この記事でわかること
- 乾燥肌で角層に起きていること
- 乾燥の3つの原因と洗い方の見直し方
- 保湿剤の量と回数とヘパリン類似物質の扱い
冬になると肌がかさかさして粉をふいたり、すねがかゆくなったりすると、何が足りないのか、どう保湿すればいいのか迷いますよね。
結論から言うと、乾燥肌は角層が水分を抱えておく力が落ちた状態で、やさしく洗うことと、保湿剤を十分な量で1日2回塗ることが基本です。原因は、年齢、空気の乾燥や洗いすぎなどの環境、病気や治療の3つに分けられます。まずは、肌の中で何が起きているかから見ていきましょう。
乾燥肌は、角層の水分が足りない状態
乾燥肌は、肌のいちばん外側にある角層の水分が減った状態です。健康な角層には重さの約20〜30%の水分が含まれていて、角層は自分の重さの約3倍もの水分をためておけます。
この水分が減ると、肌のきめが乱れてやわらかさがなくなり、表面が細かくめくれるような肌荒れを起こしやすくなります。医学では、同じような状態を皮脂欠乏症、または乾皮症と呼びます。肌がつやを失ってざらつき、ぬかのような細かい粉がふいたり浅いひび割れができたりして、かゆみを伴うこともあります。年齢などによるものは両脚のすね側に出やすく、高齢の人では7割以上に肌の乾燥が見られます。
粉ふきやかさつきは、角層の水分が足りないサインなのです。
角層のうるおいは3つで守られ、どれが崩れても乾燥する
皮脂欠乏症という名前を見ると、皮脂が足りないせいだと思いますよね。でも、角層のうるおいは、皮脂膜・天然保湿因子・細胞間脂質の3つで守られていて、どれが崩れても肌は乾燥します。
角層は、この3つのバランスでうるおいを保っています。
- 1皮脂膜 肌の表面をおおう、皮脂と汗の膜
- 2天然保湿因子 角層の細胞の中で、水を抱える
- 3細胞間脂質 細胞のすき間を埋めて、水分を逃がさない。約50%はセラミド
皮脂膜は、皮脂と汗が混ざってできるうすい膜で、肌の表面をおおいます。天然保湿因子はアミノ酸や尿素、ミネラルなどの小さな分子の集まりで、角層の細胞の中で水を抱えます。アミノ酸の多くは、フィラグリンというたんぱく質からつくられます。
細胞間脂質は、細胞のすき間を埋めて水分を逃がさない脂で、セラミド、脂肪酸、コレステロールが主な成分です。層を重ねた構造をつくって角層の重さの約15%を占め、その約50%がセラミドです。このすき間の脂が減ると、水分が逃げて角層がめくれやすくなります。
乾燥肌では、角層のすき間の脂と水分が減って、表面がめくれやすくなります。
乾燥肌は、3つのバランスが崩れて、角層が水分を抱えておけなくなった状態と考えるとわかりやすいです。
乾燥の原因は、年齢・環境・病気や治療の3つ
乾燥の原因は、年齢による変化、環境やお手入れ、病気や治療の3つに分けられます。どれも、角層がうるおいを保つしくみに関わります。
年齢による乾燥では、天然保湿因子やセラミドなどの脂質が減ることと、表皮の生まれ変わりがゆっくりになることが原因に挙げられています。角層の水分量は40歳ごろにいちばん多くなり、その後は減っていきます。年齢を重ねた角層は、若い角層より脂質の総量が30%を超えて少なく、肌の表面のpHは55歳ごろから上がり始めるという結果があります。
環境やお手入れで身近なのは、冬の乾いた空気やエアコン、飛行機の中のような乾いた環境です。湿度や気温が低いと、肌のバリア機能が全体に落ち、こすれなどの刺激にも弱くなるという結果があります。紫外線、入浴のしすぎ、脂を落とす力の強い洗浄料やこすり洗いも原因になり、洗いすぎると角層の天然保湿因子が流れ出てしまいます。
病気や治療には、皮膚や全身の病気のほか、抗がん剤や放射線治療といった医療によるものがあります。
年齢は変えられませんが、環境とお手入れは自分で見直せる原因です。次の章から、その見直し方を見ていきましょう。
洗うときは、泡でやさしく、熱いお湯を避ける
乾燥肌の洗い方は、洗浄料をよく泡立てて、泡でやさしく洗うのが基本です。洗浄料の主な成分は界面活性剤で、使いすぎたりすすぎ残しがあったりすると乾燥が悪化するおそれがあり、ナイロンタオルやブラシでこすると角層から逃げる水分が増えるからです。
乾燥肌の洗い方と保湿は、こすらず、十分な量を塗るのが基本です。
やさしく
お湯で
約0.5g
塗る
お湯は、かゆくなるほど熱い温度を避け、38〜40℃くらいを目安にします。長く入りすぎるのも肌の負担になります。乾燥がとくに強いところには洗浄料をできるだけ使わないほうが望ましいとされ、入浴後にほてりを感じるような入浴剤も避けます。
暮らしの中では、冬は暖房で部屋の湿度が下がるので、加湿器などで湿度を保つことも大切です。長く日光を浴びると角層から逃げる水分が増えるので、強い日差しに長く当たるときは日焼け止めを使います。羊毛やごわごわした素材の服もかゆみのもとになるので、肌あたりのやさしい服を選びましょう。
洗うときも暮らしの中でも、角層のうるおいを奪わないことを意識すれば大丈夫です。
保湿剤は、約0.5gを手のひら2枚分に1日2回
保湿剤は、人差し指の先から第1関節まで押し出した約0.5gを、大人の手のひら2枚分の広さに、1日2回塗るのが目安です。体の表面のおよそ2%にあたる広さで、回数は1日1回より2回のほうが高い保湿効果を期待できるからです。
