- 「くちびる」が唇のどの部分を指すのか
- 唇の角層と、うるおいを守るしくみが顔の肌と違うところ
- 唇が赤く見える理由と、唇の入れ替わり
顔の肌と唇は、色も手ざわりもまったく違いますよね。唇はふつうの皮膚と何が違うのか、気になる人は多いと思います。
結論から言うと、唇は皮膚から口の中の粘膜へ移り変わる境目の部分で、角層がきわめて薄く、皮脂膜も汗腺もありません。そのため表面の水分は少なく、すぐ下を通る血管の色が透けて赤く見えます。まずは、唇がどこからどこまでなのかを見ていきましょう。
「くちびる」は、皮膚と粘膜の境目にある赤唇縁
私たちが「くちびる」と呼んでいるのは、皮膚から口の中の粘膜へ移り変わる境目の、赤唇縁(せきしんえん)という部分です。唇は、外側の皮膚部、まん中の赤唇縁、内側の粘膜部の3つでできているからです。
下唇を縦に切った断面です。
皮膚部はふつうの皮膚です。粘膜部は平たい細胞が何層も重なってできていますが、角化しておらず(かたい角層をつくらず)、角層や顆粒層がありません。唇は、角化するものと角化しないものの、2種類の重層扁平上皮(平たい細胞が何層も重なった上皮)でできています。
唇の内側には口唇腺(こうしんせん)という小さな唾液腺があり、唾液を出して唇の内側に湿り気を与えています。また、毛をつくる毛包はほぼ全身の皮膚にありますが、唇にはありません。唇は、皮膚とも粘膜とも違う、境目ならではの部分です。
赤唇縁の角層はきわめて薄く、細胞もできあがりきっていない
赤唇縁は、表皮は厚いのに、いちばん外側の角層がきわめて薄くなっています。頬の角層は約10層ですが、赤唇縁の角層はそれよりずっと薄いのです。
しかも、唇の表面の細胞は頬の角層の細胞より大きく、核が残った不全角化(角化の途中で核が残っている状態)の細胞です。角層の細胞が十分にできあがっていないことが、唇の表面の守りが弱い理由とされています。
頬と唇の断面です。矢印は、表面から逃げる水分です。
実際に、唇は頬と比べて、表面から逃げる水分の量がほぼ3倍、表面の水分量は約3分の1だったという結果があります。唇の角層は、薄いうえに、守る力も弱いのです。
唇には皮脂膜も汗腺もなく、うるおいを守るしくみが少ない
唇には、肌の表面をおおう皮脂膜がなく、汗を出す汗腺もありません。皮脂膜は、皮脂と汗がまざってできる膜だからです。
顔の角層は、表面をおおう皮脂膜、細胞の中で水を抱える天然保湿因子(角層の細胞の中にある、水をつかまえる成分)、細胞のすき間を埋める細胞間脂質の3つで、水分を保っています。くわしくはモイスチャーバランスの記事で解説しています。唇では、このうち皮脂膜がなく、天然保湿因子も少なめです。
角層が薄いことに加えて、表面の膜もない。唇は、水分を保つしくみが顔の肌よりずっと少ない部分です。
唇が赤いのは、血の色が透けて見えるから
唇の赤は、色素の色ではなく、血の色が透けて見えている色です。赤唇縁は角層がとても薄く、透明度が高いからです。
さらに表皮のすぐ下には、真皮乳頭(真皮が表皮に向かって突き出た部分)が背高く並び、そこに多くの毛細血管が入りこんでいます。血液の色が表面の近くまで来ているので、唇は赤く見えます。
血流の状態がそのまま色に出るので、唇の色は体調の目安にもなります。貧血では赤みが薄くなり、チアノーゼ(血液の中の酸素が足りない状態)では紫がかった色に変わります。一方で、唇はメラニン色素をほとんど持っていません。メラニンは紫外線から肌を守る色素なので、唇は紫外線の影響を受けやすいと考えられています。唇の赤さは、角層が薄く、色素が少ないことのあらわれです。
唇は皮膚より速く入れ替わり、年齢とともに薄くなる
唇は、皮膚よりもターンオーバー(細胞が生まれて入れ替わる流れ)が速いとされています。唇も表皮の仲間なので、同じように細胞が生まれては入れ替わっているからです。
肌の表皮では、いちばん下の基底層で生まれた細胞が押し上げられ、角層になってはがれ落ちます。このしくみはターンオーバーの記事で解説しています。唇では、この入れ替わりが皮膚より速く進みます。
年齢を重ねると、唇は厚みが減って平らになり、赤みも減っていきます。唇は、速く入れ替わりながら、年齢とともに形も色も変わっていく部分です。
まとめ
- 「くちびる」は赤唇縁という部分で、皮膚部と粘膜部のあいだの境目にあります
- 赤唇縁の角層はきわめて薄く、表面の細胞は核が残った、できあがりきっていない細胞です
- 唇は頬より表面から逃げる水分がほぼ3倍で、表面の水分量は約3分の1です
- 唇には皮脂膜も汗腺も毛包もなく、天然保湿因子も少なめです
- 唇の赤は、真皮乳頭の毛細血管の色が透けた色で、メラニン色素はほとんどありません
唇は、皮膚と粘膜のあいだにある、からだの中でも特別なつくりの場所です。角層の薄さ、膜のなさ、血管の近さを知っておくと、唇の色や手ざわりの理由が見えてきます。
よくある質問
唇はどこからどこまで?
ふだん「くちびる」と呼んでいるのは赤唇縁という部分です。唇は外側の皮膚部、まん中の赤唇縁、内側の粘膜部の3つでできていて、赤唇縁は皮膚から粘膜へ移り変わる境目にあります。
唇の角層は顔の肌とどう違う?
唇の赤唇縁の角層はきわめて薄く、頬の角層の約10層よりずっと薄くなっています。表面の細胞も核が残った、できあがりきっていない細胞です。
唇には皮脂膜や汗腺がある?
ありません。唇には表面をおおう皮脂膜も汗腺もなく、毛包もありません。角層の中で水を抱える天然保湿因子も少なめです。
唇が赤いのはなぜ?
色素の色ではなく、血の色が透けて見えるからです。角層がとても薄く透明度が高いうえ、すぐ下の真皮乳頭に毛細血管がたくさん入りこんでいます。
唇は皮膚より早く生まれ変わる?
はい、唇は皮膚よりもターンオーバーが速いとされています。一方で、年齢とともに唇の厚みは減って平らになり、赤みも減っていきます。