保湿剤は、しくみで2つに分けられます。ひとつは水を引き寄せて角層の水分を直接増やすタイプで、皮膚科ではモイスチャライザーと呼び、ヘパリン類似物質や尿素がこれにあたります。もうひとつは肌をおおって水分が逃げるのを防ぐタイプで、エモリエントと呼ばれ、代表はワセリンです。エモリエントはべたつきやすく、モイスチャライザーのほうが角層の水分を増やす力が強く、使い心地の種類も豊富です。
実際に、ヘパリン類似物質を1日2回塗ると、1回のときより肌の水分の目安がはっきり高くなったという結果があります。日本皮膚科学会の手引きも、年齢による皮脂欠乏症に保湿剤を塗ることを、いちばん強い推奨度ですすめています。
塗る時間は、入浴後すぐでないといけないと思いがちですよね。でも、入浴の1分後に塗っても1時間後に塗っても、角層の水分量は変わらなかったという結果があり、自分や家族の都合に合わせて塗ればよいとされています。冬に軟膏が硬いときは、手のひらや手の甲にとって少し温めると、すぐ柔らかくなります。
保湿剤でも、かぶれなどが起きることがあります。塗ったところが赤くなったり、かゆみが増したりしたら、使うのをやめて皮膚科で相談しましょう。乾燥肌の保湿は、量と回数を守ることがいちばんの近道です。
乾燥肌に関わる成分は、区分で分けて見る
乾燥肌に関わる成分は、医薬品・医薬部外品・化粧品の区分で分けて見ると整理しやすいです。区分によって、言える効能が違うからです。
- ヘパリン類似物質 皮膚科の治療で使う医薬品です。医療用の薬は効能に「皮脂欠乏症」を含み、市販薬にも第2類医薬品として「乾皮症」などの効能をもつものがあります。化粧品や医薬部外品で同じ名前が書かれた商品とは区分が違います。
- 尿素 水を引き寄せて角層の水分を増やすタイプの保湿成分で、医薬部外品の有効成分のリストにも載っています。10%ほどでは水分を抱える働きをし、20〜30%になると角質をゆるめて溶かす方向に働くので、濃さで役割が変わります。
- セラミド 細胞間脂質の約50%を占める成分です。化粧品として言えるのは「皮膚にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」の範囲です。
- グリセリン 水を引き寄せるタイプの保湿成分で、このタイプの中でも効果が高いとされています。化粧品として言えるのは、うるおいを与える範囲です。
- ワセリン 肌をおおって水分が逃げるのを防ぐタイプの代表で、皮膚科でも保湿剤として使われます。化粧品として言えるのは「皮膚を保護する」「皮膚の乾燥を防ぐ」の範囲です。
- 薬用のクリーム・乳液 医薬部外品のクリームや乳液では、効能の範囲に「皮膚の乾燥を防ぐ」と「肌あれ。あれ性。」が入っています。薬用の化粧水は「皮膚にうるおいを与える」までです。
化粧品や医薬部外品で言えるのは乾燥を防ぐところまでで、湿疹やかゆみが続くときは医薬品の出番です。
かゆみや湿疹が続くなら皮膚科へ
かゆみが強いときや湿疹が出たときは、早めに皮膚科で相談しましょう。乾燥した肌をかき壊すことを繰り返して炎症が起きると、皮脂欠乏性湿疹という湿疹になるからです。
乾燥を伴うかゆみは、保湿剤でやわらぐことが見込まれます。ただ、全身のかゆみが強いときは、腎臓や肝臓の病気、糖尿病やホルモンの異常、血液や内臓のがん、飲んでいる薬などが原因のこともあります。
皮膚科で処方される保湿剤には、ヘパリン類似物質の薬があります。皮脂欠乏症のほか、しもやけや、傷あとが盛り上がるケロイドなどにも使われる医薬品で、血友病など出血しやすい病気の人には使えません。副作用として皮膚炎やかゆみ、赤みなどが出ることもあります。処方された本人が医師や薬剤師の指示どおりに使う薬なので、家族の薬を借りて使うのはやめましょう。
美容のために処方してもらう例が増えたことから、2018年に、美容目的など病気の治療以外で使う場合は保険給付の対象外であることが明確にされました。さらに2027年3月から、対象の薬を使う患者が薬代の4分の1を特別の料金として追加で負担するしくみが始まる予定で、対象として示された成分にはヘパリン類似物質も入っています。子どもや入院中の人など対象外になる場合もあるので、実際の負担は受診先で確かめてください。
保湿剤で様子を見てよいのは乾燥だけのとき、かゆみや湿疹が続くなら皮膚科へ、と分けて考えましょう。
まとめ
- 乾燥肌は角層の水分が減った状態で、健康な角層には重さの約20〜30%の水分があります
- 角層のうるおいは皮脂膜・天然保湿因子・細胞間脂質の3つで守られ、皮脂だけの問題ではありません
- 原因は、年齢、空気の乾燥や洗いすぎなどの環境、病気や治療の3つに分けられます
- 泡でやさしく洗い、保湿剤は約0.5gを手のひら2枚分に1日2回。塗る時間は都合に合わせてかまいません
- かゆみや湿疹が続くなら皮膚科へ。ヘパリン類似物質は医薬品で、美容目的の処方は保険給付の対象外です
乾燥肌の対策は、特別な成分を探すより、洗い方と保湿剤の量と回数を整えるところから始めると続けやすくなります。
よくある質問
乾燥肌の原因は何ですか?
年齢などによる肌の変化、空気の乾燥や洗いすぎなどの環境、病気や治療の3つに分けられます。冬の外気や冷暖房、脂を落とす力の強い洗浄料やこすり洗いも原因になります。
乾燥肌は皮脂が足りないせいですか?
皮脂だけが原因ではありません。角層のうるおいは、皮脂膜・天然保湿因子・細胞間脂質の3つで守られていて、どれが崩れても乾燥します。細胞間脂質の約50%はセラミドです。
保湿剤はどれくらいの量を塗ればいいですか?
人差し指の先から第1関節まで押し出した約0.5gを、大人の手のひら2枚分の広さに塗るのが目安です。回数は1日2回が目安です。
保湿剤は入浴後すぐに塗らないといけませんか?
急がなくても大丈夫です。入浴の1分後に塗っても1時間後に塗っても、角層の水分量は変わらなかったという結果があります。回数は1日1回より2回のほうが高い保湿効果を期待できます。
ヘパリン類似物質は美容目的でも保険で処方されますか?
されません。2018年に、美容目的など病気の治療以外の使用は保険給付の対象外と明確にされました。出血しやすい病気の人は使えない医薬品で、処方された本人だけが使う薬です。
この記事で参照した情報
- 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」(日皮会誌131(10):2255-2270, 2021)
- 日本皮膚科学会「皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020」(日皮会誌130(7):1589-1606, 2020)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「痒疹・かゆみ」Q6
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「皮膚科領域の薬の使い方」Q10
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「乾燥肌」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「天然保湿因子」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層細胞間脂質」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「角層水分量」
- 日本化粧品技術者会(SCCJ) 化粧品用語集「保湿」
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年 薬食発0721第1号)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
- 厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日 薬食審査発第1225001号)
- マルホ「ヒルドイド」医薬品インタビューフォーム(2025年7月改訂 第22版)
- コーセーマルホファーマ「ヒフニック」製品情報
- 中央社会保険医療協議会 総会資料「医療用保湿剤の適正使用について」(2017年11月1日)
- 日本皮膚科学会「保湿剤の処方制限について」第二報(2017年10月31日)
- 日本皮膚科学会「保湿剤の処方制限について」第三報(2018年2月19日)
- ニプロ「ヘパリン類似物質製剤 適正使用のお願い」(2017年11月)
- 厚生労働省保険局「特別料金の対象となる医薬品の成分一覧(案)」(令和7年12月25日)
- 厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(第213回社会保障審議会医療保険部会 資料1、令和8年8月27日)
- Wang Z, Man MQ, Li T, Elias PM, Mauro TM. Aging-associated alterations in epidermal function and their clinical significance. Aging (Albany NY) 2020;12:5551-5565
- Engebretsen KA, et al. The effect of environmental humidity and temperature on skin barrier function and dermatitis. J Eur Acad Dermatol Venereol 2016;30(2):223-249
- Sethi A, et al. Moisturizers: The Slippery Road. Indian J Dermatol 2016;61(3):279-287
- 花王 お肌ナビ「入浴後のからだの保湿ケアは必要?」
- 持田ヘルスケア スキンケア講座(監修:東京医科大学病院皮膚科)
- 国立健康・栄養研究所「セラミド(N-アシルスフィンゴシン)」素材情報
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